中小企業診断士 泉台経営コンサルタント事務所 ブログ

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安倍晋三VS日刊ゲンダイ 第10回

2023年11月28日 | ブログ
終わりの始まり

 本書の著者である小塚かおる氏は、本書のあとがきに『「安倍さんはひどかったが、岸田さんはもっとひどい」取材をすると幾人もの識者からこんな言葉が出てくる。その感覚に半分納得する一方で違和感も覚えた。ならば安倍氏はマシだったのか。選挙演説中の銃撃という非業の死を遂げたこともあり、安倍氏の行なってきた政治に対しての評価がオブラートに包まれてしまいそうな気がする。・・・

 安倍的なものが日本の政治や永田町にしっかり根を張り、朝令暮改で自分のない岸田氏によって、新型コロナウィルスのように自由自在に変異しながら増殖しているのが現状だ。知らず知らずのうちに罹患してしまわないよう、ウィルスに抗い、世間にも大声でしつこく呼びかけていく。そんな仕事を変わらず続けていきたい。』と述べている。

 確かに今の自民党を診ると、安倍政権が「(自民党の)終わりの始まりだった」と言える状況にある。人材も枯渇しているかに見える。しかし、岸田首相の派閥には、今回、麻生さんの推薦で外務大臣に就いたという上川陽子氏や、小野寺五典元防衛大臣が居る。両名供岸田首相よりはるかに高学歴で国際通である。なぜ両名をもっと早く、自身の内閣で登用しなかったのか。そのことが今の岸田内閣の苦戦につながっている。高学歴なら良いと言っているのではない。日本の総理は、たかだか慶応や早稲田出くらいの学歴では不足である。勿論学歴(学識)は、政治家にとっての全く十分条件ではない。しかし、最低限の必要条件ではある。すでに昭和は遠く、角栄時代の政治家像では世界に通用しない。戦後生まれの年代は、英才の資質を持ちながら、家庭の事情で進学できなかった時代を生きていない。

 安倍派に忖度し、ガラクタの人材の中から大臣を選ぶ必要などなかった。安倍氏が碌に後継者さえ育てていないというより、そのような能力を彼は持ち合わせていなかった。国際社会の中で、大国として生き残ってゆくためには、各界に優れた人材が必須であり、そのトップを務める現代の日本の総理大臣は、読み書き算盤(早慶レベル)だけでは不十分である。

 安倍氏の数々の醜聞、拙い経済政策や恫喝政治の後遺症で、自民党は没落寸前である。自民党などなくなってもいいが、自民党の政治家も含め、先人が築き上げたこの素晴らしい国家をこのまま衰退させてはならない。

 自民党も財界もトップの人材不足で、ここ20~30年衰退した。消費税は大企業の減税に使われ、日銀は国債ばかりか株式投資にさえ手を出した。

 企業には大企業中心に非正規雇用者が溢れ、その儲けで重役連中の年収は増大した。すなわち勤め人の中でさえ大幅な格差が生まれた。それを主導したのは、小泉内閣で銀行の不良債権処理に貢献した人物で、そのまま安倍内閣の経済ブレーンとなっていたようでは、アベノミクスが国民のためになる経済政策には元々なり得なかったのだ。

 少子化対策も、担当大臣が次々登場しただけで、何の成果も上げず、ピント外れの政策は本書(安倍晋三VS.日刊ゲンダイ)にも指摘がある。女性活躍は非正規雇用を拡大させただけで、大企業の儲けには貢献したが、トリクルダウンは全く起こらなかった。増えたのは貧しい若者たち、関連して若者の闇バイトであり、大麻汚染であった。

本稿『 』内は、小塚かおる氏「安倍晋三VS.日刊ゲンダイ」2023年10月刊からの引用です。




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安倍晋三VS日刊ゲンダイ 第9回

2023年11月25日 | ブログ
続、恫喝政治(終わりの始まり)

 『<スクープ入手!自民党がテレビ局に送りつけた圧力文書>「公平中立な放送を心がけよ」―――自民党がこんな要望書をテレビ局に送り付けたことが大問題になっている。・・・

