中小企業診断士 泉台経営コンサルタント事務所 ブログ

経営のこと、政治のこと、社会のこと、趣味のこと、人生のこと

話題Now第10回

2015年05月28日 | ブログ
国立競技場

 代々木の国立競技場が消えた。テレビのニュースで見た。2020年の東京オリンピックに備え、新しい国立競技場を建てるため解体されたのである。新競技場の建設は、今年10月に開始されるそうだ。

 国立競技場には昭和42年(東京オリンピックの3年後)第16回全国青年大会の開会式に広島県代表選手として出場して、競技場を一周した思い出がある。観衆は全くなかったが、剱木文部大臣が壇上で選手からの挙手礼を受けておられた。

 その後平成になって、中央線の千駄ヶ谷駅に乗り降りする際に外からは時々見ていたが、中は以前NHKのブラタモリで見たのが最後だった。その番組では普段一般の人が入れないような所も紹介されていたし、特別に聖火台に火が灯されたりした。あの番組の記録は貴重な遺産資料のひとつとなったのではなかろうか。

 新しい国立競技場は、当初採用された設計図通りに作るとお金が足りないとのことで、縮小案となり、今回さらにオリンピックまでには開閉式の天井が間に合わないとのこと。また資金面で500億円程度を東京都から出すようにとの話で、下村文部大臣と舛添東京都知事の会談が行われたとのニュース画が流れていたけれど、500億円について舛添知事は聞いていないと不満そうだった。

 それにしても、まだ5年先のこと、今から必死でやろうと思えば、開閉式の天井も間に合うのではないか。もっとも前年のラグビーの世界選手権の会場としても使うとのことで、工期は実質4年のようだ。お金の面は、確かに借金1000兆円の国に無いことは分かる。震災復興費用もまだまだ大変である。しかし、寄付金という手があるのではないか。

 5月20日のYAHOOニュースによれば、東証一部企業の時価総額はバブル期を超え591兆9158億円となったそうだ(過去最高は1989年末の590兆9087億円)。また同日の読売新聞によれば、世帯(2人以上)貯蓄平均額が1798万円で最多(前年比3.4%増)になったそうな。

 長らく不景気で、デフレで企業も個人も苦しいような報道が続いていたが、今年のGW(連休)の人出といい、平均的な国民には、十分裕福な暮らしが出来ているのではないか。勿論平均値は何億円と持つ人が増えれば、貧しい家庭を置き去りにして上昇する。最頻値も上昇しておれば、多くの世帯で裕福になったと言えるのだが、そのデータはなかった。ただ、60歳以上の無職の世帯でも平均貯蓄額は0.4%増の2372万円で、お金持ちのお年寄りは相変わらず多いようだ。

 要するに、皆さんお金を持っているのだから、「オリンピックの競技場のために寄付して下さい」とキャンペーンを行えば、企業も個人もその多くが賛同するのではないか。勿論多額の寄付をいただいた企業や個人は、しっかりと石碑に名と寄付額を刻むなど、末長く顕彰することは必要である。各地の神社など石段左右の石塔に寄付者の氏名が彫ってあるのをみかける。これは必要なことだ。

 一部上場企業が平均1千万円ずつ寄付しただけで、200億円程度集まることになる。国立競技場建設寄付金300億円目標で如何でしょう。



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話題Now第9回

2015年05月25日 | ブログ
安保法制

 今月14日に集団的自衛権の行使を可能にすることなどを盛り込んだ安全保障法制の関連法案が閣議決定された。この関連法案は外国軍隊への「後方支援」のための新たな恒久法である「国際平和支援法案」と、自衛隊法など10本の法律の改正を一括して1本の法案にまとめた「平和安全法制整備法案」からなっているという。

 勿論野党は反発、また官邸前や銀座でも民衆の抗議デモがあったようだ。ひとつはわが国が米国などの戦争に加担するようになる「戦争法案」との批判。もうひとつは国会での十分な審議がされていないまま閣議決定されたこと。もっとも政府は、すでに国会で多くの議員から関連の質問を受けて説明してきたとしている。「今後、閣議決定に基づいて法案を作成し、国会で十分な審議をお願いすることになる」との釈明がある。

