生産
先日、テレビ東京開局45周年記念ドラマ、浅田次郎原作「シューシャインボーイ」を観た。東京大空襲で焼け野が原になった東京で、戦争孤児になった主人公が靴磨きから身を起こし、現代に実業家として成功している。主人公は多くの食品加工工場を持つ食品製造会社の社長。社長は、毎日各工場の現場を回って、製品への異物混入を徹底排除する取組みを実践している。口に入るものを作っているのだからと、消費者の絶対安心をモットーに、信用第一で会社を大きくしてきた。現在の事業のきっかけとなる弁当屋を始めた時から一緒に苦労してきた、食品素材供給業の企業でさえ、産地偽装の食品を納入したとして一切の取引を停止する。これらのことはドラマの主題ではないが、食品業界の品質管理の取り組みの厳しさの一端を見せていた気がして、共感するところが大であった。
どのような業種であれ、生産現場は過酷である。というより、それだけ絶対的な真摯な取り組みを必要とする。品質、納期を確実に守りながら、働く人々と設備の安全を確保し、厳しい原価管理を要求される。また、新たな市場のニーズに応える製品仕様変更による、原材料の変化や工程変更にも対応する必要がある。同じように作っているようで、日々刻々経験を積むことで得られる工夫を、コスト低減につなげていかなければならない。緩めば落伍してゆく。
それらのために、どのように生産活動を管理してゆけばいいのか。ガイドブックには、まず「工程管理計画の作成」として、QC工程表の作成や作業標準の作成を挙げている。何度も繰り返すけれど、工程が安定していなければ、出荷検査だけで品質を保証することは出来ない。続いて「生産準備・工程設計の妥当性確認」を挙げているが、ここまでは生産準備・工程設計のプロセスに重なる部分である。
生産が開始され「初期流動管理」が始まって真に生産プロセスとなる。航空機などでもパイロットは発着陸に最も神経を使うと聞く。生産設備にあっても開始されて定常状態に入るまでは、特に入念な点検を必要とする。
定常状態を確認できれば、通常の工程管理と工程改善に移る。本稿第13回の「日常管理」で述べたけれど、改善業務は事前に計画されたもの、すなわち方針管理としてあがっているものもあるけれど、日々の業務の中で発生する問題や不具合を、その場その場で解決を図らねばならないものも多い。また従業員の作業管理として、技能レベルを向上させるための教育や、思わぬヒューマンエラーを防止する施策も検討しなければならない。
「設備管理」、「計測管理」など、現場の運転監視業務に加えてメンテナンス担当者による保守点検も必要となる。加えて部品や原材料や添加物の取り違えを起こさない取組みとしての「識別管理」が重要である。また、この製品は、どの材料を使い誰がいつどの設備で作ったものかなどを追跡できるトレーサビリティを確保するためにも「識別管理」は必要となる。
安全は、人と設備と社会的信用を守るために生産活動の前提となる。また、企業は有害物質、騒音や振動の発散を最小限に抑える義務がある。最近ではCO2排出量削減のためのエネルギー削減が大きな課題である。
生産現場で働く人々は、いわば指示された定型業務をこなす一般従業員がほとんどだけれど、従来日本のものづくりは、ここで働く人々の熱意と創造力と感性に支えられてきた。現場から日々あがってくる情報ほど、プロセスの進化にとって重要なものもないのではないか。
品質保証プロセスは、この後、「調達」、「物流」、「販売」、「アフターサービス」、「回収・廃棄・再利用」、「サービス設計」そして「サービス提供」さらに「品質保証システムの構築と改善」と続く。本稿第11回「品質保証体系図」で、「ガイドブックは、本文1,216ページから成るゆえ1,216分の1の品質保証体系図であるけれど、・・・」と書いたけれど、「品質保証システムの構築と改善」の章にはより詳細に品質保証体系図を取り上げている。
今回の品質保証のプロセス「生産」までで、ガイドブックのまだ133ページしか進んでいない。またの機会に引き続きガイドブックを頼りに品質保証を語ってみたい。
本稿は (社)日本品質管理学会編2009年日科技連刊“新版品質保証ガイドブック”を参考にしています。
