経営分析
経営分析は、財務諸表などのデータに基づいて、企業の経営状況を評価するために用いる技法をさす。企業活動の結果は、決算書と呼ばれる財務諸表に表れる。今は必要なデータを入力することで、コンピュータが同業種の平均的なデータとの比較によって、自動的に評価してくれる*24)。
経営分析は、私たちの健康診断における血液検査や尿検査から得られる数値分析から得られる健康診断に似ている。肝臓機能や腎臓機能は、「肝腎」の語源とさえいわれるくらい人の健康にとって重要な機能である。決算書(財務諸表)でいえば損益計算書と貸借対照表の数値のようなものだ。もっとも心臓が止まったらアウトだから肝心とも書くが、黒字倒産ということもあるわけで、キャッシュフローの確認(資金繰り)が大切になる。兎も角、あらゆる検診が機械任せの検査で、本当は大切な医師による問診、触診が疎かになっていないだろうか。
経営分析も同じことで、財務諸表からの数値で一応の評価はできるけれど、それで経営分析がすべて出来たと思うのは間違い。財務諸表の数値は中身の検証が必要で、同じ在庫でも陳腐化したものは価値が無いし、売掛金もすでに回収できないものが計上されているかもしれない。だから外部から企業を診る場合(外部分析)は、健康診断の問診などと同じことで、社長さんにお会いして、工場を見せていただいて、お話を伺うことが前提にならなくては、本当の経営分析はできない。
経営分析における同業種平均値の比較は「標準比較法」と呼ばれて基本であるけれど、自社のこれまでのデータとの変化の推移を視ることも大切で、これは「期間比較法」と呼ばれる。また、ライバル企業など特定の同業他社との比較(相互比較法)などの評価法がある。
経営分析で何を診るか。「収益性分析」、「流動性分析」、「生産性分析」や「成長性分析」などがあり、「収益性分析」には、売上高に対してどれだけの利益が上がったかを視る売上高利益率が代表的で、営業利益や経常利益、各種資本*25)に対する利益率で評価される。
「流動性分析」とは流動比率や当座比率、固定比率や、固定長期適合率、自己資本比率など、短期・長期に資金繰りなど経営の安定度をはかるための分析手法である。ただし、当座比率が高くても、売掛金がスムーズに回収されない場合は、当座の現金資金が枯渇する恐れがある。取引先大手が倒産した場合に起こりうる連鎖倒産ということもあることで、注意が必要になることはここに書くまでもない。安全性という意味では損益分岐点分析も必要である。
「生産性分析」は労働生産性や設備生産性または資本生産性など、従業員数に当たりの生産高や付加価値額を視る。また使用設備の台数当たり、有価固定資産額当たりの生産額など、人や設備の効率性を評価する。
企業の成長性は、売上高の成長率をはじめ、利益、自己資本、マーケットシェアなどを指標とし、新製品開発や多角化の進捗なども目標とする場合がある。最近は売上高や利益額の増加だけでなく、株式の時価総額の推移など市場の評価で成長を診る場合もある。フリーキュッシュフロー*26)の増減も大切な指標となる。
経営分析について、個々に説明すれば長くなる。大切なことは、現状の経営状況を常に把握して、的確な経営判断を機を失せず行うことであろう。近年はERP(Enterprise Resource Planning)*27)などITの進化でさらにツールは充実しているけれど、判断するのは経営者である。データに基づくことは当然であるけれど、経験と勘と度胸はいつの世にも必要であろう。
*24)中小企業ビジネス支援サイトJ-net21「経営自己診断システム」(無料、登録等も必要なし)
*25)総資本=負債+資本(=総資産)。経営資本=総資産から繰延資産や建設仮勘定、投資その他資産など、経営に貢献しない資産額を差し引いたもの。自己資本=純資産(資本金+資本準備金+利益剰余金-自己株式)
*26)FCF(営業活動によるキャッシュ・フロー(CF)+投資活動によるキャッシュ・フロー)のことで、FCFの額が高いほど、企業活動は健全に行われていると考えられる。将来の投資の原資となるため、成長性の目安ともなる。営業活動によるCF(間接法)は損益計算書の当期利益がベースとなるが、当期に流出したわけではない減価償却費を加え、在庫や売掛金、買掛金の増減など貸借対照表のデータと合わせ総合的に企業の資金繰りを評価出来る指標である。
*27) 企業の主要業務(財務・管理会計、人事、生産、調達、在庫、販売など)を包括する情報システムを構築するために開発された大規模な統合型パッケージソフトウェアのこと。統合業務パッケージともいう。
本稿は、占部都美著、加護野忠男補訂「経営学入門」中央経済社平成14年版、およびTAC中小企業診断士受験講座テキスト「財務・会計」2006年版を一部参考にしています。
