中小企業診断士 泉台経営コンサルタント事務所 ブログ

経営のこと、政治のこと、社会のこと、趣味のこと、人生のこと

泉台経営コンサルタント事務所

2020年04月01日 | Weblog

中小企業診断士 小田原 清のブログ(一陽来福)
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  小田原 清(おだわら きよし)略歴  
 
 昭和22(1947)年   愛媛県生まれ
 昭和41(1966)年   工業高校卒業、就職
 企業での主な職務経歴と(貢献)
  ・石油化学プラントオペレーター ・研究(チーグラー触媒の高性能化) ・品質管理(ISO 9000)
  ・電子部品製造の生産/品質管理(歩留まり改善による黒字化) ・外注先管理
  ・日本GEプラスチックス出向 サイト/アナリスリーダー(シックスシグマ)・ロジスティクスリーダー(大幅なコストダウン) 
 平成19(2007)年8月 定年退職
 同年         中小企業診断士1,2次試験合格
 平成20(2008)年4月 経済産業大臣登録中小企業診断士
             泉台経営コンサルタント事務所開設
 同年11月       NPO法人金融検定協会認定ターンアラウンドマネージャー(事業再生請負人)
 平成25(2013)年4月 中小企業診断士資格更新
 平成30(2018)年4月 中小企業診断士資格更新

  所属団体・組織など

 ・東京都中小企業診断士協会正会員 城東支部 城東支部執行委員
 ・東京商工会議所会員
 ・千葉南法人会会員
 
  診断士研究会活動など

 ・城東支部/「品質マネジメント研究会」代表(リーダー)
 ・診断士囲碁同好会

  講演・講師

 ・農商工連携
 ・経営に活かす品質管理
 ・職業人講話 など
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品質管理ノート 第6回

2018年11月16日 | ブログ
検査

 品質管理の第一歩は、出来上がった製品を基準に照らして検査し、基準に満たない不良品を出荷しないことにある。

 ただ、製品によって1品1品検査を必要とし、また検査が可能なものと、ネジや釘のように1個1個は小さく、一度に大量に生産するものの場合のように到底1品1品の検査は無理なこともある。このような場合、等しい条件下に生産した製品集団をロットと呼び、出荷検査もロット毎に抜き取りで行うことになる。

 この抜き取り検査による判定基準によって、全体の不良率がどの程度になるか(OC曲線)、その不良率をどこまで許容するか(AQL:acceptable quality level:合格(許容)品質水準)など、統計的品質管理の嚆矢と思われるものだ。

 液状の化成品(化学薬品等)なども、保管タンクや出荷の際のタンクローリーや貨車のタンク毎に一部を抜き取って(サンプリング)検査をして判定する。コンビナートのように他社に専用のパイプラインで輸送出荷する場合には、輸送中のパイプラインから抜き取って検査することになる。装置産業である石油化学工業では、製品タンクに納める前に工程のパイプラインなどからサンプルを採取して工程検査とする。工程検査の数値の動向によって、工程の諸条件を微調整する、また不適合であれば輸送先のタンクを切り替えることになる。外乱が入らないように行うサンプリングは気の抜けない業務であり、重要である。

 検査の場所・頻度、抜き取り量なども管理項目として決めておく。これをQC工程図に規定するが、特に工程検査で異常が出た場合、どの部署に一番に報告し、対応して貰うかを決めておく(フロー図の返り線の表示)ことが重要で、出来上がってからの検査だけでは、場合によっては不良品の山を作ることになってしまう。

 技術部門でも研究開発・設計部門などはエリート集団の意識があり、それはそれで確かに重要な部署ではあるが、決められたことを決められた通りに行うだけと思われがちな検査部門をどれだけ重視できるか、企業の品質管理意識の強さが問われている。

 検査は精緻なサンプリングに始まり、各種分析機器の校正など地味だが重要な業務がある。より迅速で精緻な分析法の開発もある。品質保証のためには検査部門にも企業を背負うキーマンが必要であり、有名企業、大企業の品質問題撲滅に必要なことである。