 投票日の12月14日までの報道に<公平中立、公正な報道姿勢にご留意いただきたくお願い申し上げます>と注文をつけた上に、<過去においては、具体名は差し控えますが、あるテレビ局が政権交代実現を画策して偏向報道を行い、(略)大きな社会問題となった事例も現実にあったところです>とクギを刺している。文中には「公平中立」「公平」が13回も繰り返されている。要するに自民党に不利な放送をするなという恫喝だ。・・・露骨なのは<街角インタビュー、資料映像等で一方的な意見に偏る、あるいは特定の政治的立場が強調されることのないよう、公平中立、公正を期していただきたい>という要求。この一文は、恐らく安倍首相から直々に注文があったのだろう。

 11月18日、TBSに出演した安倍首相は、街頭インタビューで、一般国民が「景気が良くなったとは思わない」「全然アベノミクスは感じていない」と答えると、「(テレビ局の)皆さん(人を)選んでおられる」「おかしいじゃないですか!」とキレまくり、国民から批判を浴びたばかりだ。・・・「要求を丸のみしたら、安倍首相の経済政策に批判的な人は排除するしかなくなる。街頭インタビューでは、景気停滞に苦しむ地方の不満や、右傾化路線を批判する声も放送できなくなります」・・・

 だが恫喝はこの1回では終わらなかった。感情的になった安倍氏の一時的な注文ではなく、確固たる意図があったと思われるのだ。

 自民党は、在京テレビキー局に「政治的公平」を求める文書を手渡した(送付したのではなかった)6日後、テレビ朝日の「報道ステーション」の担当プロデューサー宛てに、別の文書を送っていた。衆院選からしばらく経って、ゲンダイは問題の文書を独自入手し、報じている。・・・

 文書は、<11月24日付「報道ステーション」放送に次の通り要請いたします>というタイトルがつけられ、<アベノミクスの効果が、大企業や富裕層のみに及び、それ以外の国民井は及んでいないかごとく、特定の富裕層のライフスタイルを強調して紹介する内容の報道がなされました>と番組を批判。<サラリーマンや中小企業にもアベノミクスが効果を及ぼしていることは、各種データが示しているところです>として、都合のいいデータをわざわざまで持ち出して牽制している。テレビ朝日は相当ビビったらしく、安倍自民党に、“恭順の意“を示すためか、その後、担当プロデューサーには異動を命じている。異例の人事だった。

 翌2015年になると、政権にとって都合の悪いキャスターやコメンテーターがテレビ画面から一掃され始める。安倍政権やその応援団によるメディアへの圧力はどんどんエスカレートし、メディア側はますます委縮していった。』

 本書は、その当面の目的を、憲法9条の解釈を変更して、集団的自衛権の行使容認の閣議決定など安全保障法制の議論を進めるにあたり、メディアがその賛否について、“騒がしく”報道し、世論を喚起されては困るための早めの圧力だったと解釈している。

本稿『 』内は、小塚かおる氏「安倍晋三VS.日刊ゲンダイ」2023年10月刊からの引用です。




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安倍晋三VS日刊ゲンダイ 第8回

2023年11月22日 | ブログ
恫喝政治(メディアの封殺)

 『2023年3月。安倍政権時代に行われていたメディアへの“圧力”が、国会の場でにわかにクローズアップされる事態となった。

 14年11月から15年5月にかけて安倍内閣が放送法4条の「政治的公平」の解釈を変更しようとした経緯が詳細に記された総務省の内部文書を、立憲民主党の小西洋之参議院が入手。参議院の予算員会で、当時の総務会長だった高市早苗経済安保相と異例の応酬を繰り広げた。

 高市大臣「まったくの捏造文書だ」小西議員「捏造でない場合は大臣も議員も辞めるか」高市大臣「結構です」 

 高市氏が理性を失ったかのような詭弁を繰り返す醜態を続けたため、“場外乱闘”に世間の注目が集まってしまったが、ことの本質は時の政治権力による「報道の自由」の侵害、言論弾圧である。安倍官邸と総務相だった高市氏が一緒になって放送法をねじ曲げ、気に食わない番組への介入を可能にしたことだ。・・・

