マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

許されざる者

2013-10-08 10:27:15 | 映画ー劇場鑑賞

ー許されざる者ー

2013年 日本 135

監督=李相日 キャスト=渡辺謙(釜田十兵衛)柄本明(馬場金吾)柳楽優弥(沢田五郎)忽那汐里(なつめ)小池栄子(お梶)近藤芳正(秋山喜八)國村隼(北大路正春)滝藤賢一(姫路弥三郎)小澤征悦(堀田佐之助)三浦貴大(堀田卯之助)佐藤浩市(大石一蔵)

 

【解説】

クリント・イーストウッドが監督と主演を務め、アカデミー賞作品賞などに輝いた西部劇をリメイク。江戸幕府最強の刺客として恐れられた男が、やむを得ぬ事情から一度は捨てた刀を手にしたことから壮絶な戦いに身を投じていく姿を描く。メガホンを取るのは、『フラガール』『悪人』の李相日。ハリウッドでも活躍が目覚ましい渡辺謙をはじめ、、柄本明、佐藤浩市らキャストには実力派が結集。彼らの妙演に加え、開拓時代の西部から明治初期の北海道への舞台移行などの改変点にも注目。

 

【あらすじ】

1880年、開拓が進む江戸幕府崩壊後の北海道。人里離れた土地で子どもたちとひっそりと暮らす釜田十兵衛(渡辺謙)だが、その正体は徳川幕府の命を受けて志士たちを惨殺して回った刺客であった。幕末の京都で人斬(き)りとして名をとどろかせるも、幕府崩壊を機に各地を転々と流れ歩くようになり、五稜郭を舞台にした箱館戦争終結を境に新政府の追手をかわして失踪。それから10年あまり、十兵衛に刀を捨てさせる決意をさせた妻には先立たれ、経済的に困窮する日々を送っていた。そこから抜け出そうと、再び刀を手にする彼だが……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

この作品は1992年のアメリカ映画「許されざる者」(監督・主演クリント・イーストウッド、1992年度のアカデミー賞作品賞受賞)です。

そんな名作を「フラガール」「悪人」の李相日監督がリメイク。

時代は幕末、舞台は北海道です。

 

私はこの作品を見終わった後、オリジナルよりもテーマがより明確に観客に届いたと感じました。

人間と暴力、これも永遠のテーマですね。

暴力が理性を伴っているときは、まだ正当性もあるのでしょうが、暴力が理性から離れ、一人歩きをしたとき、怒りと恐怖に支配されて、非情で残酷な許されざる行為となるのでしょう。

 

かつては人斬りと恐れられた釜田十兵衛(渡辺謙)も、元をただせば幕府側の刺客であった。

明治政府に幕府が破れ、ただのお尋ね者となり、北海道へ逃げ延びて、追っ手を惨殺していたが、ある時アイヌの妻をめとり穏やかな生活を知った。

しかし、その妻も亡くして、今は子供二人と密かに荒れた農地しがみついて暮していた。

貧しく、希望も失われそうだった。

 

そこへ、昔の仲間の金吾(柄本明)が現れ、賞金稼ぎに誘う。

亡き妻に「人殺しはしない」と誓った十兵衛だったが、賞金につられて金吾の話に乗った。

途中、沢田五郎(柳楽優弥)が噂を聞きつけついてきた。

 

賞金は、宿場の女郎たちがお金を出し合ってかけていた。

事件の発端はこうだ。

開拓民の左之介(小澤征悦)卯之介(三浦貴大)兄弟が、女郎のなつめ(忽那汐里)とのいざこざで、なつめの顔に深い傷を負わせた。

兄弟はつかまり、警察所長の大石(佐藤浩市)がやってきて、宿屋の主人(近藤芳正)に馬6頭の賠償で折り合いを付けた。

がまんのならないのは女郎たち。

自分たちが傷つけられたのに、なんの罰もないというのに腹を立てた年増女郎のお梶(小池栄子)が仲間を集めて賞金をかけたのだった。

 

噂は大きくなり、金吾の耳には女郎を切り刻んだ大悪党として名前が届いた。

 

☆ネタバレ

宿場までの道中、新政府軍がアイヌの村で虐待したり、賞金稼ぎが宿場に来たときには、大石が正義を振りかざして暴力で追い払ったりという、暴力にまつわるエピソードがいくつも重なって描かれて行きます。

 

十兵衛の葛藤も描かれて行くのですが、結局、武器を持っていない卯之介を殺してしまったところから、金吾は脱落した。

五郎も、左之介を殺したのが生涯初の人殺しで、大きなショックを受けてしまった。

 

十兵衛は女郎から賞金を受け取って帰ろうとするが、なつめから「金吾が大石から折檻を受けたあげく、何も言わずに亡くなった」ということを聞き、自分一人で大石のところに殴り込みをかけるー。

 

考えてみればこの大石も、権力の中で暴力を使う、いけ好かない奴だけど、町の平和を守という職務を全うしているに過ぎない。

十兵衛は金吾の敵討ちのためだけに、最後の殺戮を繰り広げたのだろうか?

