万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ナイ駐日大使誕生の不安

2009年01月08日 20時46分33秒 | 日本政治
米駐日大使にジョセフ・ナイ氏 オバマ新政権(朝日新聞) - goo ニュース
 ジョセフ・ナイ氏と言えば、相互依存論やソフト・パワー(最近では、スマート・パワー)論者として世界にその名を知られていますが、日本では、もう一つ、別の理由で名が知られるようになりました。それは、クリントン政権下にあって、ナイ氏が対日戦略のスタッフであったからです。

 日本において知名度が高い人物を駐日大使に起用したという意味では、確かに、オバマ次期政権は、日本に対して配慮を示したことになりましょう。しかしながら、実のところ、日本国にとりましては、心配な側面もあるのです。クリントン政権時代とは、アメリカが、巨額の対日赤字で苦しみ、ジャパン・バッシングに走った時代でもありました。このため、ナイ氏の述べるソフト・パワーは、経済的脅威となった同盟国にも向けられ、日本国の弱体化政策が追及されたのです。その結果、日本国政府は、度重なる対日要求を飲まざるを得ず、半導体など、多くの先端分野で優位性を失うことにもなりました(結局、アメリカの貿易赤字は解消されず、中国が台頭することに・・・)。

 現在のアメリカの経済的脅威は、日本国から中国へシフトしていますので、ナイ氏が、クリントン政権時代のように日本叩きにソフト・パワー、あるいは、スマート・パワーを発揮するか否かは分かりません。しかしながら、日本人の脳裏に当時の記憶が過るとしますと、心中穏やかでもいられないようにも思えるのです。

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もしアイスランドがEUに加盟していたら

2009年01月08日 16時02分28秒 | ヨーロッパ
〈連載―世界変動〉欧州 国家の意味揺らぐ(朝日新聞) - goo ニュース
 もし、アイスランドがEUに加盟していたとしたら、現在のような悲惨な状況は避けられたのでしょうか。答えは、YESではないか、と思うのです。

 その一方で、アイスランドの好況を支えてきた旧来の政策もまた、隣にユーロ圏という巨大な通貨圏があってのことでした。何故ならば、EUに加盟していないアイスランドの中央銀行は、自由な政策権限を用いて、欧州中央銀行よりも高い政策金利を設定することができ、この戦略的な高金利政策が、アイスランドに巨額の投資を集めた要因であったのですから。つまり、独立的な金融政策は、資金の流入による未曾有の好景気とともに、バブルをもアイスランドに招き入れてしまったのです。

 反対から見ますと、もし、この手痛い経験がなければ、アイスランドの人々は、EUに加盟しようというインセンティヴを、永遠に持たなかったかもしれません。独立的な政策権限は、時にして、自国に利益をもたらすことがあるからです。アイスランドが実際にEU加盟に踏み切るかは分かりませんが、得るものもあれば、失うものもあるということなのかもしれません。 

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