中小企業診断士 泉台経営コンサルタント事務所 ブログ

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経営私論 その10

2023年05月30日 | ブログ
マーケティング

 中小企業診断士受験のための教科書の一番目は「企業経営理論」だと本稿「経営私論その5」に述べた。その企業経営理論の教科書の半分程度は「マーケティング」についての解説となる。

 マーケティングが現在のような解釈で理解されるまでには、それなりの歴史がある。人類の歴史と考えてもいい。まずは人類が求める物の需要が、供給力を上回っている状態からタートする。この時代、いかに売るかより、いかに生産するかが課題となる。

 大量生産がある程度可能となった段階では、それらの製品を売りさばくため、販売促進という考え方が生まれる。供給が需要を上回り、生産側の企業間の競争が激化すると、生産者は個々の顧客の個々の要望を掴み、それに合わせた製品を提供しようとする。すなわち顧客志向の考え方がマーケティングの主流となるのである。

 現在は、社会性が重視され、製品の地球環境への影響までが評価されるが、基本、顧客志向が中心ではなかろうか。地球環境問題への影響など当然に企業活動の制約条件にはなるが、それらのことは法令順守の領域として、顧客志向の考え方でマーケティングを捉えて構わないと考える。

 ただ、最近急速に問題視されるようになった、食品について、賞味期限の問題から食物ロスの削減が大きな課題となっている。スーパーマーケットやデパ地下食品売り場などでは、閉店までの数時間は惣菜類、弁当類などを筆頭に時間ごとに割引き率を変更して、売り切りに走る。食品廃棄はその分の生産コストが無駄になるだけでなく、処分費用さえ追加で支払う必要がある。

 賞味期限は、食品全体に言えることで、製造会社から卸売企業に出す場合の賞味期限の余裕、卸から小売店に出す時の猶予期間。限度を超えた物は市場に出せなくなる。初めから廃棄ロスを見込んで価格に転嫁しておく必要がある。

 スーパーマーケットなどのお惣菜、弁当などは、当該店内の一角で作ることが普通になっているように診る。売れ行きを確認しながら、その場で供給するのである。物流コストも削減できる。顧客に作りたてを提供できる。

 現代の少子高齢化は、あらゆる業界に跨り影響が大きい。国家としてある程度裕福になった所は、どうしても少子化が進む。男女平等が進み、妊娠出産の負担が一方的に女性に大きいことで、子供の数は少なくなり、結婚そのものが、独り身の気楽さに比べて負担と感じるようになれば、少子化は進む。

 企業のマーケティング戦略には、これまでの経営学の教科書には無い新たな物が求められている時代かも知れない。



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経営私論 その9

2023年05月25日 | ブログ
イノベーション

 『イノベーションとは、物事の「新機軸」「新結合」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」のこと。一般には新しい技術の発明を指すという意味に誤認されることが多いが、それだけでなく新しいアイデアから社会的意義のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす自律的な人・組織・社会の幅広い変革を意味する。』とウィキペディアにある。

 この解説の中にも出ているが、イノベーションの父と言われる経済学者、ヨーゼフ・アロイス・シュンペーター(1883-1950)が、1912年に著した『経済発展の理論』の中で「新結合」という言葉を使い、イノベーションの概念を提唱したことに始まる。ともある。

 シュンペーターは、既存の知同士の組み合わせ次第で、イノベーションは起こし得ると考えた。従って比較的新しい経営本には、知の探索と知の深化の両方の取り組み(両利きの経営)によって、組み合わせは無限に広がり、従ってイノベーションの可能性はどこにでもある。それに組織としてうまく取り組めるかどうかだとする経営論である。

 思えば、私共の現役時代、多くの企業では全社的品質管理活動の一環として、小集団活動や改善提案活動が盛んだった。一般従業員でも深い知は兎も角、既存の知は無尽蔵に持っているわけで、ささやかな提案と思えるようなことが、大きな問題発見や飛躍的な改善につながった話は事欠かない。

