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産業毎の品質保証第17回

2014年05月22日 | Weblog
情報システム・ソフトウェア分野の品質保証

 社会学者エズラ・ヴォーゲルによる「ジャパンアズナンバーワン」(原題:Japan as Number One)が出版されたのは1979年というが、わが国はその後急速な円高と1990年代初頭のバブル崩壊以降、欧米の逆襲もあって停滞期を長く続けることになった。欧米がTQC(TQM)などわが国の経営手法を謙虚に学び、学校教育にまで取り入れた。

 彼らは日本式経営手法の良いところを体系化、システム化し、新しいテクノロジーを付け加え、数々のエンジニアリングにまとめあげた。SCM*19)、ナレッジマネジメント*20)、コンカレント・エンジニアリング*21)、そしてリエンジニアリング*22)までを可能にした。本格的なグローバル化と情報化時代を迎え、情報システム活用においてわが国は遅れを取ったのである。それらは従業員のIT機器を使いこなす能力の差とも相俟って、わが国の競争力優位を損なわせたともいえる。

 太平洋戦争だってそうだ。日米の工業力の差が歴然としていたこともあるけれど、その差は、たとえば乗用車の普及の程度によって、国民が車を運転する能力に反映されていたのだ。それは国民一人一人の兵士としての能力差となっていた。国力の差とは結局国民一人一人の能力の総和で決まるものなのである。

 情報システムと聞けば、合併によるシステム統合の不具合で大きなトラブルを招いた大銀行の話などを思い出すけれど、国家ぐるみのサイバー攻撃などもあり、便利さの半面で大きなリスクも取りざたされる。

 「ガイドブック」は、情報システムやソフトウェアの品質保証に関する市場、顧客、製品の特徴について次のように述べている。

 『①「目で見ることができない」。機械語の羅列を見ても、その品質の良し悪しは判断できないのである。②「顧客ニーズの多様化」。信頼性に加えて使いやすさなど多様な品質特性が重視される。③「一品一様のものを短納期で求められる」。④「製品の複雑化」既存のパッケージソフトウェアやオープンソースソフトウェアを組み合わせて利用する形態が多く、組み合わせる分、製品の構造が複雑になる欠点がある。⑤「ネットワーク化の進展に伴うセキュリティ上の脅威」。サプライチェーン・マネジメントのように他社の情報システムもネットワークを介して連携することが多く、さらに脅威は拡大する。⑥「高度の信頼性が求められる」。銀行のオンラインシステムなど社会基盤を支えるソフトウェアなど、その障害が与える影響範囲は大きい。』

 またこれら6つの特徴のそれぞれ対応する品質保証については次号。




*19) Supply Chain Management:供給連鎖管理
*20) Knowledge Management「KM」:知識管理(個人の持つ知識や情報を組織全体で共有し、有効に活用することで業績を上げようという経営手法)。
*21) Concurrent Eengineering「CE」: 同時進行技術活動(製品開発において概念設計/詳細設計/生産設計/生産準備など、各種設計および生産計画などの工程を同時並行的に行うこと)。
*22) Re-engineering:業務・組織・戦略をゼロから根本的に再構築すること。

本稿は、(社)日本品質管理学会編2009年日科技連刊“新版品質保証ガイドブック” (文中「ガイドブック」と略称)第Ⅳ部第5章「情報システム・ソフトウェア分野の品質保証」を参考にし、『 』内は直接の引用です。

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