 
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品質管理ノート 第5回

2018年11月13日 | ブログ
現状把握

 問題や課題を解決するための指針としてQCストーリーがある。TQCの研究から生まれた「シックスシグマ」もMAIC〔(M:Measure、A:Analyze、I:Improve、C:Control):測定(現状把握)、問題点の摘出と目標設定、改善、歯止め〕というステップ解決法を用いるが、いずれにしても最初の現状把握が最重要である。

 現状認識を間違うと問題点の把握もその対策もすべて狂ってくる。現状認識に時間を掛けるべきである。企業コンサルも同じことで、業界の事前調査から経営者への聴取、事務所から工場、倉庫まで見て回ることが大切である。そこで働く人々の雰囲気を感じ取ることが必要である。

 中小企業診断士にやたら専門性を求め、協会の研究会なども必要以上に難しい課題と取り組むことがある。向学心は尊重しなくてはならないが、多くの場合自己満足に過ぎない。本当の専門家は診断士資格など要らないので巷に十分存在する。ただ私は診断士には品質管理のスキルは必須だと思っている。そのため3年前に品質マネジメント研究会を立ち上げた。マネジメントは「経営」であり「管理」とも読める。

 企業勤めの40歳半ばに工場の品質管理課で3年を過ごした。この間工場にISO9002が導入され、課内の担当スタッフとして、その取得に至る経緯をつぶさに経験できたことは貴重であった。この間、通信教育で「統計」を学んだ。ISO9000も統計も専門家からはほど遠いが、その手法を使って実績は上げた。

 工場の各職場にISO9000が行き渡ったところで、品質管理課で用済となった私は、品質管理文書作成の能力を理由に、新規事業の情報電子部品製造の部署に転出となった。客先の大手企業から品質監査が入るということで、準備が必要だが適当な人材が居ない。品質管理の担当者は猛烈に忙しく手がまわらないらしい。実際には開発初期段階の検査中心の品質管理を続けており、みごとに不良品は選り分けられて除去されていたが、銘柄ごとの歩留まりも把握されておらず商業生産でありながらコスト意識も低かった。

 石油化学専業企業が新規事業をと始め、電機電子業界からの若手退職者を採用していたが、転入者は客先へまで、個人への評価を期待するところがあったように診る。ほとんどの者がその後いろんな形で転出していった。当時の採用を担当した人事の責任者の趣向にも問題があったと考える。その後経営者層にまで登りつめたけれど、当時の社長の下、リーマンショックになす術もなかったように見えた。組織の経営者にもっとも重要なことは人物眼である。

 新規事業のリーダー層には優秀な人材も居た。しかし品質管理の素養に乏しかった。歩留まり算出や歩留まり向上の根本解決のアプローチ方法が分からない。TQCもどきの活動も実施していたけれど、IEの真似事ではプレゼンでは誤魔化せても実効は上がらない。

 結局客先からの品質監査はなく、製造現場の歩留まり改善が私の当面の主業務となった。

 現状把握は、まずは現場担当者の声を聴くこと。現場パートさんの協力を得て新たなデータを採る事。誰にも分かりやすいQC工程図を現場と確実に照らし合わせて作る事。3か月後関係職場のリーダーも参加しての私の報告会での説明で、みなさん目から鱗が取れた。「なあんだそうやればいいのか。簡単じゃん。後は専門の技術者に改善して貰えばいいや」。

 組織はとかく失敗の原因究明と対策はそれなりに行うが、うまくいった時に、その要因をきちんと確認し記録を残し、成果を正当に評価して次につなげることを怠る。

 やったことは確かに簡単。TQC(TQM)にある「分けることは分かること」を実践したに過ぎない。難しい学問を習得しても自身の頭脳を謙虚に柔らかく維持できる人は居るが、多くは傲慢で習わないことは分からない人に陥る。習えば習うほど知恵が出なくなることがある。

