kabu達人への道

マスコミで深く触れられることのない投資の裏側や
投資にあたっての疑問など赴くままに綴っていきます。

自社株買いへの警告

2017-01-31 08:25:21 | 日記
キーエンス、信越化学、ファナックこれら銘柄に共通するものは
何でしょうか。市場占有率の高い製品群を抱え高収益であるこ
と。自己資本比率が高く無借金経営であること。手持ち現金が
豊富であること。いずれの銘柄ともかなり高株価であることです。

2年前の今頃東京市場では株主還元圧力が吹き荒れていました。
欧米企業に比べて低い配当性向、現金を溜め込み内部留保が
厚く結果としてROEも欧米企業に比べて低く資本効率が低いと
いうことが問題視されました。政府も後押しする株主還元の強化
で自社株買いや大幅な増配要求が起こりました。

2015年には自社株買いが前年の3兆円弱から5兆円弱に膨らみ
市場推計では2016年も15年と同規模の自社株買いがあったよう
です。それに加え2015年度の配当金総額は初めて10兆円を越え
10兆8000億円となり14年度(9兆7000億円)よりも1割弱増えまし
た。おそらくは2016年度は11兆円を越えたと予想されます。株主
重視の方針は多くの日本企業に広がりました。

それまで株主還元とは距離をおいていた企業も自社株買いや増
配に踏み切り株主還元に消極的な企業は悪者扱いされるような
風潮でした。会社が利益を増やして株主に還元するのは歓迎す
べきことです。しかし優先順位としてはまず成長投資に使い残っ
たお金は増配とか自社株買いに回すというのが本筋を考えてい
る経営者もいます。

株主還元も必要ですが企業は成長投資を行い将来にわたって
利益を増やす結果として配当原資が増え増配も出来るというの
がやはり王道です。成長投資を疎かにし株主還元で短期的に
投資家の支持を得るということでは経営者として疑問符が付き
ます。猫も杓子も株主還元という風潮で本末転倒な資本政策を
取ってしまった企業もあったようです。

冒頭の3社は自社株買いを行いませんでした。増配には踏み切
りましたが収益力から考えれば限定的でした。当時は多くの現金
を抱え自社株買いへの期待は高かったようですが経営者の考え
がまず成長投資ありきという明確な方針があったようです。株主
還元に消極的な企業はそれだけで当時は市場から批判の声が
あがりました。

稼いだお金をどのように活用するかは経営者の重要な判断です。
自社株買いや大幅な増配に踏み切るのか次の成長投資に使う
のがどちらが長い目でみたら株主価値を引き上げられるのか各
々の企業によっては事情は違うでしょう。

あれから2年後市場からの評価である株価はキーエンスと信越
化学は今年10年来の高値を更新しました。ファナックだけはスマ
ホ関連需要を囃して2015年に大幅上昇しただけにまた高値更新
までは距離がありますが一時よりは回復しています。

キャノンは2000年代初頭日本を代表する超優良企業でした。事
務機とカメラのブランド力と競争力は強く高い利益率を誇ってい
ました。しかしどんな事業にも成長の陰りは訪れます。高い輸出
比率はリーマンショックや欧州通貨危機などで大幅な円高の洗
礼を受けました。主力製品の成熟化もありかつての高収益体質
は昔の話になりました。

それでもキャノンは強力な財務基盤を背景に過去10年近く配当
性向6割以上という高水準な配当を実施してきました。それに加
え過去10年間で1兆5000億円の自社株買いを実施しました。今
では自社が保有比率18%弱で筆頭株主です。株主還元では超
優等生だったキャノンですが、、あだリーマンショック前の高値の
58%の水準です。

キャノンの経営陣が行うべきだったのは身の丈を越えた株主還
元ではなく成熟した主力事業に代わってM&Aなどを駆使した新
たな事業を育成することだったのでは無いのでしょうか。2015年
には監視カメラ大手を2016年には東芝から医療子会社を合計
1兆円で買収しましたが、自社株買いに当てた1兆5000億円を早
い時点で別のM&Aに使っていれば違った結果になったかもしれ
ません。