先日、テレビ東京開局45周年記念ドラマ、浅田次郎原作「シューシャインボーイ」を観た。東京大空襲で焼け野が原になった東京で、戦争孤児になった主人公が靴磨きから身を起こし、現代に実業家として成功している。主人公は多くの食品加工工場を持つ食品製造会社の社長。社長は、毎日各工場の現場を回って、製品への異物混入を徹底排除する取組みを実践している。口に入るものを作っているのだからと、消費者の絶対安心をモットーに、信用第一で会社を大きくしてきた。現在の事業のきっかけとなる弁当屋を始めた時から一緒に苦労してきた、食品素材供給業の企業でさえ、産地偽装の食品を納入したとして一切の取引を停止する。これらのことはドラマの主題ではないが、食品業界の品質管理の取り組みの厳しさの一端を見せていた気がして、共感するところが大であった。
どのような業種であれ、生産現場は過酷である。というより、それだけ絶対的な真摯な取り組みを必要とする。品質、納期を確実に守りながら、働く人々と設備の安全を確保し、厳しい原価管理を要求される。また、新たな市場のニーズに応える製品仕様変更による、原材料の変化や工程変更にも対応する必要がある。同じように作っているようで、日々刻々経験を積むことで得られる工夫を、コスト低減につなげていかなければならない。緩めば落伍してゆく。
それらのために、どのように生産活動を管理してゆけばいいのか。ガイドブックには、まず「工程管理計画の作成」として、QC工程表の作成や作業標準の作成を挙げている。何度も繰り返すけれど、工程が安定していなければ、出荷検査だけで品質を保証することは出来ない。続いて「生産準備・工程設計の妥当性確認」を挙げているが、ここまでは生産準備・工程設計のプロセスに重なる部分である。
生産が開始され「初期流動管理」が始まって真に生産プロセスとなる。航空機などでもパイロットは発着陸に最も神経を使うと聞く。生産設備にあっても開始されて定常状態に入るまでは、特に入念な点検を必要とする。
定常状態を確認できれば、通常の工程管理と工程改善に移る。本稿第13回の「日常管理」で述べたけれど、改善業務は事前に計画されたもの、すなわち方針管理としてあがっているものもあるけれど、日々の業務の中で発生する問題や不具合を、その場その場で解決を図らねばならないものも多い。また従業員の作業管理として、技能レベルを向上させるための教育や、思わぬヒューマンエラーを防止する施策も検討しなければならない。
「設備管理」、「計測管理」など、現場の運転監視業務に加えてメンテナンス担当者による保守点検も必要となる。加えて部品や原材料や添加物の取り違えを起こさない取組みとしての「識別管理」が重要である。また、この製品は、どの材料を使い誰がいつどの設備で作ったものかなどを追跡できるトレーサビリティを確保するためにも「識別管理」は必要となる。
安全は、人と設備と社会的信用を守るために生産活動の前提となる。また、企業は有害物質、騒音や振動の発散を最小限に抑える義務がある。最近ではCO2排出量削減のためのエネルギー削減が大きな課題である。
生産現場で働く人々は、いわば指示された定型業務をこなす一般従業員がほとんどだけれど、従来日本のものづくりは、ここで働く人々の熱意と創造力と感性に支えられてきた。現場から日々あがってくる情報ほど、プロセスの進化にとって重要なものもないのではないか。
品質保証プロセスは、この後、「調達」、「物流」、「販売」、「アフターサービス」、「回収・廃棄・再利用」、「サービス設計」そして「サービス提供」さらに「品質保証システムの構築と改善」と続く。本稿第11回「品質保証体系図」で、「ガイドブックは、本文1,216ページから成るゆえ1,216分の1の品質保証体系図であるけれど、・・・」と書いたけれど、「品質保証システムの構築と改善」の章にはより詳細に品質保証体系図を取り上げている。
今回の品質保証のプロセス「生産」までで、ガイドブックのまだ133ページしか進んでいない。またの機会に引き続きガイドブックを頼りに品質保証を語ってみたい。
本稿は (社)日本品質管理学会編2009年日科技連刊“新版品質保証ガイドブック”を参考にしています。