 政府が、「国民の命と平和な暮らしを守ることは政府の最も重要な責務である」として、現在のわが国の周辺の状況から、必要な自衛力の整備や同盟国との軍事連携を進める必要があるとするのに対して、60年安保当時から思考停止している文化人や左翼政党の政治家は、武力を持つこと、軍事力を行使できる法律を整備することは、いずれも「戦争」につながると一貫して真っ向反対する。それは、他国が侵略してくれば白旗を上げろと言っているようなものだ。否、日米安保は反対だけど、今のままでもいざという時は米国が守ってくれると信じているのか。もしくは、他国がわが国を軍事的に侵略することなどあり得ないと、現実逃避の少女のように夢想しているのか。日本国憲法前文の「・・・平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」を勝手に信奉しているのであろう。

 安保法制の問題点は、確かにわが国の憲法の解釈にあり、ここへの歯止めが明確でないところはある。憲法学者なども、この点疑義ありとして会見を開いて反対していた。ただ、政治は理論通りに進めて正解とはならない。単なる経済学者や経営学者に企業経営を任せられないのと同じである。

 国会審議が十分でないのに閣議決定したという批判は、「十分」がどこまでなのかの定義がないので判断不能。確かに政府は進めたい案件には素早く動く。特に本法案は日米安保に直結したもので、外交上も重要である。

 専門家からみて現憲法に抵触しかねない本法案を、政府はなぜ急ぎ成立させようとするのか。わが国を取り巻く安全保障環境の変化について、内閣官房のネットサイトにさえ、ノドンミサイルや核開発の北朝鮮を名指ししているが、外交上の配慮からか「中国」は見当たらない。しかし本音は明確である。

 1970年代に入り、尖閣諸島周辺の海域に天然資源が豊富だと知った中国は、領有権の主張を始める。日中友好条約で国交が開始される時には、「尖閣の問題は棚上げにしましょう」とした。本当に自国の固有の領土なら、絶対に棚上げ論など持ち出さない筈だ。これに日本側が曖昧に応じたから付け込んで来た。当時の中国にとっては、我が国との経済交流によって、民生品など得られる技術は無尽蔵であった。経済力、軍事力を付けた中国は今や「尖閣は核心的利益」だと言っている。侵略者の常套手段だ。

 中国は、わが国だけならいつでも軍事力で圧倒できると踏んでいる。局地戦なら兎も角、ミサイルや核兵器をわが国は持たないからである。だから後は米国の顔色次第である。南シナ海やインド洋の権益、ヨーロッパに通じる新しいシルクロード建設。お金も掛るし、経済的に投資が欲しい。国内の治安も十分ではない。時期尚早である。もう少し日本を利用するしかない。押したり引いたりしながら最終的に押してくるのだろうけれど、今は少し引いている状態だけのことだ。

 要は、たとえ日中首脳会談が行われていても油断はけっして出来ないのである。安保法制は憲法改正前であっても必要なのである。


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話題Now第8回

2015年05月22日 | ブログ
大阪都構想

 橋下大阪市長の悲願であった大阪都構想の賛否を問う住民投票が5月17日に行われた。
府と市による行政の二重構造を廃止し、行政の無駄を省くというのが、橋下市長の主張の核心だけれど、再編によるイニシャルコストや市の細分化によって専門分野の人材が薄くなり、きめの細かい住民サービスが行き届かなくなるなど、反対意見ももっともらしく喧伝されていた。

 元々大阪市は横浜市と比べて人口で100万人程度少ないのに、市の職員は1万人以上多いような話も聞くし、これまでも市行政の効率の悪い部分、時代に合わなくなった支出などに、橋下市長は大ナタを振るっていたようなイメージがあって、橋下改革は関係ない地域に住んでいる人間から見ても結構なことと受け止めていた。従って都構想もいいのではないかという印象であったけれど、自由民主党大阪府支部連合会(自民党大阪府連)はじめ維新の会(維新)を除くすべての政党が反対とは意外であった。