 良くは知らないが、トヨタ自動車など利益が兆円単位となった今も、従業員の改善提案活動は続けているように聞いている。一般の企業はブームが去れば、次の世間が注目する話題を探す。訳は分からなくともSDGsと言っておれば良し。確かに「飽き」という空虚感は仕事の品質を低下させるから目先を変える必要もあるが、コツコツと積み上げないと本当の成果は得られない。

 「品質」重視の日本企業の風潮に風穴が開き、新たな品質問題は後を絶たないと聞く。安く作れるからと、レベルの低い国と長く付き合うと、結局両者平均辺りのレベルに落ち着くものだ。

 この国の大企業の指導者のレベルが低下し、国家指導者も自分たちのレベルに合わせるものだから、馬鹿な(世相迎合)ジャーナリストまでも巻き込んで、自身の利益の有無を判断基準にもの申すから、遂に(モンスター)異様な経済大国を出現させ、それにより為したにわか仕立ての軍事力で民主国家を慟哭している。

 これは「イノベーション」の皮肉な最終章かも知れない。



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経営私論 その8

2023年05月22日 | ブログ
企業の目的

 繰り返しになるが、P-ドラッカー氏の企業の目的について述べた「企業の目的の定義は一つしかない。それは、顧客を創造することである」がある。「したがって、企業は二つの、そして二つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションであり、マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす」。

 ドラッカー氏は2005年にお亡くなりになっているが、私が中小企業診断士の資格試験に挑戦を始めたのは、53歳の時で、二次試験までの合格を勝ち取ったのは60歳(2007年)の時だったから、受験勉強中はドラッカーを筆頭に、コトラー、ポーターなど経営学の歴史にその名を刻む学者の理論を学んだ。今もその理論は経営学の基本として輝きを失っていないと思う。 
 
 ただ、ドラッカー氏の言う企業目的は、株主目線の企業価値の増大を指標にしたもので、それは経営学からすれば、当然の指標であり、文句をつけるわけではないが、もう少し広く、社会学的に企業をみれば、企業の存在価値的にみて、最も大きいものは、そこで働く人々の成長と倖せではなかろうかと思うのである。勿論いくら従業員がそこで楽しく働くことで、成長したとしても、儲けることができず倒産してしまえば元の木阿弥である。企業はゴーイングコンサーン(Going Concern)を前提とする以上、継続するためには、顧客を創造し続け、イノベーションもまた繰り返す必要がある。

 それらのことを踏まえた上で、企業の社会的価値として、そこで働く人々の仲間との切磋琢磨による成長の場とし、労働を倖せと感じられるかは重要である。

 ここ数年コロナが世界的に蔓延した。独裁国家の研究所から漏れ出したコロナウイルスは、瞬く間に世界へ広がり、旅行業界、交通業界、飲食店業界などに多大の損失を与えた。ただ世界的にインターネットがすでに十分発達していたことで、Web会議が通常となり、これまで痛勤地獄に悩まされていた、一部サラリーマンは解放された。高額のオフィス料を払ってきた企業も、在宅勤務の増加で経費削減が成った。

 多くの組織で、対面会合の割合を減らすことで、個々の交通費は削減され、費用は兎も角往復の時間が不要となったメリットは大きいと見積もられた。Webミーティングはコロナが収束しても健在ということは、確実に増える傾向と見られた。

 ただ、たまたま今回の広島サミットに、当初懸念されたバイデン大統領のWeb参加止む無しは回避され、Web参加を計画していた、ウクライナのゼレンスキー大統領も、広島まで駆け付けた。そのことはたとえ会議であったにしても、リアルでの交わりがどれだけ重要かの確認を世界に発信することとなった。「現場・現実」は、いつの世にも重要である。

 組織は、可能な限りその構成員は一か所に集まって仕事をすることで、仲間の息遣いさえ感じることで、「他人のふり見てわが振り直せ」で日々成長するものであることを再認識したのではないか。




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経営私論その7

2023年05月19日 | ブログ
石油化学産業小話

 P-ドラッカーの「企業の目的の定義は一つしかない。それは、顧客を創造することである」しかし企業が顧客を創造したわけではなく、国家の政策としての大幅な原料転換であり、生産のスケールメリットを最大限生かすためにスタートした産業もある。昭和も30年代初頭のことだ。三井財閥と住友財閥が、まず石油化学産業に参入を決めた。顧客は合成繊維、合成ゴム、各種プラスチックetc.

