中小企業診断士 泉台経営コンサルタント事務所 ブログ

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イノベーション第10回

2014年09月28日 | ブログ
究極のイノベーション

 郵便馬車が蒸気機関車に変わった第一次の産業革命やコンピュータの発達による情報技術革新はこれまでの人類にとってはまさに究極のイノベーションであったけれど、帆船による世界一周で、地球は丸いと証明した大航海時代に匹敵する人類の命を賭けたイノベーションは、現代では宇宙旅行にある。米国のアポロ計画*16)から半世紀以上、NASA(アメリカ航空宇宙局)の当面の目標は火星に人類を到達させることにある。

 今月18日の日本経済新聞に「米、宇宙開発に競争原理」という記事があった。『NASAが2017年の初飛行を目指す有人宇宙船の開発を2つの米企業に託した。選ばれたのはスペースシャトルの開発など実績のある航空宇宙大手ボーイングと、ベンチャーのスペースXという対象的な組み合わせだ。米政府は民間の競争原理を導入し、ロシアなどとの世界的な開発競争で再攻勢をかける構えだ。』

 記事によれば、スペースXの創業者であるイーロン・マスク氏(米電気自動車ベンチャー、テスラ・モーターズCEO)は、「火星移住」を持論とし、すでに2010年に民間企業で初めて無人宇宙船でNASAと国際宇宙ステーションに貨物を運ぶ契約を結んだ。宇宙開発には100億円とされる打ち上げの費用の削減が必要である。マスク氏はこれを100分の1に抑える必要があるとみているという。そのためには民間企業での競い合いが欠かせないのだ。

 しかし火星ではまだまだ夢が小さい。人類が太陽系に留まる限り、所詮太陽の寿命と共に人類は滅ぶことになるからである。もっとも40数億年先のことのようだが。

 宇宙開発には、当面の月や火星には新たな資源獲得の目論みもあるようだが、さまざまな宇宙の謎に挑戦する学術的探究がより重要である。地球外生物は存在するのか。UFOは異星人の乗り物なのか。それらを究明する過程で、必要なエネルギー革命や時空を超えて瞬時に宇宙空間を移動可能な技術。簡素な宇宙服の開発のための素材の発達。宇宙のゴミを収集・破砕させる技術の開発。諸々のイノベーションが必要である。

 何億光年先の惑星に人類が到達することは不可能と考えるか、それとも異次元空間を抜ければ可能かも知れないと考えるか。人間が想像できることは実現できるという説もある。現在の技術の延長線上で思考するのではない、まさに究極のイノベーションに期待したい。

 このところ人型ロボットの進歩も著しい。鉄腕アトムのようなロボットの実現は、人類が宇宙の果てに行き着くより容易かもしれない。放射能汚染ゴミの問題で原子力発電を止めろという程度の思考経路では、今後の科学技術の進歩は望めない。恐れず未来の人類の子孫のために、将来太陽系から脱出可能な宇宙船開発を目指すくらいのチャレンジ精神が必要であろうと思う。



*16) アメリカ航空宇宙局(NASA)による人類初の月への有人宇宙飛行計画である。1961年から1972年にかけて実施され、全6回の有人月面着陸に成功した。最初の月面着陸は1969年7月のアポロ11号。-ウキペディア-
ただ、有人月面着陸には、その証拠とされる写真に疑問点を指摘する声があり、米国の当時のソ連への対抗意識からの偽装ではないかとの疑念が一部に根強い。
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イノベーション第9回

2014年09月25日 | ブログ
技術経営

 「品質経営」という言葉もある。どのような経営を品質経営というか。日科技連が行っている企業向け「企業の品質経営度調査票」から推測するに、①品質重視の考え方を企業理念や経営理念の中でうたっていること。②品質重視の考え方を全社(国内外のグループ企業を含む連結企業体)の社員へ周知するとともに、取引先(納入企業、協力企業等)へ伝達している。③品質重視の企業理念や考え方及び実施されている品質活動について、顧客、関連業界、近隣地域等社外へ広く表明している(ホームページ、広報誌、パンフレット等)。④品質重視の考え方や品質活動が全社の社員や取引先及び顧客、関連業界、近隣地域等、社外にどのくらい普及・浸透しているかを確認する仕組みがあること。の4項目を満たし、その普及・浸透により、企業価値の向上(品質・ブランド・安全・安心等)や競争力の強化に効果をあげている。すなわち効果の確認までが出来ておれば立派な「品質経営」と言えるようだ。

 企業は、何らかの製品またはサービスを顧客に提供することで成り立っている。その製品・サービスの品質が少なくとも顧客が満足するものでなければ継続できない。従って、敢えて経営に品質を付けることもないのだけれど、所詮人間は怠惰なものだから、経営も近視眼的に成り易いということでの注意喚起の意味と品質管理の手法がマネジメントに非常に有効であるから、その普及の意味もあるように思う。

