マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

ランナウェイ/逃亡者

2013-10-18 13:50:36 | 映画ー劇場鑑賞

ーランナウェイ/逃亡者ーTHE COMPANY YOU KEEP

2012年 アメリカ 122

ロバート・レッドフォード監督 ロバート・レッドフォード(ジム・グラント/ニック・スローン)シャイア・ラブーフ(ベン・シェパード)ジュリー・クリスティ(ミミ・ルーリー)サム・エリオット(マック・マクロード)ジャッキー・エヴァンコ(イザベル・グラント)ブレンダン・グリーソン(ヘンリー・オズボーン)テレンス・ハワード(コーネリアス捜査官)リチャード・ジェンキンス(ジェド・ルイス)アナ・ケンドリック(ダイアナ)ブリット・マーリング(レベッカ・オズボーン)スタンリー・トゥッチ(レイ・フラー)ニック・ノルティ(ドナル・フィッツジェラルド)クリス・クーパー(ダニエル・スローン)スーザン・サランドン(シャロン・ソラーズ)

 

【解説】

俳優や監督として、オスカー受賞作『普通の人々』など数々の名作に携わってきたロバート・レッドフォードが監督、主演を務めた社会派サスペンス。反体制活動を展開した実在の過激派組織を題材に、素性を隠して30年間暮らしてきた元幹部が、当時の仲間の逮捕によりFBIと記者から追われるさまを描く。若手記者を『トランスフォーマー』シリーズのシャイア・ラブーフが熱演するほか、スーザン・サランドン、リチャード・ジェンキンス、クリス・クーパーら豪華共演陣が物語を盛り上げる。

 

【あらすじ】

1969年、ベトナム戦争反対を世に訴えるために連続爆破事件を起こした過激派組織ウェザーマンはFBIの最重要指名手配リストに記載された後、突如消息を絶つ。30年後、元メンバーの一人(スーザン・サランドン)が警察に捕まる。再び話題を呼んでいる事件を調査する新聞記者のベン(シャイア・ラブーフ)は、一見真面目そうな雰囲気のシングルファーザーの弁護士ジム・グラント(ロバート・レッドフォード)にたどり着く。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

私は学生運動に遅れて来た世代だと思っています。

あんなに盛り上がっていた運動が、日航機乗っ取りや浅間山荘事件、さらにはリンチ事件へと、どんどん凶悪化していって反社会的になっていって、終焉を迎えます。

掲げた理想は若者らしい正義感から始まったと信じていたのに、なぜこんなことになってしまったのだろう。

挫折感と、失望感はいまでも心の奥底に空虚な穴となって残っているような気がしていました。

そして、当時何も行動できなかった自分への劣等感と。

 

反戦運動の本場、アメリカでも同じような流れをたどっていたのですね。

運動の凶悪化、銀行襲撃から、警備員を殺害、逃亡、指名手配…。

 

☆ネタバレ

その事件から30年後、指名手配犯の一人、シャロン・ソラーズ(スーザン・サランドン)が当時の友人に電話した。

「自首しようと思う」

その電話を盗聴したFBIは、シャロンが自首する前に逮捕した。

それはFBIの意地だった。

しかし、シャロンは黙秘し、仲間の消息は言わない。

 

同じ指名手配犯で、今はジム・クラントという名前で人権派の弁護士をしているニック・スローンのところにシャロンの弁護の依頼が来たが、ニックは断り、娘を弟(クリス・クーパー)に預けて逃亡した。

自分の無実を晴らすため、やはり指名手配犯であるミミ・ルーリー(ジュリー・クリスティ)の居所を探す旅に出たのだ。

仲間たちは口は堅いが、かつての絆で結ばれていた。

ニックが探していることはミミの耳にも入り、話し合うために二人は接触する。

二人には、二人だけの秘密があった。

 

ニックを別ルートで追いかけるのが地方紙の記者ベン・シェパード(シャイア・ラブーフ)。

シャロンのインタビューや、ニックの人柄に触れるうちに、人殺しの極悪人とされてきた犯人たちには、当時突き動かされた戦争を憎むという正義感があり、今は仮染めにしても市民としての生活があることを知る。

 

私が時代に間に合って、学生運動のまっただ中にいたら、どうしたんだろう。

行動したんだろうか。

過激になって行ったんだろうか。

考えさせられました。

そして、ニックとミミの娘が、残された人の手によって美しく聡明に育っていたことも感動的でした。

 

ロバート・レッドフォードの最近の作品、「大いなる陰謀」「声をかくす人」、アメリカの良心という感じで、気に入っています。

この作品にもスーザン・サランドン、クリス・クーパー、ニック・ノルティ、サム・エリオットといった面々が登場することを思うと、レッドフォードの活動が広く支持されているんだなあと、すごく嬉しく感じました。

 

人はイデオロギーで生きているわけではない。

やはり、地域とか、家族とかそういう多くの人に支えられて生きて、生かされているんだなあって。

若い時にはわからなかったことが、今ここへきてとても共感できる作品でした。

見てください!!

