中小企業診断士 泉台経営コンサルタント事務所 ブログ

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自民党総裁選2018 その10

2018年09月28日 | ブログ
新たな確かな保守政党が必要である

 総裁選が終わり、テレビの報道番組では関係者の奇妙な発言が聞こえる。

 今回、安倍陣営の元締めを務めたという甘利元経済産業大臣は、議員と地方党員の票数の隔たり、認識の乖離が念頭にあったのだろうけれど、石破さんのことを『近くで専門家として石破さんを評価できるのは国会議員です。国会議員が見ていると政策論でも、もうちょっとこうやればいいのに、と思う事がたくさんあるわけです。例えば地方が大事ですと言うが、じゃあ、どうやるんですか。地方が大事だったら、石破さん、あなたは鳴り物入りで地方創生担当相を2年やりましたよね。やったとしたら、地方がまだ駄目なんですよ、駄目なんですよ、だけで終わっちゃうとあなたが担当相だったでしょ、と言われちゃう訳ですよ』のように発言をしていた。
 
 これにフムフムと頷く連中も居たかもしれないが、実は石破さんはいろいろ提言もしていたそうで、著書などにも書いているそうだ。いずれにせよ、どなたが地方創生大臣を2年やったからといって地方だけで、経済興隆が成せるわけではなかろう。国の根本方針を変えねば難しい問題である。担当大臣をやったからこそ国の仕組みを変えなくてはとの問題意識を持つことは当然である。

 大阪維新の会を立ち上げて、大阪府知事、大阪市長なども歴任した橋下徹氏は、安倍シンパであることは知っている。国政選挙で勝っている現役総理に対抗して総裁選に立候補した石破陣営を揶揄する自民党党内の声に同調する形で、「そもそも昨年の衆議院選挙で自民党は圧倒的支持を受けた。安倍政権は信任されている。今回の総裁選挙はそもそも必要がなかった。無駄な労力だ」という趣旨の発言をしていた。

 橋下氏は現役弁護士でしょう。まあ最近の弁護士の人間的質の低下は著しいからそんなものでしょうけれど、自民党の総裁選挙は党内規定で決まっていることで、衆議院選挙の時期や勝敗に左右されるという規定はないだろう。しかも今回の選挙は、現役任期中にお手盛りで3年2期の総裁任期を3年3期に伸ばしたものだ。その2期の任期が切れればあらためて総裁選挙を行うのは当然である。それを否定することは、法律でも組織のルールも無視していいよと言っているに等しい。キャスターは「そういう考え方もある」と言う風に受け流していたが、考え方の問題ではなく、間違ったことを言っているのだ。法律家として失格の発言である。

 最近の大企業の品質問題の多くも、組織の中にこのような人物が居ることで起こるのではなかろうか。「検査する」という社内規定があっても、ご都合主義でやらなくてもいいんだとする風潮を生じさせるものだ。

 総裁任期中の衆議院選挙結果に基づくなら、自民党の総裁選挙規定をそのように変えることが先決である。しかし国政選挙と党内の選挙は本来別物である。しかも党員は税金以外に会費を納めて党員となって総裁選挙権を得ている。

 因みに1年前の衆議院議員選挙の比例区の自民党の獲得票数は全投票数の33%であったそうな。それで国民全体の明確な安倍内閣支持と言えるのかどうか。多数政党のある中での小選挙区制では、半数以上の票数は要らない。他候補より1票でも多ければ得票率は関係なく当選できる。自民党圧勝は小選挙区制のお陰で生じた現象であり、党員一人一人の長年の地元とのつながりもあってのことで、総理総裁信任とは要素が異なるものだ。

 自民党は長年の一党支配からその組織力は、共産党や公明党に近いように診る。政治主導の合言葉で高級官僚の人事権も握った政権は、彼らの忖度を活用して力を増大した。議員に対しても小委選挙区の公認権を党幹部が握ることで、締め付けが容易だ。今回石破さん支援の議員は、もし公認を得られなくても当選できる実力がある議員ばかりだったという説もある。

