中小企業診断士 泉台経営コンサルタント事務所 ブログ

経営のこと、政治のこと、社会のこと、趣味のこと、人生のこと

時事散歩Ⅹ 第20回

2022年10月28日 | ブログ
旧統一教会問題

 『旧統一教会との関係が相次いで明らかになっていた山際経済再生担当大臣は、24日夜、岸田総理大臣に対し、政権運営に迷惑をかけたくないとして、辞表を提出し辞任しました。事実上の更迭とみられます。』

 翌日の『国会では、安倍元総理大臣に対する追悼演説が衆議院本会議で行われ、立憲民主党の野田元総理大臣が故人をしのびました。』

 『旧統一教会の活動がこれほどまでに大きく取り上げられるようになったのは、去る7月8日、参院選候補者の応援に訪れた奈良県内で、安倍元総理が演説中に背後から銃撃されて亡くなったことによる。』

 当初は犯人の単なる思い込みで、間違った恨みを募らせて犯行に及んだのかと思ったものだが、知らなかっただけだった。犯人が直接犯行を決意したのは、昨年9月、安倍元総理の旧統一教会の関連団体へ送ったメッセージ動画が、協会の布教活動推進のため全世界に発信されており、これを見た犯人が、協会トップの代わりに選挙の街頭演説で、狙いやすい安倍氏を襲撃したものだった。安倍氏の協会との関係は、祖父の岸元総理から3代にわたる関係であったことなど、知らなかったことであった。

 その元総理を、慣例の「内閣・自民党葬」ではなく「国葬」にしたから一般国民は「おかしい」となった。国葬反対運動が起ったが、国民の声を聴くはずの岸田総理は動じなかった。内閣支持率は急落し、現在支持27.4%。不支持は43%。(時事通信)

 それにしても片や統一教会絡みで大臣職を棒に振り、片や狙撃されて殺害されたこともあってか「国葬」で送られ、大臣罷免の翌日の国会ではその追悼演説で、野田元総理が名演説をぶったそうだ。野田さんは松下幸之助氏が起こした松下政経塾の1期性で5年間学んだという。一説にはその間、主に演説の仕方を練習していたと聞くが、それが多いに役立った。

 それにしても旧統一教会と関係の深い議員、現・元大臣、現自民党の要職にある方など、両手にも余るであろう。岸田総理は本当に旧統一教会に解散を命じられるのか。最近またまた安倍氏が統一教会幹部を自民党本部に招いたときの写真が出て来たとの報道もあるが、関連の調査は本当に必要ないのか。

 昔から政治家と宗教団体との関りは普通に語られていた。当の宗教団体が詐欺まがいの物品販売や高額の献金(お布施)要求などの疑いがなければ、政治家であっても「信教の自由」である。テレビのインタビューに岸前防衛大臣など、旧統一教会の悪行の噂を知っていながら、付き合っていたと証言していたが、しがらみで一度でもお世話になると抜けにくい現実があるようだ。

 それにしても国内10万人程度の信者から毎年600億円程度のお布施を受けていたという旧統一教会。その多くが韓国に送金されていた。経済活動で中共にぼったくられ、宗教関係で韓国にもぼったくられ、所得税に消費税、固定資産税にガソリン税、国民健康保険料や介護保険料にしても税金のようなもので、使わなくても還付されるわけでもない。

 旧統一教会被害者救済の声があるが、どうかその財源は、協会を解散させてそこからの没収金で賄って欲しい。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

時事散歩Ⅹ 第19回

2022年10月25日 | ブログ
円安

 円安でわが国のGDPは上がるという論があるようだ。円安で企業が儲かるのは、ものづくり日本が元気な頃で、家電に車と輸出するには円安が適していた時代の話かと思いきや、今でもそうだと言われる方もいるらしい。

 今、ウクライナのことで、エネルギー、食糧が不足し、これに円安でそれらを買うための通貨が安ければ当然に国民は苦しい。すなわち何十年かぶりの3%程度のインフレに見舞われている。給料はここ数十年上がっていないと聞くし、庶民は大変なのだけれど、企業業績は好調で、国民の不利益で失われる富より、企業が稼ぐ富の方が計算上多いと言うのだ。

 企業にもいろいろあって、例えば「ニトリ」(ニトリホールデイングス)など、ずっと続けていた増収増益という記録が円安で遂に途切れるのではという懸念を持っている。『ニトリは原材料を様々な国から調達し、中国や東南アジアの工場で生産、日本に輸入して販売する。調達、生産、物流のいずれも円安の影響を受ける。』日経ビジネス2022.10.17「時事深層」

 元々、わが国は中国の労働力が安かった時代にそれに乗っかり、円高で工場をどんどん海外にシフトさせた。その経営戦略の破綻はだいぶん前から方々で聞こえていたが、一度流れが出来ると修正が難しいようで、中国が駄目ならベトナム、タイ、マレーシアと同じような海外投資を繰り返す。日本人が給料のUpを我慢して得た企業収益は、ここ20年すべて中共に絞り取られた。半導体など、ひどい状態のように聞くけれど、一般の選挙民に痛みが届くのは先の話で、「アベノミクス」などという怪しげなキャッチフレーズと韓国カルトで、長期政権を許し、気が付いたときにどうにもならなくなっている。勿論、2009年の政権交代の結果に国民があきれ果てた後遺症でもあった。

 米国の景気が維持される限り、日米金利差からくる円安は、少々の為替介入も効果は少ないようで、日本政府も打つ手はない。とのことだが、円安で本当にGDPが増加するのか。

1992年に500兆円に達したわが国のGDPはその後30年ほとんど増えていない。この間に中国は勿論、東南アジア諸国もその多くがGDPを伸ばし、個人所得を上昇させている。日本で給料が上がらないのはGDP(国内総生産)が増加していないからである。

 戦後の貧しい時代、日本も米国はじめ先進諸国に安い労働力を提供して経済成長を果たした。経済成長が鈍化すると並行して、この国の政治家の知的水準が低下してきた。今もまた、次の総理の話が出て、デジタル担当相の河野太郎さんくらいしか居ないような話も出る。私などから診れば、なぜ岸田さんは自派(宏池会)の小野寺五典元防衛大臣あたりを主要大臣に配しなかったのか大いに疑問である。組織で上に行く人は、人事のセンスが最重要である。息子などはまだまだ先の話、まずは自派の人材を後継として育てなければならない。

 対中共も対ロシアも円安も、この国のトップが、鋭利な頭脳を茫洋とした人間性で包む器量の人物であれば乗り越えられる。最近の総理はまず鋭利な頭脳が不足の人物が続いている。と思えてしようがない



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

時事散歩Ⅹ 第18回

2022年10月22日 | ブログ
中共の横暴を阻止する処方箋

 世界の火種はロシアばかりではない。勿論イランやイラク、イスラエルなど中東やアラブ諸国もあろうが、アジアには北朝鮮ありで、中共は習近平が、台湾併合には武力行使も辞さない、とこれまで通りの決意を述べて世界を恫喝した。

 しかし、かつて台湾が中共領であったことなどない。中共と組んで金儲けをしたい連中が、中共に阿って間違った見解に同調してしまっただけのことだ。しかし、中共はいかにも台湾が自国の固有の領土のように世界に発信し続ける。嘘も100万回つけば何とかで、わが国の尖閣諸島の領有権も同様である。

 台湾が中共に絡めとられれば、台湾も領有権を主張していただけに、尖閣諸島は中共の領土となってしまう。もっとも中共は尖閣ぐらいで満足はしない。そんな国と何で友好50周年かと臍でお茶が沸く。中国人留学生を大量に受け入れ、国民の税金で優遇した挙句、スパイまがいの被害に遭う国である。

 角栄氏以来、日本のリーダーはその中共に阿ってきた。北海道の原野が中国資本に買い漁られても、中国人旅行者の爆買いを喜び、商売さえ成り立てば国家の誇りなど上の空であった。議員団を従えて表敬訪問した政権もあった。当時の民主党の有力議員で、表敬訪問の先導者のサポートをしていた人物が、その後自民党中共派閥に入り、自民党員となったようだ。もう一度、わが手で中日友好の旗を立てたいようだ。

 北朝鮮のミサイルに政府もマスコミも過剰に反応する。北朝鮮を批判するには経済的制裁がないからに過ぎない。中共がどれだけ領海侵犯を繰り返そうが、「遺憾」で終わる。現、内閣の外務大臣は親中との呼び声が高い。それ以上のコメントなど期待できない。この夏カルトとの関りでテロに倒れた元総理は、その外務大臣を指して、彼は中共のハニートラップに掛ったと知人に話していたそうだが、言ったという本人は、中共の女性にはけっして近づかなかったというような話も出ていた。いずれも真偽のほどは定かではない。

 習近平が、これまでの任期制を撤廃して、3期目の総書記および軍トップを続けることに“日経ビジネス”(2022.10.17号「世界鳥瞰」)も、大きな懸念・危惧を表明している。ここまでくると中共自体に自浄能力はない。

 しかし、欧米そして日本など自由主義国家群に対策がないわけではない。それぞれの国家が、WTOの国家間の自由貿易を制限することだ。共産主義国との自由貿易の制限である。中共への経済投資や企業の進出などはやらないようにすることである。それによって、ロシアのような地下資源国家でない中共の今後の経済発展を阻止できる。自由主義陣営の企業からも不満も出ようし、その経済発展も同時に一部阻害されるかもしれないが、無法者国家の経済発展を削ぎ、軍事力増強に歯止めを掛けることで、隣国に武力行使するような事態を防止するのだ。

 自由主義諸国、先進国の醜い欲望が作り出したモンスター国家に歯止めを掛けるのは、それを産みだした諸国の責任でもある。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

時事散歩Ⅹ 第17回

2022年10月19日 | ブログ
ウクライナ

 ロシアのウクライナ侵攻から8か月、国土防衛軍は必至に戦うが、意味なく攻め込む側の士気は上がらない。21世紀に時代遅れのリーダーを戴くロシアの不幸であり、隣国の悲劇であった。

 遂にプーチンは小型核のスイッチに手を触れるところまで来ているという情報がもっぱらである。しかし、ウクライナ側は、国土を踏み荒らされ、侵略されたままで停戦するわけにはゆかない。初期の頃、日本の論者の一部に、「ウクライナはさっさと降伏して国民の生命を危険に晒すのを止めるべきだ」というのがあった。平和ボケ、腰抜け体質をよく表現している言葉であった。

 その点、ウクライナのゼレンスキー大統領は違った。今後もたとえ核攻撃を受けたとしても一歩も引くことはないだろう。プーチンは米国の広島、長崎への原爆投下さえ挙げて、核の脅しを現実のものとし、戦況の好転を目論む。しかし核兵器の使用は、第三次世界大戦を誘導する。その勝者は居ない。

 所詮、人類は駄目な生き物である。地球上に80億人も要らない。ただ核戦争は人類だけでなく、ただでさえ絶滅危惧種の多い中、多くの生物も巻き添えとなる。

 プーチンはすでに、ナチスドイツのヒトラーのように、人類の世界史に悪名を止めることになっているが、その汚名にさらに上書きするつもりだろうか。

 この侵略、落としどころにプーチンも苦慮しているように見える。当初は彼も、「ウクライナはさっさと降伏して、国民の生命を危険に晒すのを止めるべきだ」との第三者の声の高まりに期待して、ウクライナ政府がさっさと白旗を揚げると思っていたのではないか。

 それにしても2014年の、ロシアがクリミア半島を制圧した時、ウクライナはほとんど抵抗しなかったのかどうか。日本の政府もマスコミも大きな声を上げなかったようで、私などほとんど知らない間に、ロシアが半島を占拠し、立派な橋まで作っていた。当時の日本の政権は、ロシアとの北方領土返還交渉があり、ロシアを刺激するような言動を、マスコミにさえ封印したのか。挙句プーチンに貢いだだけで、今回の戦費の足しになった。プーチンには、クリミアの成功体験が、ウクライナ本土への侵攻を促したのであろう。

 停戦交渉としてトルコのエルドアン大統領なども登場したりしていたけれど、もともとトルコは帝政ロシアにいじめられ続けていた国である。調停役として相応しいのかどうか。関連したテレビの報道番組の受け売り的だが、停戦の条件として、ロシアはプーチンの立場維持と、先に住民投票によってロシア領としたこの度の侵攻で占拠した地域を新たなウクライナとの国境線とすること。しかし、ゼレンスキーは一歩も引かず、クリミア半島まで奪還しての停戦でなければ矛を収めない覚悟のようだ。調停は難しかろう。

 ロシアの核使用の可能性は51%などという、もっともらしくもいい加減な見方もあるが、ゼレンスキー大統領は核兵器の脅しにも屈しない。今のところこの紛争の落としどころは、ロシア国内の反乱に期待するしか、ないのではないか。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

時事散歩Ⅹ 第16回

2022年10月16日 | ブログ
テレビドラマに透けるこの国の病根

 10月から新しい連ドラが始まった。特に初代相棒が返り咲いたテレ朝の「相棒」は大きな期待を持って迎えられたようだ。

 事実を基にしたドラマとの触れ込みに惹かれ、日テレ水曜ドラマ「ファーストペンギン」を観始めた。舞台は山口県萩市の大島(人口600人余り)という。主演の奈緒さんは知らなかったが、脇を固める堤真一さんや吹越満さんなど昔から好きな俳優さんだったから、観る価値はある。敵役の漁協組合長を演じる梅沢冨美男さんなどには、初回放映後から非難のメールが届くという嵌り役。脚本の森下佳子さんは、この世界で有名な実績のある方だ。

 山口県には、萩からはだいぶん遠いが、高校を出て就職して17年間住んだ。このドラマのロケ地は千葉県いすみ市の漁港という、現在の千葉県人として関りがないとも言えない。

 『岩崎和佳は5歳の息子・進を育てる、「金なし」「家なし」「仕事なし」のシングルマザー。息子と共に寂れた港町・汐ヶ崎に職を求めて移り住んできた。地元のホテルの仲居として働き始めたある日、漁師の片岡洋と出会い、「あんたにこの浜を立て直してもらいたい」と1万円を渡され、浜の立て直しを懇願される。アジとサバの違いもわからないような素人の和佳は、漁師たちのボスとなり漁業の世界へ飛び込むことになり、漁師たちとぶつかり合いながらも、彼らの夢を背負う奮闘の日々が始まる。

 「ファーストペンギン」のように未知の世界に飛び込み、これまで変えることのできなかった業界内に蔓延した古い慣習・常識を変えていき、いつしか革命を起こす爽快で痛快なウソみたいなホントの話。』 Wikipedia「ファーストペンギン」あらすじ より

 ドラマを観ていて、いつしか梅沢さん演じる漁協組合長の姿が、現代の政権内でふんぞり返っている老政治家どもに見えてきた。特に与党自民党の名を挙げるまでもなく、伝わると思うが、その連中である。言う事を聞く軽い神輿を総理に据えて、「国葬に反対する連中は馬鹿だ」と国民を愚弄する。

 中曽根氏なども総理退任後なかなか引退せず、遂に小泉当時の首相が引導を渡す羽目となったが、組織を動かす老人(職人さんなど自営業は別)は、さっさと後継に道を譲り引退するべきなのだ。自身の権力を維持したいがためもあろう、碌に後継者の育成もせず、権力の地位にしがみついているようでは国を亡ぼす。周囲の若い国会議員も情けない。このドラマでも観て、大いに見習ってもらいたいものだ。

 人体は37兆個の細胞で成っているというが、その細胞の一つ一つが健全で、新陳代謝を行って全体の健康を維持しているのだ。新陳代謝の悪い部分があると癌細胞化する。今の与党自民党など相当がん細胞に犯されているように見受ける。自民党だけでもない。政界はじめ学会も官僚も地方行政機関も、各種団体も。勿論非常に頑張って国家に貢献している組織もあろうから一概に批判だけも問題だが、組織で働く人は周囲を見渡し、問題があれば声を挙げてゆくべきだろう。

 ジェンダー平等も世界の国々の中で、わが国は最低ランクである。この国の伝統の中で、けっして女性を粗末にしてきたわけでもなかろうが、胡坐を欠いている野郎が多いのだ。のさばる女性も多いことだが、見直すべきは見直さねばならない。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

時事散歩Ⅹ 第15回

2022年10月13日 | ブログ
弔辞

 テレ朝のモーニングショーでの国葬友人代表のスピーチを、電通作と述べたレギラーコメンテータ氏への批判がしばらく続いた。「電通作であるように自分には感じた」くらいなら個人的な意見で済むところを、いかにも電通が演出したというように言い切ったため、これは謝罪しかない。

 もっとも菅前総理の弔辞の内容についても批判がなかったわけでもない。山県有朋本の引用は、そもそも先に安倍氏が親しかった財界人への弔辞の一節に使っており、明らかなコピペであったとのこと。内容も礼賛が過ぎるとの批判も聞いた。また3Aと呼ばれた安倍氏、麻生氏、甘利氏こそ友人仲間で、菅氏の友人代表にも異論があったようだ。私は全く内容を聞いても読んでもいないので、評価できないが、弔辞とは礼賛の塊で、そこは仕方がない。悪人も死して仏となるのである。

 昔から優れた弔辞は発した人の評価を高める。もっとも政治家の場合は、電通は関与しなくても専門家がいるそうで、昔、池田勇人内閣の時代(1960年)。講演会で池田総理の目の前で、当時の社会党委員長浅沼稲次郎氏が、壇上に駆け上がった青年にナイフで刺されて亡くなった。この時の池田総理の弔辞(国会における追討演説)が秀逸だったが、名秘書ブーチャンこと伊藤昌哉氏の手になるものだったそうだ。単なる礼賛ではない、本物の追悼だ。

 『前段省略・・・ 淺沼君は、明治三十一年十二月東京都下三宅島に生まれ、東京府立第三中学を経て早稲田大学政経学部に学ばれました。早くから早稲田の北沢新次郞教授や高校時代の河合栄治郞氏らの風貌に接し、思想的には社会主義の洗礼を受けられたようであります。当時、第一次大戦が終わり、ソビエトの「十月の嵐」が吹いたあとだけに、「人民の中に」の運動が思想界を風靡していました。君は、民人同盟会から建設者同盟と、思想運動の中に身をゆだね、検束と投獄の過程を経て、ごく自然に社会主義運動の戦列に加わったのであります。

 大正十二年母校を卒業するや、日本労働総同盟鉱山部、日本農民組合等に関係して、社会運動の実践に情熱を注ぎ、大正十四年の普選を機会に、政治運動に身を挺したのであります。すなわち、同十四年農民労働党の書記長となり、翌十五年日本労働党の中央執行委員となった後は、日労系主流のおもむくところに従い、戦時中のあの政党解消が行なわれるまで、数々の革新政党を巡礼されたのであります。

 君が初めて本院に議席を占められたのは、昭和十一年の第十九回総選挙に東京第四区から立候補してみごと当選されたときであります。以来、昭和十七年のいわゆる翼賛選挙を除いて、今日まで当選すること前後九回、在職二十年九カ月の長きに及んでおります。

 戦後、同志とともに、いち早く日本社会党の結成に努力されました。昭和二十二年四月の総選挙において同党が第一党となり、新憲法下の第一回国会が召集されますと、君は衆望をになって初代の本院議運委員長に選ばれました。書記長代理の重責にあって党務に尽瘁するかたわら、君はよく松岡議長を助けて国会の運営に努力されたのであります。幾多の国会関係法規の制定、数々の慣行の確立、あるいは総司令部との交渉等、その活躍ぶりは、与・野党を問わず、ひとしく賛嘆の的となったものであります。

 翌二十三年三月、君は、日本社会党の書記長に当選、自来、十一年間にわたってその職にあり、本年三月には選ばれて中央執行委員長となり、野党第一党の党首として、今後の活躍が期待されていたのであります。中略・・・

 淺沼君は、性明朗にして開放的であり、上長に仕えて謙虚、下僚に接して細心でありました。かくてこそ、複雑な社会主義運動の渦中、よく書記長の重職を果たして委員長の地位につかれ得たものと思うのであります。君は、また、大衆のために奉仕することをその政治的信条としておられました。文字通り東奔西走、比類なき雄弁と情熱をもって直接国民大衆に訴え続けられたのであります。「沼は演説百姓よ よごれた服にボロカバン きょうは本所の公会堂 あすは京都の辻の寺」これは、大正末年、日労党結成当時、淺沼君の友人がうたったものであります。委員長となってからも、この演説百姓の精神はいささかも衰えを見せませんでした。全国各地で演説を行なう君の姿は、今なお、われわれの眼底に、ほうふつたるものがあります。中略・・・

 君は、日ごろ清貧に甘んじ、三十年来、東京下町のアパートに質素な生活を続けられました。愛犬を連れて近所を散歩され、これを日常の楽しみとされたのであります。国民は、君が雄弁に耳を傾けると同時に、かかる君の庶民的な姿に限りない親しみを感じたのであります。君が凶手に倒れたとの報が伝わるや、全国の人々がひとしく驚きと悲しみの声を上げたのは、君に対する国民の信頼と親近感がいかに深かったかを物語るものと考えます。

 私どもは、この国会において、各党が互いにその政策を披瀝し、国民の批判を仰ぐ覚悟でありました。君もまたその決意であったと存じます。しかるに、暴力による君が不慮の死は、この機会を永久に奪ったのであります。ひとり社会党にとどまらず、国家国民にとって最大の不幸であり、惜しみてもなお余りあるものといわなければなりません。

 ここに、淺沼君の生前の功績をたたえ、その風格をしのび、かかる不祥事の再び起ることなきを相戒め、相誓い、もって哀悼の言葉にかえたいと存じます。』

 池田勇人君の故議員淺沼稻次郎君に対する追悼演説 1960年 による



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

時事散歩Ⅹ 第14回

2022年10月10日 | ブログ
政治を見つめよう

 ロシアのというか、プーチンのウクライナへの侵略は、そしてロシア兵のウクライナ人捕虜などへの残虐行為は許されるものではない。プーチンはその侵略戦争を、ウクライナ領で生活するロシア人の解放として国内外へその正当性を主張した。初期には、ロシア国内の人々は領土が増えるならいいかとその多くが同調していた感があった。しかしここにきて、予備役の徴兵を受け、被害が国内に住む自分たちにも及ぶと知って、ようやくプーチンの暴挙を認識したようだ。

 ロシア人民だけの話ではない。大なり小なり、自身へ被害が及ばない限り、お上の政治に関心がないというか、良きに計らえの人々が大勢いる。

 安倍元総理の国葬の件でも、多くの国民は安倍氏の在任中の多くの決着のついていない不始末のことを知っており、しかも旧統一教会という韓国生まれのカルト集団に強く関係していることを知り、大いに反対した。しかし一方で、国葬では一般国民の献花の列が何Kmも続いたこと、国葬の友人代表に登壇した菅前総理スピーチが大好評となるなど、安倍シンパを大いに喜ばせた。

 モリカケ・桜も、自分たちに直接的に被害が及んだわけではなく、マスコミが騒いでいるだけ。消費税増税など、累進課税の緩和につながり、しかも安定的な財源として歓迎する富裕層の人々も多い。「長い間お疲れ様、この度は本当にお気の毒様」。日本人の一種優しさとも取れるが、一方で、政治への評価は、言動が正しいか正しくないかではなく、自身の直接的な損得や感情でなされるようになっている。折角の民主主義もわが国では、徐々に徐々に選挙の投票率が低下している。ウクライナ侵略のプーチンを評価するロシア人と同様、危害が自分に及ばない限り、お上のなさることは「お疲れ様です」で、関心が薄れている。

 これは実は危険なことだ。世界は多くが独裁者に支配されている。日本の政治家だって独裁者に憧れをもつかの如くであった。自分の立場で世界を見れば、皆が素直に自分の言う事に従ってくれれば、どんなにいいだろう。危険な独裁者への憧れを産む。

 権力で欲深い官僚や一部マスコミ、ジャーナリストを手懐け、実はオリンピックでの賄賂事件なども、ほとんど検察の手が及ばないようなことになっていた節も感じる。

 野党の責任も大きい。「自身が政治家で食っていければ良し」、の野党政治家が多いように感じる。野党こそ持たねばならぬ、描く国家像とかビジョンが伝わらない。具体的な目標が聞こえない。どこかでしっかりした修行の必要性を感じる政治家が大勢いる。

 政治家こそ、この国の未来を背負う若者や子供たちの、お手本でなければならない。テレビに出て、有名だからくらいで政治家になってはならないのだ。有権者はしっかりと候補者を見定め、選挙には必ず参加すべきだ。確かに世襲ばかりとなり封建時代と変わらない「バカ殿」現実があり、叩き上げには性格が悪そうなのが多く、投票したくなる候補者が少ないことも事実だろうが、国政や都道府県知事選挙は投票率6割以上でなければ無効。やり直しくらいの覚悟が行政に必要である。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

時事散歩Ⅹ 第13回

2022年10月07日 | ブログ
燃える闘魂

 落語家の三遊亭円楽さんが、72歳の若さで亡くなったとの訃報に続いて、自宅療養中だったアントニオ猪木さんが心不全で亡くなられた。79歳であった。2月生まれなので、学年は私など団塊世代先頭集団より5学年先輩となる。就職した当時、独身寮でも、職場でも、部活動でも中心的存在で活躍していた先輩の中心がその5学年先輩たちだったことで、猪木さんと交流があったわけでもないが、今更にこの年代の先輩たちには親しみを感じる。

 力道山に始まるプロレスブームで、日本にも多くのプロレスラーが輩出したが、猪木さんは、自分にとっても別格の存在であったことは間違いない。プロボクシングヘビー級世界王者アリとの一戦は、猪木さんが単なるショーマンではなく、かつてこの国を支配した武士であり、本物の格闘家であることを示した。

 ただ、強いだけでなく、優れた感受性と人間としての優しさに溢れていた人物であったことは多くの方々が語られておられる通りであろう。

 これまでも多くの有名人の訃報に接した。政治家、芸能人、往年のプロスポーツ選手、そして亡くなった年齢は、段々と自分の年齢に近づいてくる。勿論、円楽さんのように2学年も若い方も亡くなる時は亡くなってしまう。すでに男性の平均年齢は80歳を超えていると思うが、70歳代の方の訃報は多い。傘寿80歳の壁とも言われたりする。すなわちすでに後期高齢者に入った自分にとって、死が現実的なものとして近づいてくることを感じる昨今でもある。

 会社でお世話になった先輩諸氏で、年賀状を交換していた方たちとも自身が古希を迎えた時期に交際を絶ったため、その後の消息は分からない。

 敗戦そして戦後という、この国の未曽有の国難の中で、共に育まれた戦友、先輩たちとも言える。そして終戦時、たとえ赤ん坊で何の記憶もなくても、団塊世代のように終戦後に生を受けた世代とは世代間の見えない差がるように感じていた。猪木さんなどその先輩世代の代表であろう。

 テレビで観た話だけれど、なかにし礼さんが、療養中の石原裕次郎さんから直接作詞を依頼され、「わが人生に悔いなし」という詞を書いた。その時、作曲を誰に依頼するかと、なかにし礼が考えた時、彼は自分と同じ終戦後満州からの引揚者であった加藤登紀子に白羽の矢を立てた。加藤は昭和18年12月の生まれで、引き上げ時の記憶はない。しかし、なかにしにとっては、同じ満州からの引揚者としての強烈な同朋意識があったように話されていた。「わが人生に悔いなし」は、大スター裕次郎を葬送する大ヒット曲となった。

 難病を患いながらも、燃える闘魂は生き続けた。壮絶な格闘界でのストレスが、彼の体に徐々に異変をもたらせていたとも感じるのだが、最後まで立派に生き抜かれた姿は、NHKの「クローズアップ現代」でもアップされ、人々にエールを送り続ける。それはどのような世界に生きたとしても、本物こそが放つオーラなのだ。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

時事散歩Ⅹ 第12回

2022年10月04日 | ブログ
日中友好50年

 『当時の田中角栄首相と周恩来首相は1972年9月29日、北京で日中共同声明に調印。両国の国交が正常化した。それから50年。岸田文雄首相と習近平中国国家主席が祝賀メッセージを交換した。岸田首相は「建設的かつ安定的な日中関係の構築を進めていきたい」とする一方、習主席は「新しい時代の要求にふさわしい中日関係を構築するようけん引していきたい」とした。』 (YAHOOニュースから引用) とある。

 関連記事として、両国のこの50年のGDP比較の図表が載せてあった。1972年当時中共のGDPは、折れ線グラフの最下層に張り付いていた。わが国も1兆円に僅かに届いていない。その後わが国は高度経済成長が本格化し、1996年に5兆円に達しているが、中共のGDPはまだ1兆ドルに達していない。わが国の5分の1程度であった。しかしその頃から中共のGDPはうなぎ登りとなり、2010年でわが国に追いつくとその後の約10年で、中共のGDPはわが国のほぼ3.6倍(2021年)に達している。その間わが国のGDPが5兆ドル当たりを上下し、経済成長が見られなかったからである。バブル崩壊後、まさに失われた30年であった。

 日中友好で特に経済交流が盛んになると、何事もモノの流れは高きから低きに向かう道理で、日本企業の技術力や経営力の優れた面は、中共側からすれば、意識的に盗むことをしなくても手に入れることができたであろう。加えて合弁会社にして難癖を付けて日本側企業を追い出せば、すべて手に入る。技術の模倣に始まり開発の手法まで、彼らは急速の進化を遂げたのである。勿論各種技術は、欧米からの流入もある。

 そうして向上した国力を軍事力の増強に充て、尖閣周辺では日本の領海侵犯を常態化し、領海境界での一方的なガス田開発。上から目線の物言い、尖閣国有化の際の暴動。何が「日中友好」かと思うが、政府や財界は中共を切ろうとはしない。近年の自民党政権では、中共に太い絆を持つとされる人物を登用することで、総裁任期を2期から3期に延長し、歴代最長内閣を達成させた。自民・公明の与党は常に中共に阿っているように見える。主要な野党も同様であり、与党に二階氏あれば、野党に小沢氏が居る。その点で国民に選択肢はない。

 遡れば、戦後のわが国の政治を腐らせたのは、日中友好ではなかったかとさえ思える。金権腐敗の金脈は、立花隆氏本で明らかにされたが、その人物は、一方で列島改造論や人間的な魅力で多くの信奉者も得て、まさに政治家の毀誉褒貶のモデルともいえる。

 当時、中共との友好はキッシンジャーを特使とする米国が乗り出したことで、時代の趨勢に乗り遅れまいとする雰囲気や、広大な市場を志向する財界の意向も強かったものと思われる。前述したように当時の日中間の経済格差は大きく、50年後の現在のような状況を想像した人は少なかったと思うし、何より経済発展による、中共の民主化が期待された。

 また当時の政権は、親中創価学会公明党との繋がりも強めていたようで、まさに近年自民党の旧統一教会とのつながりの魁(先駆け)のようでさえある。

 政治は結果責任である。台湾との国交さえ切った日中友好は、結果中共のみを利した、わが国にとっては大失敗であった。今後の付き合い方を相当考えねばならないだろう。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

時事散歩Ⅹ 第11回

2022年10月01日 | ブログ
安倍元総理国葬

 終わってみれば、東京五輪と同じで「やって良かった」となる(いずれも個人的には、全く思わないが)。出席した野党党首でさえ、友人代表の弔辞に感動したらしいけれど、東京五輪と全く違う所は、やるやらないではないこと。国民の多くは、安倍さんの葬儀を「やるな」と言っているのではなく、「国葬」が駄目だと言っていたのだ。国葬の対象となる人ではないと感じて「国葬反対」を訴えていただけのこと。例えば「内閣・自民党葬」くらいであれば、それでも反対する人は居ても、取るに足らない割合だったと思う。

 「内閣・自民党葬」であっても、前総理の菅さんの出番はあったろうし、一般弔問献花も外国要人の受け入れもできるだろう。弔問外交がお望みなら十分可能だったと思う。亡くなった安倍元総理だってその方が却って安らかだった気がする。

 すでに言われていることだけれど、今回の国葬反対の騒動も、安倍政治そのものであり、岸田総理が全くその泥沼から抜け出していないことを露見した。メッキが剥がれたとも言える。菅総理の就任早々にも学術会議のメンバーを一部外した事件があり、関係者から相当に苦情が出る中、理由は明確にならないまま押し切った。憲法違反と言われようが「やりたいことはやる」「やらなくてはならない」自分は総理大臣なのだ。そういうことも必要な時もなくはない。しかし、やっぱり三権分立は民主政治の根幹でもあり、国会を無視してはならない。

 今回は結局岸田さんが一番貧乏くじを引いた。まあ、それが実力とも言える。安倍政権で外務大臣や政調会長もやった。安倍政治に汚染され続けていたのだ。さらに安倍外交の継続を岸田総理は弔問外交で外国要人に訴えているようだが、実は安倍外交なるものの本質を、しっかり説明できる人は居るのだろうか。「地球儀を俯瞰する外交」確かに多くの国に出掛けたようです。プーチンさんへを筆頭として相当の外交機密費が使われたようだが、一切国民には分からない。

 結果わが国の国際的地位の向上に貢献したと聞くのだけれど、最近の円安からみてもこの10年も、相対的に国力は相当に低下したのではないか。

 クワッドで対中共体制を構想したようにも聞くが、現実には、安倍さんには媚中・親中の匂いが消えない。それだから中共からは、中日の友好に貢献したとの評価があったようだ。中共や韓国にボロクソに叩かれながらも、靖国参拝を続けた小泉さんの路線は簡単に変更し、総理を辞めてから繕うように、靖国参拝を繰り返しても償いにもならなかった。

 安倍元総理は、財界と組んで、中共の経済発展に貢献し、岸田政権になっても中共にTPP参加を促していた。わが国の中共への経済協力が、どれだけ中共の軍事力増強に貢献してきたか認識しているのだろうか。能天気とはこのことである。その延長線上で行けば、孫の代に列島はかの国の領土となっている不安が消えない。GDP2%程度の防衛費は米国を喜ばすだけで、列島に向けてすでに核弾頭ミサイルを装備する中共軍に対して、蟷螂之斧であろう。

 「内閣・自民党葬」くらいで十分だったと思う。国家を分断しただけの国葬をやる必要がどこにあったのだろうか



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする