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続、品質保証再考其の19

2010年10月25日 | Weblog
デザインレビューと未然防止

 先の信頼性設計を確実なものにするために、機器やプロセスの使用時や運転時に考えられる不具合、故障、事故の発生を未然に予測し、設計に反映することが必要である。このためには、過去のさまざまな故障、トラブル事例を参考にし、そこからさらに推測される未知の不具合までも事前に阻止する取り組みが必要であり、それが今回の課題である「未然防止」となる。

 ガイドブック第Ⅲ部第17章は、未然防止のためのツール(手法)としてFMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モードと影響解析)*24)やFTA(Fault Tree Analysis:故障の木解析)*25)を取り上げ、加えて、稼働後の故障リスクを最小限にするためのデザインレビュー(DR)について解説している。

 FMEAでは、機器やプロセスに発生するかもしれない不具合の状態や現象を「故障モード」、または「不良モード」と呼び、FMEA表の該当欄にあげる。そして当該不具合、故障の影響と故障原因を推測すると共に、その「影響の厳しさ」、「発生頻度」、「(不具合)検出の難易度」を点数付けして重要度を評価する。そして対策を検討し、結果を設計に反映させるのである。

 私は、工場勤めの折、シックスシグマのプロジェクトでこの手法を用いた経験がある。3交代現場を支援する部署で、現場に対応させていたシフト勤務を止めるというものであった。夜間の支援を受けられない現場にどのような不具合があるか、その影響はなど、FMEA表に基づいて検討し、最終的にシフトを全廃することができた。このようにFMEAは機器、装置、製造プロセス等の設計だけでなく、勤務体制の変更やさらに安全管理などにも応用*26)できる。

 「FTAとは、信頼性または安全性上、その発生が好ましくない事象を取り上げ、その事象を引き起こす要因を連鎖的に展開し、その因果関係を論理記号と事象記号を用いて樹形図(FT図)に図示し、対策を打つべき発生経路及び発生要因、発生確率を解析する手法である。FMEAがシステムやプロセスの構成要素に着目し、故障モードと、システムやプロセス全体への影響メカニズムを予測するボトムアップ的解析である一方、FTAは、あらかじめシステムやプロセスの事故や故障などの起こしてはならない重大な事象をトップ事象として捉え、その発生原因を展開していくトップダウン的な解析であり、すでに発生したトラブル事象解析にも使用される」。とガイドブックにあり、事例をあげて実施手順が示されているが、誌面の都合上割愛する。

 DRは、製品の生産の前に、設計に起因するさまざまな問題を設計、製造、検査、運用などの専門家がレビューするもので、チェックリストを用いる方法や、専門家がその暗黙知に基づいて行う方法などに加えて、FMEAやFTAに基づく方法もある。ガイドブックは、DRの計画からDRに参加する人材の育成、新規性・変更点に着目した効率的なDRのあり方、CADや3D画像の活用、実施上の注意点などの解説がある。大切なことは、対象の品質や安全レベルに応じたプロセス品質保証基準など、プロジェクトの前提条件や制約条件を考慮した方針と計画に基づいたデザインレビュー(DR)を行うことである。

 DRはじめFMEA、FTAにしても設計による不具合を未然防止するための手段であり、目的は作り出す製品の品質保証にあることを忘れてはならない。*27)
 






*24) 「FMEAは、1950年頃に米国航空機メーカーで生み出されたといわれており、1960年代に入り、NASAで人工衛星の開発に用いられて一般的に知られるようになった」。byガイドブック。
*25)「FTAは、1960年代の初めに米国防省がミサイルの発射制御システムの安全性の確立のために開発したもので、以来、エネルギープラントや家電製品をはじめとするさまざまなシステムやプロセスの安全性、信頼性上のトラブル未然防止に応用されている」。byガイドブック。
*26)OHSAS(Occupational Health and Safety Assessment Series)18001*取得対応のため、リスクアセスメントとして、現場のあらゆる作業毎に考えられる事故事象をあげ、その作業の頻度、事故の発生確率、事故の程度(死亡災害に至るのか重傷または軽傷など)によって重要度評価し、対策を実施したが、これなどもFMEAの考え方を応用したものと思われる。*英国規格BS8800をベースとする、労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)の国際規格。
*27)話が飛躍するかもしれないが、エース検事の証拠改ざん事件など、検事の元々の使命を忘れたために起こっている。検事の任務は、被告を有罪にすることではなく、世の中の不正を糺すことであろう。手段と目的の取り違えはどこでも起こる。敢えて分かり切ったことを書いた。

本稿は (社)日本品質管理学会編2009年日科技連刊“新版品質保証ガイドブック”(「ガイドブック」と略称)第Ⅲ部第17章を参考にしています。
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