 自民党の組織力に対抗できるような新たな政党を一から作るのは至難の業とは思うけれど、真の保守、人間として正しい保守の人材を集結して、現在の国家国民よりも自分が国会議員であること、首相・大臣であることを優先する職業政治家の集団と堕した自民党に代わる政党が欲しいものであり必要である。

 蛇足ながら、私は9条をはじめ憲法改正は絶対必要と考えているが、安倍首相の9条加憲案なら国民投票で反対票を投じるつもりだ。真の保守なら、そうするだろう。




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自民党総裁選2018 その9

2018年09月25日 | ブログ
経済政策の疑問

 民主党半島政権の惨憺たる経済状況と比べれば、円安誘導で企業の株価は持ち直し、電機業界なども息を吹き返した。しかしアベノミクスの成果はそこまでだった。失業率が下がり雇用が確保できていると安倍さんは誇示するが、これは政府の経済政策の成果と言うより、世界的なとりわけ米国の好景気と2011年からの災害復興費が依然膨大なこと、そして2020年東京オリンピックに向けての建設ラッシュの上にリニア難工事も進行中である。加えて最近の自然災害頻発の復旧費用の増大などで、公的資金がじゃぶじゃぶと投入されているに過ぎない。人手は不足するから失業率は確かに下がる。

 中身を見れば、大企業の内部留保は最高額を更新し続け、しかし、労働分配率は43年間で最低水準と言う。『ここ10年で非正規雇用は300万人増え昨年で2036万人、労働者の37%を占めるようになっている(日経ビジネス2018.09.10号)』。「働き方改革」なども掛け声だけでほとんど実効を伴っているとは思えない。現政権は耳触りの良い掛け声は次々と発するが、真に浸透させる熱意も能力も無いように見える。

 労働分配率は低くなっているが、各種社会保障関連の徴収乗率を高くするから可処分所得は下がる。来年は消費税10%。黒田日銀総裁は任期切れの2023年までにはインフレ目標2%を達成すると意気込んでいるが、インフレは資本力のある事業者には良いかもしれないが、生活者にとっては消費税率が上がることと変わらない。給料(一部の大企業は除く)や年金は後追いでしかも100%は追随しないだろう。デフレが良くないことは一般の国民も何となく感じるが、なぜ2%ものインフレが必要なのか景気を良くするためとしか説明はない。普通に考えれば、生活者にとって物価は安定していることが何よりなのだ。真の経済成長はイノベーションによるパイの増大しかない。

 菅元総理が、乗数効果について知りもせずに論じて国会で恥を掻いたが、安倍さんはインフレ2%の効果を明確に説明できるのだろうか。

 科学技術予算の貧弱さで知能の流出が止まっていない。昔から米国への研究者の流出はあったが、最近では中国へ出かける学者や技術者が居るようだ。民間企業の技術者の話ではない。自国への侵略に手を貸すようなもので、その精神構造が疑われる。

 トランプ大統領は、このまま自由貿易を続ければ、中国が益々富を蓄積し、科学技術を伸ばし軍事力を拡大して、さらに世界の脅威となることで、貿易戦争を仕掛けた。すでに「手遅れ」とも言われている。安倍さんは北朝鮮に対して必要以上に米国に同調したが、米中貿易戦争では必ずしもトランプ支持とはいかないようだ。自由貿易は自由と民主主義の国家間同士の取引で成り立つもので、ルールの異なる国家も参加していることがそもそもおかしい。国家の方針で国民の人権を無視して自由と民主主義の国家と同じ土俵で競えば、絶対的に有利になるのは必定である。

 しかし、安倍さんは中国の嫌がることは言わない。それは保身のためには取り巻きの親中派や公明党、財界の支持なくしては自身の政権を維持できないからである。

 600億ドルと言われる中国のアフリカへの追加投資に対して、自国の中国国内からさえ疑問の声が上がる中、安倍さんはアフリカへ300億ドル出すと言う。中国に対抗しているようで一歩間違えばすべて中国のものとなる。



