kabu達人への道

マスコミで深く触れられることのない投資の裏側や
投資にあたっての疑問など赴くままに綴っていきます。

価格カルテルの背景

2012-06-15 09:15:40 | 日記
昨日の経済紙によると公正取引委員会はベアリング大手による価格カル
テル容疑でベアリング3社(日本精工、NTN、不二越)を告発することを決
めたというニュースを取り上げています。カルテル違反での摘発は以前に
報道されていましたし3社の株価は年初来安値をわずかに上回る水準だっ
たために株価の下落は限定的でした。もっともカルテル違反容疑では欧州
でも昨年10月に摘発を受けており白黒はまだついていません。

日本と違って欧州の課徴金は桁違いに巨額になることもあるようですから
注意が必要です。この手ネガティブなニュースが株価のある程度の戻りを
試した後、出てくるケースも多いので当該銘柄の投資にあたっては欧州の
カルテル違反の結果がまだ出ていないということは頭に入れておく必要が
あります。

昨年にはベアリングだけでなくワイヤーハーネスでも米国のカルテル違反で
摘発され古河電工などは巨額の賠償金を払っています。確か液晶パネルで
も摘発事件はあったと記憶しています。一度発覚すれば巨額の賠償金と企業
業績や企業自体のイメージダウンに繋がります。それでも価格カルテルの違
反が立て続けに起こるのは何故なのでしょうか。

この3品目に共通しているのは製品の差別化が難しくメーカーの価格競争が
激しいということがあります。ユーザーにとっては競争激化で安い製品が入手
出来ることは歓迎ですが、メーカーにとっては死活問題です。もちろん株主に
とっても過当競争で利益が減れば株価の下落要因になりますからネガティブ
な材料です。

十分な利益を上げられない企業は研究開発費も多く確保できず結果として
付加価値の高い製品開発が滞り一層企業の利益の減少を招くという負のス
パイラルに陥り易いものです。アップルやサムスンそれにインテルなど世界
の製造業で高収益を上げている企業はいずれも主力事業で圧倒的な市場
シェアと高い利益率を維持しています。

カルテル違反で摘発された企業の製品はほとんどが付加価値の低い汎用
品であるという共通した問題を抱えています。多くの日本の製造業の競争
力の低下の原因は円高だけでなくメーカー乱立で過当競争体質の脱却が
出来ないことも背景にあります。

製造業の構造改革と再編は待ったなしです。多くの製造業にとって欧州財政
危機が目先小康状態になり為替が多少円安に振れても一時的な利益回復
にしか過ぎません。液晶テレビの不振から大幅赤字に陥った家電3社は競争
力を失った多くの日本製造業の象徴的な存在であって多くの業種で共通する
根の深い問題なのです。

従来の政策の多少の軌道修正だけではかつての競争力を取り戻すことは
出来ません。市場が驚くようなアッという業界再編でも起こらない限り外国
人投資家も世界の市場よりも多くの資金を振り向けることは無いでしょう。
株価低迷が欧州財政危機だけが原因でないところに問題の根の深さはあり
ます。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« スペイン銀行危機 | トップ | 化学業界 »

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事