 それなら技術経営(MOT=マネジメント・オブ・テクノロジ)はどうか。特に製造業であれば、常に新製品開発に意を注ぎ、技術革新に挑戦を続けなければ、厳しい企業間競争を勝ち抜くことはできない。まさにイノベーションへの挑戦が企業の一大命題なのである。

 イノベーションが必要なのは製造業だけではない。昨年わが国を訪れた外国人は初めて1000万人を超えたというが、2020年東京オリンピックに向けてこれをさらに倍増しようという国の方針*14)がある。地方自治体だって、あの手この手で地元の魅力をアピールしながら新たな宝さがしに力を注いでいる。ホテルや旅館も言葉や食文化の全く異なる外国人への「おもてなし」にこれまでの殻を打ち破りながら、一方で伝統的な日本の良さをアピールすることも忘れない。

 中小企業にあっても、技術開発投資の多い企業の利益率は高い傾向にあるとのデータが2009年の中小企業白書にある。この年の白書は「イノベーションと人材で活路を開く」がテーマであり、1994年から2006年における、中小企業における研究開発費が売上高に占める割合と営業利益率の推移がグラフで示されている。

 研究開発費に全く投資していない企業と売上高の2.5%未満の企業及び同2.5%以上の企業の3分類による比較である。いずれの年次も研究開発費が高い企業が利益率も高く、例えば2006年では、高い順に5.7%、3.9%、3,2%となっている。

 また、白書には三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)が実施した「企業の創意工夫や研究開発等によるイノベーションに関する実態調査」結果を引用しているが、中小企業が新たに開発した製品がその売上高に占める割合について、直近3年間において、新製品の売上の割合が一定程度高い企業が増収となっている傾向が見られるとしている。

 しかし、『近年わが国の電機業界においては、革新的な技術を生み出し、その技術に関心をもつ世界の企業からは、それらの企業の研究所に訪問客が絶えないほどなのに、経営の成果にあまりつながっていない現状がある。技術革新は企業の命運を左右する経営の重要な要素だ。しかし、それによって相応の利益が上がらなければ、技術力を維持できなくなる。技術革新は経営の一手段にすぎない。これが継続的な収益増につながって、はじめて意味を持つのだ。』*15)

 イノベーションへの挑戦には常にリスクが伴う。その達成には、トップの明晰な決断力、技術者の知識・経験と何より飽くなき情熱が必要であろう。




*14)「観光立国実現に向けたアクション・プログラム 2014」平成26年6月17日 、観光立国推進閣僚会議
*15) 日本経済新聞朝刊2014年4月2日、「技術経営と企業①」京都大学/武石彰教授。勝手ながら一部表現を変えています。



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イノベーション第8回

2014年09月22日 | ブログ
イノベーション始動

 イノベーションについて書き始めたこの月、タイミング良くわが国で2つのイノベーションが現実化への歩みを確実にする。ひとつは、言わずと知れたiPS細胞の実用化である。『さまざまな臓器や組織の細胞に分化できる人工多能性幹細胞(iPS細胞)を患者の治療に使う移植手術が、神戸市の先端医療センター病院で実施された。 「滲出(しんしゅつ)型加齢黄斑(おうはん)変性」という目の難病を抱える患者に移植手術が施されたのだ。iPS細胞で人体の組織を再生させる臨床応用は世界で初めてだ。』

 視力が劇的に改善するほどの治療効果はまだ望めないが、目の細胞はがん化のリスクが小さいため、安全性確認に適しているそうだ。

 目に関する移植手術と言えば、角膜移植が浮かぶが、亡くなった人からの提供に依存している。透明性の問題はあるが、角膜はiPS細胞から作ることはできないのだろうか。可能となれば、角膜混濁による失明者を救済できる。また網膜細胞が再生できれば、網膜はく離は勿論、糖尿病による眼底出血からの失明が救済できるのではないか。

 網膜はく離*13)は、ボクサーの職業病のように言われていたが、最近大相撲の幕内力士が相次いで網膜剥離で手術したという話を聞くと、他人事ながら心配になる。この場所、横綱日馬富士が、立合いのぶちかましで右目周辺の骨折(眼窩内壁骨折)し休場したが、立合いはそれほど激しくぶちかますのが大相撲の魅力でもある。網膜はく離を患った力士にとって日々の勝負は失明を懸けたものになる。再生医療の進歩はこのようなアスリートの一種労災とも言える病にも希望となる可能性を秘める。

 介護が大問題となっている近年、要介護の中でも認知症が全国で500万人近いような報道もあり深刻な事態だ。歳を取れば人体あらゆる臓器で細胞の自然再生能力が低下し、人体節々に欠陥が出ることは止むを得ないけれど、究極脳細胞の再生は可能なものかどうか。行き着くところ不老不死となっても「過ぎたるは及ばざるごとし」ではあるのだけれど。