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自民党総裁選2018 その8

2018年09月22日 | ブログ
消化不良の総裁選

 石破さんが国内を精力的にまわり、地方創生で地方党員からの支持拡大を図っていたのに対して、安倍さんはロシアに行って、プーチンさんや習さんと会談を行い、外交で点数を稼ごうとしたようだが、この件について結果は裏目。領土問題は棚上げにして年内に平和条約をとプーチンさんから唐突な申し出に困惑しただけのようだ。

 習さんは米国が民主党オバマ時代のようにならないので、時間稼ぎにしばらく日本と握手して、取れる物は取っておこうという魂胆が見え見え。領空、領海を侵犯することが常態している中国が今更微笑んでも、それを安倍外交の成果とは全く言えはしない。

 今回の総裁選の論点は、経済政策の違いに憲法改正9条の内容と時期について、また防災についてなどもあるが、同盟国米国との関係は似たようなものとして、中露や韓国、北朝鮮との対峙のスタンスの違いは論じられなかった。

 喫緊の問題として、中国企業や中国人による北海道などの土地取得を今後も放置するのか。国内にすでに100万人近く在住する中国人が、白タクなど違法行為を堂々と行うような状態を放置するのか。海外からの留学生の40%を占めると聞く中国人留学生の中には、過去にも違法送金に手を貸すなど犯罪行為に及ぶ者もいる。

 中韓に限らないが外国人への生活保護支給の問題、健康保険制度の盗用なども時々聞こえてくる現状をどうするのか。両候補に所信を聴きたいものだった。

 これらは小さな問題のようで、米国のように不法移民の問題でトランプさんが拳を振り上げねばならなくなったように、この国でも早めに対策しないといけない問題である。違法であろうが一度手に入れた権利は、自国では認められないものでさえ人権を盾に徹底主張するのが人間の性(さが)である。これを直接被害を受けない人権派とかリベラルとかいう「いい恰好しい」が支援する。人手不足に感けて不用意な外国人の受け入れは慎重であるべきである。この国の秩序を乱す外国人は徹底排除すべきである。それはヘイトでも何でもない。

 また、最近経済産業省で、「議事録不要」との文書が配布されたという。文書改竄までに至った森友・加計学園問題の再発を恐れた政権が、手始めに起こした対策であろうが、行政の実態を国民の目から覆い、その透明性をなくすことは、民主主義に反することではないのか。

 などなど、多くの必要なこの国の喫緊の課題にどう応えるかよく知らされないまま短い選挙戦が終わり、事前の予想通り安倍3選で終わった。もっとも当初の予想に反して安倍批判票は特に地方議員に多かった。利害の遠い地方議員の方が、比較的真っ当な投票行動を行う。

 昼のワイドショーでは、安倍政権にモリカケ以外大きな失政がないことと、5度の国政選挙を勝ち抜いた事などで、総理総裁を変える必要がなかったというコメンテーターの弁もあったが、公文書改ざんまであったモリカケはけっして小さな問題ではない。外交でも北朝鮮対応では、「圧力」、「圧力」を連呼し過ぎて、拉致では相手にされない。トランプさんには梯子を外された格好だった。北方四島でもプーチンさんにいいようにあしらわれている。どこが外交の天才で、どこに外交の成果があったと評価できるのか。海外をまわって国民の血税をばらまけば、それなりに相手国は讃えてくれる。安倍さんでなくともできることだ。




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自民党総裁選2018 その7

2018年09月19日 | ブログ
保守層の分裂

 安倍政権の誕生には強固な保守層の支持があった。安倍さんも呼応して民主党からの政権奪還に保守層の力強い支援を期待した節がある。9条改正をはじめとする憲法改正。靖国参拝。尖閣に公務員の常駐。竹島の日式典を政府行事に格上げする。原子力発電の継続などなど。一般向けにも北方四島の返還や拉致問題の解決などを掲げた。