 研究所時代(1970年代)に一流大学出の修士連中が、「博士号は足裏の飯粒だ、取っても食えない」「研究開発は、修士卒までが良い。博士までゆくと視野が狭まり過ぎていて駄目だ」などと言っているのを聞いた。そのことと符合しないでもないが、要は組織の要所にゼネラリストが必要なのである。専門家ばかりを集めると角が立つばかりだ。

 話が逸れてきた。兎に角、しっかりと現状と向き合うことが品質管理には重要なのである。難しい解析が必要なこともあるが、自身の知識と照合してより難しくするのではなく、シンプルに考え知恵を出すことである。



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品質管理ノート 第4回

2018年11月10日 | ブログ
バラツキの指標

 品質管理は、狭義には製品品質のバラツキを少なくするための管理手法であると言える。製品品質をより良くする領分は、固有技術の範疇であり、現場での品質管理はその設計通りに量産するための管理技術と言える。

 そのためには、バラツキを定量的に捉えるデータ採取が必要で、製造工程等においてサンプリングを行い、随時製品の出来栄えを評価し、運転の微調整などを行いながら最終製品のバラツキを押さえる。

 バラツキの指標として、標準偏差があることはよく知られているが、その計算式やその意味、活用方法まで知っている人は意外に少ないのではないか。もっともその計算は計算式など知らなくても、エクセルは勿論、気の利いた電卓ならデータを入力すれば答えが出るようになっている。

 わが国では近年学校で統計を教えていなかった(学習指導要領から外されていた)時期があったことで、従前(2012年2月)大学生の4分の1が「平均」の意味さえ十分理解していなかったという驚きの調査結果が報告されたりした。しかし、一応品質管理を理解したいと思う人なら、統計的品質管理などと大上段に振りかざす以前に、標準偏差の意味や活用方法、計算式くらいは知っておくほうが良いだろう。

 単にバラツキを知るだけなら、簡易的に最大値と最小値の差(R)を見ることや、平均値との差(偏差)の絶対値の合計をデータ数(n値)で割ったもの、また偏差平方和(偏差の2乗の合計)をn値で割ったもの(すなわち「分散」)の比較でも可能であるが、標準偏差(σ=√分散)は単なるバラツキの指標に留まらず、±σ内に何割のデータが納まっているかを示しており、そのことから所定の範囲から外れるデータの確率を示してくれるのである。

 QC7つ道具というものがあって、QCサークル活動などでも利用されるもっとも基本的な問題解決手法とされるが、この中のひとつである「管理図」にも標準偏差が必要となる。管理幅に過去のデータからの±3σが使われるのである

 ±3σ内には99.7%が入るが、±1σ内には68.3%、±2σ内には95.4%のデータが入る。「1000に3つ」と言われるめったに起こらない事象は±3σ内からの外れとなる。管理図において、このようなデータが検出されれば、直ちにその原因を探索し対策する必要がある。もっとも管理図では、単に±3σから外れたデータだけを監視するのではなく、データが一定数以上(通常7連以上)連続して上昇する、または下降するなど、バラツキ方の異常についても監視するところに真骨頂がある。

 標準偏差に関係はないが、QC7つ道具のひとつであるヒストグラムも、バラツキの形状から異常を検知しようとするものである。
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品質管理ノート第3回

2018年11月07日 | ブログ
続、品質管理ということ

 1990年代に入り、勤めていた工場でもISO9000(ISO9002)を導入することになった。工場の品質管理部内にISO事務局を置き、工場内特に製造部内の各課・係に向け、まず教宣活動を行う。ISO9000の初版1987年版では、特に文書管理が非常に厳しく、対応させるためには各課係に必要なマニュアルや帳票類を整備する必要があった。これまでの日常業務に加え多くの資料作成の作業が発生することになった。

 そのための新たな人員増はない。第一線の気鋭の係長が、ISO事務局に「われわれは品質管理の仕事だけをやっているのではない」という抗議に乗り込んできたことが強く印象に残っているけれど、当時製造部においては安全管理と生産管理が優先され、品質管理を行っているという意識はあまりなかったのである。