 この月始動したイノベーションの2つ目は、人工の光合成が植物を超える効率を達成したというニュース。9月15日の日経新聞によれば、『パナソニックは太陽光と二酸化炭素(CO2)、を使ってメタンやエタノールといった燃料をつくり出す次世代技術「人工光合成」で、世界最高の変換効率を実現する電子材料を開発した。メタンなどの生産量が従来の5倍に高まったという。・・・変換効率は太陽光エネルギーの0.2%程度。パナソニックの新技術では0.3%と、世界で初めて植物を超えた。新開発の電子材料は改良を重ねれば、実用化のメドとなる1%の変換効率を達成できる可能性がある。』

 人工光合成の話は、本稿「イノベーション」第2回、「続・イノベーション25」の項で取り上げた。空気中の炭酸ガスからエネルギー源を得て、それを燃焼させれば酸素を消費し、再び炭酸ガスを出すから元の木阿弥ではないかのように書いてしまったが、使用前使用後で炭酸ガスが増加しなければ、確かに炭酸ガスをエネルギー化したことになる。素晴らしい触媒技術であると認識した。




*13) 視覚的な映像(光情報)を神経信号(電気信号)に変換する働きを持ち、視神経を通して脳中枢へと信号を伝達する眼底の網膜が何らかの原因で剥離し、その部分の視力を欠損させる病。すべて剥離すれば完全に失明する。網膜はその働きからカメラのフィルム、デジカメではCCDと言われる半導体に例えられるが、剥離する原因は、物理的な衝撃によるものと、内因による病的な剥離がある。
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イノベーション第7回

2014年09月19日 | ブログ
破壊的イノベーション

 「イノベーションのジレンマ」や「イノベーションの解」の著者クレイトン・M・クリステンセン*9)は、「イノベーションの最終解」*10)に、イノベーションを3分類して示している。一つが「新市場型破壊的イノベーション」であり、「ローエンド型破壊的イノベーション」、そして「持続的イノベーション」である。

 同じ破壊的でありながら、新市場型とローエンド型の違いは、新しい市場を生み出すものが「新市場型」であり、既存の市場を大きく変えるものが「ローエンド型」である。そして「継続的イノベーション」とは、前稿(イノベーション第6回)に述べた「リノベーション」であり、そこには「ローエンド型イノベーション」も含まれるかもしれない。従って、前稿に紹介したすべての事例は、クリステンセンの理論で「イノベーション」となる。
 
 クリステンセン教授は、破壊的イノベーションの代表例として、ベル*11)の電話をまず上げる。電話以前、すでに世の中にはモールス信号などによる無線通信技術や郵便制度が確立されており、大手通信事業者としてウエスタンユニオンが電信サービスを担っていた。人々は遠くの知人に手紙を送り、必要に迫られれば電信によって連絡した。

 ベルは最初、「電線を使って音声を伝える方法」の発明特許を、世界有数の通信事業者であったウエスタンユニオン社*12)に提供しようと持ちかけた。1876年のことである。しかし、当時急成長中で高収益を上げていた同社のウイリアム・オートン社長は、「こんな電気じかけのおもちゃを作って何になる」と言って、ベルの申し出を却下する。社長はじめ同社の経営陣が近視眼的であったということである。

 世界初の電話会社は、1878年にコネカット州ニューヘイブンに誕生した。当初この技術は、電話信号を数キロしか伝えられなかったにも関わらず、新しい市場を生み出した。電話は近所の人たちと簡単に連絡を取り合う手段として受入れられたのである。一方、ウエスタンユニオン社は破綻に追い込まれる。

 ウエスタンユニオン社の経営陣は優秀だったが、「普通の人たちが友人や親戚とおしゃべりするだけのために電話をかけるような世界が来るなどとは想像できなかった」。電話が改良を重ね、やがて自社を脅かすようになるほど性能が向上することを予測できた筈がないのだ。「それだけイノベーションと競争のプロセスは無秩序である」とクリステンセン教授は言うのである。

 その約100年後、1980年代には、アメリカ人のほとんどが固定電話サービスを利用していた。そして移動電話サービスが、自動車電話サービスとともに1980年代に始まった。これは破壊的イノベーションだったが、移動電話の基本機能は有線電話に劣っており、通話品質もバッテリーのもちも悪く、電話機はかさばり値段も高かった。それでも初期のユーザーは、技術に本来備わっている利便性、つまりこれまでになかった状況でいつでもどこでも通話できる能力に価値を認めた。

 携帯電話は成長と利益を追求するうちに、性能を急速に高め、発売開始から15年ないし20年経った1990年代後半になると、利用者が固定電話を解約するという兆候が現れ始めた。特に公衆電話の利用は1996年から急減しはじめた。

 今や携帯電話は単に通話やメール交換だけの道具だけでは当然にない。カメラ、インターネットからナビ機能までが普通になり、その操作はタッチパネル式(スマートフォン)が主流となった。

