キーエンス、信越化学、ファナックこれら銘柄に共通するものは
何でしょうか。市場占有率の高い製品群を抱え高収益であるこ
と。自己資本比率が高く無借金経営であること。手持ち現金が
豊富であること。いずれの銘柄ともかなり高株価であることです。
2年前の今頃東京市場では株主還元圧力が吹き荒れていました。
欧米企業に比べて低い配当性向、現金を溜め込み内部留保が
厚く結果としてROEも欧米企業に比べて低く資本効率が低いと
いうことが問題視されました。政府も後押しする株主還元の強化
で自社株買いや大幅な増配要求が起こりました。
2015年には自社株買いが前年の3兆円弱から5兆円弱に膨らみ
市場推計では2016年も15年と同規模の自社株買いがあったよう
です。それに加え2015年度の配当金総額は初めて10兆円を越え
10兆8000億円となり14年度(9兆7000億円)よりも1割弱増えまし
た。おそらくは2016年度は11兆円を越えたと予想されます。株主
重視の方針は多くの日本企業に広がりました。
それまで株主還元とは距離をおいていた企業も自社株買いや増
配に踏み切り株主還元に消極的な企業は悪者扱いされるような
風潮でした。会社が利益を増やして株主に還元するのは歓迎す
べきことです。しかし優先順位としてはまず成長投資に使い残っ
たお金は増配とか自社株買いに回すというのが本筋を考えてい
る経営者もいます。
株主還元も必要ですが企業は成長投資を行い将来にわたって
利益を増やす結果として配当原資が増え増配も出来るというの
がやはり王道です。成長投資を疎かにし株主還元で短期的に
投資家の支持を得るということでは経営者として疑問符が付き
ます。猫も杓子も株主還元という風潮で本末転倒な資本政策を
取ってしまった企業もあったようです。
冒頭の3社は自社株買いを行いませんでした。増配には踏み切
りましたが収益力から考えれば限定的でした。当時は多くの現金
を抱え自社株買いへの期待は高かったようですが経営者の考え
がまず成長投資ありきという明確な方針があったようです。株主
還元に消極的な企業はそれだけで当時は市場から批判の声が
あがりました。
稼いだお金をどのように活用するかは経営者の重要な判断です。
自社株買いや大幅な増配に踏み切るのか次の成長投資に使う
のがどちらが長い目でみたら株主価値を引き上げられるのか各
々の企業によっては事情は違うでしょう。
あれから2年後市場からの評価である株価はキーエンスと信越
化学は今年10年来の高値を更新しました。ファナックだけはスマ
ホ関連需要を囃して2015年に大幅上昇しただけにまた高値更新
までは距離がありますが一時よりは回復しています。
キャノンは2000年代初頭日本を代表する超優良企業でした。事
務機とカメラのブランド力と競争力は強く高い利益率を誇ってい
ました。しかしどんな事業にも成長の陰りは訪れます。高い輸出
比率はリーマンショックや欧州通貨危機などで大幅な円高の洗
礼を受けました。主力製品の成熟化もありかつての高収益体質
は昔の話になりました。
それでもキャノンは強力な財務基盤を背景に過去10年近く配当
性向6割以上という高水準な配当を実施してきました。それに加
え過去10年間で1兆5000億円の自社株買いを実施しました。今
では自社が保有比率18%弱で筆頭株主です。株主還元では超
優等生だったキャノンですが、、あだリーマンショック前の高値の
58%の水準です。
キャノンの経営陣が行うべきだったのは身の丈を越えた株主還
元ではなく成熟した主力事業に代わってM&Aなどを駆使した新
たな事業を育成することだったのでは無いのでしょうか。2015年
には監視カメラ大手を2016年には東芝から医療子会社を合計
1兆円で買収しましたが、自社株買いに当てた1兆5000億円を早
い時点で別のM&Aに使っていれば違った結果になったかもしれ
ません。
勿論巨額なM&Aが成長の原動力になるとは限りません。場合に
よっては業績の足を引っ張る可能性もあります。しかしリスクを取
らなければリターンも得られません。本業の収益力が近い将来低
下すると言う危機感があったらリスクを積極的に取るべきです。
キャノンのケースは自社株買いに熱心な企業が必ずしも中長期的