 私の入社1年目(1966年)、現場での三交代勤務。所掌プラントは石油化学プラントでも最も危険なエチレンオキサイド(エチレンに酸素が1個ぶら下がった構造をしているため、酸素を供給しなくても爆発の危険がある)製造プラント、そして直接の誘導品であるエチレングリコール製造プラントであった。

 同期入社は10名。新工場へのベテラン社員の異動に伴う穴埋めに備える大量採用であった。工業高校出身者でも機械科卒、工業化学卒が中心で、電気科出身者は居なかったように思う。電気科卒、機械科卒はメンテナンス部署、工業化学科卒は研究・分析要員が中心となるが、そこから外れた連中がプラントの交代勤務に配属された。

 オキサイドプラントの大型のコンプレッサーがある部署は、主に機械科出身者が充てられ、私は工業化学科出身だからグリコールプラント担当となった。工場内の数ある製造プラントの中で、もっともオペレーションの容易な部署であったと思われる。

 しかし、グリコールの最大顧客である東洋レーヨン(現、東レ)はその主力製品であるテトロン(ポリエステル繊維)の原料であるエチレングリコールの品質に殊更厳しかった。私などが入社する以前に、東レの技術者がしばらくプラントに駐留し、その品質管理を徹底させた。ハーゼンNo.(着色判定)基準や蒸留試験に加えてUV規格を導入していた。微量の不純物も紫外線の吸収で検出するようにしていたのである。

 エチレンオキサイドはエチレンプラントのサイドカット品。ポリエチレン原料などには高度に精製されたエチレンが必要なのに対して、エチレンオキサイド原料には少々の不純物は許容された。

 またエチレンオキサイドの高純度品は、界面活性剤用途等にそのまま出荷され、アルデヒドなどの不純物を含む最終精製塔のボトム品がエチレングリコールの原料に使用された。いわば、3級品の原料を使い、恐らく当時世界の最高品質のエチレングリコールを製造していた。

 そのため、工程管理ではサンプリング頻度を多くし、少しでも品質悪化の兆候があればリアクターへの原料供給水をプラント回収水から高純度水に一時切り替えるなど、「品質管理」という意識はないもののそれを立派に実践していたものだった。




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品質管理ノート 第2回

2018年11月04日 | ブログ
品質管理ということ

 戦後のわが国の工業製品の品質向上は、デミング博士*註1)やジュラン博士*註2)の指導によるところが大きいとされている。確かに工業的に大量生産において均一な製品を高い歩留まりで生産するための管理技術は、F.W.テーラーの科学的管理法*註3)やシューハートの管理図(1924年)に起源を持つ米国が発祥と言える。

 しかし、それ以前においてもわが国の産業界における品質管理は立派に存在していたと思える。例えば、陶磁器などの職人が、出来栄えの悪い製品を叩き割る姿をテレビドラマなどで目にするように、出来栄えの評価すなわち品質評価は厳密に行ってきた。焼き上がった陶磁器などもその出来栄えによって、等級が付けられ、芸術品から実用品にあっても高価なものから庶民が買えるものまで等級分けされて販売されてきたと思われる。

 江戸時代の浮世絵にしても、絵師、彫師、刷師の分業で、それぞれが非常に繊細な仕事を熟した。彼らが使う絵筆、絵具、彫刻刀、バレンひとつまでも浮世絵の出来栄えを左右する。立派に品質管理されている物である必要があった。

 農産物にしてしかり。現代において1個100万円もするメロンや一粒1万円のぶどうなども、恐らくその育成期間の管理に繊細な心配りがあって、その出来栄え評価も細心のものがあろう。神戸牛や松阪牛などブランド牛肉にしても同様である。

 また名のある飲食店の調理人の、その味をよりよく維持するために行っているノハウハウとその努力は半端ではないようだ。すべて立派な品質管理である。

 すなわち、われわれの品質管理は、長年に培われた職人技をベースに、顧客の目に見えぬところにも注力した伝統の上に成り立ってきたもので、まさに現代工業製品に冠せられた「メイドインジャパン」ブランドのベースはそこにある。

