中小企業診断士 泉台経営コンサルタント事務所 ブログ

経営のこと、政治のこと、社会のこと、趣味のこと、人生のこと

日常管理の基本と実践第10回

2016年02月28日 | ブログ
見える化

 「見える化」という言葉も最近では、「改善」や「5S」と同等くらい現場の汎用語となった。『日常管理は、“やるべきことを明確にする”、“やるべきことを実施する”、“異常・例外があれば迅速に対応する”、“変化に対応して積極的に改善する”ことが基本となる。そのそれぞれのステップで「見える化」が必要なのである。「見える化」は見える化そのものが目的ではなく、日常活動のSDCA/PDCAを事実に基づいて回し、質を工程で作り込むために、及び問題を発生時点で顕在化しスピーディに解決するために、実施するものである』

 久保田洋志著「日常管理の基本と実践」JSQC新書には、次の10種の「見える化」を上げている。

『①やるべきことの明確化と見える化

 ②やるべきことの実施と見える化
  ・業務プロセスの見える化
  ・工程の見える化
  ・ビジネスシステムの見える化
  ・現在の状況の見える化
  ・将来の状況の見える化

 ③異常・例外の見える化

 ④管理サイクルの見える化

 ⑤改善すべき事項と改善成果の見える化

 ⑥経験と知恵の見える化
  経験の情報共有化と暗黙知の形式知化は経験の見える化であり、以下は知恵の見える化である。
  ◉アプローチの知恵(段取り替え・調整改善のポイント、QCストーリーとQC手法、なぜなぜ分析、ECRS(排除・結合・置換・簡素化)など)
  ◉着眼点・ヒント(5S、ムダ・ムリ・ムラ、5M(人・材料・機械設備・方法・計測)、PQCDMSE(生産性・質・コスト・納期・士気・安全・環境)など)
  ◉スキル(スキルマップ、技術マップ、人材マップなど)
  ◉理論・解釈(個別解の一般解化、思考プロセス、理論・経験則、カットモデル)
  ◉改善策(改善シート、ポカヨケ、べからず集、成功・失敗事例など)

 ⑦顧客の見える化と顧客にとっての見える化

 ⑧第一線の業務遂行のための見える化

 ⑨経営・管理業務遂行のための見える化

 ⑩見える化の方法の効果的な活用
  ◉標準化(類型化、個別化)
  ◉文書化・規定化(業務分掌、マニュアル、記録、処理規定)
  ◉ビジュアル化(生産予定・実績表、各種冶具・備品置き場表示、各種掲示板による表示など)
  ◉装置化(かんばん、アンドン(異常表示、呼び出し、自動化)、ナビゲーション、タッチパネル、センサ設置など)
  ◉IT化(情報共有、経営管理システム、営業・物流プロセスなど)

 これら見える化手法の適用可能性を追求し、日常管理を効果的に実施するために積極的に活用する必要がある。』



本稿は、久保田洋志著「日常管理の基本と実践」JSQC新書、2008年9月、財団法人日本規格協会発行、第3章「日常管理の基本条件の整備」を参考にし、『 』内は直接の引用(一部筆者編集)です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日常管理の基本と実践第9回

2016年02月25日 | ブログ
5Sの効能

 先に「神は綺麗好き」と紹介した。少し前になるが、「トイレの神様」という歌謡曲がヒットした。こちらは「トイレには綺麗な女神さまが居る」ということだったが、歌詞の中のおばあちゃんの言いたかったことも同様で、清掃・清潔の重要性を諭している。

 この国のトイレは汲み取り式が近年まで続いていたので、確かに臭いし不潔であった。公衆トイレなどもひどいところが多かったけれど、水洗式が行き渡り、様式となり、さらにウォシュレット付きと進化し、今やこの国のトイレ設備は世界一のようだ。ホテルやデパートは勿論、駅や飲食店、スーパーマーケット、ホームセンターのトイレまで外国人も驚くほど綺麗になった。しかもトイレの入り口付近には、日常点検のチェックシートまで掲示されており、点検・清掃の実施状況が利用者に分かるようにしているところもある。