 そして今、総合化学会社の石油化学部門は減産から企業間の統合が話題となっているようだ。恐らく当該各社それぞれに、準備は出来ている。これまでの技術の蓄積により、これまでになかった機能を持つ製品群を各社持っている筈だ。政府主導で開始された石油化学産業は、自身で顧客を創造する力と役割を担っている。石油化学以前にはなかった材料や製品を提供している。ポリエチレンはその絶縁性能で、レーダーの絶縁体として顧客を掴んだ。鉄より強度があり、その10分の1という軽量さは、飛行体のボディーに最適だ。炭素繊維は実用化を成功させた企業に多くの富をもたらせている。合成繊維の雄、ポリエチレンテレフタレート(PET)は、手軽な飲料ボトルとして、簡単に回収し、繰り返し使い易さにおいて引き続き利用価値が高い。

 CDやDVDの基盤として使われているポリカーボネート樹脂は、ビス-フェノールAとホスゲンから合成される。
 
 樹脂として透明性に優れ、高分子量銘柄では、抜群の衝撃強度を持つことから透明な盾として需要が高い。CDやDVDは低分子量銘柄である。私が在籍したGEとの合弁会社で作っていた製品である。

 ポリエチレンは低密度と高密度品に大別されるが、高圧下に生産されるのが、当初レーダーの絶縁材料として世に出た低密度品。第二次世界大戦前の話だ。特殊な触媒を用いて低圧下に生産されるのが高密度品。その高分子量品ポリエチレンでは、スケートリンクの代替として昔話題となった。

 その触媒研究改良の成果は、ポリプロピレン生産の効率化にも貢献し、汎用プラスチックの使い捨ての負の文化さえ生んでしまったが、高度な技術があってこそのものだった。



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経営私論その6

2023年05月16日 | ブログ
ドラッカーそして米国GE社

 20世紀の経営学の巨人、P-ドラッカー((1909-2005)の多くの格言の中で最も有名なものに、企業の目的について述べた「企業の目的の定義は一つしかない。それは、顧客を創造することである」がある。したがって、企業は二つの、そして二つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションであり、マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす。

 マーケティングは顧客からスタートする。「われわれ(企業)は何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいかか」を問う。「われわれ(企業)の製品やサービスにできることはこれである」ではなく、「顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足がこれである」と言う。一方イノベーションとは、発明のことではない。イノベーションとは、人的資源や物的資源に対し、より大きな富を生み出す新しい能力をもたらすことである。

 ここまで、P-ドラッカー「マネジメント」(ダイヤモンド社、訳:上田惇雄)からの引用による。 

 20世紀最高の経営者とさえ呼ばれた、米国GE社のCSOを長く務めたジャック・ウェルチ(1935-2020)氏は、徹底した事業の取捨選択(世界でNo.1かNo.2以外の事業は撤退する)によって、在任期間中に家電製品の大手メーカーとして知られていた同社を、産業財ばかりかファイナンスやメディア事業まで手掛ける多国籍企業へと変貌させた。ソニーがトリニトロンカラーテレビを市場に投入した際には、その画面の美しさにウェルチ氏はテレビ事業から撤退する。

 私は50代の定年前の10年間をGE社との合弁会社に出向という形で、ウェルチ氏からインメルト氏のGEの末端企業で過ごした。6シグマ活動の全盛期で、その従業員教育は徹底していた。医療機器事業では、6シグマデータから現場での使い勝手を優先し、映像解析度重視の東芝製を業績で上回った。

 経営状況など全従業員向けにCEOから直接メールが届く。日本企業ではあまり聞かない風習であった。従業員への細やかな配慮が見られる一方、撤退事業時の人員整理に容赦はなかった。元々エジソンが創業者の一人であった企業ながら、私の出向当時はすでにファイナンス事業の稼ぎが一番大きかった。

 GEそしてウェルチ氏は、世界に新しい企業像を提供した。日本の企業経営者にも多大の影響を与えたが、まさに新自由主義の覇者ではなかったか。世界的な不況(2008年リーマンショック)から、インメルト氏がCEOから追われる頃、GEの凋落が顕在化したようだ。GEであっても、栄枯盛衰の歴史の流れには抗しえなかったようだ。