 謙遜かどうか、仲間内で「私は品質管理が分からない」という言葉を聞くのだけれど、科学的管理法としての品質管理は確かに理屈が難しそうに感じるけれど、品質管理そのものは、われわれが庭で花を育て、野菜を作り、子供たちと紙ひこうきを作り、折鶴を折る作業においても自然のうちに行っているものだ。

 日本人は豊かな自然と四季に恵まれ、山の幸、海の幸から繊細な情緒を育まれ、主婦が家事ひとつ行うにも、出来栄えよく、効率よく改善を繰り返しながら行う。手洗いの習慣、細部にまで心を込める習慣。いただきます、ごちそうさま、ありがとう、すみません。そのような伝統の灯を消さないことがまさに品質管理ではなかろうか。




*註1)米国の統計学者(1900-1993)。1950年に来日し、日本の学者や企業経営者に統計的方法による製品設計や品質管理の手法を伝授した。
*註2)米国の経営学者(1904-2008)。1954年に来日し、現場における実践的品質管理の手法(パレート図による重要度分析など)を講義した。「品質管理は経営のための道具である」として、日本の「品質中心主義に基づく経済」への基礎を築いた。
*註3)20世紀初頭の米国で、方法研究と作業測定により、生産工程を成り行き管理から科学的管理に移行させIE(生産工学)の基礎を築いた。作業標準化と作業管理を可能にする組織形態を創設した。すなわち課業管理を行い、従業員に報酬に見合う一定のノルマを課した。テーラーの他ガントやギルブレスらもその発展に寄与した。ただ、科学的管理法は人間性尊重が希薄として、その後の経営学では見直しがされてゆく。



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品質管理ノート 第1回

2018年11月01日 | ブログ
哲学無き経営

 企業の製品品質不正が止まらない。この10月にも油圧機器メーカーの免震・制振装置の検査データ改竄が発覚。すでに多くの建造物に組み込まれていただけに、公表もままならない所もあって、正確な被害は確認されていないが、1000件は優に超えるようだ。

 背景に、競争が激化する中で、コストダウンを求められる現場は人手不足という現状がある。品質問題、一年前に神戸製鋼所が不正を公表し、三菱マテリアル、日産、スバル、東レと続いた。

 特に製造業にあっては「安全第一」「品質第一」「顧客第一」は単なる建前ではなく、企業存続の前提であり、有識者が後付けでいろいろ苦言を呈するまでもなく、企業の経営者から現場担当者まで、本来骨身に沁みてついていなければならないことだ。

 企業は、製品やサービスを顧客に提供することで収益を上げ、利益を得て発展する。ところがどんなに良い製品やサービスであっても、世間の人が知ってくれなくては売れない。また顧客の投資/効果を満足させるには適切な価格戦略も必要である。マーケティングの4つの要素のうち広告・宣伝や価格に目が行き、最も肝心の製品品質が疎かになる。

 また企業の発展には、ボチボチとモノづくりするより、余った金で金貸しをしたり、M&Aで企業買収を仕掛けたりの方が手っ取り早いという風潮が20世紀後半ごろからこの国にも蔓延した。作業着を汗まみれにして働くより、パリッとしたスーツに身を包み、高層ビルのオフィスでパソコンでも打っている方がお好みとなる。ホンダの本田宗一郎氏やソニーの井深大氏をモデルの世界ではなくなった。

 そして現代の経営者の多くが哲学を失ったのではなかろうか。直截に言えば、お金儲けにしか関心が薄くなり、従業員を一流の技術者・技能者、そして人間的にも立派な人材に育てようとする意志が疎かになっている。

 人件費は費用であり、従ってこれを固定費ではなく、変動費化することだとして、非正規社員の割合を増やす。グローバル競争の中で「背に腹は代えられない」ことも現実であろうが、そこに哲学の趣はない。

