健康・医療
日本は世界一の長寿国であるが、元気で長生きでなければ幸せとは言えない。また高齢化によって、国の医療費は増大し国家予算を蝕んでいる。昨年、平成28年の医療費は41.3兆円(税金で賄われているのはこのうち、約16兆円)で、そのうち75歳以上の高齢者分が37.2%を占めている。75歳以上の人口は全体の13.4%だから、高齢者医療費の負担が大きいことが分かる。これに介護費用が加わる。お年寄りの医療費が高くなることは当然であり、高齢者の健康増進は国家の社会保障費負担の観点からも喫緊の課題であることが分かる。
お年寄りに限らないが、国民の健康がIoTによって守られるようにできるのだろうか。通常健康診断は年1回であるが、IoTの普及により、個人の健康状態を常時モニタリングできるようになり、栄養バランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠なども自動的に支援ができるようになる可能性がある。
健康状態に個々人の脈拍・血圧、体脂肪・体組成、活動状況や食事画像のデータ等を蓄積し、これらを分析する。その結果を自動的に各人にメッセージとして配信するのである。
「○○さん。昨日は食べすぎです。今日は歩いて下さい」、「××さん。高血圧症です。今日は気温が高いので、外出を控えましょう」、「△△さん。今日は睡眠不足です。車の運転は控えて下さい」、「□□さん。今日もリハビリ頑張って下さい」、「○×さん。昨日は薬を飲み忘れていませんか?今日は飲んで下さい」、「△○さん。今日、血圧異常です。担当医に連絡します」(本項参考本からの引用)などなど。
自身の健康のためとはいえ、24時間監視されているようで却って気分が悪いと思う方もおられるであろう。ただ、これらは誰か他人が見張っているわけではなく、すべてセンサーと自律電源、無線ネットワーク機能を備えたセンサーモジュールの仕業であり、これを利用するかしないかは本人次第である。
しかし、栄養・運動・睡眠など生活習慣をいい形で持続することにIoTが役立つわけで、それこそ健康で長生きを叶えるひとつの道筋かもしれない。
一方医療費の問題を考えると、検査漬け、薬漬け医療と言われるものがある。国民皆保険は良いのだけれど、高齢者保護の1割負担は、過剰な検査や投薬に個人の負担感が少ない分、受け入れやすい。それらの処方箋を透明化し、医療機関で共有することで、検査や投薬負担が軽減されるのではないか。
本稿「其の4:サービス4.0」に書いたけれど、保険証と診察券を一体化してデータを残し、どこの医療機関でも過去の診療履歴や検査データまで閲覧できるようにしておけば、何処で診察を受けても必要な処置が効率的に受けられるし、無駄な検査や投薬に歯止めが掛かるのではないか。
ただ、個人情報がどこかで部外者に詐取されることがあってはならず、セキュリティーはIoTの永遠の課題となろう。
本稿は、三菱総合研究所編、日本経済新聞社2016年7月初版、「ビジュアル解説 IoT入門」を参考に編集しています
日本は世界一の長寿国であるが、元気で長生きでなければ幸せとは言えない。また高齢化によって、国の医療費は増大し国家予算を蝕んでいる。昨年、平成28年の医療費は41.3兆円(税金で賄われているのはこのうち、約16兆円)で、そのうち75歳以上の高齢者分が37.2%を占めている。75歳以上の人口は全体の13.4%だから、高齢者医療費の負担が大きいことが分かる。これに介護費用が加わる。お年寄りの医療費が高くなることは当然であり、高齢者の健康増進は国家の社会保障費負担の観点からも喫緊の課題であることが分かる。
お年寄りに限らないが、国民の健康がIoTによって守られるようにできるのだろうか。通常健康診断は年1回であるが、IoTの普及により、個人の健康状態を常時モニタリングできるようになり、栄養バランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠なども自動的に支援ができるようになる可能性がある。
健康状態に個々人の脈拍・血圧、体脂肪・体組成、活動状況や食事画像のデータ等を蓄積し、これらを分析する。その結果を自動的に各人にメッセージとして配信するのである。
「○○さん。昨日は食べすぎです。今日は歩いて下さい」、「××さん。高血圧症です。今日は気温が高いので、外出を控えましょう」、「△△さん。今日は睡眠不足です。車の運転は控えて下さい」、「□□さん。今日もリハビリ頑張って下さい」、「○×さん。昨日は薬を飲み忘れていませんか?今日は飲んで下さい」、「△○さん。今日、血圧異常です。担当医に連絡します」(本項参考本からの引用)などなど。
自身の健康のためとはいえ、24時間監視されているようで却って気分が悪いと思う方もおられるであろう。ただ、これらは誰か他人が見張っているわけではなく、すべてセンサーと自律電源、無線ネットワーク機能を備えたセンサーモジュールの仕業であり、これを利用するかしないかは本人次第である。
しかし、栄養・運動・睡眠など生活習慣をいい形で持続することにIoTが役立つわけで、それこそ健康で長生きを叶えるひとつの道筋かもしれない。
一方医療費の問題を考えると、検査漬け、薬漬け医療と言われるものがある。国民皆保険は良いのだけれど、高齢者保護の1割負担は、過剰な検査や投薬に個人の負担感が少ない分、受け入れやすい。それらの処方箋を透明化し、医療機関で共有することで、検査や投薬負担が軽減されるのではないか。
本稿「其の4:サービス4.0」に書いたけれど、保険証と診察券を一体化してデータを残し、どこの医療機関でも過去の診療履歴や検査データまで閲覧できるようにしておけば、何処で診察を受けても必要な処置が効率的に受けられるし、無駄な検査や投薬に歯止めが掛かるのではないか。
ただ、個人情報がどこかで部外者に詐取されることがあってはならず、セキュリティーはIoTの永遠の課題となろう。
本稿は、三菱総合研究所編、日本経済新聞社2016年7月初版、「ビジュアル解説 IoT入門」を参考に編集しています