 訪日外国人が急速に増加している今日、公衆トイレが綺麗ということは誇っていい「おもてなし」の第一歩かもしれない。それにしてもいかがわしい隣国からの観光客を誘致するためにビザ発給要件を緩和するとか、免税店を増加させるなどは、行き過ぎたおもてなしである。外務省や公安は自分達の仕事を減らすためかどうかは知らないが甘過ぎる。日本人からしっかり消費税を取り、遊びに来る外国人に何で安く物を売らねばならないのか。「爆買い」などと喜んでいたら、今に反動が来る。来ていただけるのは普通の観光客でいいのだ。

 「日本を訪問する中国人観光客は近年増加傾向にありますが、こうした人的交流の拡大は、日中両国の相互理解の増進、政府の観光立国推進や地方創生の取組に資するものです。今回のビザ発給要件緩和措置により、日中間の人的交流が更に一層活発化することが期待されます。」これが、中国人に対するビザ発給要件の緩和理由の3番目にあるが、こちらの好意がそのまま伝わる国家・国民ではなく、日本の左寄りテレビはほとんど報道しないけれど、反日軍事行動準備の拡大傾向は進行するばかりである。

 話が横道に逸れた。5Sの効能を、久保田洋志著「日常管理の基本と実践」JSQC新書から引用する。

 『“整理”は、効率的で、紛失・異品混入などの不具合が発生しないように日常活動の障害を排除する行為で、不要・余分なモノは買わない・置かない・作らない・流さない、通路を横切る配管・コード・ホース等を溝に挿入して障害物を除去するなどが含まれる。

 “整頓”は、日常活動におけるモノと仕事の円滑な流れを形成し、流れと停滞・滞留が見えるとともに、不具合の混入防止と先入れ先出しを徹底する行為で、定置・定量、使いやすい配置・保管、適切でわかりやすい表示、明確な区分(不適合品・良品・保留品、処理済・未処理、処置の緊急性・納期区分、ロット・仕向け先・得意先・顧客別)の明確化、高さ・幅・置き方・はみ出し・置き出し規制、用途・使用者の明確化などが含まれる。

“清掃”は、日常活動における安全の確保、設備・機器の劣化防止と異常の検知、整理・整頓・清潔の促進をするとともに、働く人が責任感と緊張感をもって業務遂行する環境を醸成する行為である。

 “清潔”は、日常活動を実施する職場の衛生、働く人と顧客に対する明るい職場の物質的環境整備、コンタミネーション・毛髪等の排除による不具合発生の予防などの行為である。

 “しつけ”は、規律、標準、これ以外のS(整理・整頓・清掃・清潔)の徹底と順守を習慣づけ、反射的に行動するように指導・支援する行為である。・・・』



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日常管理の基本と実践第8回

2016年02月22日 | ブログ
5S

 「神は細部に宿る」とは、芸術の世界などで言われ始めた言葉のようだが、古くからの格言のようでさえある。優れた人ほど何を行うにも細部にこだわる。細部にまで細かい神経を使う。細部を疎かにしない。企業や組織にもこれが重要である。

 このところ、自由民主党議員の面々にポロポロと批判の的になるような言動が出る。明らかに政党組織の細部が壊れかけている。人事管理が行き届いていないのだ。ヘボの野党相手では緊張が緩んだものであろうが、これが恐い。

 特に、育休議員が全休することになった事件は、甘利大臣辞任劇より深刻である。従来の政治家による女性関係のトラブルの域を越えており、単にプレイボーイが政治家に成り上がった感のする事件だ。このような人物を自由民主党が公認していたことは安倍総裁、谷垣幹事長は相当重く受け止めなくてはならない。大臣の後任は首相が指名できるが、議員辞職は補欠選挙の洗礼がある。

 甘利大臣の辞任劇では、その後内閣支持率が下がるどころか、どこの社の調査でも幾分上向いて、「何でかな?」状態だったけれど、安倍首相の人事の巧みさで、後任人事によるものと思われる。地味な甘利さんより、失言の恐れは大いにあっても、慎太郎ジュニアの話題性の方が、国民はお好みなのだ。TPPや経済の事は、国民のほとんどは分かってはいない。分かったつもりの評論家さえ当てになるものでもない。それなら少し危なかしいけれど、何となく華のある人物の登場に庶民はひかれるもののようだ。