勿論巨額なM&Aが成長の原動力になるとは限りません。場合に
よっては業績の足を引っ張る可能性もあります。しかしリスクを取
らなければリターンも得られません。本業の収益力が近い将来低
下すると言う危機感があったらリスクを積極的に取るべきです。
キャノンのケースは自社株買いに熱心な企業が必ずしも中長期的
な株高に繋がらないという事実です。
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日米通商問題

2017-01-30 07:25:44 | 日記
日米首脳会談が2月10日に開かれることが正式に決まりました。日本
政府として現在最も気がかりな点は通商問題です。雇用増を公約に
挙げている雇用を守り増やすためにトランプ大統領が日米貿易不均
衡是正をどこまで本気で考えているかです。一連の報道からは対日
貿易赤字に占める割合の大きな自動車分野が槍玉にあがっている
ことは間違いないようです。

日本の輸入自動車に対する関税はゼロです。米国は乗用車に2.5%
トラックには25%という高い関税をかけています。完成車だけでなく
自動車部品にも乗用車と同等の関税を課しています。関税に関する
限り自動車分野では日本市場のほうが開かれています。

トランプ大統領は関税率ではなく非関税障壁に問題があると発言して
います。もっともドイツからの輸入車の増加の一途を辿っていることか
らトランプ大統領の指摘には根拠が薄いとの見方が多いようです。選
挙期間中も当選後も明確な根拠もなく様々なことを発信しているトラン
プ大統領にどこまで正論が通用するのかは分かりません。

トップ会談で米国側はポストTTPとして二国間貿易協定を迫ってくるの
はほぼ間違いないでしょう。米国が輸出拡大の筆頭に考えている農業
分野に対して日本側に大幅譲歩を要求するのは目に見えています。
農産物自由化に対してはTTP以上の譲歩は譲れない日本としてはハ
ードな交渉になりそうですから本音では米国との二国間交渉は避けた
いところです。

TTP離脱だけでなくメキシコとのFTA見直しを真っ先に打ち出してきた
ことからも分かるとおりこれまで譲歩してきた不公平な貿易ルールの
修正を実現することに執念を燃やしているトランプ大統領は自国に有
利に通商交渉をまとめようとするでしょう。だからといってトランプ政権
に表立って対立するのは得策ではないと安倍政権も考えているので
しょう。まずは二国間交渉のテーブルに着く用意はあるということを示
し米国の出方を探るというのが日本政府の方針のようです。

首脳会談が行われても直ぐに物事は動きませんが、今年の株式市場
では日米通商問題は大きな課題になりそうです。その行方によっては
為替市場に大きな影響を与え国内景気をも左右します。今年の日本
株のシナリオも変更する必要があるかもしれません。日米貿易戦争に
発展するという悲観的な見方になれば日本株は厳しい局面に立たされ
るでしょうし反対に何らかの解決策が見つかれば市場は安心して上昇
に弾みがつくでしょう。通商問題は今年の株価を左右しそうです。
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メキシコに壁ドン

2017-01-27 14:55:40 | 日記
27日の東京市場は3連騰し1万9467円(65円高)で終わりました。
来週は5日につけた年初来高値1万9615円の更新そして2万円
回復出来るかどうかの重要な週になるかもしれません。月末月
初で重要な経済指標の発表もありますから上にも下にも価格変
動が大きくなるかもしれません。

メキシコのペニャニエト大統領は26日今月31日に予定していたトラ
ンプ米大統領との会談を中止すると発表しました。25日にトランプ
大統領がメキシコとの間に壁を建設するという大統領令に署名して
全額をメキシコに支払わせるとの発言が会談中止の原因です。

ペニャニエト大統領の支持率は2割を切って政権基盤は脆弱な状
況ですから到底トランプ大統領の要求の飲めない話です。メキシコ
との貿易戦争の落としどころがどこに落ち着くのか日本の自動車業
界への影響も大きそうですからまだまだ目が離せない状況です。

