ビジネスモデルの根幹
コロナ禍にあっても増収増益という企業はあるようだ。ひとつは最近急成長の「ワークマン」。作業服のお店と思っていたが、違ってきたらしい。「ワークマン+(プラス)」や「ワークマン女子」などと新事業を展開。安さだけでなく、ファッション性や機能性を高め、従来とは異なる顧客層を獲得している。
もうひとつ、創業以来33年増収増益を続ける「ニトリ」。北海道で家具屋を始めた似鳥氏が、安さを追求して家具の問屋を介さない商法で値下げを図ったが、業界の抵抗で仕入れ先がなくなり、自前で海外工場を持つに至る。ただ、安いだけでは多くの顧客を得ることは難しい。ワークマンと同様、商品にこれまでにない機能性を付加することで、価格以上の価値を生み出す取り組みが成功の秘訣だった。
ただ、両社に共通する懸念材料は、海外工場と言って結局メインは中国となること。ニトリなど帝人とタイアップして上海郊外に研究所を設けているようだが、他社に真似されるどころか、中国には日本の著作権など通用しないことを知らないのだろうかと思ってしまう。
苦労して新商品を開発しても3年~5年もすれば他社でさえ同じような製品を作ってくる。昔家電製品の雄、松下電器(現、パナソニック)の松下幸之助氏は、「ウチは東京にソニーという研究所を持っている」という冗談を言っていたというが、中国相手では冗談では済まない。今や、工業製品に留まらず、いちごや牛肉も無断で苗や種牛の精子を持ち去って自前で生産する。
日本企業が安くて良い物を作りたいと思うビジネスモデルの中核が、大抵中国の工場で作ることになるのは頂けない。勿論中国プラスワンとしてベトナム、タイなどへの進出ももう数十年前から盛んであり、国内回帰を志向する企業もなくはないが、ワークマンにしても、自分たちが「希望するコストと品質で」となると中国で工場探しをしたようだ。それだけ、中国の世界の工場としての実績があり、生産技術が上がっているのだ。「日本国内で作られた製品ですから安心です」。は過去のものになりつつある。
日本で対応できる工場がどんどん減っているのだ。中国はそれを見越して安価に受注しているように診る。一部の商品を除いて日本のデフレが止まらない。にも拘わらず、日本で安価品を作れる工場はなくなってゆく。対応できる職人が減少しているのだ。
ワークマンもニトリも商品に顧客が求める機能性を付加するために研究開発費を投資すれば、油揚げはトンビならぬ中国が持ってゆく構図が出来上がっているのではないか。
気が付けば、「安く作る」とは麻薬のようなもので、ものづくり日本を蝕み、すでに家電製品、いずれ車も、ユニクロやワークマンの機能性カジュアル衣料も、ニトリの家具もビジネスモデルからその製法迄、中国に召し上げられてしまうのではなかろうか。
「安くて良品」ということは、われわれ消費者にとってはありがたいことだが、それを日本国内で作る努力を今からでもやらねば、この国の凋落の底が抜けるように思う。すべてここ数十年のこの国の、政治の貧困による不作為が為したことのように思う。
本稿は一部、テレ東「カンブリヤ宮殿」12月17日、24日放送を参考にしています。