 中身はよく分からないが、確かに集団的自衛権をはじめとする安保法制を成立させた。靖国へも一度行った。しかしオバマの米国からも中韓を刺激するなとクレームがくると、これ幸いに以後行っていない。小泉さんの中韓に叩かれても、財界から中国で仕事がし難くなるから止めてくれと懇願されても靖国参拝を続けた姿勢から遠い。トランプさんなら靖国参拝に文句は言わないと思うのだけれど。

 実行したのは部分的で、対米追従に必要な政策のみ。勇ましい部分は全くと言って良いほど何もしていない。そればかりか2015年の「戦後70年談話」で戦後50年の村山談話を踏襲し、同年末には1965年の日韓基本条約において解決済みとされる従軍慰安婦問題にあらためて外務大臣による日韓合意(日本からあらためて10億円を拠出する)を成立させた。

 このことで、まず右派論壇の重鎮、京都大学の中西輝政先生が怒った。その後著名な雑誌に「さらば安倍」宣言を寄稿したのだ。私は確か文藝春秋でこの論文記事を読んだが、その時点ではまだ、安倍首相を批判する意志を持たなかった。リベラルは嫌いだが、先の戦争についての見解に自身で明確な論理を持たない。ただ、日韓合意はどうせ反故にされるだろうと思っていた。岸田外務大臣では韓国になど対等に向き合えない。その後、その通りになっている。

 安倍さんが次に真の保守層を裏切ったのが、加憲とする憲法改正案である。公明党案に乗っただけ。思想も信念もない。自衛隊は災害救護隊の位置づけになる。自衛隊員のほとんどは、こんな改正ならしない方が益しと考えているのではないか。しかし、この時点でも櫻井よしこ氏などは、安倍さんを「何という策略家」というように褒め称えていた。右派の論客と言ってやっぱり女は女で、口先男にコロリと騙されるところが、やっぱり駄目だと思ったものだった。しかし最近櫻井氏は、「現政権の原子力政策は菅政権と同じになった」と批判しているようだ。確かにそこかしこに増加する太陽光パネルは新たな景観と自然破壊の兆候を示し始めている。

 さらに中国の一帯一路に条件付きとはいえ協力するとしたことだ。ここらあたり親中派の二階幹事長の顔を立てたところが透けるが、そうしないと自分の3選が危うくなる。

 それでもなお、保守層の中に安倍支援の知識人もおられるようだが、安倍政権になって株か何かで儲けさせて貰っているか、いろいろ新たな金脈が生まれたのであろう。しかし、個人の過分な金儲けは保守の本分ではない。もっとも彼らもすでに積極支持ではなく、「裏切りの石破」に代表されるように対立候補叩きか、他に人材が居ないという消極的安倍支持のように感じる。

 モリカケの国会空転による災害対策の遅れが、何人の国民の命を奪ったかと批判する人も居ることで、外交の成果は見えず、一体安倍支持の保守勢力とは何なのか。

 いち早く「さらば安倍」と叫んだ中西先生が正解だったように思う。




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自民党総裁選2018 その6

2018年09月16日 | ブログ
末期現象

 「災害は忘れた頃にやって来る」というのは死語になりつつある。阪神淡路大震災は1995年で、中越地震は2004年、東日本大震災が2011年で熊本地震は2016年、そしてこの度の北海道地震と、震度7クラスの大地震の周期は明らかに短くなっている。加えて今年は6月に、大阪府北部でも震度6弱の地震が発生している。

 しかも今回の地震の前には、この夏の酷暑で熱中症での緊急搬送された人が史上最大数に上った。そして昨年の熊本県北部に続き、今年の西日本豪雨の雨量も被害も最大規模。台風12号、21号での高潮や風の被害も甚大だった。21号での突風の凄まじさは竜巻のごとくで、多くの目撃者がそのスマホで撮った映像が繰り返しテレビで流れた。乗用車は空を舞い、多くの家屋の屋根を剥がした。関空には海水が浸入し、その連絡橋は大波に流されたタンカーの衝突で壊れた。

 天も現在の政権に見切りをつけている証拠である。この国の八百万の神も怒っているように感じてしまう。天災と政権運営を結び付ける根拠など無い。ただ、ある人は、その著書の中で、阪神淡路大震災は自社連立の村山政権下で起こり、東日本大震災は民主党菅政権で起こったことに大災害は真のリーダー不在の時に起こると書いている。

