立体規則性
私がポリエチレン用触媒の研究室での仕事を始めた当時、隣の研究室ではプロピレン用触媒の改良研究が行なわれていた。ポリプロピレンの製造では、脱灰と共にアタクチックポリマー(立体規則性でない)を除去する工程が必要であった。無脱灰化に優先して脱アタクチックポリマー(脱アタ)工程をなくすため、高立体規則性を得る触媒の開発に注力していた。
ナッタ博士の三塩化チタンによる立体規則性ポリプロピレンといって、そのままでは実用レベルのポリプロピレンは得られない。工業的にはアタクチックポリマーを除去するという工程を設け、敢えてモノマーロス、すなわち歩留まりの悪さを容認するしか方法がなかったのである。
エチレンと異なりプロピレンは、エチレンにメチル基が一個ぶら下がっている。このメチル基がポリマー中に規則正しく並ぶ(立体規則性を得る)ためには、プロピレンモノマーが活性点であるチタンに接触する際に、同じ方向から入り続ける必要がある。三塩化チタンは表面の凹凸によって、プロピレンモノマーの侵入をメチル基のぶら下がっている逆の方向に規制出来たので、立体規則性ポリマーを得られたが、どうしても凸部分のチタンに触れたプロピレンモノマーは不規則なアタクチックポリマーを生成させるのである。
この対策として、酸化エチレンの選択率を上げるために、インヒビターを投与していたように、触媒毒を少量添加することで、触媒活性は犠牲にして凸部分のチタンの活性をなくすという方法が取られていたが、未だ十分ではなかった。
勿論、三塩化チタンの改良に留まらず、ポリエチレン用高活性触媒の知見も取り入れながら、高活性でしかも立体規則性に優れた触媒の開発も進めており、その後チーグラー触媒系の研究は同じ研究室で行うようになり、私もポリプロピレン用の触媒に関わることになる。
現在も使われていると思われるポリエチレン用の高性能触媒がラボで最初に合成されたのは昭和48年5月。翌年の5月には、この触媒を使用した新製造技術の開発発表がされている。同時期ポリプロピレン用高性能触媒も課題を残しながらも実用化レベルに達していた。
ここら辺りの話は、このホームページの最初のコラムである「プロジェクトZ」に書いた。2008年4月から5月の20回に亘り掲載しているうちの9、10、11、14、17回が該当する。今回繰り返している部分もあるが、記事一覧からぜひ検索していただきたいと思う。
私がポリエチレン用触媒の研究室での仕事を始めた当時、隣の研究室ではプロピレン用触媒の改良研究が行なわれていた。ポリプロピレンの製造では、脱灰と共にアタクチックポリマー(立体規則性でない)を除去する工程が必要であった。無脱灰化に優先して脱アタクチックポリマー(脱アタ)工程をなくすため、高立体規則性を得る触媒の開発に注力していた。
ナッタ博士の三塩化チタンによる立体規則性ポリプロピレンといって、そのままでは実用レベルのポリプロピレンは得られない。工業的にはアタクチックポリマーを除去するという工程を設け、敢えてモノマーロス、すなわち歩留まりの悪さを容認するしか方法がなかったのである。
エチレンと異なりプロピレンは、エチレンにメチル基が一個ぶら下がっている。このメチル基がポリマー中に規則正しく並ぶ(立体規則性を得る)ためには、プロピレンモノマーが活性点であるチタンに接触する際に、同じ方向から入り続ける必要がある。三塩化チタンは表面の凹凸によって、プロピレンモノマーの侵入をメチル基のぶら下がっている逆の方向に規制出来たので、立体規則性ポリマーを得られたが、どうしても凸部分のチタンに触れたプロピレンモノマーは不規則なアタクチックポリマーを生成させるのである。
この対策として、酸化エチレンの選択率を上げるために、インヒビターを投与していたように、触媒毒を少量添加することで、触媒活性は犠牲にして凸部分のチタンの活性をなくすという方法が取られていたが、未だ十分ではなかった。
勿論、三塩化チタンの改良に留まらず、ポリエチレン用高活性触媒の知見も取り入れながら、高活性でしかも立体規則性に優れた触媒の開発も進めており、その後チーグラー触媒系の研究は同じ研究室で行うようになり、私もポリプロピレン用の触媒に関わることになる。
現在も使われていると思われるポリエチレン用の高性能触媒がラボで最初に合成されたのは昭和48年5月。翌年の5月には、この触媒を使用した新製造技術の開発発表がされている。同時期ポリプロピレン用高性能触媒も課題を残しながらも実用化レベルに達していた。
ここら辺りの話は、このホームページの最初のコラムである「プロジェクトZ」に書いた。2008年4月から5月の20回に亘り掲載しているうちの9、10、11、14、17回が該当する。今回繰り返している部分もあるが、記事一覧からぜひ検索していただきたいと思う。