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土佐いく子の教育つれづれ~「一斉休校」明けに向けて 新型コロナ感染症との闘いの中で

2020年04月07日 | 土佐いく子の教育つれづれ

かつて経験したことのない感染症との闘いで落ち着かぬ日々を送っている。読者にこの原稿が届く頃、感染爆発が起きていなければと願っている。

■奪われた1ヵ月
 さて、子どもたちは全国一斉の休校でどんな生活を送っていたのだろうか。

 朝ごはんを食べずに来て、給食が「うまい、うまい」と言って何回もおかわりしていたゆうちゃんのような子、両親が喧嘩ばっかりして家を出て行くって言うから「夕べな、母ちゃんと腕をひもでくくって寝たんやで」という話を聴いてあげたらほっとして笑顔が戻った正人のような子、小さな弟の世話をしながら帰りの遅い親を待っていた三年生のまあちゃんのような暮らしをしていた子、勉強、勉強と追い立てられテストで90点以下の点数をとったとき叱られるから家に帰りたくないと身体を硬くしていたゆきちゃんのような子…。

 こんな子どもたちに学校という場が奪われて1ヵ月。大人の想像をはるかに超える身体的、精神的な負担を抱えて学校が始まるのを待っているのではないだろうかと心が傷む。

 新学期、長期の休みの後には、不登校やいじめなどが増えるとも言われている。すでに親からは「心身のバランスを崩し生活の乱れ、体調不良もあり、気力や活力が沸かない状態で、どうなることかと心配」の声が聞かれている。そんな子どもたちが再び学校へ向かうには、大きなプレッシャーや相当なエネルギーを要することが想像できる。

 先生方もかつて経験したことのない事態の中で戸惑いながらも、一日も早く学校の遅れや生活リズムを取り戻させたいと焦ってしまう。早速、休み時間まで短縮して長時間の授業を実施したり、規律だ、スタンダードだと言って、子どもたちを縛ってしまうことがあってはならないと思う。

■心身のケアを最優先に
 何よりも「心身のケアの回復」を最優先して、学校に来て良かった、学校は楽しいと思える格別の配慮が必要だろう。
 安心と安全が脅かされている子どもたちの不安感やストレスを癒すためには、子どもたちの心に寄り添った丁寧なかかわりが求められる。まずは、休みの期間の子どもたちの様子をつかみ、丁寧に話を聴いてやりたい。指導する、しつけるばかりを優先させないで、聴いて聴いて共感し抱きとめてやりたい。

 ネットゲームばかりに熱中していた子の心の中、いつになくベタベタ甘えてきたり、暴言を吐いたり、自傷行為を始めたりする子の言動の背景にどんな思いや不安、願いがあるのかを聴きとって受け止めてやりたい。

 このことがおろそかになり、よい子であれを強要すると、緊張や不安を抱え込んだまま過ごすことで、いずれいじめや暴力、不登校など、違う形で表出しかねないと懸念している。

 「ほら近づき過ぎやろ、離れなさい」「なんで相撲なんかしてるの、身体くっつけたらダメって言ったでしょ。病気になりたいんか」「給食の時は一切しゃべったらあかん」。あー、先生のイライラした叱り声が聞こえてきそうで、教職員のストレスも大変なものだろう。

 この初めて経験する事態をどう乗り越えるのか。今こそ教職員が頭を集めて知恵を出し合う時。話をする間もないくらい忙しいと言われる現場だが、話し合って、共通理解し、困難に一つひとつ見通しをたてることが大切だ。

 そして、教職員がゆっくりと子どもたちに向き合えるための時間の確保と環境整備が急務だ。教職員の援助をする教育相談員や支援員、スクールカウンセラーなどの増員も必要だろう。

 とりわけ子どもや先生方を学力テストで追いつめないでほしい。休み明けの子どもたちを学力テストの恐ろしい糸で縛り上げるなど、ゆめゆめしないでほしい。今こそ、学校の真価が問われている。「学校があってよかった」という思いを届けてやりたい。教職員にも、子どもたちがいてこその学校、やっぱり授業すると元気になれるわという日常を大切にしたい。

 一にも早いコロナウイルスとの闘いが終わる日を願うとともに、この初めての経験から何を学ぶかを明らかにしなければと思う。

(とさ・いくこ和歌山大学講師)

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