kabu達人への道

マスコミで深く触れられることのない投資の裏側や
投資にあたっての疑問など赴くままに綴っていきます。

変わる業界環境(2)

2019-09-30 07:57:08 | 日記
個人投資家が資産形成として個別銘柄の長期投資を考えるなら少々
効率が悪くても分散投資は必須です。JDIが新規公開時には少なくと
も中小型影響ではシェアは確かトップでした。大手顧客にはアップ
ルの名を連ねスマホや車載用など影響は重要なデバイスであり未来
はまだ明るかったようでした。

その後中国勢に参入や有機ELがライバルとして台頭してくるとはま
だ2014年時点では予想されませんでした。原発事業にこれだけ逆風
が吹くとは誰も予想できませんでした。長期投資だからこそ現時点
よりも数年或いは十数年先の投資先の収益が重要になります。

しかし現実には数年先の業界の予想図を正確に見極めることはそん
なに易しいことではありません。分散投資だけでは最善の方法では
ありません。投資した時点から期待に反して業界環境が激変した場
合早い段階で損切りするのも必要かもしれません。

長期投資なら株価は上昇すると考えるのは間違いです。長期投資で
報われる企業と報われない企業はあります。JDIだけが特殊なケース
ではなく1部上場企業でも将来像を描けないダメ企業はかなりあり
ます。電機の名門の東芝だって破綻こそ免れましたが東日本最震災
前の株価に比べれば現状は6割程度の水準です。

経営不安の一端となった原発米子会社の不振は原発事故が大きな原
因とはいえもともと東芝という企業自体に過大なリスクを抱え込む
体質があったのではないでしょうか。日本の半導体業界では稀な成
功例のフラッシュメモリー事業やCTやMRIで日本のトップに登りつ
めた医療事項は東芝のリスクを取っても事業を育てる良いケースで
した。

一方拡大路線一辺倒の事業方針は米原発事業の高値掴みや多くの事
業が利益率が低いという構造上の弱点を抱えることになりました。
拡大路線に走った液晶テレビ事業や成功体験を捨てきれず赤字経営
を続けたPC事業は東芝の経営面での負の部分です。

この間日経平均が凡そ3倍になっていることを考えると東芝は長期
投資銘柄に向かなかった企業の一つということになります。ケース
によっては短期投資よりも長期投資の方がしっかり銘柄を選ぶ必要
がありそうです。

短期なら様々な思惑だけで株価が変動します。その波を捕らえて上
手く立ち回れば利益が上がる場合がありますが、長期投資では当該
企業の業績が伸びなければ持続的な上昇は考えられません。その企
業が取り巻かれている環境が激変すれば多くの企業は環境の変化に
対応できず衰退の道を辿ります。

ネット通販の普及で既存の小売業の多くが苦境に陥っていることや
健康志向の高まりでたばこ産業は苦戦が続いています。環境重視の
風潮は化石燃料に依存した経済構造に待ったをかけ火力発電を手掛
ける企業は世界の重電大手のGEやシーメンスさえも業績不振から
抜け出せません。長期投資の心構えは過去の成功例に捉われず常に
業界の動向をチェックすることが個別企業の業績チェックよりも優
先度が高いことを肝に銘ずるべきです。
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変わる業界環境(1)

2019-09-29 13:38:52 | 日記
都合により一日早く更新します。

長期保有が資産形成上大切な投資戦略であることは投資の世界では
常套手段であることはある意味正しいでしょう。しかし個別銘柄に
投資する時には当面の業績だけでなく数年先或いは十数年先の収益
が重要になります。

何故ならば多少の変動はあっても着実に成長できる企業に投資しな
ければいくら長期保有しても資産は増えるどころか減少する懸念が
大きくなるからです。個別企業の業績を予想する前に業界の将来を
的確に認識できなければ個別企業の先々の業績見通しは予測できま
せん。

液晶パネル大手のジャパンディスプレイ(JDI)の再建策が振り出し
に戻りました。支援先として名乗りを上げていた中国ファンドが支
援方針を撤回したためにJDIは新たなスポンサーを探さなければなら
なくなりました。

国内大手電機の液晶事業を統合して政府系資金が投入されオールジャ
パンとして発足したJDIは産業再生のモデルケースとなる予定でした。
やはり国内大手電機のDRAM事業を統合して発足したエルピーダメモリ
が事実上破綻した後だけに経産省の威信もかかる事業でした。

しかし液晶業界は巨額投資で世界のトップ集団の地位に登りつめた
韓国2社や地方政府の巨額な補助金で巨大な工場を建設し生産能力
を飛躍的に高めた中国勢に席巻され日本の液晶事業は勝ち目のない
戦いを強いられてきました。鴻海主導で一時再建が軌道に乗ったシ
ャープも主力の液晶事業の苦戦で業績下方修正が懸念され株価が低
迷しているのも同じ構図です。