経営分析は、財務諸表などのデータに基づいて、企業の経営状況を評価するために用いる技法をさす。企業活動の結果は、決算書と呼ばれる財務諸表に表れる。今は必要なデータを入力することで、コンピュータが同業種の平均的なデータとの比較によって、自動的に評価してくれる*24)。
経営分析は、私たちの健康診断における血液検査や尿検査から得られる数値分析から得られる健康診断に似ている。肝臓機能や腎臓機能は、「肝腎」の語源とさえいわれるくらい人の健康にとって重要な機能である。決算書(財務諸表)でいえば損益計算書と貸借対照表の数値のようなものだ。もっとも心臓が止まったらアウトだから肝心とも書くが、黒字倒産ということもあるわけで、キャッシュフローの確認(資金繰り)が大切になる。兎も角、あらゆる検診が機械任せの検査で、本当は大切な医師による問診、触診が疎かになっていないだろうか。
経営分析も同じことで、財務諸表からの数値で一応の評価はできるけれど、それで経営分析がすべて出来たと思うのは間違い。財務諸表の数値は中身の検証が必要で、同じ在庫でも陳腐化したものは価値が無いし、売掛金もすでに回収できないものが計上されているかもしれない。だから外部から企業を診る場合(外部分析)は、健康診断の問診などと同じことで、社長さんにお会いして、工場を見せていただいて、お話を伺うことが前提にならなくては、本当の経営分析はできない。
経営分析における同業種平均値の比較は「標準比較法」と呼ばれて基本であるけれど、自社のこれまでのデータとの変化の推移を視ることも大切で、これは「期間比較法」と呼ばれる。また、ライバル企業など特定の同業他社との比較(相互比較法)などの評価法がある。
経営分析で何を診るか。「収益性分析」、「流動性分析」、「生産性分析」や「成長性分析」などがあり、「収益性分析」には、売上高に対してどれだけの利益が上がったかを視る売上高利益率が代表的で、営業利益や経常利益、各種資本*25)に対する利益率で評価される。
「流動性分析」とは流動比率や当座比率、固定比率や、固定長期適合率、自己資本比率など、短期・長期に資金繰りなど経営の安定度をはかるための分析手法である。ただし、当座比率が高くても、売掛金がスムーズに回収されない場合は、当座の現金資金が枯渇する恐れがある。取引先大手が倒産した場合に起こりうる連鎖倒産ということもあることで、注意が必要になることはここに書くまでもない。安全性という意味では損益分岐点分析も必要である。
「生産性分析」は労働生産性や設備生産性または資本生産性など、従業員数に当たりの生産高や付加価値額を視る。また使用設備の台数当たり、有価固定資産額当たりの生産額など、人や設備の効率性を評価する。
企業の成長性は、売上高の成長率をはじめ、利益、自己資本、マーケットシェアなどを指標とし、新製品開発や多角化の進捗なども目標とする場合がある。最近は売上高や利益額の増加だけでなく、株式の時価総額の推移など市場の評価で成長を診る場合もある。フリーキュッシュフロー*26)の増減も大切な指標となる。
経営分析について、個々に説明すれば長くなる。大切なことは、現状の経営状況を常に把握して、的確な経営判断を機を失せず行うことであろう。近年はERP(Enterprise Resource Planning)*27)などITの進化でさらにツールは充実しているけれど、判断するのは経営者である。データに基づくことは当然であるけれど、経験と勘と度胸はいつの世にも必要であろう。
*24)中小企業ビジネス支援サイトJ-net21「経営自己診断システム」(無料、登録等も必要なし)
*25)総資本=負債+資本(=総資産)。経営資本=総資産から繰延資産や建設仮勘定、投資その他資産など、経営に貢献しない資産額を差し引いたもの。自己資本=純資産(資本金+資本準備金+利益剰余金-自己株式)
*26)FCF(営業活動によるキャッシュ・フロー(CF)+投資活動によるキャッシュ・フロー)のことで、FCFの額が高いほど、企業活動は健全に行われていると考えられる。将来の投資の原資となるため、成長性の目安ともなる。営業活動によるCF(間接法)は損益計算書の当期利益がベースとなるが、当期に流出したわけではない減価償却費を加え、在庫や売掛金、買掛金の増減など貸借対照表のデータと合わせ総合的に企業の資金繰りを評価出来る指標である。
*27) 企業の主要業務(財務・管理会計、人事、生産、調達、在庫、販売など)を包括する情報システムを構築するために開発された大規模な統合型パッケージソフトウェアのこと。統合業務パッケージともいう。
本稿は、占部都美著、加護野忠男補訂「経営学入門」中央経済社平成14年版、およびTAC中小企業診断士受験講座テキスト「財務・会計」2006年版を一部参考にしています。