 それにしても、この賛否に政府はどちらかと云えば賛成のスタンスであったにも係らず、政府与党の自民党大阪府連は共産党などと一緒になって大反対しているのには驚いた。その行動に菅官房長官など個人的と断りながらも明らかに苦言を呈していたが、谷垣幹事長は府連の肩を持っていたようだ。谷垣氏の言い分は、選挙で維新に攻勢を掛けられ、苦しんで来た同士にシンパシー(同情、共感、共鳴)を感じるとのこと。要は、大阪都構想の良し悪しではなく、単なる選挙対策に共鳴しているのである。天下の政権与党の幹事長が地方都市とはいえその制度転換の是非を、配下の議員の今後の議席の確保にしか関心を示さないのは如何なものか。国政選挙を仕切る幹事長の性(さが)とはいえ、完全に手段を目的化している発想である。

 現代のわが国の政党にあっては自由民主党以外に国家を背負える政党はない。しかるにその政権与党の幹事長が、敵対する政党の提案だから、これを共産党とさえ組んで潰そうとするようでは、自民党は先の政権交代を許した当時から結局進化していない。このままでは賞味期限が残り長くはないのではないか。

 政府は今後の憲法改正論議を踏まえ、橋下維新とは協力関係を築きたい。府連は今後の選挙で敵対する橋下維新を潰したい。

 では、地方組織とはいえ政権与党の一角には違いない自民党大阪府連の正しい行動とはいかなるものだったか。都構想のメリット、デメリットを市民に判り易く解説し、府連としては賛成も反対も表明すべきではなかったのではないか。恐らく府連のメンバーにもそのような意見の方も居たと思うけれど、橋下維新に良いようにはさせないという感情論が先行し、大人の対応を誤ったように思う。

 折角安倍首相が頑張ってこの厳しい時代に、この国のかじ取りを必死に行っているのに、自民党議員のひとり一人は、結局野党議員と同様、自分の議席を守ることにしか関心がないように見えてしまう。全く人間として大和男子として情けない話である。



本稿は、住民投票結果が出る前に書いたものです。結果を踏まえたものにはなっていないことをお断りします。
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話題Now第7回

2015年05月19日 | ブログ
憲法改正論議2

 文藝春秋5月号の、東京都知事の舛添要一氏(政治学者)、慶応義塾大学名誉教授小林節氏(憲法学者)、国際政治学者である三浦瑠麗(みうらるり)氏の「安倍首相よ、正々堂々と憲法九条を改正せよ」というテーマの鼎談記事からの憲法論議の続編である。

 憲法の意義であるが、『憲法は、主権者国民の意思として、権力を担当する政治家以下の公務員がフライングしないように縛るものです。・・・国民は自分たちの利益を増進するための代理人として政府を作るわけですから、都合が悪ければ革命を起こしてもいい。フランス革命が好例です。つまり、主権者である国民は憲法に縛られない。・・・それが「立憲主義」なんですけどね』(小林先生)。『憲法とは国家権力から個人の基本的人権を守るために、主権者である国民が制定するもの』(舛添知事)。『誰が権力者になっても、国民に対して公平であるための歯止めが憲法。常に権力者を縛る存在でなければ意味がありません』(小林先生)。

 自民党の第二次憲法草案では「国民は、この憲法を尊重しなければならない」と書いてあり、『たしかに第二次草案の憲法観は、趣味が悪いというか、違和感がありますね』(三浦先生)ともあり、取りまとめている人々が「立憲主義」を本当に理解していないのではないかと三者三様に嘆いている。

 また、自民党の第二次草案にある「日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない」。家族について「互いに助け合わなければならない」。前文には「良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承する」とあるが、『「良き伝統」とは何なのか。そういう価値判断が入った言葉は憲法に書くべきではない』(舛添知事)など、『第二次草案は、要するに「道徳」と「法」の区別がついていない』(小林先生)。とも述べられている。

 この鼎談記事を読み、学者の論理は理解できるが、ただ現代の権力者と国民の垣根について、フランス革命当時の王侯貴族と一般民衆の隔たりはなく、権力者である政治家は国民が選んだ有期の者達に過ぎない。「都合が悪ければ革命を起こしてもいい」というのも物騒な話で、わが国は明治維新でさえ、徳川将軍を血祭りにあげたりはしなかった。憲法に書く必要はないかもしれないが、立憲主義の下では、権力者だけでなく、国民すべてが自分達で制定する憲法を当然に尊重する義務(不具合があれば改正する手続きを含め)はある。

