マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

そして父になる

2013-10-02 10:57:45 | 映画ー劇場鑑賞

ーそして父になるー

2013年 日本 120

監督=是枝裕和 キャスト=福山雅治(野々宮良多)尾野真千子(野々宮みどり)真木よう子(斎木ゆかり)リリー・フランキー(斎木雄大)二宮慶多(野々宮慶多)横升(斎木琉晴)風吹ジュン(野々宮のぶ子)國村隼(上山一至)樹木希林(石関里子)夏八木勲(野々宮良輔)

 

【解説】

『誰も知らない』などの是枝裕和監督が子どもの取り違えという出来事に遭遇した2組の家族を通して、愛や絆、家族といったテーマを感動的に描くドラマ。順調で幸せな人生を送ってきたものの、運命的な出来事をきっかけに苦悩し成長する主人公を、大河ドラマ「龍馬伝」や『ガリレオ』シリーズの福山雅治が演じる。共演は、尾野真千子や真木よう子をはじめ、リリー・フランキー、樹木希林、夏八木勲ら個性派が集結。予期しない巡り合わせに家族が何を思い、選択するのか注目。

 

【あらすじ】

申し分のない学歴や仕事、良き家庭を、自分の力で勝ち取ってきた良多(福山雅治)。順風満帆な人生を歩んできたが、ある日、6年間大切に育ててきた息子が病院内で他人の子どもと取り違えられていたことが判明する。血縁か、これまで過ごしてきた時間かという葛藤の中で、それぞれの家族が苦悩し……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

今年のカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した作品です。

10月のファーストデイ、話題作とあって観客はぎっしりでした。

 

いまさら赤ちゃん取り違え事件?と思いましたが、これには犯人がいました。

単純な取り違えではありません。

 

仕事中心のエリートサラリーマン、良多(福山雅治)とお受験に取り組んできた妻のみどり(尾野真千子)と長男の慶多(二宮慶多)。

みごと、私立の小学校に入学した。

でも、勝ち気ではない慶多に不満を感じている良多。

良多の目線で物語は進んで行きます。

 

☆ネタバレ

それでも慶多は父親を尊敬し、ピアノのレッスンにも取り組んでいた。

 

そんなある日、ふってわいたような赤ちゃん取り違えという病院からの知らせ。

にわかに受け入れられない。

病院関係者は「こういう場合100パーセント取り替えるので、お早い方が…」などという。

もう一方の当事者は群馬の小さな町で電気店を営む斎木雄大(リリー・フランキー)、ゆかり(真木よう子)夫婦。

息子の名前は琉晴、さらに弟と妹がいた。

 

良多は、会社の上司から「二人とも引き取れば?」とアドバイスを受け、その気になるが、最悪のタイミングで斉木家に伝えてしまう。

 

6年間育てた慶多を手放すのには葛藤がある。

(当たり前でしょ?!)

でも、疎遠になっている実の父(夏八木勲)に血のつながりの大切さを指摘された良多は、子供の交換に踏み切った。

 

慶多、琉晴二人の子供が見せる反応が面白かったです。

慶多は、父の言いつけを良く守り、そして斉木家にも居心地の良さを感じ、じっと耐えています。

その背中見てユカリは慶多をぎゅっと抱きしめました。

 

琉晴は、良多やみどりを「パパ、ママ」と呼ぶことを承諾しません。

そしてある日、隙を見て家出を。

 

ここで、良多は自分の幼い頃のことを思い出し、琉晴に共感し、ようやく自分で考えると言うことを始めるのです。

 

そうして初めて、慶多がいかに自分を慕ってくれていたか、自分はいかに至らない父親であったかと後悔し、慶多に会いに出かけるのでした。

 

隣の女性は後半泣きっぱなしでした。

劇場内は時折笑い声がおこったり、和やかな雰囲気に包まれていました。

 

でも、私は何か違和感がありました。

ひとつには、家庭同士は比べられないと言うことです。

親は、子供が産まれてから親になって行くわけです。

始めから親に生まれついているわけではない。

親もひとりひとり違えば、子供も違う。

そこで化学反応が起き、良い親の元でも、悪い親の元でも、子供は育っていくものだと思います。

世間的に良い子が育つか、悪い子になるか、それは神様にしかわからないことです。

親の心にあるのはただこの子が大切という思いだけです。

子供を愛するということ。

子育てマニュアルなんか絶対ありません。

 

良多は、自分の生育暦にコンプレックスがあって、子供と対峙するということに戸惑いを持っている親かもしれません。

いろんな人の発言に揺れ動いています。

 

カメラの中に慶多の心情を見たとき、初めて親としての感情が芽生えたのでしょうね。

よかったねー、と言う感じで、私は終わってしまいました。

でも、物語が始まってすぐの良多も決して悪い親なんかじゃなかったと私は思っています。

斉木さん夫婦も、特別いい親というわけでもない。

 

「凶悪」での演技がすごかったリリー・フランキーさん。

ここでは、のんびり父さんを演じていました。

共演のピエール瀧さんもちらりと出演していました。

 

この二つの家族が、親戚みたいに付き合って行けたらいいですね。

慶多と琉晴には「パパとママ」と「お父さんとお母さん」がいる、みたいな。

大人の事情より子供です。

子供が一番大切にされる社会になってほしいです。

この2家族のドラマは、ここから始まるんじゃないかな?