皮肉なことにトランプ大統領のメキシコ叩きで当選から直近までに
11%もドル高/ペソ安が進行しました。現状では通貨安によってメキ
シコからの対米輸出はますます有利になっています。米国の六分
の一とも言われる賃金水準を考えても本音では米国の自動車メー
カーもメキシコでの現地生産を続けたいと考えているようです。

日米とも株高の陰に隠れた格好ですが保護主義への強まりは今後
の火種となりそうです。世界の共通認識は自由貿易体制の堅持こそ
世界経済にとって多くのメリットを生むというのが定説です。国内の
雇用を守るという政策は重要ですが、今回のような力づくの政策に
は批判が大多数です。

米国の雇用、米国の経済がよければ他国のことはどうでも良いとい
う風潮は必ず米国に跳ね返ってきます。大統領の暴走を与党の共
和党がどこまで押さえられるのか問われそうです。大統領権限だけ
では減税も税制支出を伴なうインフラ投資の拡大も実現できません。
トランプ大統領が掲げた政策を実行するためには議会で多数を占め
る共和の協力が不可欠です。

メキシコへの壁建設を早速実行に移すことになったトランプ大統領
の暴走はこのまま続くのでしょうか。米国の成長率の引き上げに繋
がる大幅減税や規制緩和、インフラ投資といった政策の順位が優先
出来るのかどうかで世界の金融市場の姿も変わりそうです。

28日29日の更新はお休みします。
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三菱にあって東芝に無かったモノ

2017-01-27 07:27:40 | 日記
26日の東京市場は344円高の1万9402円と大幅に上昇しました。NY
市場が初の2万ドルの大台を達成しましたが、円相場が113円前半
だったことから寄り付き前の予想ではシカゴCMEの終値近辺の1万
9200円前後で推移するとの見方もありました。やはり一度は諦めか
けた米国株の2万ドル達成が日本株の背中を押したようです。

売買代金も2兆7423億円と膨らみました。先週は1039億円の売り越
しに転じた海外投資家が再び日本株を買い始めたのかもしれません。
27日の予想以上の上昇はそんな期待を持たせました。今後の展開
も海外投資家の買いが続くかどうかがやはり鍵を握っています。

市場には円安進行を伴なわない大幅高だったことから為替離れした
日本株に再び2万円台回復への期待感が高まったようです。26日の
動きは尻上がりだった事から期待感が高まるのは頷けます。しかし
日本株の振幅の大きさは以前から指摘されていましたから344円高
を果たして額面通りに受け取ってよいのか見方は分れるようです。
2万円を前に慎重派と強気派で今後も相場の変動は大きくなりそう
です。

1月第2週以降日本株は週前半の大幅に下げ後半に盛り返す動き
を今週で3週間続けています。ということは週明け以降上昇が続くか
どうかが2万円回復の鍵になりそうです。NY市場が大台の2万円達
成でしばらくは上値を追うとしても次第に警戒感が強まり揉み合い
になると日本株の上値追いにもブレーキがかかるかもしれません。
また突然どんな発言が飛び出すかもしれないトランプ大統領から再
保護主義やドル高に対する呟きが出てくるとか懸念材料が残ってい
ることに変わりはありません。

26日には重電3社の優等生と見られている三菱電機が10年来の
高値を更新しました。三菱電機は総合重電に分類されていますが
リーマンショック後いち早く電話端末などのデジタル製品から撤退
し得意分野のFA機器に経営資源を集中させました。エアコンなど
の家電製品も手がけていますが中身は設備投資関連銘柄です。

一方昨年をなぞる様に今年も巨額の損失が表面化した東芝は会
社存続の危機とも呼べるような状況です。株価は年明け以降急落
し26日の終値はリーマン前の高値の27%の水準です。三菱電機
の株主にとっては我慢して持ち続けていれば報われた格好です。