 政治とメディアの微妙な関係について、メディアは自らでは語りたがらないし、たとえ他社のことだとしても積極的には触れない傾向がある。放送局を取材するのは新聞社では文化部で、同業者のなれ合いもあってか、厳しく追及するようなことはほとんどない。

 そんな中で、ゲンダイは放送局に対する政治介入について頻繁に報道してきた。安倍政権が執拗かつ複合的にメディアを“恫喝”し、現場を委縮させ、羊のようにおとなしく飼いならしていった過程を幾度も記事にしてきた。・・・

 「安倍さんの周辺では、特定の民放番組を名指しして<左巻きすぎる> <何とかしないと>という話がしょっちゅう出ていました」安倍側近だった自民党議員が漏らしてもいる。

 安倍首相は第一次政権が短命で終わった大きな理由に、メディア対策の失敗があると考えたのではないか。そこで2012年に再び首相に就くと、真っ先にメディア対策に手をつけたのだ。

 官邸がまずやったのは、NHK人事への介入だった。13年10月、会長職の決定権を握る経営委員会に次々と“シンパ”を送り込んだ。そのメンバーはかって安倍氏の家庭教師だった本田勝彦元JT社長、長谷川三千子埼玉大名誉教授、作家の百田尚樹氏など“お友達”。「政府が右ということを左というわけにはいかない」と仰天発言をした籾井勝人会長を誕生させると、NHKは政権の広報機関に成り下がっていった。これで一丁上がりだ。

 次はNHK以外の民放。“裏”で露骨な介入が始まったのは、14年の総選挙の時だった。同年11月20日、自民党の萩生田光一筆頭副幹事長らが、「総選挙期間における放送の公平中立」を求める文書を在京テレビキー局に渡し、報道の仕方に注文をつけたのだ。萩生田氏は安倍首相の側近中の側近であり、当時、自民党の総裁特別補佐(つまり、安倍総裁の補佐役)も務めていた。

 ゲンダイはこの文書を入手し、2014年11月27日発行の紙面で報じた。』

本稿は、小塚かおる氏「安倍晋三VS.日刊ゲンダイ」2023年10月刊からの引用です。




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安倍晋三VS日刊ゲンダイ 第7回

2023年11月19日 | ブログ
「桜を見る会」の消滅

 疑惑の『もうひとつは、「桜を見る会」の前夜祭として安倍後援会によるパーティーが毎回、都内のホテルで開かれているのに、政治資金収支報告書に一切の記載がない「首相自身による公選法、選挙資金規正法違反疑惑」だ。こちらについては、高級ホテルでの前夜祭が会費5000円という破格の安さだった裏で、差額分を安倍事務所が補填していたとして、政治資金規正法違反(収支報告書への不記載)の罪で安倍氏の公設第一秘書が東京地検特捜部に略式起訴された。だが検察は、安倍氏については嫌疑不十分で不起訴とした。・・・

 刑事責任は問われずとも、前述のように首相が虚偽答弁を繰り返し、国会を愚弄した罪は重大だ。「結果として事実に反するものがあった」では済まされない。

 立憲民主党の要請を受けた衆議院調査局の調べによれば、安倍首相は「桜を見る会」前夜祭の問題に関し、2019年11月から20年3月の衆参本会議や委員会で少なくとも118回の虚偽答弁をしていたことが判明している。夕食会の収入と支出に関して「事務所は関与していない」の類が70回、夕食会を開いたホテルの「明細書はない」が20回、「差額を補填していない」が28回だ。これらすべて事実とは異なっていた。息を吐くように嘘を重ねる。こんな首相は前代未聞だ。』

 結果、1952年(昭和27年)から2019年(平成31年)まで、例年ヤエザクラが見頃となる4月中旬頃に新宿御苑で開催されていた内閣総理大臣が主催する公的行事であった「桜を見る会」は消滅した。

 一方、天皇皇后陛下主催の秋の園遊会が、今年11月、5年ぶりに赤坂御苑で開催されたそうで、その時のエピソードは断片的ではあるが、ネットで知ることができた。出席者と両陛下の会話の内容は、お互いのリスペクトが溢れており、その内容に、私なども本当に日本人に生まれて良かったと皇室への尊敬の念を改めて強くしたものだ。

