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人事について考える第1回

2014年06月01日 | Weblog
人事と経営

 企業経営にとって、何が大切かと問えば当然にまずお金ということになるけれど、ヒト、モノ、カネ、情報という順番からすればヒトが一番であるとも言える。「企業は人なり」とは言い古された言葉だけれど、やっぱり企業や組織にとって人が最重要であり、すなわち人事が大切となる。

 戦後歴代最長政権を誇った佐藤栄作元総理は「人事の佐藤」などと呼ばれたし、現在の安倍総理なども小泉政権の後を継いだ一次と比べると、人事面で格段の成長があったのではないか。そのことが、政権の安定に大きく寄与しているように見受ける。

 これは前にも書いたのだけれど、扇谷正造*1)さんの「君よ朝のこない夜はない」*2)の冒頭の一節に「真の意味における教養というものは、女性にとっては男を見る目、男性にとっては女を見る目ということにつきる」と述べているが、これは若い人向けに「結婚六つの条件」という副題の付いた第1章にあるので、こうなっているけれど、「真の教養とは人を見る目ということにつきる」と言い換えていいのではないかと思う。

 比喩が適切かどうかは分からないが、囲碁の世界では特に序盤において、石の形、その美しさが問われる。最近は囲碁も将棋もコンピュータ化が進み、将棋ではすでにプロ級の棋力があり、囲碁でもアマチュアトップクラスのレベルまで進歩している。「美しさ」などという感性頼みではなく、デジタル的に解明される日が近づいているようにも思うけれど、今のところ囲碁の序盤において、いかにコンピュータといえ、強いプロといえど終局までを読み切れるわけではない。その修業と経験によって精神力と感性を陶冶し、自分なりの美しさを会得し、それを追い求めることで、勝率を上げているのがトッププロであろう。

 人物評価もあらゆる評価項目をコンピュータ解析することで、その好悪や能力全般をある程度評価可能ではあろうが、通常のペーパーテストでは所詮その一断面でしかない。しかも将来性などという評価はまず困難である。よって論文や面接試験が企業の採用では主流となる。だから面接試験の責任者、例えば人事部長の人を見る目、すなわち感性が企業にとっては非常に大切となる所以である。

 能力の乏しい社長には、悪賢い取り巻きが跋扈する。価値観の低俗な人物はやはり低俗な人を採用してしまう。「類は友を呼ぶ」、「同病相哀れむ」、「同じ穴のムジナ」、「友達を見ればその人が分かる」等々、格言、金言の類もそのことを指摘する。昇進・昇格者選考も同じだ。業績の上がらない企業の根っこはそこに始まる。人事はその結果が遅れてやってくるし、企業業績は、景気など外部要因に左右される振れが大きいため、その巧拙が結果と結びついて論じられにくい。その証拠を問われても、科学の世界でないだけに論理的に説明がつき難い。しかし、それだからこそ重要なのである。




*1)(1913年-1992年) 宮城県出身。1935年に東京帝国大学文学部国史学科を卒業して朝日新聞社に入社。応召され一等兵で終戦、復員後「週刊朝日」編集長、学芸部長、論説委員。特に「週刊朝日」編集長時代には同誌のすさまじい拡販に貢献。朝日新聞退社後評論家、ジャーナリストとしても活躍し、大宅壮一氏らと共に戦後マスコミの三羽烏と呼ばれた。byウキペディアなど
*2)株式会社講談社1984年4月10日第1刷(定価1000円)
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