 確かに道徳や価値判断を憲法に盛り込むことは筋が悪い。しかし、現在の社会状況を見るに、官憲の強権を恐れるあまり、ブラック企業や詐欺的商法(ぼったくりバーなど)に対する警察の民事不介入。昼間から酔っぱらって公園をふらつく男を警察官が寄ってたかって中々取り締まれない様(テレビで放映されていた)、ゴミ屋敷など、一般国民の生活の安寧が確保できていない面も多く目につく。それらの細目は憲法に盛り込む案件ではないが、明らかな犯罪者の人権には制約があって止む得ないこともあるのではないか。

 戦時下の特高警察など当時の反政府的思想犯の取り締まりの反動が、現代の犯罪者に対する取り締まりの甘さに繋がっているとすれば却って問題である。宗教団体に対する国権の及び腰もしかり。また外国人のわが国資産の取得や個人の過剰な所有権に制限を加えるなど、個人の権利に多少の制限を加えても、国家と国民共生の安寧が担保される条項が、憲法には盛り込まれる必要があるように思う。



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話題Now第6回

2015年05月16日 | ブログ
憲法改正論議1

 憲法改正については、相当昔から自由民主党などは党是として掲げて目指して来たように見ているけれど、平成22年に憲法第96条に定める憲法の改正に関する手続を内容とする「日本国憲法の改正手続に関する法律(憲法改正国民投票法)」が施行され、同法の一部を改正する法律が、平成26年6月20日に公布・施行された程度で、肝心の中身は手つかずのままである。

 例えば、憲法前文の『日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。』など、他国民に自国の安全と生存を依存する内容であり、容認できないとする意見はよく聞く。結局占領下、すなわち主権が無い状態で与えられた憲法であるからそのような表現になっているわけで、そもそも独立を実現した時点で破棄されるべきであったとも聞く。

 一方護憲派は、憲法第9条によって戦後のわが国の平和は担保されてきたとの主張から、「平和憲法を守ろう」という合言葉で情緒的な護憲運動を展開している。

 文藝春秋5月号に、東京都知事の舛添要一氏(政治学者)、慶応義塾大学名誉教授小林節氏(憲法学者)、国際政治学者である三浦瑠麗(みうらるり)氏の「安倍首相よ、正々堂々と憲法九条を改正せよ」というテーマの鼎談記事があった。このような専門家の意見と言うか、不偏的な常識論はしっかりと押さえておく必要があるとつくづく思う。どうも最近は、個人の主義主張の問題と学術的な正誤が混同される傾向があって、混乱を生じているところあるように思う。憲法改正に「賛成」ですか「反対」ですかと国民に問うても、問われた側が憲法とは何ぞやも知らず、マスコミの論調に流されるだけなら、それは民主政治ではなく衆愚政治である。

 勿論専門家の意見も特に政治論や社会論、経済論、時に科学的な現象まで専門家間でさえ相当に意見の相違があり、一概に正解は求められないことも事実ではあるが、基本的なところは共通認識として押さえておく必要がある。

 上述の鼎談にある憲法の話はその意味で参考になる。まず「社会党が自衛隊合憲論を打ち出していて」(三浦先生)とあるが、本来国家の自衛権は自然権(小林先生)であり、憲法以前の問題で違憲も合憲もない。いくら交戦権は認めないと憲法に書いていても、自衛の戦争はできる。ただ、そのためには日頃から相応の備えが必要で、自衛軍(自衛隊)の装備やその運用方法は法律で決めておく必要があるから、鼎談のテーマが「・・・正々堂々と憲法九条を改正せよ」となっている。

 現行憲法下ではどうしても政権による憲法解釈がまかり通ることとなる。政権が変わればその解釈も変わる懸念がある。同じ憲法下でそれは不都合なのである。だから交戦権があることは憲法に明示しておく必要がある。自民党の憲法第二次草案には、第九条2項に「自衛権の発動を妨げるものではない」という一文を添え、そのことを担保するため「国防軍」を規定している。