 限られた招待客しか参加できないにせよ、日頃隔離された皇居に住まいされている両陛下にとっては、国民と親しく接することのできる数少ない場のひとつであり、両陛下もきっと毎回楽しみにされているのではないかと思う。

 一方、総理大臣が一般国民と親しく接し、直接国民からの声を聴く機会であった「桜を見る会」は当面消滅した。自身の権威を強調し、われこそがこの国の支配者と勘違いも甚だしい総理大臣の所為である。

 その総理大臣の「回顧録」を「アンチ安倍の人達こそ、ぜひ読んで欲しい」と宣った大新聞の編集局次長さえやっていたという人物が居る。国会でさえ嘘をつきまくった御仁の自身の回顧録に、どれほどの信憑性があるというのか。

本稿『 』内は、小塚かおる氏「安倍晋三VS.日刊ゲンダイ」2023年10月刊からの引用です。







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安倍晋三VS日刊ゲンダイ 第6回

2023年11月16日 | ブログ
続、モリ・カケ・桜

 前稿に続く『語るに落ちるとはこのことだ。実際にやったのかどうかは別としても、お友達に便宜を図ることへの慎みは感じられない。・・・

 安倍氏が国会で、森友学園への国有地の売却交渉について「私や妻が関係していたら総理大臣も議員も辞める」と答弁したことが、財務省の公文書改ざんに影響しただろうことは、状況証拠から推測すれば間違いない。・・・

 安倍氏の妻の昭恵氏が、森友学園が設立しようとした小学校の名誉校長を引き受けていたのはまぎれもない事実だ。そして、8億円もの値引きで売却された小学校予定地の国有地について、昭恵氏が「いい土地ですから前に進めて下さい」と語ったという話が近畿財務局の文書に記されている<改ざんにより削除>。少なくとも「妻は関係していると」として官邸や財務省が慌てたから、公文書を改ざんして”なかったこと”にしたのではないか。・・・

 だが、安倍氏は自分に何らかの瑕疵があるとは露ほども思っていない。むしろ巻き込まれて迷惑だとすら考えていたのではないかと思わせるくだりが“安倍晋三 回顧録”にある。

 <この当時、官僚の不祥事が起きると、「官邸一強の弊害だ、おごりだ」とか、「官僚が私に忖度したんじゃないか」と言われました。でも、仮に官僚が忖度していたとしても、忖度される側の私は、わからないでしょう>・・・2018年6月4日に公表された「森友学園案件に係る決算文書の改ざん等に関する調査報告書」には、安倍首相に関することが一切出てこない。・・・紛糾を避けるためなら、公文書だろうが都合よく書き換える。改ざんは実に、決算文書14件、約300カ所にも及んだ。・・・

 安倍氏の一連の「行政の私物化」でとりわけ悪質なのが、首相主催の「桜を見る会」をめぐる問題だ。この問題では行政を歪めただけでなく、国会での118回にもわたる虚偽答弁が認定されている。行政府の長なのに「私は立法府の長」と言って憚らない首相が、国会の機能を破壊したのである。

 2019年に問題が表面化した「桜を見る会」は、参加者と予算が年々増加し、安倍首相の地元後援会の会員らが多数招かれていた実態が「公的行事の私物化」と批判された。

 疑惑解明の鍵となる招待者名簿は、内閣府が廃棄。それも、野党議員が質問を通知した当日にシュレッダーにかけられていることから、意図的に廃棄した疑いが濃厚だ。政府は当初、「ルールに基づき適切に保存・廃棄した」と説明していたが、後に公文書管理法に違反していたと認めている。・・・

 問われたのは大きく2つの疑惑だった。「桜を見る会」の招待者は<国会議員、都道府県知事、議長はじめ、各界において功績・功労のあった方々>と規定されているにもかかわらず、安倍首相や自民党議員の支援者が目立ち、それぞれ自分の後援会活動に利用していたのではないかという「公金私物化・買収疑惑」。全体の招待客約1万8000人のうち、安倍首相の後援会から800人以上もが招かれ、安倍事務所が参加申込書を支援者にコピーさせ、その知人・友人らを募集していた。安倍首相は国会で、「募っているが、募集はしていないと珍答弁して墓穴を掘った。』次稿に続く。

