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続、品質保証再考其の14

2010年10月09日 | Weblog
問題解決・課題達成法 

 工場の品質管理課を経て、半導体関連部品の生産管理を担当していた頃、知り合いの研究者から「TQC(TQM)とは何か」という質問を受けたことがある。咄嗟に「問題解決へのアプローチのやり方である」というように答えたけれど、現場での、小集団活動や改善提案活動から入った私のTQCでは、まさに職場の身近な問題解決こそTQCそのものであった。

 ガイドブックにも「日本で発展したTQMが成功した理由の1つとして、問題解決や課題達成のための具体的なアプローチ方法が開発されていたことがあげられる。これらの方法は、長年の実践を通じて形成されたヒューリスティックな方法(発見的な方法)である。このためにさまざまなバリエーションが存在しているが、いずれもとても有効なアプローチであり、多くの実務問題へ適用されて大きな成果をあげている」とある。

 「問題解決と課題達成に共通する基本的な考え方は「PDCAサイクル」であり、両者に共通する具体的な手順は「QCストーリー」ということになる」とガイドブックにある。「PDCAサイクル」はここで解説するまでもなく、Plan(計画する)-Do(実施する)-Check(点検する)-Act(処置する)であり、QCストーリーとは、「テーマ選定」-「問題(現状)の把握と目標の設定」-「要因の解析」-「対策の立案」-「対策の実施」-「効果の確認」-「標準化と管理の定着」(歯止め)-「反省と今後の対応」(問題解決型QCストーリー)の手順をいい、このステップに沿って活動し、報告する。課題達成型のQCストーリーでは、「問題の把握・・・」が「課題の明確化・・・」に変わり、「対策の立案」と「対策の実施」が「最適策(成功シナリオ)の設計(追求)」と「最適策(成功シナリオ)の実施」に代わる。

 TQCを学んだ米国Motorora社が、QCストーリーを倣いDMAIC*15)という品質改善プログラムを登場させた。1986年のシックスシグマの誕生である。DMAICは本質的には問題解決型QCストーリーと同じであるといえる。

 QCストーリーは、問題の種類や難しさとは無関係の進め方の基本的定石であり、それらのステップで使われる手法に「QC七つ道具」*16)と「新QC七つ道具」*17)がある。一般的な問題であればQC七つ道具で十分*18)であり、QCストーリーに沿って検討することで解決できる。

 私は、半導体関連部品の生産管理を担当していた頃、主婦がほとんどのパートさん達と小集団活動を行った。QCストーリーをB4用紙の書式1枚にまとめて配り、問題解決手法は特性要因図だけに絞った。限られた時間を精一杯使って、彼女達は非常に熱心に取り組んでくれた。発表会も堂々としたものだった。その職場は2年後に委託生産化のため消滅したため、活動も2期に終わったが、事業は、私が担当した当初の業績から大幅向上させた。具体的な成果によるコストダウンもさることながら、彼女達の仕事への取り組みの気持ちの充実が大きかったように思う。





*15)Define(定義)-Measure(測定)-Analyze(分析)-Improve(改善)-Control(管理)
*16)①パレート図、②特性要因図、③ヒストグラム、④グラフ/管理図、⑤チェックシート、⑥散布図、⑦層別の7つ。④のグラフと管理図を分けて、⑦の層別は外して七つ道具という解説本もある。①~⑦の順番についても不動ではない。それぞれの簡単な解説はガイドブックにあるが省略した。
*17)①親和図法(KJ法)、②連関図法、③系統図、④マトリックス図法、⑤マトリックス・データ解析法、⑥アローダイアグラム法、⑦PDPC法の7つ。
前稿「品質機能展開」などはマトリックス図法の活用例といえる。
*18)高度で複雑な問題の場合には、高度な手法(検定・推定、回帰、実験計画、多変量解析ほか)を用いる。

註!「品質機能展開」に続くガイドブック第Ⅲ部第5章は品質保証の観点から「顧客関係性管理」の手法が述べられている。「新規顧客獲得には、既存顧客維持に要する費用の5~10倍掛かるといわれ、2割の優良顧客で売上の8割を占めるパレートの法則の有効性が認められるなど、現在の成就社会においては、顧客関係性の構築が企業にとって重要なテーマになっている」。とあるように、その手法も重要であるが、今回のシリーズの制約上割愛した。

本稿は (社)日本品質管理学会編2009年日科技連刊“新版品質保証ガイドブ
ック”(「ガイドブック」と略称)第Ⅲ部第6章を参考にしています。QC七つ道具などの詳細は、別途当該専門誌を参照いただきたい。

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