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人事について考える第2回

2014年06月04日 | Weblog
現場の労務管理

 従前工場の人事課長といえば、工場部長級の羽振りがあった。労働組合対策に始まり、社員の健康管理から家庭の状況までを把握し、転勤を含む人事異動、昇進昇格などにも影響力を行使できていたように推察する。しかし、会社が大きくなり機能別組織から事業部制に移行してそれが定着してくると、人事権は各事業部長に移った。人事課長は工場の人事異動や昇進昇格セレモニーの祭司的存在となった。

 それによって大企業においては、社員の個人的事情等に精通するポジションは失われ、会社と従業員の関係のデジタル化が進んだように思う。能力主義、成果主義という建前で、総人件費の抑制が進んだ。企業年金制度の廃止、退職金制度の見直し、家族手当、住宅手当の廃止、人事担当部署が、人件費抑制くらいしか自分達の成果を示せなくなったからである。

 しかし、今また、人事制度は大きな曲がり角を迎えている。女性社員の活躍の場を提供することが義務付けられ、その昇進昇格にも配慮が必要となった。加えて育児休暇の充実も必要である。男性社員にあってさえ育児や老親の介護のために残業免除、転勤不可との配慮が必要となる時代である。パラハラ対策、ブラック企業という汚名を着せられないための労務対策も必要である。一方で政府は、成長戦略促進の一助のために新しい働き方を訴えて、労働時間規制の緩和に向けて歩を進めている。労働組合との折り合いが難しい。

 それにしても、NHKの「クローズアップ現代」でやっていた、奥さんが幼子2人を残して単身赴任。旦那が甲斐甲斐しく子供の面倒を見ていたけれど、現代の新手の喜劇にしか見えなかったものだ。公務における特殊な専門業務でもあるまいに、そこまでしての女性活用の成長戦略などいずれ破綻する。

 一方労働時間規制の緩和は必要であろう。現行の会社に残れば残業手当を貰える制度に社員間の不平等感はある。大企業出身の中小企業経営者の方が、そのことを問題視し、自社の制度を規制緩和の先取りした形で実行されているという話を聞いたことがある。確かに、時間内に成果を出して昇進(管理職登用)して増加する給料より、残業で稼ぐ人の年俸が遥かに大きいことも事実としてあった。

 ボーナス交渉時期にその増額を訴えていると、恒常的に残業の多い職場の社員は、ボーナス額など問題にしていなかったものだ。日頃から十分残業手当で稼いでいる。生活をボーナスに依存する部分が少ないのである。もっとも残業の一律25%の割り増し賃金は、あくまで本給ベースに算出されたもの、当然にボーナス分までを含まないから、正確には割り増しとはなっておらず、自分の時間を切り売りすることはやっぱり得なことではない。

 しかし、本来残業の賃金割増しは、例えば午後5時までの工場労働者に増産のため、今日は7時までラインを稼働させるからよろしくということで、手当で償いするもので、管理職でもない社員の裁量で長時間労働して割増賃金を得る性格のものではない。

 そこらあたりの労務管理は現場の係長や課長の担当であるが、現実問題難しい職場も多い。もっとも何かにつけて部下を叱れないパラハラとは対極にある上司もおり、ライン管理者が体を成していないケースも見て来た。古参兵に尻に敷かれた将校の類は、レベルの低い大企業には多いのではないか。時に政治の世界でも大臣と官僚の軋轢が伝えられ、ある時は大臣の無能が問われ、ある時は官僚の横暴が言われる。

 企業の場合のそれは、当然に現場管理者だけの罪ではない。会社が適切で具体的なルールを定め周知し、一定以上の残業が定常化する職場には、徹底した業務の見直しを検討させ、出来なければその職場の増員を図るべきなのである。もっとも会社は総人件費で管理し、残業手当増加分は昇給やボーナスを削ればいいとの目論みもあったように思う。残業手当が増大すれば、時間内で精一杯働く社員の本給やボーナスが割を食うことも有り得ることである。



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