な株高に繋がらないという事実です。
何でしょうか。市場占有率の高い製品群を抱え高収益であるこ
と。自己資本比率が高く無借金経営であること。手持ち現金が
豊富であること。いずれの銘柄ともかなり高株価であることです。
2年前の今頃東京市場では株主還元圧力が吹き荒れていました。
欧米企業に比べて低い配当性向、現金を溜め込み内部留保が
厚く結果としてROEも欧米企業に比べて低く資本効率が低いと
いうことが問題視されました。政府も後押しする株主還元の強化
で自社株買いや大幅な増配要求が起こりました。
2015年には自社株買いが前年の3兆円弱から5兆円弱に膨らみ
市場推計では2016年も15年と同規模の自社株買いがあったよう
です。それに加え2015年度の配当金総額は初めて10兆円を越え
10兆8000億円となり14年度(9兆7000億円)よりも1割弱増えまし
た。おそらくは2016年度は11兆円を越えたと予想されます。株主
重視の方針は多くの日本企業に広がりました。
それまで株主還元とは距離をおいていた企業も自社株買いや増
配に踏み切り株主還元に消極的な企業は悪者扱いされるような
風潮でした。会社が利益を増やして株主に還元するのは歓迎す
べきことです。しかし優先順位としてはまず成長投資に使い残っ
たお金は増配とか自社株買いに回すというのが本筋を考えてい
る経営者もいます。
株主還元も必要ですが企業は成長投資を行い将来にわたって
利益を増やす結果として配当原資が増え増配も出来るというの
がやはり王道です。成長投資を疎かにし株主還元で短期的に
投資家の支持を得るということでは経営者として疑問符が付き
ます。猫も杓子も株主還元という風潮で本末転倒な資本政策を
取ってしまった企業もあったようです。
冒頭の3社は自社株買いを行いませんでした。増配には踏み切
りましたが収益力から考えれば限定的でした。当時は多くの現金
を抱え自社株買いへの期待は高かったようですが経営者の考え
がまず成長投資ありきという明確な方針があったようです。株主
還元に消極的な企業はそれだけで当時は市場から批判の声が
あがりました。
稼いだお金をどのように活用するかは経営者の重要な判断です。
自社株買いや大幅な増配に踏み切るのか次の成長投資に使う
のがどちらが長い目でみたら株主価値を引き上げられるのか各
々の企業によっては事情は違うでしょう。
あれから2年後市場からの評価である株価はキーエンスと信越
化学は今年10年来の高値を更新しました。ファナックだけはスマ
ホ関連需要を囃して2015年に大幅上昇しただけにまた高値更新
までは距離がありますが一時よりは回復しています。
キャノンは2000年代初頭日本を代表する超優良企業でした。事
務機とカメラのブランド力と競争力は強く高い利益率を誇ってい
ました。しかしどんな事業にも成長の陰りは訪れます。高い輸出
比率はリーマンショックや欧州通貨危機などで大幅な円高の洗
礼を受けました。主力製品の成熟化もありかつての高収益体質
は昔の話になりました。
それでもキャノンは強力な財務基盤を背景に過去10年近く配当
性向6割以上という高水準な配当を実施してきました。それに加
え過去10年間で1兆5000億円の自社株買いを実施しました。今
では自社が保有比率18%弱で筆頭株主です。株主還元では超
優等生だったキャノンですが、、あだリーマンショック前の高値の
58%の水準です。
キャノンの経営陣が行うべきだったのは身の丈を越えた株主還
元ではなく成熟した主力事業に代わってM&Aなどを駆使した新
たな事業を育成することだったのでは無いのでしょうか。2015年
には監視カメラ大手を2016年には東芝から医療子会社を合計
1兆円で買収しましたが、自社株買いに当てた1兆5000億円を早
い時点で別のM&Aに使っていれば違った結果になったかもしれ
ません。
勿論巨額なM&Aが成長の原動力になるとは限りません。場合に
よっては業績の足を引っ張る可能性もあります。しかしリスクを取
らなければリターンも得られません。本業の収益力が近い将来低
下すると言う危機感があったらリスクを積極的に取るべきです。
キャノンのケースは自社株買いに熱心な企業が必ずしも中長期的
な株高に繋がらないという事実です。