美浜原発には1号機(定期検査中)、2号機(運転中)、3号機(定期検査中)の3機の原発があるが、一番新しい3号機でもすでに運転開始から今年12月で35年を迎える。
特に1号機は脆性破壊の危険性が高いという。脆性破壊が起きればその影響は福島原発の比ではない。炉心が全部割れる可能性があるのだ。美浜原発は位置的にも福島と違って日本の中心に位置するため、放射能の拡散は甚大なものになると予想されている。
「SPEEDIで調べてこうなるという予測を示し、それでも動かすのかということを問いかけた上でないと、運転再開を認めるわけにはいきません。汚染のレベルは福島を遙かに超えるでしょうし、東海、関東は全滅するぐらいの規模が予想されます」
松下さんは以前、敦賀半島から風船を飛ばすという実験をある女性グループと一緒に行っている。風船は岐阜県から信越、遠くは福島まで飛んでいった。また昨年、半島の先の海上から飛ばした風船は津軽半島まで飛んでいっている。夏場には関東方面へ南西の風に乗って飛んでいく。関西方面はもちろん、海外まで影響が出れば補償問題も発生することになる。
地震に関しては耐震偽装を指摘する。マンションの耐震偽装はマスコミも騒いだが、原発の耐震偽装はわかってても騒がれない。なにしろ日本の9電力でトータルすると1000億円近い宣伝広告料が使われているのだから。
原発を建設し始めた時期は地震研究は極めて幼稚な時代だった。古い文献などによってここには地震が起きないだろうという予測で原発を建設してきた。ところが地震研究が進み新しい理論が出てきて、地震がこれまで発生していない場所は「地震の空白区」と言われて、実は地震が最も起きやすい、エネルギーが膨れあがっている場所であるということがわかってきた。しかし、こういったことは現在も考慮されていない。
「もんじゅの真下には2本の活断層が走っていることがわかっています。また美浜原発には浅いところに1本の断層がある。こういうことは知らされていません。また、古い原発に鞭打つような政策をどんどん採ってきました。9カ月動かして3カ月検査をするというこれまでの検査を、これからは原発を個別に評価して、優秀な炉であれば24カ月まで動かしてもよいという方針が提案されています。さらに今まではキズが発見されたら止めて点検していましたが、今はそのキズが次の定期検査まで大丈夫と判断されれば、継続して運転してもいいという、技術の維持基準を作られました」
しかしこのキズの評価は静的解析という、一定の構造物に対して段階的に力を加えてその状態を調べる検査だが、動的な解析は行われていない。現実に動いている原発は、振動もすれば熱も持っているうえ、さらに老朽も考慮した圧力を加えるというような検査そしなければ正確なキズの評価できないのだが、こういう検査も行われていない。
津波については、安土桃山時代に三方五湖の地形が変わるほどの天正大地震が起きていることが古文書などで明らかになっているが、関電はこれを信憑性がないとして、若狭に津波は来ないと判断してきた。そして2メートルの津波対策と言っているが、これは海面から2メートルの高さの所に建てたいうだけの話で、実際には何の津波対策も行われていない。
「福島の事故で、これまでの基準が間違っていたということが明らかになったのだから、新たな基準を設けた上で、それぞれの原発をその基準に照らして評価して、それで安全という結果が出なければ定期検査が終わっても動かせない。それが正論です。現時点では福井県知事もこのように判断しているので、その点では支えていきたいと思っています」