本稿は、小塚かおる氏「安倍晋三VS.日刊ゲンダイ」2023年10月刊からの引用です。。




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安倍晋三VS日刊ゲンダイ 第5回

2023年11月13日 | ブログ
モリ・カケ・桜

 この3点セットほど安倍政権が歴史に残す汚点を、国民の隅々にまで知らしめた事件もないだろう。憲法を無視した「安保法制」も日米地位協定の話も、国会軽視も庶民には十分伝わっていないか、その悪さ加減がよくわからない。中でも「安保法制」は、中共の軍事強国化と尖閣周辺への領海侵犯などが日常的にある現実。米国がオバマ政権以降急速に内向きとなっていることからして、いざというときに日米安保は十分に機能するのか。という不安さえ国民に与えるようになっており、相応の負担増は致し方ないと見る向きも多いと感じる。

 私が安倍政権に批判的だったのは、その中共や日本の財界に阿って、中共対策を全く行わず、ここまで太らせてしまったこと。ドイツのメルケルも米国のクリントンも同罪ではあるが、安倍氏は幹事長に二階氏を起用し、自身政権の延命さえ図った。北海道の原野を中共資本が買い漁っているとの情報があってもどこ吹く風。コロナ初期に、中国人入国制限に躊躇した。ところが政権から降りた途端に、先の総裁選では高市氏を推し、矢面に女性を立てて裏から操縦しようとする魂胆が見え見え。その後も「台湾有事は日本有事」と吹聴する。

 ただ、この「モリ・カケ・桜」と聞けば、ほとんどの方が頷くであろう。それでも政権は揺らがなかった。権益を共有し享受したであろう仲間の議員が、この程度の総理の方が扱いやすいし、実入りが良いと踏んで支持し続けたのだろう。

 ただ、中で「カケ」問題は分かり難い。そこは本書に解説を願う。『「カケ」は加計学園問題。国家戦略特区制度で17年1月に新設が認められた加計学園グループの岡山理科大学の獣医学部をめぐって、特別な便宜が図られたのではないか、という疑惑だ。加計学園の加計孝太郎理事長は安倍氏が「30年来の友人」「腹心の友」と呼ぶ人物だった。・・・

 獣医学部の新設が悲願だった加計学園は、小泉純一郎政権が始めた構造改革特区に15回も申請したが、ことごとく却下されてきた。ところが腹心の友である安倍首相が政権に就くと、新設が認められ、しかも37億円相当の公有地が無償で提供される。獣医学部が新設されるのは、52年ぶりのことだった。

 文部科学省からは「総理のご意向」と書かれた文書が見つかっている。当時、文科事務次官だった前川喜平氏は、安倍官邸の和泉首相補佐官が「キーパーソン」だとしたうえで、「総理は自分の口から言えないから自分が言う」と獣医学部新設で対応を促されたと重ねて証言した。・・・

 その後、前川氏は「出会い系バーに出入り」というスキャンダル記事を読売新聞に書かれた。安倍政権の「意に沿わぬ者に対しては手段を選ばない」恐ろしさとえげつなさが露わになった形だったが、・・・

 安倍氏自身は「安倍晋三 回顧録」で加計学園問題について、「(加計氏が)親友ならば、獣医学部の話もしているのではないかと誰もが疑います」との問いに、次のように答えている。<加計さんは、迷惑になると思って私に話さなかったのかも知れませんね。実際には何の話も出ていなかったのですが、もし頼まれていたら、もっと早く獣医学部ができていたと言えるかも知れませんよ>』次稿に続く。

本稿『 』内は、小塚かおる氏「安倍晋三VS.日刊ゲンダイ」2023年10月刊からの引用です。





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安倍晋三VS日刊ゲンダイ 第4回

2023年11月10日 | ブログ
安倍政権の国会軽視

 『第二次安倍政権になってからの6年を振り返れば、この政権に、果たしてマトモな国会運営が一度としてあっただろうか。これほど強行採決をした量産した政権があっただろうか。・・・』以下に、日刊ゲンダイ(本書)が指摘する安倍政権の強行採決事例を列記する。ほとんどが一般庶民には分かり難い、なぜそれがいけない法案なのかが、わかり難い案件のようである。いずれにしても、強行採決の乱発は問題である。