 


ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~

2013-10-18 13:46:48 | 映画ーDVD

ーハッシュパピー ~バスタブ島の少女~ーBEASTS OF THE SOUTHERN WILD

2012年 アメリカ 93

ベン・ザイトリン監督 クヮヴェンジャネ・ウォレス(ハッシュパピー)ドワイト・ヘンリー(ウィンク)

 

【解説】

最年少でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたクヮヴェンジャネ・ウォレスがヒロインを演じた人間賛歌。世間から隔てられた場所で暮らす6歳の少女の目を通して、現実の厳しさと再生への道のりを躍動感あふれる映像で映し出す。わずか200万ドルという予算でメガホンを取ったのは、アカデミー賞監督賞にノミネートされた新鋭ベン・ザイトリン。カンヌ映画祭やサンダンス映画祭などでも話題になった独創的な物語に熱狂する。

 

【あらすじ】

6歳の少女ハッシュパピー(クヮヴェンジャネ・ウォレス)は、バスタブと呼ばれるコミュニティーで、父親のウィンク(ドワイト・ヘンリー)と暮らしている。彼らは、閉鎖的な場所であったものの穏やかな日々を送っていたが、ある晩、嵐が全てを奪い去る。突然大好きな場所や仲間を失ったハッシュパピー。途方に暮れる状況の中、ウィンクが重病であることを彼女は察知し……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

ものすごいエネルギーを感じる作品です。

主演のクヮヴェンジャネ・ウォレスは、最年少でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたのですが、この作品に出るまでは素人の女の子だったそうです。

お父さん役のドワイト・ヘンリーも素人。

16ミリフィルムで撮影されたというから、学生映画みたいです。

でも!!

 

6歳の少女ハッシュパピー(クヮヴェンジャネ・ウォレス)は、バスタブと呼ばれるコミュニティーで暮している。

まるでジャングルで暮しているみたい。

とてもアメリカとは思えません。

でも、すぐ近くの大きな堤防の向こうには、立派な都市がそびえ立っていました。

 

ハッシュパピーはたくさんのペットと父親の父親のウィンク(ドワイト・ヘンリー)と暮らしている。

パパが「餌だぞー」と叫ぶと、ハッシュパピーは鳥の丸焼きを犬とシェアして食べる。

 

ある日、パパがいなくなった。

ママが残していった服を抱いて、コンロに火をつけて大きな鍋でなにやら不思議なものを作り始めた。

 

そこへ、病院から抜け出して来たような服を着たパパが帰って来た。

パパと言い争いになり、家に戻るとコンロから引火して大火事になってしまった。

パパに助け出されて、叱られたので、パパの胸を強く叩いたら、パパは気絶してしまった。

 

そんなとき、100年に1度という大嵐が来るということで、島の人たちは避難を始めた。

ても、パパや仲間たちは逃げません。

 

すごい嵐がやって来て、島は水没してしまいました。

ハッシュパピーとパパはボートに乗って仲間を捜しに出かけました。

たくさんの人や動物が死にました。

パパはハッシュパピーに一人でも生きる術を教えようとしていました。

そのやり方は6歳のハッシュパピーには厳しいもので、時には「ママー!!」と叫んでしまうほどです。

 

海水の混じった水では何も生きられず、生き残った人たちの生死に関わることになりました。

パパたちは、堤防に穴をあけて排水することに成功。

でも、乾いた泥は不毛の地で、もっと悪い結果となりました。

 

バスタブ島の人たちのことが都市の人たちにしれ、強制収容されてしまいました。

島の人たちは共謀して逃げ出し、重病人のパパもバスタブに戻ってきました。

 

ハッシュパピーは、女の子たちと沖のかすかな光に向かって泳ぎ出し、沖行く舟に拾われて竜宮城のような娼婦の店に行きます。

そこにはママかもしれないと思える女の人がいて、ママの得意料理のワニの唐揚げを作ってくれて、「ここにいてもいいよ」と言ってくれました。

でも、女の子たちは英気だけをもらって、バスタブ島へ戻り、氷河が融けて動き出したオーロックスの群れに立ち向かい、これを鎮めるのでした。

 

パパは天国へ旅立ちましたが、ハッシュパピーたちは力強く生きていくのです。

 

なんといっても、ハッシュパピーの生きるエネルギーに圧倒される作品でした。

6歳の少女の目から見た現実。

ファンタジーとリアルが混じり合い、社会問題や環境問題や天災やパパの病気という最悪なものにも真っ正面に向き合う勇気。すごい!!