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経営私論その5

2023年05月13日 | ブログ
「戦略論」

 中小企業診断士の資格試験の教材の第一番目は「企業経営理論」で、その1が「企業活動と経営戦略」。すなわち元来、軍事用語であった「戦略」の概念を企業経営に適用したものを学ぶことになる。

 すなわち戦争に勝つための策略、すなわち戦略を経営に模したものであろう。自社の置かれた環境を把握し、適応することで、競争優位を獲得するのである。

 戦争は昔からあった。エジプトの時代、ローマの時代、秦の始皇帝の時代、わが国も源平合戦、信玄・謙信から信長、秀吉、家康らが覇を競った戦国時代。それらの戦乱の時代を一時的であるにしろ勝ち切った策略の戦法のひとつにある、「奇襲」は戦略と言えるのかどうかは知らない。

 日本史上、日本人なら多くの人が知っていると思われる源義経の一ノ谷の戦いや信長が今川義元に勝利した桶狭間の戦い、近世に飛んで、日米が激突した太平洋戦争の開始を告げた大日本帝国海軍の真珠湾攻撃など、有名な奇襲作戦の成功物語がある。しかし、その奇襲作戦を策したリーダー達は、いずれもその後討たれ、自身の天下は成らなかった。秀吉などは水攻めなど地道に時間を掛けて目的を達した。家康などもじっくりと時間を掛けて敵を籠絡させるさせることを得意としていたように診る。

 すなわち、奇襲作戦は、一時的な戦術であって、長期的な策略である「戦略」とは言えそうにない。さらに企業戦略にあっては、「奇襲」というような戦術も元々私には思いつかない。あるとすれば、天才的な企業経営者による経営の常識を覆すような戦略的奇襲があったのか、今後あるのか。

 天才は別として、普通の人間は、先人が残してくれたその知の集大成としての企業経営論を学び、経営の基礎をしっかり履修することだ。スポーツの世界など、突出した成績を残し天才などと呼ばれるアスリートも、基礎トレーニングを繰り返し、汗の上に汗を掻く努力を繰り返してきた結果であろう。

 著名な経営者は、基礎の経営論に自身の体験から会得した独自の発想を、失敗体験の繰り返しの中から編み出したものであろう。

 まずは、基礎的な先人の理論を読み解くことから始めるのがベターであろう。現代においてさえ、ロシアのプーチンには戦略的発想が皆無である。独裁者の大きな大きな欠陥である。



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経営私論その4

2023年05月10日 | ブログ
事業承継

 事業承継は、中小企業にとって喫緊の問題である。現在経営者年齢のピークは60~70代であり、後継者の不在は70歳代の経営者でも40%に上るという。このままでは多くの中小企業で黒字のまま廃業せざるを得ない状況にある。団塊の世代が後期高齢者となる2025年、中小企業の大廃業時代が到来する懸念があるのだ。

 テレビ(東テレ「ガイアの夜明け」)で紹介されていたが、サーチファンドなど社外の第三者に、株式譲渡の方法で企業を売却する方法を事業として手掛ける企業も現れているようだ。すなわち単に廃業するのではなく、企業売却によってこれまでの経営者も利益をあげることができる。新たなM&A手法といえる。

 中小企業の事業承継は、親族内承継を中心に、資産の相続を中心に行われて来た趣があったが、近年は経営の相続という認識が強くなっている。戦後の経済発展で多くの業種で大企業が進展し、企業経営者の子息にとっては親の職業を継ぐことは、必ずしも有利な人生ではなくなって来た。世襲は政治家、医者、芸能人など、親の地盤・看板・カバンが有効に働く業種に限られてきたのだ。

 中小企業とはいえ、家業的経営では淘汰される世の中になってきた。ただ「鉄は熱いうちに打て」という名言があるが、物心ついた時期から父親の苦労を間近に見て育ち、従業員らの裏の話も聞こえてくるかも知れない環境に育てば、本人にその気さえあれば、親族内承継がベストかも知れない。ただ、「経験と勘」だけではこれだけ情報技術の進歩した現代においては不足であろう。