 2013年、「社会保障プログラム法」これは民主党政権時、3党合意で決まったはずが、自公政権に交代すると一転、社会保障を削減した。同年「特定秘密保護法」も強行採決。

 15年、「改正派遣法」労働法案の強行採決は、国会史上初の暴挙と言われた。この年、平和憲法破壊の「安保法」。かってないほど大勢の国民が国会前に連日集結して反対したが、安倍政権は容赦なく強行採決。

 16年、農業や医療などの崩壊を招く「TPP関連法」を強行。この頃には、審議が始まる前から大臣や与党議員が強行採決の可能性を公然と口にするほど、強行採決は“当たり前”の風景となってしまった。この年は、「年金カット法」も強行成立。

 17年、「改正介護保険法」、「共謀罪」。安倍政権は共謀罪を成立させるにあたって、委員会採決を省略する「中間報告」という奇策にまで手を付けた。

 以降、別名・過労死促進法と猛批判された「働き方改革法」に始まり、「カジノ実施法」「参院定数6増法」。臨時国会では移民法を含む3法案。

 『2012年、「TPP断固反対!」を掲げて政権に返り咲いたのに、TPP(環太平洋経済連携協定)に前のめりになった安倍は「TPP断固反対と言ったことは1度もございません」と言い切った。要するに、安倍政権というのは、嘘から始まった政権なのである。』
 
 『国会を軽視する安倍政権が、与野党で対立することが確実な重要法案を提出しなければならなくなった時に多用したのが、「束ね法案」という手法だ。いくつもの関連法案を1本に束ねて一括法案として提出するもので、その割合が提出法案全体の3割を超えるまでに激増した。・・・

 とどのつまり、安倍氏は「民主主義」をはき違えていた。「どこかの段階で決めるべき時は決めていく。これが民主主義の原則だ」国会答弁で幾度となくこうした見解を示しながら、強行採決を乱発した。しかし、本来、民主主義は単なる多数決の論理ではない。多数決は、最終的な結論を出す時のやむを得ない最終手段であって、民主主義の本質は議論することだ。だから少数意見にも耳を傾ける。少数意見も尊重される。議論を重ねていく中で、多数の意見が少数意見によって修正されることもある。少数意見が取り入れなくとも、熟議の末の多数決ならば少数派も納得する。ところが、安倍氏はできる限り国会を開かず、・・・異なる意見には耳を塞ぎ、「数の力」さえあれば何でもねじ伏せられる、という驕り高ぶった態度が目に余った。それは政権の長期化と比例するようにエスカレートしていった。』

 なぜこのような政権が誕生したのか。その根本原因は、「末は博士か大臣か」が死語になったこと。本当に秀でた人物が政治家を目指さなくなって久しいのだ。

本稿『 』内は、小塚かおる氏「安倍晋三VS.日刊ゲンダイ」2023年10月刊からの引用です。




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安倍晋三VS日刊ゲンダイ 第3回

2023年11月07日 | ブログ
日米地位協定

 『安倍氏は自民党幹事長時代の2004年、“この国を守る決意”(芙桑社)という岡崎久彦氏との共著の中で日米同盟強化のため集団的自衛権の行使容認を主張し、こう述べていた。 
 
 <軍事同盟というのは、血の同盟です。日本がもし外敵から攻撃を受ければ、アメリカの若者が血を流します。しかし今の憲法解釈のもとでは、日本の自衛隊は、少なくともアメリカが攻撃されたときに血を流すことはない>

 つまり、憲法解釈を変え、これからは日本の若者にも血を流させますよ、ということだ。総理大臣になって、長年の自らの主張を実現させた。

 安倍氏は、米国が攻撃されても日本の自衛隊が血を流すことがない状況を「片務的」と捉え、「双務的にする」という強い意気込みで法整備を進めた。それによって「日米の対等な同盟関係」により近づくということだったのだが、そこまで「対等」を主張するならば、なぜ同時に、不平等極まりない「日米地位協定」の改定を米国に求めなかったのか。