6歳の少女のつぶやきはとても哲学的。

いい作品でした。

 

偽りなき者

2013-10-18 13:35:33 | 映画ーDVD

ー偽りなき者ーJAGTEN/THE HUNT

2012年 デンマーク 115

トマス・ヴィンターベア監督 マッツ・ミケルセン(ルーカス)トマス・ボー・ラーセン(テオ)アニカ・ヴィタコプ(クララ)ラセ・フォーゲルストラム(マルクス)スーセ・ウォルド(グレテ)ラース・ランゼ(ブルーン)

 

【解説】

『セレブレーション』『光のほうへ』などの名匠トマス・ヴィンターベアが、無実の人間の尊厳と誇りを懸けた闘いを重厚に描いた人間ドラマ。子どもの作り話がもとで変質者扱いされてしまい、何もかも失い集団ヒステリーと化した世間から迫害される男の物語は、第65回カンヌ国際映画祭で主演男優賞はじめ3冠を達成した。孤立無援の中で自らの潔白を証明しようとする主人公を、『アフター・ウェディング』のマッツ・ミケルセンが熱演。

 

【あらすじ】

親友の娘クララの作り話が原因で、変質者のレッテルを貼られてしまったルーカス(マッツ・ミケルセン)。クララの証言以外に無実を証明できる手段がない彼は、身の潔白を説明しようとするが誰にも話を聞いてもらえず、仕事も信用も失うことになる。周囲から向けられる憎悪と敵意が日ごとに増していく中、ルーカスは自らの無実を訴え続けるが……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

なかなか考えさせられるいい作品です。

私は、追いつめられた主人公は自殺するんじゃないかと心配しました。

いいラストは迎えられましたが、最後の最後に恐怖の余韻を残して映画は終わりました。

 

デンマークの小さな町。

ルーカス(マッツ・ミケルセン)は教師だったが、過疎化が進んだため、学校は閉鎖されてしまい、失職したルーカスは幼稚園で働いていた。

離婚した妻は一人息子のマルクスを連れて近くの町で暮している。

 

狩猟のできる年が男の子の成人と見なされる土地柄、狩猟仲間の友情の絆は強い…はずだった。

 

ルーカスの親友のテオ(トマス・ボー・ラーセン)と妻は、些細なことでケンカばかりしていて、末娘のクララは小さな胸を痛めていた。

ルーカスは幼稚園に通うクララの面倒を見て、クララもルーカスに信頼を寄せていた。

 

☆ネタバレ

ところが、そのクララが園長のグレテ(スーセ・ウォルド)に、ルーカスに性的虐待を受けたことを告げる。

それは、幼稚園でみんなとじゃれていたときにルーカスにクララがキスをして、それを咎めたことにショックを受け、グレテに、ルーカスは嫌い、性器を見せられたと言ったのだ。

その性器とは、クララの兄がiPadの成人向け画像をクララに見せたものが、クララの頭に残っていたのだった。

 

クララの表現が具体的だったため、グレテは信じ込み、ルーカスに確かめる前に医者、警察とエスカレートさせ、クララの母親や保護者にも事実として告げてしまった。

 

小さな村で噂は広まり、誰もルーカスの言い分に耳も貸さない。

親友のテオも、娘を傷つけられたことに怒り、ルーカスの話は「娘が嘘をついたと言うのか!」と余計怒りを強くする。

 

息子のマルクスだけは父を信じるが、とうとうルーカスは逮捕されてしまった。

しかし、証拠不十分で保釈されるが、愛犬は殺され、人々はルーカスを避け、スーパーでも物を売ってくれなかった。

彼の無実を証明するものもないのだ。

 

それでもルーカスは、クララを責めず、反対にクララが傷つかないかと気遣っている。

クララも小さな胸を痛めているが、うまく説明できない。

 

ルーカスの人格は、映画の冒頭に語られています。

友達思いで、自己犠牲も厭わない性格。

失業、離婚と辛いときを送っている。

それでも、親友たちと新しい恋人、息子との新生活。

少しは暖かい春の兆しが見えていたのに。

 

スーパーで殴られて傷だらけになっても、ひるまない。

ぼこぼこに殴られた顔のまま、クリスマスのミサに出かけ、テオに向かって思いの丈を吐き出す。

テオは、その夜、クララの告白を聞いた。

ルーカスの無罪を。

 

テオとルーカスは和解し、1年後、マルクスの狩猟の資格が与えられるパーティがあった。

少しぎくしゃくはしているものの、みんなの顔に笑顔があった。

銃を手に狩猟に向かった仲間たち。

しかし、ルーカスが一人になった時、一発の銃声が。

逆光の向こうにルーカスに銃を構える者の姿があったー。

 

マッツ・ミケルセン、いいですよ。

この清廉なルーカスのイメージそのままです。

 

痴漢と一緒で、性犯罪の立証も無罪の立証も難しいです。

さらに小さな町で張られてしまった性犯罪者のレッテルもはがすのは難しそうです。

確信もないのに大勢につく人たち。

孤立しても、凛と立つことって、できるんだろうか。

いろいろ考えさせられる作品でした。