 ただ、1世紀前と大きく異なるのは、携帯電話サービスが破壊的イノベーションでありながら、新規事業者が既存の通信事業者を駆逐する構図ではなかったこと。この要因のひとつは、携帯電話と固定電話間の通話を可能にするために、既存の回線を利用したことがある。

 「Apple Watch」「Apple Pay」進化は留まることを知らない。乗り遅れれば企業は破綻の危機に晒される。15年3月期大幅な赤字予測となったソニーは、今月17日遂に無配転落を発表した。




*9) クレイトン・M・クリステンセン(1952- ) 、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS) 教授。「イノベーションのジレンマ」によって「破壊的イノベーション」の理論を確立し、企業におけるイノベーション研究の第一人者となっている。
*10)櫻井祐子訳、株式会社翔泳社刊、2014年7月初版。「イノベーション理論を活用して、将来への洞察を得るための本である」と著書は記している。
*11) アレクサンダー・グラハム・ベル(1847- 1922)、スコットランド生まれの科学者、発明家、工学者。世界初の実用的電話の発明で知られている。
*12)1851年の創業のアメリカにおける電報通信会社。

 本稿は、クレイトン・M・クリステンセン著「イノベーションの最終解」櫻井祐子訳から多くを引用、参考に編集しています。
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イノベーション第6回

2014年09月16日 | ブログ
リノベーションとイノベーションの狭間

 「リノベーション」とは、建築物の大幅な改築によって、その用途まで変えることを指すらしい。単なる「リホーム」レベルではない。そこから刷新・改革・改良という意味合いにも使われているようだ。

 イノベーション本*7)には、企業の新商品開発の苦労話が紹介されているけれど、その多くはリノベーションでないかと思う。イノベーションと呼ぶにはそれまでの商品との断絶性が少ない。例えば、サントリーの「DAKARA」という飲料。サントリーは当初スポーツドリンクとして開発を進めたが、大塚製薬の「ポカリスエット」と日本コカコーラの「アクエリアス」の牙城を崩すには、新しいコンセプトが必要であると考え、徹底した市場調査によって、「真のコンセプト」に到達する。それは、「ちょっとツライとき、不摂生不規則な生活から現代人のライフを守ってくれる(MOTHER飲料)、ちょっと頼りになるカラダ・バランス飲料」だったという。

 確かに「DAKARA」は後発ながら健闘した。単なるスポーツ飲料の枠を超えて消費者に支持されていることは確かだ。しかし、コカコーラやサイダー、単なる種々の果物ジュースの中にポカリスエットが出てきた時は驚きがあった。こんな物が売れるのかとも思った。確かにイノベーションであった。しかし、その後に出た「アクエリアス」も「DAKARA」も確かにヒット商品ではあり、何らかの殻を破った(新たな創造があった)ことは確かであろうが、イノベーションと呼ぶには不足であるように思う。

 日清食品が開発したインスタントラーメン。「お湯を掛ければ何でもできる」のCM変じてお湯を掛ければ元の姿に戻るというような奇想天外なコミック*8)まで登場した。今では当たり前にカップヌードルも袋麺も食べているけれど、その開発の苦労は大変であったろう。数年前にテレビでドキュメンタリーとして紹介されていた。まさに創業者の汗の結晶である。これは食品業界におけるイノベーションであった。しかし、その後の数々のヒット商品群、例えば「日清ラ王」、その後の「具多(グータ)GooTa」など、それぞれ商品開発の過程では多いに苦労はあったと思うけれど、これらもリノベーションの範疇ではないか。

 カラオケも日本人の発明だというが、カセット8トラック、レーザーディスク、ビデオCD、DVDなどを経て、1990年代以降通信カラオケと進歩変化し、モニター画面に歌詞が表示され、色の変化で歌唱をリードしてくれて、その歌唱力を数値で評価し、順位まで表示してくれたりするまでになっている。しかし、出初めのカラオケブームは、レジャー産業界のイノベーションであったけれど、そこから先の進歩はリノベーションではなかろうか。

 車だって、ホンダが無公害車を開発したり、スポーツカータイプやクルーザーが流行ったり、大型のワンボックスカーが増えた時期、そして現代は軽自動車を含めコンパクトカーが良く売れている。それぞれメーカーは市場を読み、自社の技術力を磨いて苦労を重ねて新車開発をしてきたことであろうが、いずれもリノベーションではないか。しかし、ハイブリッドや電気自動車、水素燃料の車となれば、そのためのインフラ整備までも含めてイノベーションであるかもしれない。

 リノベーションとイノベーションを区分する意味は、イノベーションはこの世に無い物を創造する。その創造物が、他を駆逐して浸透してゆくものか、新たなビジネスチャンスとして発展するかどうか、その市場の変化をいち早く読み取れるかどうか。投資家や企業経営者にとって、将来を予測する能力の試金石になるものではなかろうかと勝手に思い至る。