 参議院選挙に向けて、またまた自民党はタレント的な人物を引っ張り出すような報道がある。民主党への政権交代時の選挙では民主党が、多くの小沢ガールなるのものを誕生させたが、与野党とも国会議員をあまりに軽く見ていないか。まさに党の細部が問われていることを、政党幹部はもっと自覚すべきだ。知名度も必要ではあろうが、しっかりした国家観、見識、国民の範となろうとする自覚こそ問われる。それらに政党が責任を持ってお墨付きを与えられる人物でなければならない。

 「神は綺麗好き」という言葉もある。ゴミ屋敷やゴミの部屋に住んでいるような人に幸せは来ない。なぜなら「神は綺麗好き」だからなのだ。潔癖症と疑われるほど周辺を磨きあげることはないが、整理・整頓・清掃・清潔は人間がより良く生きる上で非常に重要な要素だ。企業活動においては5S活動が日常管理における基本となる。

 久保田洋志著「日常管理の基本と実践」JSQC新書によれば、『5Sは、整理(Seiri)、整頓(Seiton)、清掃(Seisou)、清潔(Seiketsu)及び躾(Shitsuke)から構成され、第一線の活動の基本前提となる国際的な通念となっていて、日本語がそのまま使われている』とある。「改善(Kaizen)」などはそのまま世界で通用する言葉となっていることは有名であるが、「5S」もそうとは知らなかった。以下次号
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日常管理の基本と実践第7回

2016年02月19日 | ブログ
適材適所と教育・訓練

 良い企業・組織ほど、この教育・訓練を重視する。いかに当該業務にかかる資格保有者であっても、例えば全くの新米医師が大病院に勤務するようになったとして、やらせてみて失敗したら「お前の所為だ」で済むわけではないだろう。病院による経営理念等の違いからくる患者との接し方の異なりもあろう。そのことを含め導入教育は徹底的に行うシステムがなければならない。それが当該企業・組織の日常管理を徹底充実させる始まりでもある。

 特定の先輩に指導を任せるにしても、明確な指導のガイドラインがなければならない。人間関係の好悪が教育の質を異ならせるようなことがあってはならないのである。しかし、これが意外と公的機関でさえ出来ていないのではないか。忙しいという言い訳で、教育・訓練を蔑ろにしている組織は、やっぱり業績は上がらない。業績が上がらなくても税金で食ってる連中に痛みはないからやっかいである。無責任な公務員が多いことは、大阪府警の捜査書類や証拠品の杜撰な管理が顕在化したことでも伺われる。日常管理の当たり前のことが出来ていないのだ。一般企業でも目先の儲けに囚われて、従業員への投資を怠ると将来の繁栄は望めない。

 碓井バイパスのバス転落事故を受けて、大型Ⅱ種免許を所有している運転手でも、それなりの教育・訓練が必要なことを国もバス会社も肝に銘じたであろうか。本人は大型バスの運転経験が乏しいので、やりたくないという申告を無視して、人手不足に感けて出来ないことをやらせてはなるまい。まさか旅客機のパイロットにそのような事はさせないだろう。プロペラ機で何万時間を飛んでも、急に旅客を乗せてジャンボジェットの操縦はない。大型バスの運転手も、パイロット同様多くの他人の命を預かることに違いはない。旅客機は一機300億円で、バスは一台8000万円だからなどと事故った時の物損で測るなどは当然に論外である。

 『規定した業務遂行に必要な要件を明確に定義するとともに、業務によっては、必要となる知識・スキル、求められる姿勢・意識・責任感、基本となる考え方・基礎理論が異なるので、適材適所で業務割付けを実施する必要がある。日頃からスキルマップ(本人の業務遂行能力レベルを図に表したもの)等に基づいて、不足のスキルを教育・訓練によって埋めながら、小集団活動なども取り入れ、職務充実(現在の業務のレベルを上げる)、職務拡大(今の業務と異なる業務もこなせるようになる)による多能工化・多専門化を進め、変化する組織・企業環境に柔軟に対応した業務遂行ができるようにすることも重要である。』

