マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

少年H

2013-08-23 10:02:16 | 映画ー劇場鑑賞

ー少年H

2012年 日本

監督=降旗康雄 原作=妹尾河童 キャスト=水谷豊(妹尾盛夫)伊藤蘭(妹尾敏子)吉岡竜輝(妹尾肇(H))花田優里音(妹尾好子)小栗旬(うどん屋の兄ちゃん)早乙女太一(オトコ姉ちゃん)原田泰造(田森教官)佐々木蔵之介(久門教官)國村隼(吉村さん)岸部一徳(柴田さん)

 

【解説】

1997年に発表されベストセラーを記録した、妹尾河童の自伝的小説を実写化したヒューマン・ドラマ。戦前から戦後までの神戸を舞台に、軍国化や戦争という暗い時代の影をはねつけながら生きる家族の姿を見つめていく。実際に夫婦でもある水谷豊と伊藤蘭が、テレビドラマ「事件記者チャボ!」以来となる共演を果たし、少年Hの父母を演じる。メガホンを取るのは、『鉄道員(ぽっぽや)』などの名匠・降旗康男。感動にあふれた物語もさることながら、当時の神戸の街並みを再現したオープンセットも見どころだ。

 

【あらすじ】

昭和初期の神戸。洋服仕立て職人の父・盛夫(水谷豊)とキリスト教徒の母・敏子(伊藤蘭)の間に生まれた肇(吉岡竜輝)は、胸にイニシャル「H」が入ったセーターを着ていることからエッチというあだ名が付いていた。好奇心旺盛で曲がったことが嫌いな肇だったが、オペラ音楽について指南してくれた近所の青年が特別高等警察に逮捕されるなど、第2次世界大戦の開戦を機にその生活は暗い影を帯びていく。やがて、彼は盛夫に対するスパイ容疑、学校で行われる軍事教練、妹の疎開といった出来事に直面し……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

この原作本がベストセラーになった頃、私も読みました。

少年の目で見た戦争や神戸空襲のこと、素直に胸に響きました。

そして、その映画化、楽しみに見てきました。

 

物語は昭和16年から始まりますが、神戸の町並みにまずジーンと来ました。

私の幼いときの大阪も、こんな感じの町だったなあ。

 

元気な小学生のハジメ君(H=吉岡竜輝)、敬虔なクリスチャンの母(伊藤蘭)と紳士服の仕立て屋を営む父(水谷豊)、そしてかわいい妹の好子ちゃん(花田優里音)の一家。

普通の市民です。

好子ちゃん、ほんまにかわいいよ。

でも、こんな普通の市民をも巻き込んで行くのが戦争。

国民は事実を知らされず、窮乏生活に耐えるばかり。

ある人は戦争へと出征して行き、思想が問題だと特高警察に連行され、中学生となったハジメは勉強より軍事訓練に明け暮れる。

「世界のあちこちで勝っている」報道とはうらはらに、日本の本土まで空襲され、幼い好子は親から引き離され、田舎に疎開。

父も、仕立ての仕事が少なくなり、地元の消防団に入る。

 

たった数年で人々の生活が激変します。

しかも、あんなに消火訓練をしたのに、神戸大空襲の凄まじさは筆舌に尽くせないほど。

人々は逃げ惑い、家も財産も失い、生き残った者は焼け野原で茫然自失となっていました。

 

このあと、広島と長崎に原爆が落とされ、日本は無条件降伏します。

そして、一変する大人たち。

父は、ふぬけのようになり、かつての軍事教官たちは手のひらを返したように時代に迎合し、生き延びることに必死です。

多感なハジメは、思春期のいら立ちもあって、我慢ができない。

 

父を責め、将来に絶望し、自殺まで考えたところで、ようやく我に返り、自分らしく生きて行こうと独り立ちを決めるのでした。

 

この物語、戦争に負けたという事実を知っているから、ハジメのいら立ちがよく理解できるけど、その時代に生きていたほとんどの人たちは、たぶん疑問があっても打ち消し、国のために滅私奉公する覚悟だったのだと思います。

その人たちを責めるのは酷というものです。

今、現実を生きている私たちは、歴史がどう流れていくかなんて、ほんとわからないもの。

誰が正しくて、誰が間違っているか、今の時点ではわからない。

しかも、歴史は起こったことがすべてです。

庶民レベルでは「この戦争は日本が負ける」という結果を推察できる人がいたとしても、国家権力を動かして戦争を回避するなんてことは、誰もできなかったと思う。

 

だから、このお父さんが言うように、いつの時代にあっても「自分に恥ずかしくない生き方」をする他は道がないと思いました。

自分の耳で聞き、目で見たものと、巷に溢れているたくさんの情報を取捨選択し、自分にとって何が正しい道かを模索するのが、いつの時代を生き抜くにも大切なことなんだろうなあと考えさせられました。

それはとても非力なことだけど、庶民の生き方とは、そういうものですね。

そうだからこそ、民主主義が大切、選挙が大切ということなんだなあ。