 子息を一般の大学だけでなく、中小企業大学校に入れて、後継者教育としたという経営者の話も聞くが、基本的な経営学や経済学は経営者にとっては必須の履修すべき知識であろう。加えて一番大切なことは、やはり人間を知るということではないか。さらに息をするように嘘をつくような人物は、政治家としては三流の取り巻き連中に担がれて通用しても、企業経営者としては通用しない。人間への洞察は、自己への戒めと鍛錬を伴う。経営者同士のまた関連企業間の付き合いにおいて、信用程大切なものはなかろう。




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経営私論その3

2023年05月07日 | ブログ
企業の成り立ち

 企業が生まれ、そして存在し続けるためには、当然の事ながら、当該企業の提供する製品・商品なり、サービスを必要とする人や組織・団体があることが必要である。より多くの人々が必要として購入されれば、供給する企業の収益は上がり、発展する。

 公的な中小企業サポート団体への相談窓口には、コロナ前、拡販に関するものが8,9割というのを聞いたことがあるが、まさに企業の存在価値を決める指標は、まず売上高にある。売り上げが細れば、当然に利益は薄くなり、赤字に落ち込んで、それが続くようだと、廃業に追い込まれる。

 創業当初はよく売れた製品・商品、サービスも段々売り上げが落ちてくることがある。ひとつは、売れるような物は、競合が増えることが多い。自社の製品品質が、マンネリ化で低下していることはないか。同じ物ではなくとも代替されるような製品が出まわっていないか。世の中で多く生産されるようになると、一般的には安く作れる筈で、価格競争に晒されていないか。僅かな商品の差別化で、競合品に後れをとっていないか。

 競合品に対しては、一般的に「差別化」という言葉で表現されるが、コストを掛けずに他社製品より優れている印象を与える取り組みがある。物は同じでもパッケージを替える、エコ製品である、健康志向と強調する、有名産地の原料を使用している等々、素人でもいろんなことが思い浮かぶ。ちょっと目先を変えたことで、拡販に成功することもあるが、正攻法はやはり自社の製品の品質を向上させる努力が重要であろう。ただ「過剰品質」などという言葉もあって、僅かな品質向上に大きなコストを掛けて、顧客にその値打ちが届かねば徒労であるばかりか大きな損失を招く。

 一般的に企業は、1つの製品・商品で成り立つことは少なく、同様の製品群の中から、取り組みやすい物から自社製品に取り込み、自社製品を増加させることは、売り上げ増加に貢献する。お菓子メーカーが、飲料やレトルト製品も手掛けることなど普通に行われてきた。

 無理にすべて自社で生産しなくても、人件費の安い国のメーカーから輸入して販売する、またはそのようなメーカーに生産委託するなどは、誰でも知っている経営手法である。問題は他社製品を自社ブランドで販売する場合、徹底した生産工程管理や品質管理の継続的な監査が必要である。また中共のような国家の体制が全く異なる国の企業とは付き合わないこと。これまで日本メーカーの本来の富が、どれだけ中共に流れたか。

 ただ、国営企業育成に注力し、これまでの民間企業独自の発展を促進したきた鄧小平発想から外れてきた習近平体制では、中共経済は凋落してゆくのではないか。新たな投資は控えることは、経済安保の観点からも当然に必要である。




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経営私論その2

2023年05月04日 | ブログ
資金繰り

 今も同じかも知れないけど、私などが診断士になった15年前頃は、特にキャッシュフロー会計の重要性が言われていたように思う。その注意喚起が一通り行き渡って、BS(バランスシート:貸借対照表)とPL(プロフィット&ロスステートメント:損益計算書)の決算書にあっても、現金管理には目を配るようになっていると思われる。

 実は企業会計を最初に学んだ時に、分かりにくいのが、キャッシュの流れの把握である。家計簿と全く異なるのは、例えば物を作って売っている企業の場合、年間1万個作っても5000個しか売れていない場合、5000個分の収支しかPLには計上されない。在庫分の5000個については、BSに資産としてその評価金額が計上されるのである。