JDIは場合トップが度々変わり長期戦略が描けなかったのも大きかっ
たようです。迅速な判断と巨額な投資が必要なデバイス業界では致
命的な状況でした。2014年の新規上場から株価は既に10分の一以下
に下落しました。その間4人もトップが変わるという異常な事態です。
大手電機メーカーの液晶事業の寄せ集め集団であるJDIの迷走は有能
な経営者に恵まれなかった典型的なケースです。

物量作戦で中国勢が参入してくる業界は過当競争に陥りやすく最早
技術的優位性の乏しくなった産業で日本勢が生き残ることは難しく
なってきました。かつて世界一を誇った造船業界のように中国勢の
追い上げに有効な対策を打てない産業は衰退の道を辿るしかありま
せん。

衰退する業界は中国勢の参入だけでなく業界環境の激変で立ち行か
なる産業も出ています。原発の安全コストが増大して経済合意性が
薄れた原発業界はこの10年で一気に厳冬期を迎えました。

世界各地で気候変動が大きくなり今後は今まで以上に環境に配慮し
た政策が求められるでしょう。それでも発電分野では環境負荷の小
さい原発の復権はおそらく望めません。脱化石燃焼で本命だった原
発は福島原発事故で主役の座を降りることになりました。

CO²の排出量の多くを占める発電分野と自動車分野では今後様々な
イノベーションが必要になります。既存メーカーはその流れを見誤
ったり出遅れれば一気に脱落してしまうでしょう。今まで以上に勝
ち組と負け組がはっきり分かれてしまうでしょう。

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アナウスメント効果

2019-09-27 07:15:19 | 日記
信用売り残高が急増しています。先週末現在では今年3月以来の1兆
円を越え1兆1260億円です。一方買い残高は2兆円割れ寸前の2兆480
億円と2016年11月以来の低水準です。結果として貸借倍率は1.88倍
となり2012年3月以来の2倍割れです。

2012年3月と言えば東日本大震災の翌年で民主党最後の野田政権時代
です。震災の影響や70円台後半の超円高で輸出産業の採算悪化から
国内経済が低迷し自民党のいう「暗黒の時代」の頃です。

勿論9月中間決算を控えリスクを抑えしかも優待券得るためのつなぎ
売りも含まれ実際に買戻しの対象となる空売りだけではありません。
3月や9月は優待券がらみのつなぎ売りがある程度含まれるという特殊
事情はあります。

しかし7年半ぶりの2倍割れの背景にあるのは世界的な景気悪化懸念と
永びく米中貿易戦争で先高期待が乏しいという投資家心理です。特に
今月の急上昇で当面の上値目途と言われていた2万2000円を超える場
面では売りが膨らんだようです。

「アナウスメント効果」という言葉があります。意味は選挙の投票
行動や経済活動などに関して,マスメディアの報道が人々の心理に
影響を与え行動を変化させることです。

中国経済やドイツ経済が大きく落ち込み最後の砦は国内景気が好調な
米国だけです。その米国経済も関税引き上げ合戦の影響が今後消費者
心理の重しになり米国経済の屋台骨である個人消費を低下させるとい
う不安をマスコミが繰り返し流すことで経済低迷→株価下落という図
式を投資家に植え付けています。

人間心理はポジティブなニュースよりもネガティブなニュースにより
反応しやすいと言われています。報道される経済ニュースは悪いもの
が今年は多いこともより投資家心理に重しです。トランプ大統領ツイ
ートで株価が大きく上昇したり、また大きく下落したり、投資環境は
一瞬で変化します。

上昇してもいつ市場が急変しないかも絶えず不安を抱えている投資家
が多いことも信用買い残が膨らまず売り残が溜まる要因です。皮肉な
言い方ですが実体経済の悪さを需給面で支えているというのが現在の
市場です。

「天井三日底百日」という格言があります。好調に上昇している市場
も上昇期間と短く株価が冴えない局面は長く続くという言い回しです。
まして聞こえてくる経済ニュースは企業の業績悪化や経済の先行き不
透明を伝えるものばかりです。

アナウスメント効果も投資家心理の悪化に拍車をかけています。勿論
需給面が支えになるとしても経済が好転して企業業績が持ち直さなけ
れば市場は下方向に向かいます。カギを握っているのは経済が持ち直
すかどうかです。突き詰めれば米中貿易協議が何らかの形で合意でき
るかどうかです。

28、29日の更新はお休みします。
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メタボだったユニコーン企業

2019-09-26 07:39:42 | 日記
ユニコーン企業とは評価額が10億ドル以上の未上場のスタートアッ
プ企業で「創業10年以内」「評価額10億ドル以上」「未上場」「テ
クノロジー企業」といった4つの条件を兼ね備えた企業を指すそう
です。

2019年4月時点で世界のユニコーン企業は335社でした。内訳は米国
151社、中国82社、イギリス16社、インド13社日本は確か1社か2社
だと記憶しています。

もっともここへきて市場の評価が課題だったのではないかという懸
念が広がっています。ユニコーン企業の筆頭格であったウーバーは
IPOに踏み切る前は企業価値が720億ドルと見積もられていました。