                              以下次号
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話題Now第5回

2015年05月13日 | ブログ
メガスーパーの挫折

 イオンやヨーカ堂といった全国展開の巨大スーパーマーケットが苦境という。『売上高7兆円を上回る日本最大の小売り企業、イオン。全国に総合スーパーを約600店舗展開し、行く先々で地元スーパーや商店街をなぎ倒してきた巨大企業が今、わずか数百億円規模の地元スーパー相手に苦戦を強いられている。・・・総合スーパー事業の営業損益は2011年以降急減し、2014年にはついに16億円の赤字に転落。総合スーパー事業は連結売上高の5割近くを占めるが、営業損益ではむしろ足を引っ張る存在だ。』

 一方イトーヨーカ堂も『グループ全体で見れば、2014年度に3433億円と、過去最高の営業利益を計上した。しかし、その陰で祖業のイトーヨーカ堂は、1兆2859億円の営業収益に対して営業利益は18億円と、低迷が続いている。通期では辛うじて黒字を確保したが、第3四半期までは赤字で、イオンの総合スーパー事業と同様に危機的な状況にある。』実はイトーヨーカ堂の営業利益率は、1993年以降下がり続けていたのだ。

 いずれも日経ビジネス4月27日、5月4日合併号の特集「挫折の核心‘イオン’」の記事からの引用であるが、確かに周辺のスーパーマーケットを眺めて、地元スーパーなど中小規模スーパーの健闘が感じられる。イオンは近くにないので分からないが、ヨーカ堂は、鳩のマークの時代から何かにつけて親しんで来たけれど、このところ行かないわけではないが、特に生鮮食品など少し遠くても地元スーパーに出かけるようになった。単なる思い込みかもしれないけれど、上の方針が強く、店舗の地元密着性を失くしているのではないかと感じてはいたが、この度の日経ビジネスの記事はそれを裏付けるものだった。

 セブンアイの鈴木会長が、以前「これからは少し高くても質のいいものが求められるようになる」というような発言をされていたが、その後ヨーカ堂の商品は高くなったように感じたものだ。デフレ脱却と言うけれど、庶民の財布の紐はまだまだ堅い。確かに好きなものにはお金を惜しまない人は多い。しかし、スーパーマーケットで購入する物は購入頻度の高い最寄り品が中心である。1件数十円の差が一カ月の支出では大きく差を生じる。多様な客層があり一概に言えないが、庶民がスーパーに求めるものは、「こんなに良い物が、こんなに安く買えたのよ」という感激である。そこに、出かける前のワクワク感も生まれる。

 近年イオンもヨーカ堂もプラベートブランド(PB)を充実させてきたが、いずれもこれが利益率向上に全く貢献していないことが挫折の要因でもあるようだ。テレビで小売業の成功例など紹介していることがあるが、その成功要因は取り扱った商品の作り手が、真摯に時に採算性さえ度外視して取り組んで生み出した物であることが多い。ヨーカ堂のPBからはそんな心が伝わってこない。

 日経ビジネスの記事によれば、イオンもヨーカ堂も失敗の原因についてはすでに把握しており、今後はPBの見直しや各店舗の品揃えなどの権限を大きくして行く方針のようだが、図体が大きいだけにまた方針転換も容易ではないかもしれない。両企業共、本体が大きくなり過ぎて、すでに庶民相手のスーパーマーケット経営には適さなくなったのかもしれない。
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話題Now第4回

2015年05月10日 | ブログ
箱根山

 箱根に初めて行ったのは、山口県に居る頃の職場旅行であった。その後数年して関東に移り住むことになって、日帰りや湯河原にあった会社の保養所、箱根の建保保養所などを利用して家族で観光したものだ。正月の2日に行った折は、箱根駅伝の往路ゴールと付近で繰り広げられる各大学チアガールの熱演を観ることができた。

 一昨年は冬の大涌谷からの富士の姿に圧倒された。箱根の富士は、成川美術館から芦ノ湖越えに見るのが最高と思っていたが、認識を新たにしたものだ。昨年紅葉の季節には、小田原から電車で登ろうとして、箱根湯本で足止め。ものすごい人混みで強羅行き登山電車40分以上待ちに、バスに乗り換えたものだった。