 国会で当時の菅首相が外国人からの献金問題で追及されている最中に大地震は起こった。地震が菅政権の延命に手を貸したようにも見えたが、その後のドタバタは民主党政権の無力さをさらに国民に印象付けた。そのトラウマが、現政権を支えているのだから皮肉である。

 新聞は自民党総裁選告示を受けて、「安倍対石破の一騎打ち」と見出しするが、公開の論戦を熱望する石破陣営に対して、事前に官邸は訪露の予定を入れており、震災を理由に総裁選挙活動の3日間停止を決めて、その分後に回すこともないようだ。初めから逃げまわっているように見えてしまう。

 野党の一部からは消化試合との発言もある通り、支持者多数を強調して、要は現職側は論戦で痛い所を突かれるのを回避したいだけに見えてしまう。「卑怯」という言葉があるが、このような時に使う言葉だ。

 堂々と受けて立つ気迫もないのになぜ3選に立候補するのか。その候補を7割8割の党員、議員が支持を表明している。対立候補を推しているわけではない。こんな政権与党で本当にこの国は大丈夫かと心配しているだけだ。

 この国の向こう3年間の運営方針をしっかりと国民に示すことが、与党の代表者を選ぶ選挙の当事者達の責任ではないのか。

 オカルト趣味はないが、天災が繰り返し起こるのは確かに政権の末期現象であり、人心一新の時なのである。




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自民党総裁選2018 その5

2018年09月13日 | ブログ
政治評論家の不在

 政治家の質が落ちた一因に政治評論家の不在もあるように思う。テレビの報道番組の進行役を芸能人が務めるようになり、コメンテーターにも芸能人が多数登場するようになる。特に芸人と呼ばれる人たちである。彼らは確かにタレントとして能力が高く、芸事だけでなく、例えば俳句や絵の才能までと多才な方は多い。場を盛り上げるには最適である。しかし、彼らが公共の電波を使ってまで、多くの国民に訴えるほど高い社会的教養を身に着けているかは疑問である。

 テレビの報道番組に登場するコメンテーターは、そこで取り上げられるテーマに応じてそれぞれの専門家が登場する。刑事事件なら元刑事、自然災害には防災のプロ、飛行機事故なら元パイロット、政治問題は元新聞記者など、ジャーナリストと呼ばれる人たちだが、最近本格的に政治を論じられる政治評論家を見ない。

 政治学者という人たちも居るようだが、学者は憲法学者をはじめ現実の生きた社会を論じるにはピント外れのことが多いように、政治学者もこれはという人材は見ない。政治などまさに人々が生きて呼吸している状態における政治の有り様を論じなくては意味がない。「干物で魚の生態を論じるようなもの」という喩えがあるが、お隣の軍拡国家が世界制覇を目論む中で、自衛隊や安保法制が違憲だからそんな法律は駄目と言うことは、生きた世界を見ていない証拠である。

 私などが若い頃のテレビでは、細川隆元氏や「創価学会を斬る」の藤原弘達氏など良いコンビで、当時の政治の有り様を論破していた。

 一方最近のテレビでは、昼のワイドショーによく登場する政治評論家氏の意見に驚かされたことがある。現職総裁陣営が、岸田さんや石破さんなどに総裁選に立候補するなら、その支援議員は閣僚人事などでは徹底的に排除するような発言を行っていることに対して、角栄さん時代の事例を挙げ、総裁選挙は権力闘争であり、対立派閥を徹底的に叩くのは昔から当然のことであり、「現職に対抗して立候補するなら、それなりの覚悟は必要でぐずぐず言うのはおかしい」という趣旨のご宣託である。結果として対立陣営支援者を排するのは仕方がないが、事前に口に出せば立派なパラハラである。