 教育・訓練は、企業人としての従業員のスキルを向上させるだけでなく、本人の人間的成長を促し、また業務に対する自信が満足感を生む。いかなる業種においても従業員満足なくして顧客満足はない。




本稿は、久保田洋志著「日常管理の基本と実践」JSQC新書、2008年9月、財団法人日本規格協会発行、第2章「日常管理の基本」を参考にし、『 』内は直接の引用です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日常管理の基本と実践第6回

2016年02月16日 | ブログ
日常管理の進め方

 前回、日常管理の基本について述べた。ではその日常管理の進め方はどうすればいいのか。引き続き、久保田洋志著「日常管理の基本と実践」JSQC新書から引く。

 前稿で述べたことの繰り返しになるが、日常管理の基本を概念として捉えると、『①業務の目的・各部門の役割・責任分担の明確化、権限委譲の明確化。②業務の重複・隙間の明確化・調整、業務の成果と異常の明確化、見える化。③業務上の問題点の明確化と改善、方針管理活動推進上の基盤、変更・変化点の管理』となる。そして今回の主題である「日常管理の進め方」は、

『①各部門の業務分掌の確認と業務内容の整理
 ②各業務の目的と内容の確認及び目的達成の尺度(管理項目)と管理水準の明確化
 ③目的達成のための仕事の進め方(業務遂行と管理の方法)の標準化
 ④適材適所と教育・訓練の実施
 ⑤業務を管理するための資料準備と標準に従った業務の実施
 ⑥業務実施結果の記録と結果の良否の判定
 ⑦結果に異常が発見された場合の速やかな応急処置と上司への報告・連絡・相談
 ⑧管理監督者は作業者とともに、5ゲン主義で異常原因を追究し再発防止
 ⑨異常の内容に応じて、必要があれば標準書、管理項目、管理水準を改訂
 ⑩管理すべき事項を所定の期間で整理し上司に報告
 ⑪調整作業が多いなど、改善を要する業務は部内で検討し計画的に改善』

 これ(進め方)はPDCAに沿っていることが判る。①~④がプラン(P)、⑤で実施(D)、⑥チェック(C)、⑦~がアクション(A)である。

 日常管理では標準化が云われるが、上記③にある通りである。また、私は企業を訪問させていただいた際、またセミナー講師として品質管理の話をするとき、「御社の業務を一度業務フロー図にしてみて下さい」というお願い毎回する。このことは、「日常管理の基本と実践」にもしっかりと書かれている。『業務の遂行と管理の方法を具体的に明確にするために、業務フロー図(business flowchart)を作成し、各業務の達成すべき出力要件と実施する手順と方法を標準化する。』

 また、その『業務フロー図の作成手順は以下の通りである。

 手順1:業務フロー図の横軸には、“実施部署”、“情報経路(フィードバック)”、“合議体”、“帳票類”、“標準類”を記入する。ただし、“合議体”、“帳票類”、“標準類”は個別の列を設けずに同列で表現することも多い(一般的にはフロー図の右端に欄を設けて、業務の流れ図と別枠で表示する)。

 手順2:“実施部署”欄は、必要に応じて部門(部及び課)から、更に担当レベルまで展開して欄を作成する。

 手順3:縦軸には業務の手順(ステップ)を記入する。

 手順4:工程図記号を用いて業務の流れ図を作成する。

 手順5:制・改訂の年月日などフロー図の改訂履歴を明確にする。』

 たとえば、当該企業の業務がものづくり、すなわち製造業であれば、この業務フロー図の中心部は製造工程となるが、その部分をさらに詳細に描いたのが、製品品質を管理するための「QC工程図」である。「QC工程図」も業務フロー図の一形態であるが、双方共に重要なことは、各ステップでの管理・点検項目を明確にし、その管理基準を明記すること。異常を発見した場合の連絡部署へのフィードバックのフローを明確にしておくことである。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日常管理の基本と実践第5回