 それでも恩賜公園や杉並木はそれほどの人出はなく、ゆっくり観光できた。しかし午後芦ノ湖海賊船に乗り桃源台からロープウェイに乗るコースは長蛇の列で、特に大涌谷での乗り換えは気が遠くなるほどの人の列だった。下山の登山電車に乗る頃はすっかり暗くなり、周辺の紅葉は見れずに終わった。

 その箱根山の大涌谷周辺が、火山性地震が観測されるため立ち入り規制(噴煙地の周辺)となり、5月6日には周辺道路も通行止めとなったようだ。気象庁が噴火警戒レベルを1(平常)から2(火口周辺規制)に引き上げたためだ。先の御嶽山の噴火に懲りて、気象庁も早めに噴火警戒レベルを上げたものとも思うが、大涌谷周辺だけでなく箱根全体に観光客は減る。ホテル、旅館やお土産店は大打撃であろう。バスや登山鉄道など交通機関の収益にも影響は大きい。新緑が美しいこの時期は、GWでなくとも観光に最適なシーズンである。風評被害の一種とは云え、いつでも行ける首都圏の人たちにとれば、わざわざリスクを取って周辺にさえ行くこともない。観光客の激減は止むを得ないであろう。ここら辺り関係省庁の警戒レベル発信の難しいところ。

 それにしても災害大国でもあるわが国は、観光業にとっては風水害をはじめ自然相手のところは農業に近い。風光明媚な所は、自然災害のリスクの高いところでもある。観光大国を目指すわが国としては、外国人観光客はじめ万一の事態への対応を事前に広報するシステムのさらなる充実が必要*2)となろう。

 7日のYahooニュースによれば、ダボス会議*3)主催の「世界経済フォーラム」が6日発表した最新の「旅行・観光競争力報告書」によれば、わが国は141カ国中9位にランクイン(前回14位)したそうな。トップはスペイン、次いでフランス、ドイツ、米国、英国、スイス、オーストラリア、イタリアで10位はカナダ。アジアで唯一ベストテン入りは快挙と思えるが、シンガポール11位、香港13位、中国17位、マレーシア25位、韓国29位、タイ35位などアジア諸国も結構上位にランクされている。

 日本は、文化面の観光資源、安全、衛生、交通インフラなどの点で評価が高いが、価格面では評価が低かったとある。箱根は自然の美しさと歴史文化両面に優れた国際的な観光地である。火山性地震の早期の沈静化を祈りたい。

 


*2) 訪日旅行中に東日本大 震災を経験した訪日外国人旅行者の多くが、情報提供が不足していたと感じていた。という調査結果が報告されている。(「災害時における訪日外国人旅行者への 情報提供のあり方に関する提言」国土交通省2013年3月)
*3)スイスのリゾート地ダボスで毎年冬に開かれる世界経済フォーラムの通称。'71年にスイスの実業家、クラウス・シュワブが創設したこの会議には世界の政治家、企業のトップ、選ばれた知識人ら3000人以上が集まり、現在の世界経済について話しあう場。(by日経Web GOETHE)
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話題Now第3回

2015年05月07日 | ブログ
戦後70年

 終戦から70年。終戦の年に生まれた人は、今年古希を迎える。当時成人であり、あの戦争にミクロほどでも責任がある世代はすでに90歳を超えることになる。国民の何%になるのであろうか。それでもなお、謝罪が足りないと言う輩がいる。韓国や中国が言うからと、日本人でありながら今更にそれに同調して安倍さんの言動など批判している人がいるけれど、自分あって国家なしの人々と思う。批判の根拠は中韓に阿ることと、大人を気取った自分が気持ちいいだけ。

 ドイツはきちんと折り合いを付けたなどと言うけれど、ナチスドイツのやったこととわが国の戦争責任を同列に論じること自体が間違っている。本来喧嘩両成敗だし、植民地支配などというけれど、朝鮮半島に何か取れるものがあって、やりたくてやったわけではないようで、当時の朝鮮があまりに無力だから、ロシアの南下政策からの自衛策でしかなかった。戦後補償だって十分に済ませた筈だ。今更文句を言うのは言う方が間違っている。主義主張や思想の問題ではない。