 角栄氏時代には、この国に「パラハラ」なる言葉はなかった。昔は政治の世界に関わらず、企業でも各スポーツの競技団体のドン、指導者と選手の間でも当然ようにパラハラがあり、体罰があって、それを当然としてそれぞれの組織は運営されていた。企業では戦後の混乱期に三井三池闘争など深刻な労働争議が発生し、国家が共産主義化しても困るから資本家も権力者も一定以上の権力行使を控えていただけだ。

 しかし、最近のスポーツ界の不祥事の多くは、協会幹部や指導者の低俗化(スポーツ界に限らないが、指導者層に人徳が欠如し権力と金に一層執着が強くなった)により、支配する者とされる側で格差が広がり、パラハラが横行するようになった。政党の運営にパラハラは無いなどというご宣託がまかり通る所に、政治の世界の後進性と、それを未だ当然とする政治評論家のレベルの低さをみるのである。





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自民党総裁選2018 その4

2018年09月10日 | ブログ
引き際が品格を表す

 引き際を誤ると、折角の功績が汚れるような気がする。麻生副総理が総理大臣の時に、当時の民主党への政権交代が起こった。麻生さんは、英語は達者なのに日本語の漢字を読み違えたり、軽口がマスコミに突っ込まれたりしたが、失礼ながら結構「愛されキャラ」で、嫌味は感じていなかった。民主党政権の事業仕訳でまず消えた「アニメの殿堂」にしても、現政権で決めた博打場を作るより遥かに健全な国家事業構想だったと評価していた。

 しかし、寄せ集め政党への政権交代を支援するマスゴミテレビの報道番組は、仕事帰りに麻生さんが立ち寄るバーの前から中継で、「庶民感覚から遠いこんな所で飲んでいる」などと批判していた。公費ならいざ知らず、自分の財布から酒を飲むなら総理もサラリーマンもない。警備のやり難い所より、しっかりしたお店で飲むのは妥当である。つまらない批判をするテレビ報道のレベルを疑ったものだった。もっともマスコミはその言動に責任を取らない代表選手ではある。

 しかし、安倍政権での最近の麻生さんは、財務大臣の辞任の機会を逃したばかりか、個人的好悪から総裁立候補者の派閥がどうのと批判するなど、愛されキャラを打ち捨ててしまった。自身を振り返れば他人をとやかく言える立場ではなかろうに。先祖に大久保利通、吉田茂を持つというが、先祖に恥ずかしくないのだろうか。

 菅官房長官などもその在任期間の長さを顕彰されているようだが、政権当初の輝きはすでにない。総理の言い訳の追認と人気取り政策の広報に終始するようでは、こちらも引き際を失した長期在任に過ぎない。

 安定政権と言えば聞こえはいいが、後継者を育てず、単に新陳代謝が悪いだけの政権に成り果てている。有力派閥の長でも細田さんや岸田さん、6年前には総裁選に立候補した石原さんなども安倍3選支持表明は憂鬱な表情に見えた。自身が総理総裁候補に成り得ないなら、派閥の長も後継に譲って、後輩を育てる側にまわるべきであり、こちらも引き際が大切である。

 それにしても総裁の3選での在任期間は9年。世界の指導者から見れば特に長過ぎることはない。それでその任期を待たず腐るのは、この国の政治システムが悪いのであろう。あれだけ大騒ぎで小選挙区制にしたメリットは全く感じられず、デメリットばかりが語られるようになってしまった。

 大相撲の記録だけの大横綱も、スポーツ界の各協会のドンと呼ばれる面々も、引き際を逃して腐った根性を世間に晒してマスコミの餌食にされ、国民の顰蹙を買う。政治家、経営者、スポーツ選手、芸能人も現役は実力がある間であるべきだ。組織の中枢で権力を持った者は殊更自身も取り巻きも注意が必要である。特に政治家は「信なくば立たず」を建前にしてはならない。引き際は重要である。



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自民党総裁選2018 その3

2018年09月07日 | ブログ
続、無責任の連鎖

 障害者雇用の水増し問題が発覚する前には、文科省の局長が、子弟を医科大学に裏口入学させた事件があった。この大学はその官僚だけでなく、裏口ルートが常設されていたようだ。それにしても、そのようなことを監視すべき文科省のトップクラスの役人が自ら不正を行う。また多くの医科大学では入学試験に女性の合格率を下げるため、女性受験者は減点することが慣例化していたことも白日化した。大きなニュースにはなったが、誰か責任を取ったとは聞こえてこない。