*7) 「イノベーションの本質」野中郁次郎/勝見明著/日経BP社2004年。サントリー「DAKARA」、日清食品の日清ラ王」、「具多(グータ)GooTa」など引用させていただいています。ここに言うイノベーションは、単なる商品の新規性だけでなく、市場開発への取り組みまでを含めており、紹介された事例が「イノベーション」とすることを否定するものではありません。
*8)らんま1/2 高橋留美子/小学館
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イノベーション第5回

2014年09月13日 | ブログ
ナポレオンとイノベーション

 ナポレオン・ボナパルト(ナポレオン1世:1769-1821)、知らぬ人ない英雄である。フランス革命後の混乱を収拾して軍事独裁政権を樹立し、戦勝と婚姻政策によってイギリスを除くヨーロッパ大陸の大半を勢力下に置いた。最終的に敗北して失脚したのだけれど、内政面でも諸改革を行っている。

 『全国的な税制度、行政制度の整備を進めると同時に、革命期に壊滅的な打撃をうけた工業生産力の回復をはじめ産業全般の振興に力をそそいだ。1800年にはフランス銀行を設立し通貨と経済の安定を図った。1802年には有名なレジオンドヌール勲章を創設。さらには国内の法整備にも取り組み、1804年には「フランス民法典」、いわゆるナポレオン法典を公布した。これは各地に残っていた種々の慣習法、封建法を統一した初の本格的な民法典で、「万人の法の前の平等」「国家の世俗性」「信教の自由」「経済活動の自由」等の近代的な価値観を取り入れた画期的なものであった。教育改革にも尽力し「公共教育法」を制定している。また、交通網の整備を精力的に推進した』。この項、byウキペディア

 『ナポレオン快勝の秘密は、彼がライン・スタッフ制による命令戦法を他に先立って活用したことにある。ナポレオン以前のヨーロッパの将師たちはスタッフ(参謀)を持っていない。彼らの直接指揮した軍はたいてい数千人から数万人で、密集隊形をとり、行動も単純であった。彼らはライン編成による軍隊を号令で指揮し、その戦法は号令戦法と言われた。

 ナポレオンの時代になると、直接指揮する軍隊は数万人から十数万人となり、戦場もひろがり、作戦行動も複雑になっていた。ナポレオンはスタッフの活用を思いつき、参謀部を編成し、命令を用い、大胆巧妙にして世人の意表に出る戦法を駆使し、常に大敵を破って、ついに全ヨーロッパを席巻してしまった。1796年、北部イタリアで行われたガルダ湖畔の各個撃破はその適例である。

 スタッフを使い、命令によって革新戦法を駆使するナポレオンに対し、依然としてライン編成による号令戦法に執着していたヨーロッパ各国の将師たちが、歯が立たなかったのは当然であった』。この項、by大橋武夫著「兵法経営塾」昭和59年/マネジメント社

 後、ナポレオンの戦法を研究したプロイセン(後のドイツ)の戦略兵団組織による訓令戦法(経営組織でいう事業部制)にナポレオンは打ち負かされることになる。ナポレオンの指揮は中央集権式で、部下は彼に忠実に従うあまり、自分達で考えることを止めていたことが致命傷となったという。

 NHKの大河ドラマ「軍師黒田官兵衛」が佳境であるが、舞台はわが国の16世紀末、ナポレオンの時代から200年も前の話だ。ヨーロッパの軍略組織は遅れていたということなか。

 官兵衛以前、信長の活躍した時代、今川義元を打ち取った桶狭間の戦いが信長の真骨頂のように扱われるが、信長の戦術における最大のイノベーションは、鉄砲隊を主力とした長篠の戦い(1575年)ではないかと思う。武田騎馬軍団に対して馬防柵を設け、火縄銃を三段に編成して交代で発砲するという、当時としては革新的な戦法を駆使する。桶狭間は義経の時代からある奇襲であると思うが、長篠では鉄砲という新兵器の威力をみごとに発揮させた。織田・徳川軍は3万8000、武田軍1万5000という兵力差があり、勝敗はドラマチックではないが、時代を変えた戦いとなったのではないか。


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イノベーション第4回

2014年09月10日 | ブログ
インダストリー4.0

 「インダストリー4.0」とは、ドイツが産学官共同で推進するプロジェクトの名称であるが、ドイツ語で「第4次産業革命」を意味するという。

 産業革命と聞くと、ワットの蒸気機関が浮かび、18世紀半ば(1760年代)から19世紀にかけて英国に起こった産業の大変革のことだと認識している。しかし、この産業革命は第1次産業革命と呼ばれるもので、その後の「電力」の実用化や「石油」の利用による重工業の発達やベルトコンベアによるライン生産方式の浸透による大量生産のはじまりが第2次(19世紀半ば~20世紀初頭)で、ドイツ、フランスそして米国で大きな変革が起こった。そして「IT(情報技術)」による産業界の変革(現在も進行中)を第3次産業革命と呼ぶようである。