 節目の年で、安倍さんが訪米し、米国議会で演説も行った。概ね好評だったようで良かったのではないか。中国の軍事的台頭は日米共通の脅威であり、日米同盟は最も重要な二国間同盟と言われる。この同盟関係を深化させるためにも、このような首脳外交は絶対条件であろう。

 それでも、その演説の内容に相変わらず韓国は「謝罪」がないと批判するし、民主党の枝野幹事長などは「日本議会は米国議会の下請けではない」などと息巻いていたようだけれど、近年わが国への軍事的脅威はより現実的なものになっており、平和憲法を盾に戦争しないと言ったところで、領土領海を侵されれば同盟国と共に闘うよりなく、相身互いで集団的自衛権行使も仕方がない状況ではないのか。有事に備える法整備は早急に必要である。政府が同盟国に同盟関係深化のための法案を、期日を示して意志を明確に発言することが、何で自国の議会軽視なのか判らない。現状を踏まえた「外交」というものが判っていない発言のような気がする。

 4月26日の読売新聞一面に、戦後70年「和解阻む歴史の政治利用」という明治大学山内昌之特任教授*1)の論文があった。

 『・・・中国と韓国では、歴史の解釈を古典的な「名教」(人の道を明らかにする教え)と考えがちなのだろう。いわゆる従軍慰安婦問題や南京事件についても、旧日本軍の関与の有無や死者の実数ではなく、自分たちの求める「事件」を想像させる現象であれば、それによって歴史を作れると信じているのだ。史実の学問的究明よりも、外交や宣伝戦でいかに効果的に歴史を利用するかという政治手法を優先させるからである。

 ・・・あれこれと日本に対する憎悪を書き記すだけならまだしも、記念碑を自国のみならず関係のない国々にも建立する。・・・後世の歴史に責任を持つ資格を疑いたくなる。

 日本は侵略などに関して何度も深く反省する一方で、史実については精密を期して議論しようとしている。それに対して、戦後70年にもなって相変わらず不確かな「事実」や数字を将来の世代にも永久展示しようというのでは、自分たちの方から和解や友好の道を閉ざすのと同じではないか。・・・』




*1)山内昌之(1947- )札幌生まれ。北海道大学文学部卒。元東京大学大学院総合文化研究科教授。学術博士(東京大学)。2002年司馬遼太郎賞、2006年紫綬褒章。




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話題Now第2回

2015年05月04日 | ブログ
AIIB

 AIIB(Asian Infrastructure Investment Bank:アジアインフラ投資銀行)は、中華人民共和国が提唱し主導する形で設立を目指しているアジア向けの国際開発金融機関のことで、2015年の業務開始を予定している。日米が主導するアジア開発銀行(ADB)では賄いきれない増大するアジアにおけるインフラ整備のための資金ニーズに、代替・補完的に応えるということを目的として、中国が設立を提唱した。(この項ウィキペディアによる)

 すでに世界の主要国が参加を表明する中、わが国と米国は今のところ参加していない。わが国が当面参加を見送るということで、この国のマスメディア、野党さらに与党の親中派議員からも「乗り遅れるな、孤立するぞ」的なコメントがあるようだが、共産党一党独裁の国が主宰する国際金融機関設立には懸念があるとすることが当然であり、私など日米政府の対応が正しいと思う。

 それにしても、チベット、ウイグルなどの人権問題に加え、近年の南、東シナ海における軍事力を背景にした横暴ぶりからしても、本来世界各国からの経済的制裁があってもおかしくない状態と思うけれど、13億人の莫大な購買力にヨーロッパ先進国までが尻尾を振っている様は露骨である。

 あれだけ南シナ海の領土・領海問題で対立するベトナムやフィリピンも参加する。ASEAN10カ国がすべて参加することで、歩調を合わせた向きもあるけれど、中国との経済関係は彼らも継続せざるを得ないのか、ADBに比べて融資のハードルの低さを期待してのことか。いずれにしても経済優先に変わりはしない。