 

私は違うと思った。

十兵衛の中にあった非情な暴力、それは、妻に会うまでに十兵衛の体の中に兵隊としての訓練で叩き込まれたものが解き放たれたのではないかなと思いました。

そういうふうに訓練された人は、暴力が自分の業となって、スイッチが入ってしまうと殺人マシーンのようになってしまうんじゃないだろうか?

許されざる者とは、十兵衛のような、理性を通さず冷静に人を殺せる、つまりは殺人のために訓練された人なのではないでしょうか?

だから、十兵衛は子供たちの元に帰れないんだと思いました。

 

この辺がオリジナルとは違って、すごくストレートな暴力への反省という感じで、私には判りやすいなあと思われたところでした。

 

そして、五郎となつめが十兵衛の子供たちとともに、土と一緒に生きていこうと決心するところが、暴力の否定、答えなんだと思いました。

 

五郎を演じた柳楽優弥君。

立派な青年になりましたね。

これからの活躍が楽しみです。

 

シークレット・サンシャイン

2013-10-08 10:01:28 | 映画ーDVD

ーシークレット・サンシャインーSECRET SUNSHINE/密陽

2007年 韓国 142

イ・チャンドン監督 チョン・ドヨン(イ・シネ)ソン・ガンホ(キム・ジョンチャン)チョ・ヨンジン(パク・ドソプ)キム・ヨンジェ(イ・ミンギ)ソン・ジョンヨプ(ジュン)ソン・ミリム(チョンア)キム・ミヒャン(キム執事)イ・ユンヒ(カン長老)キム・ジョンス[俳優](シン社長)キム・ミギョン(洋品店の女主人)

 

【解説】

『オアシス』のイ・チャンドン監督が5年ぶりにメガホンを取った究極のラブストーリー。息子と地方都市に移り住み悲劇に見舞われるシングルマザーと、彼女をそっと見守る不器用な男の魂の救済を描く。チョン・ドヨンはこの作品で、2007年カンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞。共演の『グエムル -漢江の怪物-』のソン・ガンホとともに見事な演技をみせる。愛する者を失う悲しみ、そして淡々と語られる生きるということの不条理が胸に突き刺さる。

 

【あらすじ】

シネ(チョン・ドヨン)は事故で亡くなった夫の故郷で再出発するため、息子(ソン・ジョンヨプ)とソウルからミリャンに引っ越して来る。車が途中で故障しレッカー車を呼ぶと、自動車修理工場を営むジョンチャン(ソン・ガンホ)が現れる。彼の好意でシネは無事にピアノ教室も開き、順調に新生活を送っていたが、ある日息子が誘拐され……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

イ・チャンドン監督の「オアシス」がとてもよかったので、続けて借りて見ました。

ただ日常を追いかけている感じで話が進み、油断しているとテーマが唐突な感じで2転3転します。

そのたびに驚きがあるのですが、それがいいのか、悪いのか…。

家で見ていると、集中力が落ちて行くので、これは劇場で緊張の中で見た方がいい作品かもしれません。

 

シネ(チョン・ドヨン)は夫を亡くして、夫の故郷・密陽(ミリョン)へ息子とともに引っ越してくる。

途中車が故障して、ミリョンの修理工場からジョンチャン(ソン・ガンホ)の運転するレッカー車が来た。

 

思えば、最初からシネの態度は変わっている。

初めて来た町の初めて入った洋服屋で、「インテリアを変えたら」などと女主人に向かって行ったりする。

少し感じ悪い。

 

自宅でピアノ教室を開くが、お向かいの薬屋で教会に来ないかと誘われると、神を信じないことをはっきり言ったりする。

そして、保険金で自分は裕福だということを周りに言いふらす。

 

夜遊びして帰ると、息子が誘拐されていた。

気が狂ったように息子を捜すシネ。

息子は塾の校長に誘拐され、殺されていた。

 

魂を抜かれたようなシネ。

本当はそんなに裕福でもなく、結婚生活もうまくいっていなかったことがわかる。

 

なにもかもなくしたシネは、薬局の夫婦に薦められキリスト教に入信し、ここで救いを得る。

そして、自分の息子を奪った犯人を許すために刑務所で接見をする。

 

シネが赦しを与える前に、犯人はキリスト教に入信して、神から許されたと言う。

 

自分だけが許すことができるのに、先に許してしまう神を信じられなくなったシネは荒れ狂い、薬局の主人を誘惑し、神に挑戦するが、それも果たすことができず、とうとう精神病院へ。

 

そういうシネのそばでずっと見守り続けるジョンチャン。

シネは、このジョンチャンに救われて行くのでしょう。

 

シークレット・サンシャインは、ジョンチャンのまなざしなのかもしれません。

 

そう思うと、ジョンチャンの描き方が足りないんじゃないかなあ?