 政治にも今や哲学はない。私などが中学生の頃、高度経済成長を主導した池田勇人首相と松下電器(現、パナソニック)創業者松下幸之助氏が「総理と語る」というテレビ番組でこの国の将来について熱く語り合う姿を何度か見た。中学生の目にもこの国の政治家も企業経営者も信じられる存在に思えたものだった。

 現在の政治家も経団連の上層部も学者さえ当時と何かが違うのである。それは人間として自身の生き方に哲学を持っているか否かではなかろうかと思う。





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AIとは何だ 第10回

2018年10月28日 | ブログ
AIに期待すること

 50歳で外資系の関連会社に出向になった。元の職場からは、マネージャークラスの人材が求められているというのが転出理由であった。そもそも職場内の人事に関する件で、上司には意見を述べていたことが癪に障っての放出で、出向先の転入者合同歓迎会で所長からは私に対する歓迎の言葉はなく、職場に未だマネージャー不在を詫びる言葉があったのみだった。

 要は適材適所の人事ではなかった。それを分かっていてやる上司も上司だが、彼は結局50代半ばで会社を去っていった。一方私は一応定年までほぼ9年間を英語ができないまま外資系企業で勤め上げ、物流管理では年間1億円以上のコストダウンを達成し、本社の英国人の財務部長が工場に来たときにはファーストネームで呼ばれ、握手を求められたりした。

 当該外資系企業においては特に少なくとも英語くらいは話せないと、マネージャーにはしない。マネージャーになど成らなくて良かったのだけれど、業績に対する評価は、いかに企業価値の増大に貢献したかを基準にするべきで、語学力はそのためのツールでしかない。ここらあたりも目的と手段の取り違いがあるのだけれど、要は報酬はやるべく少なくしたい理由づけとして分かりやすい査定条件に前提を付けただけ。もっとも英語力は彼らにとっては仲間内のコミュニケーションに必須のツールだからその能力は外せない。

 その後、ユニクロや楽天が英語を社内公用語とすると宣言するなど、国内企業にもそんな気運が高まったけれど、ここに来てAIの進歩で、簡単なアプリでどこの国の人とでも普通に会話できる世の中となれば、語学力は能力として他人と差別化する大きな要素と成り難くなる。英語は話せなくとも、それぞれが持つ能力を十二分仕事に発揮すれば企業価値を高められるわけで、英語を話せない社員をそれだけで排斥する公用語構想は、企業の戦略としてそもそも間違っていた。 

 東京オリンピックまでに自動翻訳会話ソフトがどこまで発達するか知らないけれど、普通の人が訪日客と普通に会話できれば、さらに友好は深まる。

 AIはIOTとの組み合わせで、社会インフラコストなどを大幅に低減させる可能性を持つ。エネルギーのさらなる効率化で、資源・エネルギー問題や二酸化炭素排出量削減にもつながるであろう。

 AIが高度に発達した社会が、人権を無視した監視や権力者、資本家の権力や富を増幅させる手段だけでなく、人類の真の幸福につながることを願うばかりだ。
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AIとは何だ 第9回

2018年10月25日 | ブログ
今の人工知能でできること(下)

 現在、世界の自動車メーカーは電気自動車や水素燃料車の開発さらにAIによる自動運転車の開発競争で凌ぎを削っているようだ。

 自動運転と聞くと、鉄道の自動運転化が嚆矢のようで、航空機にしても船舶にしても航行中の多くは自動運転化されているようだ。

 鉄道車両はレール上しか走れないからモニター管理が容易で、これまでの技術で実現可能であったと思われる。現在でも東京の「ゆりかもめ」はじめ地方でも市中を走るモノレールなど自動化されているところは多い。東京の山手線にも自動運転化の計画があるようで、地下鉄も続くのではないか。生産年齢世代の減少が著しいわが国では、路線バスの運転手や貨物トラックの運転手は人手不足が深刻な状況のようだ。貨物輸送なども、倉庫を自動化して高効率化しても配達するトラックの手配が間に合わない。