2016年02月13日 | ブログ
日常管理の基本

 大きな事件や事故が日常管理の不徹底から起こっていることを述べてきた。類型の事件や事故はいくらもあり、今後もまたまた起こる恐れが強い。リスクを最小にする努力が求められる。

 それでは日常管理はどのように行わねばならないのか。物事にはまず基本があり、基本をしっかり押さえることが肝要である。JSQC新書、久保田洋志教授の「日常管理の基本と実践」から引く。

 (1)“やるべきことは何か”を明確に規定する。
 (2)“きっちりとやるとはどのように実施することなのか”を明確に規定し、それが実施できるようにする。
 (3)“やるべきことをきっちりやったことをどのように管理するのか”を明確に規定し準備しておく。の3点である。

 これは、並列ではなく、積み上げであり、3つで一体である。やるべきことを明確にするだけではだめで、やるべきところの要点を明確にし、やったことがはっきりするように管理しなさいとある。決めごととはこうあるべきなのだ。決めただけで、その中身が見えなくてはやり方が判り難いし、やらなければ意味はない。やったことは常にきっちりと検証する方策がまた決められていなければならない。

 「やるべきことは何か」。まずは各部門の業務分掌の確認と業務内容の整理が必要であるが、部門の業務所掌は環境変化によって変化するため、適宜再定義の必要がある。ともすれば手段は目的化する恐れがある。立派なチェックリストも、リストをチェックすることが目的となり、やらずにチェックだけを済ませては当然に意味がない。どうすれば、チェックリストの本来の目的通りに運用できるのかも常に考える必要がある。それが管理である。

 「きっちりやるとはどのように実施することなのか」。それは、各業務の目的と内容を確認(管理項目)して、目標達成度の尺度(管理水準)を明確にすることである。いろんな仕事上の決めごとも、時が経ち人も変わると所期の目的が曖昧になり、「昔からやっているから」、「決めごとだから」となる恐れがある。そうなると、環境の変化に対応した業務遂行から遠のくことになってしまう。中には必要なくなった業務もあるかもしれない。新たに必要となる管理項目もあろう。要はここでも業務の見直し(確認)が常に必要なのである。

 「きっちりやったことをどのように管理するか」。業務を目的に沿い業務標準などに定められた通りに実施されるためには、業務担当者が使命感と責任感を持って対処する必要がある。そのためには職場の倫理や職場風土が健全でなくてはならない。顧客満足のためにはまず従業員満足が重要と云われる所以である。

 ただ、精神論だけでは物事は完結しない。具体的には無断欠勤や遅刻をゼロにするところからはじめ、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の徹底なども必要になる。業務の実施結果の記録とその評価方法、業務に不具合を生じた場合の連絡方法などを明確化しておき、業務のSDCA(標準―実施―検証―改善)がまわること、不測の事態にも適切に対応できる体制の構築が必要となる。要は従業員に良い意味の居心地の良い職場風土を醸成する必要があるのだ。



本稿は、久保田洋志著「日常管理の基本と実践」JSQC新書、2008年9月、財団法人日本規格協会発行、社団法人日本品質管理学会監修、第2章「日常管理の基本」を参考にし、多くの部分について引用しています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日常管理の基本と実践第4回

2016年02月10日 | ブログ
命を預かる仕事

 他人の命を預かるのは、旅客運送業だけでは勿論ない。もっと直接的なのが医療現場。そこで今に始まったことでないけれど、いろいろな不祥事が報告されている。患者を取り違えて必要のない手術を行った。同じ手術を同じ医師が執刀して、何人もの患者が亡くなった。いずれも大病院での話である。周囲に医師はたくさん居たであろうに止められていない。勿論症状によっては、たとえ神業でも救えない命もある。バスの転落事故のような明確な事故性が立証され難いのも現状である。

 医師とか弁護士とか、一般では取得し難い資格保有者の世界は、少し治外法権的なところがあるもので、信頼してお任せするしかないところがある。それだからこそ、その信頼を裏切る行為は罪が重い。直接は命に関わる話ではないが、痴呆老人の後見人となった弁護士が、依頼人の資産を着服していたというような事件も聞くようになった。