 これらの1次から3次の産業革命による産業界の主役の変遷を見ると、その進歩は確かに過去の延長線上から大きく飛躍逸脱しており、過去との断絶が明瞭である。まさに究極のイノベーションであった。

 第1次産業革命を主導したワット(ジェームズ・ワット:1736-1819)は、やかんの蓋が沸騰する蒸気の力で持ち上がるのを見て、蒸気機関車を発明したように子供の頃に習った記憶があるが、蒸気機関そのものは1712年にニューコメン(1664-1729)が排水ポンプとして実用化していたという。しかしこの時点では、蒸気機関は産業界に広く活用される技術となっていなかった。ワットが蒸気機関の研究によって、エネルギーをピストン運動から円運動へ転換させることに成功したことで、産業界に変革をもたらすことになったのだ。

 電気も、静電気などその存在は早くから知られており、17~18世紀に科学としての進歩はすでにあった。しかし、その実用化は19世紀後半である。エジソンが発電から送電までのシステムを事業化し、電気器具の改良や発明によって、産業界全体に電気が活用されるようになって、一大変革をもたらせたのだ。

 このような事例からも、イノベーションは発明・発見だけでは完結せず、産業界において実用化されることで達成されることが分かる。現在話題の人工万能細胞なども、今後難病の治療などに適用が期待されているが、医療現場で人体に用いられ効果を挙げて、大きなイノベーションと呼ばれるのであろう。

 それでは、「インダストリー4.0」とはどのようなものなのか。日経情報ストラテジー2014年9月号「3分間キーナンバー&キーワード」の「インダストリー4.0」の項から引く(編集しています)。

 『ものづくりをセル生産方式で行うが、「ダイナミックセル」と呼ばれる作業工程ごと1つのセルにまとめられた組立て用装置をメッシュ状に配置し、製品はセルからセルへと“渡り歩く”ことで組み立てられる仕組みである。ラインが固定されていないため、渡り歩くセルの組み合わせで様々な作業工程を選択でき、1つの工場で同時に多品種の製品を生み出せる。セルに設置した組立て用装置はコンピュータネットワークでつながり、センターで制御され、部品不足や銘柄変更にダイナミックに対応できるのである』。この「サイバーフィジカルシステム」*4)がものづくりの現場を変えるというのである。

 わが国の工場で、例えばキャノンの茨城県阿見工場にセル生産方式*5)が導入されたのは1998年1月。同工場では99年にベルトコンベヤーを全廃している。この生産革新は、98年度から2004年度までの7年間で合計3,110億円のコスト削減をもたらせたとある。
*6)

 蒸気機関が単なるレシプロ(反復運動)から回転動力に進歩したことで、第一次産業革命をもたらせたように、セル生産方式がサイバーフィジカル制御に変わることで、新たなものづくり現場の革命(第4次産業革命)が起こると期待されているのである。




*4)「サイバーフィジカルシステム」:センサーネットワークが生み出した膨大な観測データを処理するコンピューティングシステムのこと。「情報融合炉」と呼ぶ。by東京大学/喜連川 優教授
*5)日本で最初にこの生産方式に挑戦したのは、ソニーの井深氏であった。当時ワンマン生産方式と呼ばれていた1964年のこと。しかし、コスト面で行き詰まり、フォード方式以来の歴史に大転換をもたらした日本発のセル生産方式が実用化されたのは90年代。ソニーとトヨタ生産方式との融合によるものだった。プレステーション月産200万台の木更津工場であった。この工場を見学したキャノンの御手洗氏の決断によってキャノンに導入されたという。by「イノベーションの本質」野中郁次郎/勝見明著/日経BP社2004年
*6)日経ストラテジー2005年12月号「現場のリーダーの条件」より
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イノベーション第3回

2014年09月07日 | ブログ
シュンペーターとドラッカー

 中小企業診断士の資格から、「商業」、「鉱工業」、「情報」の三区分が廃止された以降2001年から2005年の中小企業診断士試験の一次試験は、「中小企業経営・政策」、「企業経営理論」や「財務会計」など8科目だった。その8科目の中に、その後廃止されて企業経営理論に組み込まれた「新規事業開発」という科目があった。これが診断士試験の1科目に組み込まれていたことは、2001年以前から起業や新規事業開発を経産省も重要課題としてその対策に取り組んでいたことになる。

 「新規事業開発」の教科書にシュンペーター*2)とドラッカーが登場する。起業や新規事業に挑戦する企業(起業)家精神とはアントレプレナーシップであり、イノベーションを行う人であると言うことが彼らによって定義づけされたのだ。イノベーションを語る時、両巨人の残した至言を省くわけにはいかない。

