マーケティング
中小企業診断士受験のための教科書の一番目は「企業経営理論」だと本稿「経営私論その5」に述べた。その企業経営理論の教科書の半分程度は「マーケティング」についての解説となる。
マーケティングが現在のような解釈で理解されるまでには、それなりの歴史がある。人類の歴史と考えてもいい。まずは人類が求める物の需要が、供給力を上回っている状態からタートする。この時代、いかに売るかより、いかに生産するかが課題となる。
大量生産がある程度可能となった段階では、それらの製品を売りさばくため、販売促進という考え方が生まれる。供給が需要を上回り、生産側の企業間の競争が激化すると、生産者は個々の顧客の個々の要望を掴み、それに合わせた製品を提供しようとする。すなわち顧客志向の考え方がマーケティングの主流となるのである。
現在は、社会性が重視され、製品の地球環境への影響までが評価されるが、基本、顧客志向が中心ではなかろうか。地球環境問題への影響など当然に企業活動の制約条件にはなるが、それらのことは法令順守の領域として、顧客志向の考え方でマーケティングを捉えて構わないと考える。
ただ、最近急速に問題視されるようになった、食品について、賞味期限の問題から食物ロスの削減が大きな課題となっている。スーパーマーケットやデパ地下食品売り場などでは、閉店までの数時間は惣菜類、弁当類などを筆頭に時間ごとに割引き率を変更して、売り切りに走る。食品廃棄はその分の生産コストが無駄になるだけでなく、処分費用さえ追加で支払う必要がある。
賞味期限は、食品全体に言えることで、製造会社から卸売企業に出す場合の賞味期限の余裕、卸から小売店に出す時の猶予期間。限度を超えた物は市場に出せなくなる。初めから廃棄ロスを見込んで価格に転嫁しておく必要がある。
スーパーマーケットなどのお惣菜、弁当などは、当該店内の一角で作ることが普通になっているように診る。売れ行きを確認しながら、その場で供給するのである。物流コストも削減できる。顧客に作りたてを提供できる。
現代の少子高齢化は、あらゆる業界に跨り影響が大きい。国家としてある程度裕福になった所は、どうしても少子化が進む。男女平等が進み、妊娠出産の負担が一方的に女性に大きいことで、子供の数は少なくなり、結婚そのものが、独り身の気楽さに比べて負担と感じるようになれば、少子化は進む。
企業のマーケティング戦略には、これまでの経営学の教科書には無い新たな物が求められている時代かも知れない。