 AIがそれほど発達していない時点で、そこそこ進展していた乗り物の自動運転化。囲碁や将棋で人間を凌駕したディープラーニングを活用すれば、一般乗用車の実用化も真近い。まずタクシーや貨物トラックの運転手の代替が進めば、人手不足だけでなく、運転手の過労からくる高速道路の追突やタクシー強盗など事故や人が傷つく犯罪の減少にも貢献する。

 自動運転車には4つのレベルがある。レベル1は、加速・操舵・制動のいずれかの操作をシステムが行うもの。レベル2は加速・操舵・制動のうち複数の操作を一度にシステムが行うもの。レベル3は加速・操舵・制動をすべてシステムが行い、システムが要請したときにのみドライバーが対応するもの。レベル4は加速・操舵・制動をすべてシステムが行い、ドライバーが全く関与しないもの。

 自動ブレーキや速度を一定に保つなどはレベル1、高速道路で、車間距離や速度を保つのはレベル2である。レベル3についてもすでに一部実用化されており、レベル4は試験走行の段階ではあるが、技術的には公道を走ることができるレベルに達しているそうだ。

 自動運転技術は、ドローンにも生かされ、その活躍できる領域が、物流や農業だけでなく、治安維持などへも進展するであろう。


本稿は、三津村直貴著「AIビジネス入門」成美堂出版、2017年9月刊を参考にしています。
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AIとは何だ 第8回

2018年10月22日 | ブログ
今の人工知能でできること(中)

 画像認識と同様にディープラーニングが得意な音声認識でも実用化が進んでいる。電子機器は人の声による指示で動くようになってきた。IBMが開発したWatson(質問応答システム・意思決定支援システム)はすでに多くの所で活躍しているそうだ。(Web「IBM Watson」参照)

 またソフトバンクのPepper(ペッパー:人型ロボット)は、人口知能が人間の声を参考にその合成によって自分の声を手に入れたことで、自分の感情を声で出来るようになっているそうだ。「変なホテル」の登場も画像(顔)認証技術との組み合わせで誕生したようだ。

 『「変なホテル」は先進技術を導入し、ワクワクと心地よさを追求した世界初のロボットホテルです。フロントでは多言語対応のロボットたちがチェックイン・チェックアウトの手続きを行い、クロークではロボットアームが荷物を預かります。

 どこか温かみを感じるロボットたちとの楽しいひとときに、心をくすぐられることでしょう。更に、客室前で顔認証をすれば、その後はまさに顔パス感覚。鍵の持ち運びのわずらわしさ、紛失の不安から解消されます。

 「変」には「変化し続ける」という意思が込められ、目指すは、常識を超えた先にある、かってない感動と快適性。「変なホテル」へのご宿泊の皆さまを未体験のサプライズで一足先の未来へいざないます。』

 もっとも最新の情報では、最初に変なホテルとしてロボットを導入し、そのことでギネスにも登録された長崎ハウステンボスのホテルでは2015年の開業時6種類82体を導入しており、その後27種類243体まで増やしていたが、先月になって16種類85体まで減らしたそうだ。

 パソコンが一般の社員に行き渡るようになった時代、事務所に溢れたパソコンを整理する企業が現れた現象に似ている。

 性能が悪いロボットではサポート役の従業員が必要になり、またメンテナンスの手間も増えて必ずしも効率的で無いという現実に直面したそうだ。

 先述のWatsonは試験的であるが、大学で教授のもとでその講義をサポートし、学生からのメール対応や質問への回答を担当し、学生から人工知能であることを気づかれなかたという。

 また銀行では、音声認識システムをコールセンターに導入することで、オペレータが顧客の話を聞いている間に先回りして問い合わせの情報を収集するのだという。

 いずれにしてもどんどんと活躍の場を広げ、またその精度も急速に上がってゆくのであろう。



本稿は、三津村直貴著「AIビジネス入門」成美堂出版、2017年9月刊を参考にしています。
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