 シュンペーターはその著書の中で、変化こそが経済発展であるとし、それをもたらすものがイノベーションであるとした。すなわちシュンペーターは「イノベーション」という言葉に初めて定義を与えた(1911年)。シュンペーターの残した「駅馬車をいくらつなげても鉄道にはならない」、「新結合」また「創造的破壊」などイノベーションを表現するにあまりに有名な言葉である。その5類型を以下のようにあげる。
       
1.新しい財貨の生産                              
2.新しい生産方法の導入
3.新しい販売先の開拓
4.原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得
5.新しい組織の実現(独占の形成やその打破)  (byウキペディア)

 一方ドラッカーは、「新しい“モノ”を生み出す機会となるものが変化で、イノベーションは意識的かつ組織的に変化を起こすものである」、また「イノベーションは“モノ”に限ったものではないと主張する」。1807年にアメリカの家具販売業者「クーパースエイド・アンド・サン商会」が採用したのだが最古の例とされている割賦販売*3)は、1850年代以後、ミシンのシンガーや農機具のマコーミック(現在のケースIH)などが次々にこの方式を導入し、潜在需要はあるものの経済的事情によって購入が進まない商品の販売に役立つことになったとされるが、これなどもイノベーションであるとする。

 さらにドラッカーはイノベーションには7つの機会があるとした。

機会1.予期せぬこと:予期できない出来事が発生するとき。
機会2.不調和:現実の姿とあるべき姿とのギャップがあるとき。
機会3.プロセスニーズ:ニーズが存在するとき。
機会4.産業と市場の構造:産業構造や市場に変化があるとき。
機会5.人口動態(デモグラフィック):人口構造に変化があるとき。
機会6.知識や意味づけや雰囲気の変化:ものの見方、感じ方、考え方に変化があるとき。
機会7.新しいナレッジ:新しい知識が出てきたとき。

 すなわち、イノベーションは発明、発見そのものではない。それらは7つの機会のひとつにすぎないのである。




*2)J.A.Schumpeter(1883-1950)現在のチェコスロバキア(当時はオーストリア・ハンガリー帝国)生まれ。ウィーン大学で博士号取得。ボン大学教授、オーストリアの大蔵大臣を歴任。1932年米国に移住し、ハーバード大学教授。20世紀の代表的な経済学者。シュンペーターについては本稿2011年6月1日「経済学のすすめ」でも取り上げており、重複する記述があります。
*3)わが国でも江戸時代から一部に後払い方式の販売があったようだ。
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イノベーション第2回

2014年09月04日 | ブログ
続・イノベーション25

 「環境・エネルギー」の項で最初にあったのが、「走れば走るほど空気を綺麗にする自動車が実現する」。人工光合成技術の利用等により、CO2をエンルギー源として走る車が実現する。というもの。すでに電気自動車は実用レベルにあり、水素を燃料とする乗用車も近くお目見えするらしい。しかし、人工光合成技術によって、二酸化炭素(CO2)をエネルギー源に出来れば確かに素晴らしいイノベーションである。

 必要な技術として、人工光合成技術があり、植物の光合成は太陽エネルギーの1%程度だが、人工光合成には3%以上が目標となるらしい。しかし、太陽光が必要なら夜間には走行できないし、曇や雨の日も出力不足になる恐れがある。炭酸ガスを燃料タンクに充填して、何らかの触媒層を通すことによって、炭素と酸素に分解する際に発生する?分解エネルギーを活用するものなのか、それとも分解して得た炭素をエネルギー源とする発想なのか。しかし、炭素を燃焼させるために放出した酸素を使えば結局元の木阿弥となる。よくわからない技術である。

 炭酸ガスまたは一酸化炭素を出発原料にして種々の化合物に変化させる試みはC1化学と呼んで相当昔から取り組まれている。例えばメチルアルコールの合成などの取り組みがある。しかし、採算性があって工業化されているという話は知らない。

 CD(コンパクトデスク)やDVDの基盤、車のヘッドランプやフーリガン対策の透明な盾などに使用されるポリカーボネートというプラスチック(一般的にはビスフェノールAとホスゲンから合成される*1))は、内部に-O-C=O構造を持つため、この部分に二酸化炭素を取り込む合成法が近年開発されたと聞いた。こちらも実用化されているものか知らないが、温室効果ガスをこのような形で利用できれば、一石二鳥で良い発想だと思う。

 エネルギー源として化石燃料を使わないように見えて、電気自動車であれば、電気が発電所で重油を焚いて得たものでおれば、送電によるロス等から効率はガソリン車の方がいいように思う。電気自動車を真に温室効果ガス削減に寄与させるためには、天然ガスや石油を使わない発電が求められる。