 外務省のホームページの「日米地位協定Q&A」にはこうある。<日米地位協定は、日米安全保障条約の目的達成のために我が国に駐留する米軍との円滑な行動を確保するため、米軍による我が国における施設・区域の使用と米軍の我が国における米軍の地位について規定したものであり、日米安全保障体制にとって極めて重要なものです>

 世間の風当たりの強さを意識してか、Q&Aでは、「在日米軍の特権を認めることを目的としたものか」「日本にとって不利になっているというのは本当か」といった疑問をことごとく否定する内容になっているが、現実はやはり不公平な協定だ。

 在日米軍基地の74%を占める沖縄では、オスプレイやヘリコブターの墜落など米軍機の事故や米兵による強盗や殺人事件、レイプ事件などしばしば発生した。しかし、日米地位協定により、米軍基地内には干渉できず、日本の法律が適用されず裁けない。米軍の了解なしに、警察は事故の捜査すらできない。米兵が基地内に逃げ込んでしまえば、警察が逮捕するのは難しくなる。事件性によっては国内法が適用されるようにもなったが、まだまだ一部に限られている。

 こうした米軍の事故や米兵による犯罪は沖縄以外の在日米軍基地周辺でも起きている。だが、これまで日米地位協定は一度も改定されず、日本政府は地位協定の「運用見直し」でお茶を濁し続けている。安倍氏も首相在任時の国会答弁で「日米地位協定は運用改善だけで十分」と明言してきた。

 それだけじゃない。日本の「空」も米軍に奪われている。

 米軍機は日米地位協定に基づく「航空特例法」により、日本の航空法の適用外という「治外法権」状態にある。普天間基地所属のヘリなどは沖縄だけでなく、日本全土の上空を好き勝手に飛び回り、全国の米軍基地を自由に往来している。

 そして1都9県の上空も「横田空域と呼ばれる米軍の支配空域だ。管制は米軍が行っており、民間機は自由に飛べない。・・・先進国の中で自国の首都の上空が外国軍に管理されている国が他にあるだろうか。」』

 本稿は、小塚かおる氏「安倍晋三VS.日刊ゲンダイ」2023年10月刊からの引用です。




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安倍晋三VS日刊ゲンダイ 第2回

2023年11月04日 | ブログ
安保法制

 安倍政権の功績として、「集団的自衛権が行使できるような法制度を成立させた」がある。先日もあるラジオ番組で、菅前総理が、「安倍さんのお陰で日本も普通の国に成れた。この法案を通すことで、政権への支持率が下がることを、覚悟しながらの決断だった」と紹介し、これまでの長い自民党政権でやれなかったことだ、と改めて評価したという。

 われわれ一般人には、安保法制成立の経緯を十分知っているわけではない。同盟関係であれば、一方の国がどこかの軍に攻撃されれば、他方の国の軍は、当然に援護に駆け付けるべきと思っていた。ただ、わが国には憲法第九条があり、自衛権すなわち自国が攻撃を受けない限り交戦できなかったそうで、目の前で米国軍が他国に攻撃を受けても、自衛隊は手を出せなかったのである。

 現在の日本国憲法は、第二次大戦終結後のどさくさに、米国が日本に二度と戦争できないようにするために制定させたもので、米軍が日本の自衛隊に頼るような事態は想定外だったものであろう。

 時代は変化する。近年中共がもの凄い勢いで経済力を付け、軍事力を誇示するようになった。相対的に米国軍の威信低下で、大統領オバマは、「米国は世界の警察官ではない」と言い、大統領トランプは、アメリカンファーストで、外国に派遣している軍隊の費用は相応に恩恵を受けている国家が持つべきだと主張し始めた。

 歴代自民党総裁はじめ有力代議士が、米軍からの自衛隊に対する海外派兵の要請などに、九条を楯に米軍の要請を拒否してきたのに、同じ憲法下、安倍政権は安保法制でそれらのことを可能にした、と日刊ゲンダイは批判しているのである。中共が今ほどの力を持たない時代は、わが国の平和憲法も機能した。わが国の憲法を変えるのは尋常の労力では成し得ない。戦後同じ敗戦国ドイツは50回も憲法を改正しているというが、わが国では国会発議さえできていない。