一方東芝は株主の期待を裏切り続けたことになります。リーマンシ
ョック後の経済状況は同じなのに両社の時価総額は月とスッポンほ
どに差が付いてしまいました。医療事業と半導体事業は成功した分
野でしたが、PCや液晶テレビなどのデジタル製品で躓き社運をかけ
て巨額買収に踏み切った原子力事業は大きなお荷物になり結局巨
額損失穴埋めのために優良事業を切り売りする羽目になりました。

東芝には福島原発事故で原子力事業に大きな逆風が吹いたという
不運はありましたが、米原子力企業のWH買収時にはかなり割高な
買い物という指摘がありました。結局背伸びした巨額買収が命取り
になりました。企業としてリスク管理に問題があったということは否
定できません。経営判断の間違いは企業の存続の危機に繋がる場
合もあります。それだけ経営者の責任は重大です。

経営者とは自社の置かれている収益力、財務状況などを的確に判
断して最善の策を打つ。もし綻びが生じれば迅速に対策を打つ決断
力も必要です。危機対応が後手に回って躓いた企業の運命は悲し
いものです。自社の得意分野に磨きをかけた三菱電機と身の丈以
上の積極策を取ってしまった東芝の歴代の経営者の資質が今日の
差を生んだようです。
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トヨタに逆風、ソフトバンクに追い風

2017-01-26 08:14:51 | 日記
25日の東京市場は3営業日ぶりに大きく反発して1万9000円を回復
しました。米国株の上昇と長期金利上昇を好感して海外市場で円
相場が113円後半まで下落したことが日本株反発の背景になった
ようです。日経平均が1万9000円を大きく下回らず日柄調整に進め
るのかどうかが今後のポイントになりそうです。

トランプ政権での日本に対する風当たりは思いの他強いようです。
年明け以降の発言からは最大の貿易赤字国である中国よりも矛先
は日本に向かっているようにさえ感じます。そして日本の貿易黒字の
象徴的な存在が自動車業界です。80年代の日米自動車摩擦を経て
日本の自動車業界は現地生産に大きく舵を切りました。

最新の統計によると米国での日本車の販売台数は約660万台だが
すでに北米での現地生産が進み日本からの輸出は約160万台にと
どまっています。80年代当時と比べて格段に現地化が進んでいま
す。それでもトランプ大統領からの批判が収まらないのは700億ドル
の対日貿易赤字の7割が自動車関連だという事実です。

国際競争力の強い自動車業界はどうしても批判の矢面に立たされ
やすいという事情があります。製造業の地盤沈下が進んだ米国で
も自動車産業は米国製造業の象徴的な分野です。雇用を沢山生
み出す自動車産業はトランプ大統領が掲げる雇用増加政策の象
徴とも言えます。米国自動車業界の最大のライバルであるトヨタに
風当たりが強くなるのも代表企業の宿命のようなものです。

一方対米貿易赤字とは直接関係性が薄いソフトバンクはトランプ
風にうまく乗った日本企業の代表のようなものです。12月初旬に
トランプ氏と面談し米国に今後4年間で500億ドルと5万人の雇用
増を約束しました。年明け1月にはソフトバンクの投資先であるア
リババのジャック・マー会長今後5年間でアメリカに100万人の雇
用創出を約束しました。

敵・味方をはっきり区別して対応するトランプ流の前ではいくらこち
らから正論を語っても事態は改善しません。異端の大統領にはき
っそれなりの接し方があるのでしょう。当面はトヨタには逆風がソ
フトバンクには追い風が吹く状況は続きそうな雲行きです。日本株
がトランプ大統領との間合いを見極めるのにはもう少し時間が必要
です。

今日の東京市場はNY市場が初の2万ドルを突破したことから買い
優勢で始まりそうです。ただし円相場が113円前半ですから上値追
いも限定的かもしれません。やはり大統領筋からのドル高牽制発
言が気になるところです。また2万ドルを突破したNY市場もテクニ
カル面から当面の上値は大きく無いとの指摘もあります。東京市場
が2万円目指して上昇する場面はしばらく後になるかもしれません。
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