 また、どこかの病院で、この酷暑の時期にエアコンが故障(11台のうち7台は定期点検が行われていなかったという情報もあった)し、入院患者が5名も熱中症で死亡した。大部屋に扇風機が1台置かれていただけだったそうだ。その病院の担当責任者は、修理を頼んでいるが、20日程度掛かるということで仕方なかったと、マスコミの取材に他人事のような受け答えだった。

 大阪、富田林警察署から凶悪犯が脱走した。弁護士が接見後、容疑者の男が、接見終了を警察には自分が伝えるとのことで、弁護士はそのまま帰ったという。犯罪容疑者の言葉に従った当該弁護士の失態の責任は重い。2時間の予定の接見は30分程度で終了していたという。そのことが脱走の発覚を大幅に遅らせて、犯人はもう一か月近く逃走中である。警察署も弁護士も誰も責任を取ったとは聞こえてこない。責任を取ってもそれで、犯人が捕まるわけではない。しかし、再発防止には不祥事の責任の所在を明確にし、しかるべき処罰がなければ、関係者に今後も緊張感を持った業務は期待できない。

 これだけ次々と公務員の不正や医師、弁護士などの不作為が明るみになって、こんなことは安倍政権に限ったことでも、モリカケ問題とも関係ない話であると言えばそうかも知れないが、国のトップの面々が、言い逃れ、はぐらかし、恫喝、空疎な反省の弁で結果全く責任を取らない見本を示せば、以下の公務にある者も追随するのは当たり前で、だからこそ総理はじめ、閣僚、国会議員など国家のリーダーは慎重な言動、公務にあっては国民の範でなければならないのだ。

 安倍さんは、モリカケ騒動の途中で総理を辞めるまでのことはなかったにせよ、総理3選に立候補する資格があったのか疑問である。どうも権力の座は相当居心地が良いと見えて、しかも座る前の覚悟や自覚などの忘却装置も付いているようだ。

 総裁の対立候補が、「正直で公正」というキャッチフレーズを出せば、首相周辺から、「個人攻撃は止めろ」「森加計問題を蒸し返すな」という脅しともとれる批判が出る。後ろめたい証拠である。

 スポーツ界のスキャンダルも途絶えない。直近にもアジア大会のバスケ選手の軽率な行動、そして女子体操界の騒動と続く。問題の発覚した協会幹部も政権幹部と同様で、当初言い逃れで納めてしまえば「人の噂も45日」と踏んでいたようだが、日大アメフト部もレスリングもボクシングも当事者は辞任に追いやられた。ボクシング協会など、理事全員が引責辞任したようだ。安倍政権中枢の面々とは人品骨柄が異なるようだ。




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自民党総裁選2018 その2

2018年09月04日 | ブログ
無責任の連鎖

 森友、加計問題ではあれだけ国会で時間を掛けたにも関わらず、結局一般国民の理解を得るに至らなかった。公文書の改竄という重罪を犯しながら、その責任者の官僚は不起訴。ただ一点、安倍総理の関与はなかったと繰り返したことで、安倍総理は「私の関与がなかったことははっきりした」と一件落着させた。当初、「私や私の妻が・・・」と言っていたことに関して妻の部分は触れずじまい。

 この件、文書改ざんに関与した官僚が自殺している。政権に関わる大きなスキャンダルが起きると、過去にも秘書や運転手などが犠牲になり、代議士先生には捜査の手が及ばないよう画策するのはテレビドラマのよくある筋書き通り。自殺なのか、口封じのため殺されたのかも実は判然としないこともある。