 本来「安保法制」は憲法を変えてからのもので、安倍政権が行ったような解釈変更で「違憲」の壁を取り払ったうえで、実際に集団的自衛権を行使できるように法律を改正するのは所謂「禁じ手」であり、安倍氏は日本国憲法を壊憲したと日刊ゲンダイは批判している。

 結果、日米同盟は深化し、安倍政権でトランプ大統領から押し付けられた米国製兵器の調達額が増えた。年額500億~600億で推移していたものが、2019年度には7000億円超と、従来の10倍以上まで膨らんでいると、日刊ゲンダイは指摘している。そのローンの支払いが現在の岸田政権を苦しめている。

 国民は叩きやすい岸田首相を「増税メガネ」などと揶揄しているが、今の円安も、非正規雇用の問題も、少子化が依然進行する現状も、安倍長期政権の負の遺産である。もっともその政権の重要閣僚や党の要職を歴任してきた岸田現首相にも十二分に責任の一端ははある。

 憲法改正が制度上容易でないから、時の権力者が「憲法を使いこなす」と称して、解釈変更することは、本来はいけないことと思うが、それを菅さんなども称賛している訳で、この国の政治家の順法意識の低さ、独裁志向を物語っている。




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安倍晋三VS日刊ゲンダイ 第1回

2023年11月01日 | ブログ
まえがき

 今年10月に、日刊現代第一編集局長の小塚かおる氏が「安倍晋三VS.日刊ゲンダイ」副題には“「強権政治」との10年戦争”とある、新書を朝日新聞出版社から出されている。

 安倍氏による長期政権には、一般国民の評価が真二つに分かれているとよく聞く。どんな政権であってもその中心人物に対する好悪、政策の適切性とその達成状況などから評価が分かれるもので、その評価の時間軸の長短もある。「歴史の法廷に委ねる」などの逃げ口上のような文言もあったりする。

 安倍第二次政権以降は、その前の民主党政権があまりにひどかったという刷り込み(事実とは思うが)があって、安倍政権に批判はあっても国政選挙では連戦連勝し、「選挙に強い」などという怪しい評価が出来上がった。何のことはない、公明党に加えて韓国発の旧統一教会などという宗教団体とも懇意にして票を得ていたのである。そんなことは一部の国民しか知らないから、選挙で勝てば官軍である。数ある宗教団体の中には、昔から一部の政治家を支援していることは聞いていた。ただ、庶民の信者からべらぼうな額のお布施を巻き上げるような宗教団体は、どう繕っても異常である。信仰の自由で守るべき集団ではなかろう。しかもこの国では、国政選挙でさえ投票率が低下傾向である。それほどの大組織でなくとも、その固定票は選挙結果に影響が大きいのだ。安倍人気などではなかったのである。

 私はどちらかと言えば右翼的で保守と自認しているが、安倍政権や自民公明の連立政権支持者ではない。連立から中共大好きの公明党を外すべきと思っているし、自民党の親中派の頭目二階氏など早く引退すべきと思っている。小沢氏と同様自民党を割っただけのパフォーマンス政治家であると認識している。

 そんなことで、本ブログでも、安倍氏の生前から安倍政権批判はしていたが、ブログを読んでくれる人はどんどん減少したものだ。家内などもそうだけれど、日本人の庶民はお上信奉が強く、民主政治の選挙の洗礼を受けて国政を担当しているご苦労様で、政権批判はあまり評価しない。多くの日本人がそうではなかろうか。ひとつには表立って政権批判する連中のいかがわしさもある。共産主義者や偏見に基づく批判、恵まれない自分の責任転嫁もあり、過去の極左暴力集団の跋扈も記憶に新しいからでもあろう。

 最近のこの国を見ていると、国家の政治の有様を正確に中立的に国民に伝える機関(マスコミであろうか)が無いというか、衰退しているように思う。安倍長期政権の間に大いに衰退したとも言える。

 そんなことなどで、これまでブログに載せた、自身の感性を頼りにした政治批判を、現代の先端ジャーナリストの著作を基に、安倍政権を振り返りたいと考えたのである。




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