しかし上場後株価は低迷し直近の時価総額は532億ドルであり26%
も減少しました。一足早く上場した同業のリフトも55億ドルという
評価がされていましたが、直近の時価総額は11.7憶ドルという惨憺
たる結果です。

両者ともライドシェア事業の黒字化の目途が立たず足元では巨額な
赤字を計上しています。背景にはドライバー確保のための過当競争
があり高い報酬を出していることが赤字を膨らませている原因です。
一説によると自動運転が実現できない限りは黒字にならないという
ニュースも出ています。

ウーバーは現状を打開するために料理宅配サービス「ウーバーイー
ツ」は事業に活路を求めていますが、この分野でも競争は激しく救
世主になるかどうかは現時点では見えてきません。

そもそもユニコーン企業ブームが到来したのはFANG銘柄の大躍進が
あります。次のFANG銘柄を発掘しようとベンチャーキャピタルやフ
ァンドがでこぞって巨額なマネーを有望な企業につぎ込みました。
空前のカネ余りと投資先不足が拍車をかけました。結果未上場の段
階で大きな資金が集まり巨額な成長第一主義で巨額な赤字を出し続
ける企業が多くなりました。

その資金の最大の出し手はソフトバンクグループ(SBG)はでもっと
も活発に投資先を拡大しています。結果的にIPO前でも巨額なマネー
が集まり大きな赤字を出しても許容されるようになり評価額も期待
先行で膨らみました。

しかし米国で前評判の高かったリフトやウーバーのIPOが躓くと市場
は一気にユニコーン企業に厳しい目を向けるようになりました。今月
IPOを目指していたシェアオフィス大手のウィーが事前の評価額の470億
ドルから150億ドルへと評価が急落したのはCEOの問題だけでなくウィ
ーがハイテク株としての位置付けが怪しくなってきたからです。

ユニコーンの由来となった一角獣は架空の生き物です。ライドシェア
大手2社の大きな期待外れは投資家にとってまさに幻になってしまった
ようです。ユニコーン企業も玉成混合で今後は厳しい選別の時代に突入
したようです。
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超割安から普通の割安に

2019-09-25 06:34:41 | 日記
バリュー株相場の上昇は続くのでしょうか。8月まで続いた債券買い
株式売りの巻き戻しが指標面で割安感の強かったバリュー株の急反発
を引き起こしました。米国市場に比べて日本市場はバリュー株の割合
が高いので最も恩恵を受けた市場ということになります。

昨年10月に3%を超えていた米10年債利回りは今年8月には一時1.5%を
下回る水準まで低下しました。金利低下は長引く米中貿易戦争の影響
で世界経済が一段と落ち込み中央銀行は金融緩和に再び方向転換する
しか方法がないという市場の見方でした。

現実に米国は年明け以降市場の催促もあり昨年までの利上げから利下
げに180度方向転換しました。9月には今年2度目の利下げに踏み切り
ました。欧州中央銀行(ECB)も今月利下げで追随しました。

確かに米中貿易戦争の影響で世界経済は今年持続的成長の目途の3%を
下回るという予想がされています。しかしリーマンショックのような
危機的な状況ではありません。

ユーロ圏では経済規模が3位にも拘わらず財政状態に懸念のあるイタリ
ア10年国債が米国10年債を大きく下回る0.8%割れという水準に低下し
ました。8月の欧州債券市場の債券バブルに近い状態という見方も一部
にはありました。

極端な債券買いの株式売りに転機が訪れたのは今月でした。欧米の中
央銀行の利下げ決定でもその流れは続きました。俗にいう「噂で買っ
て事実で売る」という典型的な動きをみせました。

しかし米中貿易協議はこれまで楽観、悲観を繰り返してきました。ま
だまだ早期合意が実現できるかどうかは不明です。先週末には次官級
の米中貿易協議のため19日からワシントンを訪問していた中国代表団
が、予定していた農家訪問を取りやめ早めに帰国すると20日に伝わり
米中貿易協議の合意が遠のいたとの見方が広がり海外市場で株安・円
高が進行しました。

バリュー株には景気敏感株が多いだけに米中貿易協議が何らかの形で
合意できなければ追い風は吹きません。ドイツ製造業が深刻な不振に
陥ったのは中国経済との結びつきを強めがことが関係しています。

1カ月後に本格化する中間決算では中国経済の低迷と円相場が高止ま
りしている影響で業績下方修正ラッシュも予想されます。ある程度の
悪材料は既に織り込み済みかもしれませんが、予想以上の数字が出た
場合市場がどんな反応を示すか読み切れません

今月の上昇で東京市場ではバリュー株は極端な割安から普通の割安ま
で水準訂正しました。今後も上昇が続くのかどうかは景気回復を市場
が確信した時です。現状ではまだそこまでの強気にはなれません。この
状況が変わらない限り10月相場では再び逆戻りすることがあるかもし
れません。

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