 


オアシス

2013-10-02 10:51:08 | 映画ーDVD

ーオアシスーOASIS

2002年 韓国 132

イ・チャンドン監督 ソル・ギョング(ホン・ジョンドゥ)ムン・ソリ(ハン・コンジュ)アン・ネサン(ホン・ジョンイル)チュ・グィジョン(ジョンイルの妻)リュ・スンワン(ホン・ジョンセ)ソン・ビョンホ(ハン・サンシク)

 

【解説】

世界的に高く評価された『ペパーミント・キャンディー』のイ・チャンドン監督が、演技派のソル・ギョングと同作で見い出した女優、ムン・ソリと再び組んだ、社会から疎外された男女の愛の物語。本作で肉体的にも精神的にも辛い役を見事に演じ、ベネチア国際映画祭新人俳優賞に輝いたムンと、最優秀監督賞を受賞した監督は韓国を代表する顔になった。現実とファンタジーのバランスも絶妙な究極の愛の姿に、しばし現実を忘れる。

 

【あらすじ】

前科三犯のジョンドゥ(ソル・ギョング)は、出所後自分がひき逃げした被害者の家族に謝罪に行き、重度脳性麻痺のコンジュ(ムン・ソリ)と出会う。2人は秘かに愛を育んでいくが、周りはそれを許さない。(シネマトゥデイ)

 

【感想】

一歩間違えば大顰蹙もののテーマを、ここまでの作品によく仕上げたなあ。

いまごろですが、イ・チャンドン監督すごいわ。

2002年のヴェネチア国際映画祭監督賞と新人俳優賞(ムン・ソリ)を受賞しています。

 

まず、前科三犯のジョンドゥ(ソル・ギョング)の描写から始まります。

どうも、出所したばかりの様子。

季節は冬なのに、半袖のシャツ。

この人がバスや電車に乗っていたら、ちょっと遠くに行きたい感じ。

落ち着かない態度。

軽い知能障害があるようだ。

自分が寒いのに、女性ものの服を買った。

 

尋ねたアパートには他人がいた。

家族はどこへ行ったんだろう。

無銭飲食で捕まり、弟が迎えにきた。

ようやく母と兄夫婦のいる家族の元へ。

買った服は母へのプレゼントだった。

明らかに迷惑顔の兄夫婦。

 

ジョンドゥは、兄に付き添われてラーメン屋に雇われた。

仕事の合間に、貧しいアパートを尋ねる。

その家には重度脳性麻痺のコンジュ(ムン・ソリ)がいた。

彼女は自分が交通事故で死なせてしまった人の娘だった。

 

コンジュの兄夫婦はコンジュの障害を利用して、障害者住宅に引っ越そうとしていた。

コンジュ一人を残して。

ジョンドゥに対しても憎しみをぶつける。

 

ジョンドゥは一人ぽっちになったコンジュを尋ねた。

抵抗のできないコンジュに対して、謝罪の気持ちが高じて、あらぬ方向へ行きそうになるジョンドゥ。

この人、強姦未遂でも服役していたそうです。

でも、危ない感じだった二人の関係が、徐々に心を開いて、最後には絆を感じる極上のラブストーリーになりました。

 

なんと言っても、コンジュを演じたムン・ソリの圧倒的な演技力の一言に尽きるんだけど、コンジュが鏡を反射させて光で遊んでいるシーンで、光を白い鳩に置き換えたり、割れたガラスの光を蝶に置き換えたりして、前半にファンタジーの種を仕込んでおいたことが、後で、コンジュが健常体で登場したり、クライマックスのオアシスのタペストリーから小僧や少年が出てきて踊るシーンにつながったんだと思いました。

憎い演出です。

二人は、弁解したり、説明したりすることがとても苦手。

それで誤解を生み、大騒動に発展するのだけど、ジョンドゥの無謀にも見える行動の意味は、コンジュだけには通じていました。

 

また刑務所に入ってしまったジョンドゥ。

二人の将来は語られていなかったけど、出所して結ばれたらいいなあ。

 

こういう映画を見ると、韓国映画恐るべしと思います。