震災復興を登記制度が阻害する
今回の表題は、日経ビジネス2015.2.23号からのパクリである。論者は東京財団研究員兼政策プロデューサーの吉原祥子(よしはら・しょうこ)氏。日本の土地制度の研究者。要約として冒頭に、『「3・11」からもう4年。しかし住宅はじめ、被災地の復興は意外なほど進展していない。大きな原因の一つは、登記の仕組みのゆがみだ。』とある。
復興には新たな土地の入手が必要であるが、権利者不明の土地が相当にあるらしい。復興のためとはいえ、国や県は不明のまま権利者を無視して勝手には使えない。なぜ不明になっているかといえば、土地登記が任意になっているため、所有者死亡後、親族が名義変更せずに放置した場合、登記簿には死者の名前が載り続ける。何代も時代が経過すると相続権を持つ法定相続人がネズミ算的に増えている。その土地を取得しようとすると、これら法定相続人すべてを特定し、同意を取り付ける必要がある。この手間だけで、膨大な時間と労力と経費が必要となっているのだ。
『地方、特に山林は地価が安いので、登記を行って土地の権利を保全する手間とコストの方が、その土地を売るよりも高くなるからだ。・・・地方では、登記しなくても不便もリスクもあまりなかった。地域共同体が機能していた間は「誰の土地か」はお互いが分かっていたからだ。しかし、子供は都会へ去り、共同体が崩壊していくと、「土地の所有者=在村地主=管理者」という図式が成り立たなくなってきた。地価が安く、納税額も微々たるもので、税務当局もその正常化に力を割けない。』
この問題は、震災復興だけでなく、現政権がもっとも力を注いでいるものの一つと思われる「地方創生」にも大きく関連する。本稿でも第14回「限界集落」(平成27年2月10日)で農地の所有権やその税制の問題に触れた。また、一時期騒がれた外国人による水源地帯の山林や軍事基地周辺の土地の購入対策にも関連する。
『世界一強い日本の所有権、財産権の修正につながるので大変な難事だ。しかし災害などが起こらない限り問題が見えないので、平時に取り組む主体が存在しない。だがこのままでは、権利者不在の土地を悪意を持った第三者が占有した場合、対応できる法的な根拠が乏しいなど、別の問題も生じる。根本的には不動産登記法の見直しが必要と思う。』
中学で日本史を学んだ折、先生から「荘園」という土地を軸に考察すると理解が深まるように聞いた。品質管理の改善活動では、「なぜ、なぜ、なぜ」で根本原因に対策を打つことを学んだ。震災復興もそうだけれど、問題が起これば、まずは応急処置としての対策があることは当然であるが、地方創生や外国人(悪意を持った第三者となる恐れがある)による山林等の取得対策などの問題には、その根幹に手を打つことが求められる。吉原氏の言われる「不動産登記法」の見直しに加え、この国の「世界一強い所有権」、「農地などの優遇税制」の見直しが早急に必要と考える。
本稿は、日経ビジネス2015.2.23号「震災復興を登記制度が阻害する」を参考に構成し『 』内は直接引用させていただいています。
今回の表題は、日経ビジネス2015.2.23号からのパクリである。論者は東京財団研究員兼政策プロデューサーの吉原祥子(よしはら・しょうこ)氏。日本の土地制度の研究者。要約として冒頭に、『「3・11」からもう4年。しかし住宅はじめ、被災地の復興は意外なほど進展していない。大きな原因の一つは、登記の仕組みのゆがみだ。』とある。
復興には新たな土地の入手が必要であるが、権利者不明の土地が相当にあるらしい。復興のためとはいえ、国や県は不明のまま権利者を無視して勝手には使えない。なぜ不明になっているかといえば、土地登記が任意になっているため、所有者死亡後、親族が名義変更せずに放置した場合、登記簿には死者の名前が載り続ける。何代も時代が経過すると相続権を持つ法定相続人がネズミ算的に増えている。その土地を取得しようとすると、これら法定相続人すべてを特定し、同意を取り付ける必要がある。この手間だけで、膨大な時間と労力と経費が必要となっているのだ。
『地方、特に山林は地価が安いので、登記を行って土地の権利を保全する手間とコストの方が、その土地を売るよりも高くなるからだ。・・・地方では、登記しなくても不便もリスクもあまりなかった。地域共同体が機能していた間は「誰の土地か」はお互いが分かっていたからだ。しかし、子供は都会へ去り、共同体が崩壊していくと、「土地の所有者=在村地主=管理者」という図式が成り立たなくなってきた。地価が安く、納税額も微々たるもので、税務当局もその正常化に力を割けない。』
この問題は、震災復興だけでなく、現政権がもっとも力を注いでいるものの一つと思われる「地方創生」にも大きく関連する。本稿でも第14回「限界集落」(平成27年2月10日)で農地の所有権やその税制の問題に触れた。また、一時期騒がれた外国人による水源地帯の山林や軍事基地周辺の土地の購入対策にも関連する。
『世界一強い日本の所有権、財産権の修正につながるので大変な難事だ。しかし災害などが起こらない限り問題が見えないので、平時に取り組む主体が存在しない。だがこのままでは、権利者不在の土地を悪意を持った第三者が占有した場合、対応できる法的な根拠が乏しいなど、別の問題も生じる。根本的には不動産登記法の見直しが必要と思う。』
中学で日本史を学んだ折、先生から「荘園」という土地を軸に考察すると理解が深まるように聞いた。品質管理の改善活動では、「なぜ、なぜ、なぜ」で根本原因に対策を打つことを学んだ。震災復興もそうだけれど、問題が起これば、まずは応急処置としての対策があることは当然であるが、地方創生や外国人(悪意を持った第三者となる恐れがある)による山林等の取得対策などの問題には、その根幹に手を打つことが求められる。吉原氏の言われる「不動産登記法」の見直しに加え、この国の「世界一強い所有権」、「農地などの優遇税制」の見直しが早急に必要と考える。
本稿は、日経ビジネス2015.2.23号「震災復興を登記制度が阻害する」を参考に構成し『 』内は直接引用させていただいています。