 こちらも今に始まったことでもないが、医師とか弁護士になりたいという動機が、病気で苦しむ人を救いたいとか、困っている人の力になりたいというような理念からではなく、「お金儲けが出来そうだから」。となっているのではないか。

 動機はどうであれ、その仕事に就いてからの行動が問題で、現実には理念よりも実際の仕事への取り組み方が問われる。お金儲けを続けたいなら、誰からも信頼される行動を継続する必要がある。兎に角自分のためとの想いであっても、そのことが世の中に役立つならそれでいい。逆に世のため他人のためが、結果として全く自身に何の幸せももたらせないならそれは問題で、そんな社会は変える必要がある。

 医療現場、士業の現場であっても、現場は現場であり、そこには木目の細かい日常管理がなければならない。すなわち、日常の仕事をシステムとしてプロセス管理できるようにしておかねばならない。

 久保田洋志教授の「日常管理の基本と実践」*1)には、『偽装・隠ぺいは情報公開の課題であるとともに定常業務の日常管理の課題でもある。例えば、安心と信頼を基本とする医療現場での誤診・治療ミスと偽装・隠ぺいへの不信があるのは、情報が非公開であることと無関係ではない。使命感・責任感・倫理観の欠如と情報非公開が日常管理不備の温床となり、日常管理の不備が使命感・責任感・倫理観の醸成と情報公開の障壁の要因になっている可能性が高い。』とある。

 識者によって、問題点は昔から指摘されながら、改革は遅々として進展しない。有力な政治家の金銭疑惑が絶えないのも、既得権益を握った人々が、現場の日常管理の在り方さえ、不正に曲げようとするところに温床がある。

 例の横浜のマンションが傾いた事件。建設業も命を預かる。台湾で地震があって、倒壊したビルのコンクリート壁の中から塗料缶が出てきたりしたけれど、明らかな手抜きであり不正な建築であったけれど、このように地震でもなければ知られることはなかった。このビルを施工した建設会社はすでに解散しているとかで、責任の所在がなくなっているようだけれど、可能な限りの再発防止対策が必要である。

 横浜のマンションだって、直下型の大きな地震があれば崩壊し、多くの死傷者を出した恐れがあった。傾きを察知し事前に不正建築が発覚して不幸中の幸いであった。




*1)「日常管理の基本と実践」JSQC新書、2008年9月、財団法人日本規格協会発行、社団法人日本品質管理学会監修
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日常管理の基本と実践第3回

2016年02月07日 | ブログ
規制緩和とバス会社の事故(下)

 バスの事故といえば、2012年4月の関越自動車道高速バス居眠り運転事故が記憶に新しい。

 群馬県藤岡市岡之郷の関越自動車道上り線富藤岡ジャンクション付近で都市間ツアーバスが防音壁に衝突した交通事故。乗客7人が死亡し乗客乗員39人が重軽傷を負ったが、バス正面中央部から防音壁が突き刺さった格好の事故の映像は衝撃的であった。日本の高速道路の単独車両による事故としての死者7人は、日本国内では前例がなかったそうで、この事故を契機に高速ツアーバスは廃止され、新高速乗り合いバスに集約されることになったようだ。

 この事故原因は、運転手の居眠り運転ということであるが、この1月のスキーバスの事故と同様、運転手が元々大型バスの運転に不慣れであったという共通点がある。また運営するバス会社にも数々の問題点が事故後に発覚していることも類似している。

 そしてこの時にも、規制緩和の弊害がしっかりと報じられていたように記憶するのだけれど、対策が周知徹底していない。事故を起こした運転手、バス会社、ツアー会社などの責任は問われるのだけれど、どうも関係官庁の監督責任というのが忘れられているのではないか。事故による遺族の怒りが通りすぎると、関係官庁は一件落着で、同様の業者の総点検など、出来るわけないで済ましていたのではないか。

 一方、旅客機、鉄道、客船、バス、タクシーなど旅客運送業界にあっては、政府の規制や監督に関わらず、顧客の安全は最重要のサービス品質である筈である。安全・品質と別物のように表現されるけれど、多くの業種で「安全」こそ最重要の品質である場合が多いのだ。