神を簡単に信じたり、簡単に疑ったり、シネの精神は夫が死んだときから蝕まれていたのかもしれないと思いました。

 


夢売るふたり

2013-10-08 09:53:51 | 映画ーDVD

ー夢売るふたりー

2012年 日本 137

監督=西川美和 松たか子(市澤里子)阿部サダヲ(市澤貫也)田中麗奈(棚橋咲月)鈴木砂羽(睦島玲子)安藤玉恵(太田紀代)江原由夏(皆川ひとみ)木村多江(木下滝子)やべきょうすけ(岡山晃一郎)大堀こういち(中野健一)中村靖日(白井)山中崇(日野洋太)村岡希美(松山和子)猫背椿(園部ますみ)倉科カナ(佐伯綾芽)伊勢谷友介(太田治郎)古舘寛治(東山義徳)小林勝也(金山寿夫)香川照之(外ノ池俊作/外ノ池明浩)笑福亭鶴瓶(堂島哲治)

 

【解説】

『ディア・ドクター』などで高評価を得た西川美和監督がメガホンを取り、松たか子と阿部サダヲが結婚詐欺に手を染める夫婦を演じる異色のラブ・ストーリー。小料理屋を営む夫婦が火事で全てを失ったことから始めた結婚詐欺を通して、複雑で深遠な男と女の関係を描き出す。主演の二人に加えて、結婚詐欺に引っ掛かる女たちを演じる田中麗奈や鈴木砂羽、木村多江のほか、以前西川作品に出演した香川照之や笑福亭鶴瓶などが共演。うそをテーマに人間の業をえぐり出す西川監督らしいストーリーと、豪華キャストによる演技に期待が持てる。

 

【あらすじ】

東京の片隅で小料理屋を営む貫也(阿部サダヲ)と妻の里子(松たか子)。店は小さいながらも順風満帆だったが、火事で全てを失ってしまう。ある日、貫也が常連客と一夜を共にし、すぐに里子の知るところとなるが、里子は結婚詐欺で金をだまし取ることを考案する。結婚願望の強いOLなど寂しい女たちの心の隙につけ込んで、店を再開するための資金を稼ぐ二人。しかし、夫婦の関係に影が差し始め……(シネマトゥデイ)

 

【感想】

西川美和監督作品は結構好きで、注目してきました。

今回は、松たか子、阿部サダヲが夫婦というキャスト。

もっとコメディかと思っていましたが、テーマは結婚詐欺。

 

それが現実的なのかどうかという疑問が、私の中にはあり、今までの作品のようにはお気に入りとはなりませんでした。

 

東京の下町で、夫婦で居酒屋を営む貫也(阿部サダヲ)と妻の里子(松たか子)。

貫也が目を離した隙に、火事になり、二人はすべてを失ってしまう。

 

里子はラーメン屋で働きながら、再建を目指すが、貫也の方は新しい仕事場になじめず、すさんでいく。

 

ある時、貫也は元常連客の玲子に出会い、一夜を共にする。

玲子は愛人を事故で失い、愛人の家族から手切れ金として300万円をもらってやけになっていた。

玲子はそのお金を貫也に渡す。

 

貫也は大喜びで里子に報告した。

玲子からとは言わなかったが。

でも、里子は貫也の嘘を見抜き、ある計画を立てた。

 

☆ネタバレ

貫也と里子は夫婦ということを隠し、小料理屋で働き出した。

里子は女性客を物色し、貫也に近づかせ、お金を目的に付き合わせた。

 

この計画は思いのほかうまくいった。

ばれそうになると職場を変えた。

 

しかし、夢は広がり、必要な資金は膨れ上がった。

 

二人の関係は微妙に歪んで行き、最終的には、貫也は子連れの滝子(木村多江)の元へ。

そして、事件が起きてしまう。

 

里子に感情移入できたら、カタルシスも得やすいと思うけど、西川監督はあえて里子をいい女には描かない。

女性からは嫌われるタイプじゃないかなあ。

あまりにリアル。

嫉妬から札束を焼くシーンは鬼気迫っていた。

それでも、途中で止めて計画を進めようとする。

このへんが怖かったです。

 

それに比べて貫也は単純で、こちらも好もしい男性には見えない。

でもかわいげがあるし、彼なりの真実を貫こうとするラストはなかなか良かったと思いました。

 

里子は、計画の発端となった玲子にお金を倍返し。

里子は貫也とは別れないで、ふたりの夢を追い続けるのだろうなあ。

それも、なんとなく辛い感じのラストでした。