 しかし、在庫分についても原材料費や人件費、機械の駆動の諸経費など、費用は掛かっているから、支払い期日で現金はその分減少している。在庫は、注文がありながら品薄で提供できない、すなわち機会損失を少なくするメリットはあるが、逆に工程の不具合などで生産が停滞していても、表面上営業に支障を与えないなど、製造現場の問題点を覆い隠すネガティンブなものと捉え、先のキャッシュフローへの負の影響から「在庫」すなわち「悪」のキャンペーンが続いた。

 ただ、世界的な半導体不足、レアメタルの不足、穀物不足などが深刻化する現状を考えれば、作れるうちに作り貯めしておくのも一理ある。元々業種によっては季節商品など作る時期と販売時期がずれるケースも多いので、先を観る目、見通しの正確さが業績を左右する。一概に「在庫」=「悪」とも言えないのである。

 ただ、一般的に在庫には、商品の劣化、陳腐化、保管スペースの確保などマイナス面が多いことも確かで、漫然と作れるうちに作って置こうは経営ではなかろう。キャッシュフローの観点からすれば、在庫はお金が遊んでいる状態と捉えられるのである。すなわち「資金繰り」の観点から問題なのである。

 資金繰りで注意が必要なことに、「売掛金」の存在もある。在庫と同じBSの流動資産の欄に計上されている。通常企業間取引では、取引の時期と現金の授受の時期がずれるのが一般的で、商品を届けたが、期末に振り込まれていない売上高を「売掛金」として計上する。一般的には企業間信用として取引が継続している状態を考えるが、聞いてみると何年も払い込まれず、取引は停止しているが、帳簿上の体裁から計上しているようなことがある。取引開始時の与信管理が重要であり、また倒産の危機を察知して、事前に回収に向かう必要がある。連鎖倒産という言葉を以前は良く聞いた。

 中小企業の場合、地元の信用金庫などから借り入れを行い、新たな事業などに投資することが多い。信用金庫などからすれば企業は融資先として必須の相手だから、少し業績のいい企業には担当者が張り付いている。コロナ前の話だけれど、金利4%で借りている企業があった。金利を下げて貰うため、経営計画書の作成をお手伝いしたが、逆に優良企業では金利1%を切っている。




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経営私論その1

2023年05月01日 | ブログ
経営を考える

 中小企業で売上げが年間1億円ある企業を考えてみる。 まず、一億円という売上高が多いのか少ないのか。何兆円も売上げる大企業からみれば当然少ない。しかし年間売上高数千万円という小規模企業も世の中には結構あって、それらの企業からみれば多いし、いずれにしても情報(データ量)が少ないので客観的評価は出来ないというのが正解だろう。

 「売上高」という指標は非常に重要だが、当然にそれだけでは評価はできない。ではどのような情報が必要だろうか。そこに「経営」を考えるスタートラインがある。

 売上高から諸経費のすべてを差し引いたものが、税引き前利益となり、この利益が出ているかどうかも当然に重要な企業の評価指標であるが、その前に、この一億円を、経営者を含めて何人の従業員で売上たのか。また小売業などなどでは、店舗面積当たりの売上高に直して同業他社と比較することも必要である。評価には基準があり、その基準値に対しての自社の立ち位置を確認する必要がある。同業他者に劣れば、改善が必要になる。

 中小企業では、会社形態を取るようになると、決算書は税理士さん任せで、漠然と結果論評価になっているのではないかと見受けることもある。しかし経営者は、常に自身でデータを取り、エクセル表に転記して、集計やグラフ化できる体制を整えておく必要がある。

 1億円の売上高は実は、例えば、その前までは1億3000万円あったのに、3000万円の収益減となっていたものであれば、その要因を洗い出し、早急に対策が必要である。年次毎の売上高をグラフ化して、今後2億円、3億円の売上高にしたいと思えば、営業強化、マーケティング手法を駆使して、宣伝広告や商品の改良などにも取り組む必要があろう。

 どうも従業員に元気がない。そのことで、業績が上がらないと気づけば、経営者は従業員との会話を増やし、処遇なども改善する必要があるかも知れない。昇進昇格や組織の在り方に問題はないかなど。そうして経営について考える範囲が広がってゆくのである。






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