 それでは、民間のバス会社が、自社のサービス品質をしっかりと維持向上させるために何をしなくてはならないのか。そこに日常管理の重要性が浮かぶ。航空会社ほどでないにせよ、一度に50人もの命を預かり、ある時は高速で、ある時は深夜にさえ山の中の雪道を走らねばならないこともあるバスの運転手は、しかも早朝から深夜に及ぶ勤務が日常である。本来航空会社に準ずる十分な安全対策が都度当該企業の総力を上げて実施されなくてはならない。

 バスのメンテナンス、必要な備品の確認。走行予定路の状況や注意すべきポイント把握、乗務員の健康チェック。恐らくこのような日常点検の多くは、運転手の自主管理に任されているのではないか。専任の自動車整備士や産業医を置いて、物心両面から常に安全チェックできる体制を整え実施している会社は少ないのではなかろうか。本来監督官庁はそのような安全管理面のガイドラインを定め法制化し、守れない業者は免許を取り上げるなどの監督指導が必要である。

 そのような施策の実行は、大手バス会社なら可能でも、零細のバス会社には無理と云うなら、いくら規制緩和とはいえ、無理と云う会社には営業許可を与えるべきではない。小さな会社は小さな会社でまとまって、または地元の商工会などの助力を求めながら、整備士や産業医検診の仕組みを作ればいい。国の成長戦略や雇用確保の方策が国民の安全を担保しないなら本末転倒である。

 原子力発電の安全性については、その立地基準設定が10万年前の地層にまで及ぶ。バスは定員50人だから簡易で良い訳はない。どこまで行っても何か行えばリスクはついてまわる。リスクを取らないなら発展はない。リスクを最小限にする仕組みと努力が問われているのだ。

 「原発反対」、「安保法制反対」と乗り易いテーマには必要以上に声を上げるけれど、確かに国家レベルの話と、民間のバス会社の安全管理を一緒にするなと言うかもしれないが、国家の根幹の施策には碌に内容も把握せずに、ただムードで「反対」を叫び、身近な安全確保には被害者は「お気の毒さま」で済ませて良い訳はない。

 日々の仕事の日常管理こそこぞって要視しなくてはならない。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日常管理の基本と実践第2回

2016年02月04日 | ブログ
規制緩和とバス会社の事故(上)

 今年(平成28年)も明けた1月15日悲惨なバス転落事故が起きた。真夜中の2時頃、長野県北佐久郡井沢町の国道18号碓井バイパスで、定員45人の大型観光バスがガードレールをなぎ倒して道路脇に転落したのである。乗客39人はスキー客の大学生だったが、うち13名が死亡、生存者も全員が負傷した。死亡した被災者が人生これからの大学生であったことも関係者の嘆きを大きくした。

 テレビ各局は連日この事故を大きく取り上げ、事故原因についてもいろいろな角度から考察していたが、事故の起こる土壌として規制緩和によるバス業者数の拡大とそれに伴う競争激化があることが繰り返し述べられていた。

 小泉/竹中改革による市場原理主義の弊害を糾弾してきたマスコミの延長線上の考え方にも思えた。ただ、小泉政権当時のわが国の状況は、バブル崩壊後の不良債権処理問題が残っており、多少偏りがあっても早急に経済を復元しなければならない時期であったと思う。アベノミクスの大胆な金融政策も、3年間の民主党政権で痛んだ経済へのカンフル剤であったことと同様である。

 ただ、常に市場原理に委ねた政策は当然に国民生活の格差拡大、それに伴う社会不安など弊害が大きくなることは当然である。状況に応じた適切な対応が政府には常に求められているのだ。

 規制を緩和することは、業界への新規企業の参入障壁を低くし、新たな発想の注入と競争原理により、活性化と効率化を推進し、消費者の利便性に資するものである。しかし、過当競争による収益性の悪化で働く人の処遇が低下し、日常管理の不徹底を生じて事故など大きな不具合を生じる遠因ともなることも事実であろう。ただ、この日常管理の不徹底は、本来規制緩和に関係するものであってはならない。旅客機、鉄道、客船、バス、タクシーなど旅客運送業界にあっては、政府が安全規制までを緩和するものではないし、規制緩和などされていない時代にも同様の事故は起きている。

