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★科学技術ニュース★良先端科学技術大学院大学、遺伝子の優劣関係を決める新たな仕組みを解明

2017-01-06 10:44:22 |    生物・医学

 奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科の和田七夕子助教、高山誠司客員教授(現東京大学大学院農学生命科学研究科教授)らの研究グループは、農研機構、東北大学、大阪教育大学、神戸大学との共同研究により、どちらか片方の親の遺伝子の性質だけが子に現れるというメンデルの「優性の法則」として知られる現象について、複雑な優劣関係を決定する新たな仕組みを世界で初めて明らかにした。

 親から子へと遺伝子が受け継がれる遺伝現象において、片方の親の遺伝子の性質のみが子に現れる場合が多く見られる。これはメンデルの「優性の法則」として古くから知られており、性質として現れる遺伝子を優性遺伝子、発現しない方を劣性遺伝子と呼ぶ。

 これまで劣性遺伝子は一般に機能を失っているために性質が現れないと考えられてきたが、同研究グループは、優性の遺伝子から作られる小さな分子(低分子RNA)が、劣性の遺伝子の働きを阻害するという全く異なる仕組みを発見した。

 さらに今回新たに、この低分子RNAを構成する塩基(核酸塩基)の配列が変化することによって、特定の遺伝子同士で複雑な優劣関係が生み出されることを明らかにした。

 約100年前、遺伝子間の優劣性を決定する因子が進化する可能性について遺伝学者間で激しい論争がなされたが、今回、その時に想定された仮説の因子が低分子RNAであり、それが進化することを証明した。

 今回の研究は、遺伝子の優劣関係を制御する新たな仕組みを明らかにしただけでなく、有用な遺伝子を働かせたり、有害な遺伝子の働きを抑えたりする技術へと結びつく可能性があり、植物育種への応用が期待できる。


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