 一方、国際紛争のレベルに違いはあるが、1980年のモスクワ夏期オリンピックは、前年12月のソ連のアフガン侵攻で米日韓中など多くの国がボイコット(不参加)した。ただ、この時は、政治とスポーツは切り離すべきとの考えもあり、イギリスなどは政府支援を受けずに参加したようだ。米ソ対立は東西の経済的な関係も希薄にさせていた。最近のウクライナ問題でも欧米各国はロシアに挙って対抗している。

 それにしても、世界的に経済優先で、完全に人道的とか正義というものが後回しになっている。民主政治などというけれど、結局我利我欲の連中が圧力団体を構成し政治を動かす。民主化されることを歓喜したアラブの春も、今のところ国内の統制が取れず、地中海を越える難民増加で不幸な遭難が拡大している報道があるだけ。それぞれが言いたいことを言い勝手に行動することを民主主義と勘違いしているのではないか。先進国でも同様である。

 イギリスもフランスもドイツも経済優先で、そのことでかの国の周辺国がその横暴に苦しむことなどお構いなしである。もっとも国民を飢えさせない。すなわち経済は政治の最重要課題のひとつであり、一概に批判することも出来はしない。米国だって、国内の利益誘導団体の動きに応じて議会がいつAIIBに参加するべきと言いだすか判ったものではないという論評もある。因みに米中間の貿易額は日米間の3倍という。

 現在の世界経済は基軸通貨をめぐる凌ぎ合いもある。近視眼の自国の国益に囚われ、経済を制し軍事力を優位にし、他国の領土を自国領として、侵略紛いの行動を繰り返す国を甘やかす事態を憂えるばかりである。


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話題Now第1回

2015年05月01日 | ブログ
ホンダジェット

 わが国は、規格大量生産による製造業の発展が経済成長の原動力となった。しかし、近年家電製品がインターフェイスの標準化によってモジュラー化され、コモディティ化されると価格競争となり、新興国産業の台頭に、ものづくり・品質大国日本が苦戦を強いられることなった。

 私は、2008年4月診断士になって、研究会や地元商工会議所また産学官セミナーなどで品質管理の話をさせていただく機会がある度に、わが国のものづくりは、家電製品に代表されるような製品アーキテクチャ(設計思想)のモジュラー型から、擦り合わせ(インテグラル)型製品に主力を移してゆくことで、今後とも発展できると伝えてきた。

 4月23日、ホンダの小型ビジネスジェット機(「ホンダジェット」定員7名)が日本で初めて披露されたニュースに接し、本格的にその時代に入ったことを感じて感慨深いものがあった。そもそも乗用車も擦り合わせ型製品ではあるが、電気自動車へ移行すれば遠からずモジュラー型となってゆく。しかし、航空・宇宙分野はわが国の擦り合わせものづくり技術の粋を集めて、今後大きく開花することが期待できる。

 しかも、乗用車の部品数は3~4万程度であるが、旅客機であれば部品数は300万、小型ビジネスジェットでさえ70万にのぼるという。すなわちこの業界には広大な裾野が広がり、多くの中小企業にも恩恵が及ぶのである。

 もともとマザーマシンといわれる工作機械や、諸々の自動機械についても、わが国は高い技術力を誇っているわけで、いかに知価社会(脱工業化社会)という時代であろうとも、ビス一本からきちんと作り込むことのできる技術・技能基盤を持つわが国は、ものづくりに関して土台がしっかりしているわけで、世界を相手の競争力に揺るがぬ強さを持っている。絶対安全を指向する航空機産業においてさらに大きな強みとなる。

 ホンダジェットは、エンジンこそGE社との共同開発であるが、エンジンを主翼の上部に置く(高速においては却って空気抵抗が少なく省エネ)などこれまでにないユニークな設計で、デザインとしても高い評価を受けているようだ。世界の富裕層からすでに100機程度の受注があり、安全実績が重視される航空機産業界においても遠からずシェアを拡大してゆくものと期待される。

 ホンダは主力の乗用車部門でも、軽のスポーツカーs660が発売と同時に大人気で、今から発注しても納車は来年になるほどという。ホンダジェットの波及効果もあるように思う。ソニーのものづくりの凋落が聞かれる中、やはり果敢な研究開発投資への確かな戦略が、ものづくり産業での成功には絶対条件であるようだ。


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