 本当に人工の光合成が可能となれば、これを自動車のエネルギー源に出来ないまでも、ビルの屋上や壁面等、日当たりの良い場所に設置して光合成を行わせれば、空気中の炭酸ガスの低減化に確実に貢献する。光合成は、植物の葉に含まれる葉緑素を触媒として、光のエネルギーを取り込み炭酸ガスと水からデンプンを合成し、植物自身の成長につなげ、大気中に酸素を放出する。20種程度のアミノ酸から作られる人体も、アミノ酸がミネラル分などの触媒作用で、ゆっくりと重合して形作られるものと推測する。このところ万能細胞の論議が盛んであるが、もしアミノ酸から臓器を作ることができれば、大きなイノベーションだけれど、そのためには未知なる生命の謎を解明する必要がある。

 「生活・産業」の項の最初には、「ヘッドホンひとつであらゆる国の人とコミュニケーション」というのがあった。あらゆる国ということは、相当数の言語の同時通訳が必要となるが、世界の主要言語に絞れば、早い段階で実現の可能性がある。

 外国語の看板や注意表示、レストランのメニューなどについては、専用のメガネを通せば、自国語に翻訳してくれるという試みはかなりのレベルになっているような報道を以前テレビで見た。英文の翻訳ソフトも相当前から簡易的に実用化されていたけれど、正しい文法で書かれた文章でないと、訳のわからない日本語に翻訳されていた。この頃のソフトはどの程度進化しているであろうか。言葉の壁は、コンピュータソフトのさらなる進化で早い時期に取り除かれる気がする。

 「生活・産業」の項には「食物の安全情報を一目でキャッチ」というのもある。食品に貼付された電子タグ等によって、買い物の際に生産からの流通履歴データを確認したり、レストランの注文の際にアレルギー情報を確認するなど、食物の安全情報を知ることができるシステムである。実現されればイノベーションであるが、アイディアはIT活用の延長線上にある。実現のためには、いかにサプライチェーン各所で、データの入力が簡便に確実に行える方策を実現することが肝となろう。データの信憑性も担保する必要がある。食の安全のためには、少々のコストアップは認めねばならないだろう。



*1)三井石油化学(現、三井化学)/GE法では、猛毒のホスゲンの代わりに、ジフェニルカーボネートを使った。

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イノベーション第1回

2014年09月01日 | ブログ
イノベーション25

 2006年の第一次安倍内閣の時、「夢ある未来実現のために」というビジョンの下、「イノベーション25戦略会議」なるものが発足し、担当大臣(高市早苗氏)を配してイノベーションの推進を図っていたようだ。「美しい国日本」の2025年の有り様を描いた夢の姿でもある。

 このイノベーション25戦略会議は、アベノミクスの三本の矢の一つ「成長戦略」に沿うもので、内容の見直し等は適宜必要ではあろうが、推進すべきであろうと思う。

 また、「イノベーション」という言葉は最近頓に氾濫しているが、何がイノベーションで何はイノベーションではないかの議論があるくらい、線引きが難しいところがあり、また何事も同じだろうけれど、イノベーションもピンからキリまで、身近なものから世界を変えるようなものまである。

 イノベーション戦略会議が2007年2月、中間報告としてまとめたこの国が目指すイノベーションの代表例は、イノベーションをどのように捉えるかの参考になると思われる。例示された項目は20。「医療・健康」と「環境・エネルギー」各3項目、「生活・産業」7項目、「安全・安心・快適な地域社会」6項目、「フロンティア」1項目である。

 それぞれの項目には、実現のための新たに必要な技術やシステムを上げ、技術的な実施時期と社会的適用時期を目標として掲げている。策定からすでに7年以上が経過し、現在2014年。多くの項目で、予定ではすでに技術的には到達していなければならないものもあるが、現実問題どこまで目標に近づいているのか、またはすでに実現しているのかなどについては知らない。今年の8月1日付けで内閣府のHPに組織の幹部名簿が載っており、イノベーション推進室の担当者名もあったので、継続されていることは間違いないようだ。

 まず「医療・健康」では、マイクロカプセルを1錠寝る前に飲むことで、朝にはすべての健康状態がわかるという健康診断のイノベーションが上げられている。診断システムと超小型健康管理デバイスの実用化が必要であるが、「カプセルを飲むこと」、「寝ている間」に、というところに革新性がある。しかし、人体の消化器官を通じての診断では、当面その範囲は限定的なものになるように思う。もっともこうした在宅で測定した健康診断データをインターネット経由で担当医師がチェックし、治療や投薬指示を行う遠隔医療も行うというシステムは、すでに過疎地医療に一部実用化されているように思われ、難しいことではなかろうと思う。予定では、2012年には家庭での健康診断システムが完成していなければならないが、普及しているような気配は今のところない。

 IT活用ということであれば、現在医療施設毎に発行している診察券にICチップを組み込んで、当人の医療(カルテ)情報をすべて記録しておき、その1枚でどこの医療機関でも使用でき、世界のどこでも過去の検査・治療の実績を参考に診療が行えるシステムとすることは出来ないかと考える。このシステムだけなら実現性が高そうだし、優先順位が高い気がする。投薬や検査の重複を避け、高騰する医療費の国庫負担を削減するためにも効果的と思われるのだが。続く



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