 1985年1月にも学生を乗せたスキーバスが長野市犀川に架けられた大安寺橋にさしかかる手前の左カーブで、ガードレールを破り水深4メートル、水温4度という極寒の犀川に転落。総勢46名のうち、乗客の大学生22名、教員1名、運転手ら2名、合計25名の命が失われた。現場は雪が積もり、路面が滑りやすくなっており、バスのスピードの出し過ぎが直接の原因であった。しかし、死亡した運転手は事故当日までの二週間を連続して勤務に当たっており、バスの運行を担当する三重交通の責任が問われた。

 その10年前の1975年1月1日には、長野県大町市の青木湖ある市道の急カーブでホテルのスキー客送迎バスが運転を誤り崖から33メートル下の青木湖に転落、乗客24人が逃げ遅れて死亡し、15人が負傷した。事故の直接の原因は運転ミスだが、このバスは定員32名のところを2倍近い62名を乗せて運行しており、客席はもちろん通路や前部ドアのステップ部分にまでスキー客が乗り込む寿司詰め状態であった。車体前部のステップにいる乗客が邪魔になり、運転席からは左前部のミラーを確認できない状態だったという。(続く)



過去の事故の内容については、ウキペディア「バスの転落事故」を参考にしています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日常管理の基本と実践第1回

2016年02月01日 | ブログ
日常管理の重要性

 建設時の基礎工事である杭打ちの手抜きでマンションが傾いた。深夜のスキーバスが道路脇に転落し多くの若者が命を落とした。廃棄されるべき異物混入の惣菜が廃棄業者から転売され市場に出回っていた。有力な政治家が関連する業者から賄賂とおぼしき金銭を受け取っていた。などなど、いろんな業種で日常管理の不備が糾弾される。同じような事例は過去に幾度となく繰り返されているにも関わらず、再発防止が徹底しない。日常の業務に潜むリスクに対して真に向き合っていないのだ。

 昨年、本稿では2008年に日本規格協会から出ているJSQC(日本品質管理学会)選書のひとつである「質を第一とする人材育成」を参考に人材育成について述べた。その第一回の冒頭に当該本の、まえがきにある『なぜ近年、質問題による不祥事が多発するのか、それは、経営トップに質を重要視する意識が足りないからである。・・・近年多くの企業において質問題が頻発し、消費者や社会を裏切る結果となり、企業の存続すら危ぶまれる事態が発生している。・・・』を引用したが、事態は一向に改善されず同じようなことが繰り返される。

 これまでにも本稿ではテーマに「品質管理」を取り上げる中で、「日常管理」についても幾たびも取り上げているけれど、今回「質を第一とする人材育成」などとセットでJSQC選書として発刊されていた広島工業大学の久保田洋志教授(工学博士)による「日常管理の基本と実践」を参考にさせていただきながら、今一度日常の業務管理を徹底する重要性と手法を学んでみたい。

 このところ、わが国の現場力の低下が嘆かれているが、それではその現場力とは何か。「日常管理の基本と実践」では、「現場力の基本概念」として、次のようにまとめられている。

 『現場は、第一線の人々の協働で、モノと顧客との接点で価値創造に関与し原価発生を伴う活動を実践する場である。

 1.要求される現場力
   ①やるべきことをきっちり実践すること。“なぜ(why)、何を(what)、どのように(how)“が明確で、確実に実施されている
こと。
    ・状況に応じた対応の気づき・共通認識とやる気・やる腕で実施。
    ・変化する環境下で実践すべきことも変化するので見直しと見える化が不可欠。
   ②継続的に改善と学習を行うこと。環境変化に適応するとともに、顧客創造/顧客満足と無駄の徹底排除によって競争優位・
業績に確実に貢献することで、社会的存在価値向上に寄与する。

 2.現場力の基本条件
   ①協業の意志:貢献意欲
   ②当事者意識:責任感・自律性
   ③全員参加:集団効果
   ④成長:学習能力                          』


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする