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産業毎の品質保証第14回

2014年05月13日 | Weblog
化粧品分野の品質保証

 化粧品関係での品質トラブルには、成分表示の不備が多いようだ。成分表示の誤りや欠落、表示されていない成分が入っていたことや、基準にない成分が入っていたなどである。異物混入などもある。マスコミで大きく取り上げられるトラブルではないが、ハインリッヒの法則に言う「1件の重大災害を含む発生した30件の災害の下には、隠された300件のヒヤリハット(災害に至らない危険)がある」ことからすれば、いずれも見過ごせない事例なのだ。

 聞いた話だけれど、江戸時代に大名の子息が早世であった原因のひとつに、乳母が使う白粉(おしろい)があったのではないかという仮説がある。当時の白粉には鉛が含まれ、乳房を通して乳児の体内に鉛が摂取されていたのではないかというものだ。現代では、有害化学物質が化粧品に使われる恐れはないとは思うが、有害の基準は現在の科学レベルで決まるもので、絶対の保証はない。

 昨年は、株式会社カネボー化粧品製の美白化粧品で白斑症状を訴える人が続出し、大問題となった事件があった。今年に入ってからも高額の補償を求める団体訴訟が起きている。化粧品は成分である化学物質によって化粧の効果を得るため、たとえそれが天然成分であったにしても、医薬品と同等の事前チェックが必要になろう。メーカーとしては当然に基準に沿って人体への安全性を確認して発売しているであろうが、顧客のすべての体質に対して不具合の無いこと、塗り薬や他の化粧品との併用などで生じるすべての現象を試験することは不可能に近いかも知れない。しかし、このようなトラブルによって失われるメーカーの損失は計り知れない。結果論ではあるが、メーカーの品質保証体制の不備、発売前の駄目押しの確認が漏れていたと言わざるを得ない。

 化粧品はブランド力がものをいう分野であり、マーケティングにイメージ戦略は重要である。イメージが品質を保証するものではないが、消費者はブランドイメージを保証の拠り所とすることは多い。

 昔、化学会社にバイオの嵐が吹いた頃、石油化学会社においても生物化学研究所などが出来て、ある植物から抽出される有効成分を量産するために、当該植物の培養技術の開発が進んだ。色素成分であるシコニンは口紅などに使用されるが、三井石油化学(現、三井化学)はこのシコニンの量産技術を確立*14)して、化粧品会社に提供した。その口紅は、松田聖子さんのヒット曲と共に大いに売れたが、メーカー側はけっして石油化学会社から原料供給を受けているとは公表しなかった。もしその口紅が、石油から出来ている(出来ているわけではないが)などというイメージが湧けば、消費者は、唇が荒れるかもしれないという不安に駈られるかもしれない。売れ行きは落ちたかもしれない。以下次号。


*14)植物培養細胞を用いた二次代謝生産の工業化の世界最初の成功例(by京都大学生存圏研究所)

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