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続、品質保証再考其の15

2010年10月13日 | Weblog
プロセス保証と工程能力調査

 「プロセス保証とは、決められた手順・やり方どおりに行えばプロセスの結果が目的どおりとなるように、人材、材料、機械、作業方法、設備、作業手順の設定などを規定し、そのとおりに実践し、必要に応じて処置をとる一連の活動を指す。また工程能力とは、対象とするプロセス(工程)において、継続的に規格に対する適合品を生産する能力である」とガイドブックは定義している。

 そしてプロセス保証を実践するための手順が解説されているが、実はガイドブックでは次章第11章の「工程異常の検出と管理の技法」で、「QC工程表」について解説している。プロセス保証を実践するための手順とは、要は実用的なQC工程表*19)を作成するための手順に思える。プロセスを定義して(製品別、銘柄別工程の特定)、プロセス保証の定義にあるように人材、材料、機械、作業方法、設備、作業手順の設定などを規定し、そのとおりに実践し、工程能力を評価し、検査体系を決定してQC工程表に反映させる。

 本稿でも以前に触れたけれど、初期の品質保証は、プロセスのアウトプットである製品の検査による不良品の篩分けによって行うとしていた。この考え方は、ISO9000の初版である1987年版にも残っており、ISO9003規格がそれであった。しかし、検査には生産者危険としてのコストの増大があり、消費者危険として不良品の購入の懸念が残る。工程管理の充実による品質保証が重要となったのである。工程を安定させるためには、自社のプロセスを充実させるだけでなく、調達部品や原材料からの管理が必要であり、品質保証にはさらに、製品設計段階の管理が必要である。その意味からISO9000規格は、その後ISO9001に統合された。

 工程を管理するには、工程データから工程能力(CpやCpk)*20)を計算し、CpやCpkが1.33未満の場合は改善が必要である。ガイドブックにはいろいろな工程能力やその算出方法が述べられている。

 シックスシグマでは、不良を6σ以下に抑える目標が有名であるが、これは短期的に6σ(工程能力ではCp=2となる)を達成するが、長期的は規格中心からの製品特性値の平均値のずれによって、片側4.5σの場合の不良率(3.4ppm)に落ち着くレベルということであった。工程能力の理想範囲を1.33~1.67*21)と学んだが4.5σはまさにその範囲の中央にあたる。
 




*19)一般にQC工程表(QC工程図)は、工程毎の管理項目や規格値や検査とその頻度、管理者、管理資料など、精巧に作られるが、現場のフロー図と併記して、検査などで工程異常が発見された場合に、どの工程にフィードバックするかのフローを必ず入れることが重要であり、現場の担当者にも分かりやすい工程表の作成が望まれる。
*20)規格幅を、検査で得られた製品の特性値の標準偏差(s)の6倍で割って求める。片側規格の場合は、規格値と検査で得られた製品特性値の平均値の差を3×s(標準偏差の3倍)で割る。特性値の中心が、規格の中心からずれ(カタヨリがある)ておれば、カタヨリ度(K)を計算して補正する。CpとCpk両方を計算して評価しないと、バラツキとカタヨリどちらが悪いかが分離できない。
*21)高すぎる工程能力は過剰品質を生むため、コスト削減の対象となる。

註!ガイドブックは、前稿「問題解決・課題達成法」に続いて、第7章に「統計的品質管理」(本稿今年6月に「統計(学)のすすめ」で触れた)、第8章では、製品の使用環境の変化、使用条件のばらつき、製品に使用する部材の劣化、部材の生産ばらつきに対して強くするように設計値を決める「ロバスト(条件変化に強い)設計」、第9章にデジタルエンジニアリングとしてCAD、CAMの解説があるが、割愛した。

本稿は (社)日本品質管理学会編2009年日科技連刊“新版品質保証ガイドブック”(「ガイドブック」と略称)第Ⅲ部第10、11章を参考にしています。
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