 森友学園問題では、いくら総理夫人の肩入れがあってもまさか、この国の財務官僚がそれに従うなど考えてなかったから、当初は安倍首相に対する野党等の批判は当たらないと私は考えていたけれど、いろいろな事実が公表されると、総理夫人が明らかに財務官僚を動かした形跡がある。総理は国会で何度も「妻は私人であり、国会喚問などの対象には成り得ない」と主張していたが、どうして私人に官僚の秘書が居たのか。当の秘書官から財務省に森友学園への用地買収に協力要請がされていたこともそのFAXの存在ではっきりした。

 菅官房長官などは、当のFAXへの財務省からの返答は0回答であったと主張し、従って関与とは言えないような詭弁を弄していたが、総理夫人が一民間企業のために官僚の秘書を使って所轄省庁に要請するだけで、立派な関与であり、裏で財務官僚が忖度しておればそれは0回答ではありえない。
 
 その後も財務官僚のトップのセクハラ疑惑も出て、財務省は失態続きで、財務大臣である麻生氏辞任すべしの声も大きかったが、総裁3選のために必要な人物を安倍総理は切らなかった。これら一連のスキャンダルでは、結局閣僚は勿論政治家は誰も責任を取らなかった。

 今回はまた障害者雇用に関して大変な不正が発覚した。当初一部民間企業の不正が摘発された事件は、その監督官庁である厚労省はじめ、あらゆる国の役所で障碍者雇用の水増しが確認されるに至った。地方の県や市でも同様である。これだけの不祥事にも、厚労大臣など、頭を下げて終わりという初めからその面構えである。大臣の任期はどうせ総裁選が終わる9月末までであるし、何も自分が大臣になって始まった不正の慣例でもないと、麻生大臣にならって「蛙の面にしょんべん」の態である。(続く)
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自民党総裁選2018 その1

2018年09月01日 | ブログ
朱に交われば赤くなる

 3年に一度の自由民主党総裁選挙は、今年この9月7日に告示され、9月20日が投票日とのこと。当然、自民党員でなければ参加資格はないのだけれど、自民党総裁は日本国の総理大臣ということから、一般国民も関心があって当然だし、意見があれば物申すことに何の不都合もないのだけれど、どうも今の世の中の空気は、政権批判するとあらゆるところから手を回して、干し上げられるという雰囲気があって、マスコミでさえ及び腰になっていると感じてしまう。

 すなわち、このような雰囲気を一庶民さえ感じるところが、この自由と民主主義の国家にあっては、本来現政権の致命傷なのだけれど、安倍さん本人は権力を維持したい、そのことに執着し、ヨイショの取り巻きに囲まれて裸の王様になっているようなので分かっていないであろう。

 「朱に交われば赤くなる」という諺がある。現在の自民党議員は民主党時代の民主党議員化している。同じ狭い国会議事堂内のこと、影響を受け合うのは当然だけれど、他党議員の悪い所を見習うことはない。国会議員は、党員である前に国民の代表として、この国家を預かる大きな使命がある。政権与党であればその責はさらに重いのだけれど、選挙で公認を貰えなければ、党の役職から外されれば、大臣にして貰えなければという不安が先行してか、権力を握った人物がたとえ怪しくとも追従する。国家より、国民に飴を配る公約を並べて選挙で当選することを優先する。要は国家・国民のためではなく、自身が国会議員という職業を維持したいだけの先生方が自民党にも多数化してしまったのだ。

 思い出すのが、民主党の代表を小沢一郎さんが務めていた頃、代表改選時、野田佳彦さん(後の総理)が小沢さんに対抗して立候補しようと準備していたようだが、党内有力者から圧力が掛かり立候補に至らなかったことがあった。

 本来、党の代表を決める選挙は、現在の党首ではなぜ駄目なのか、自分ならこのように党を盛り上げ、この国を躍進させるぞ。という主張を展開してどんどん複数候補が出るような党でなければならない。そのような切磋琢磨があってこそ、その組織は発展するものだ。勿論現在の党首は素晴らしい、頑張っている、信頼できるということなら、お任せすることはまた当然である。

 しかし、対抗する者は干し上げると脅したり、手を回して立候補を断念させるなどあるようでは、その党に未来はない。先の民主党のごとくである。
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