goo blog サービス終了のお知らせ 

語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【読売】と自民の、消費者庁攻撃 ~訪問勧誘規制~  

2015年07月16日 | 社会
 (1)消費者庁が、特定商取引法の改正を検討している。要請のない勧誘行為(不招請勧誘)に規制をかけようというのだ。
 訪問勧誘への苦情は、新聞がもっとも多く、とりわけ読売新聞社への苦情件数が業界トップだった。6月10日に消費者庁で行われた専門調査会では、規制反対の弁を打った山口寿一・読売新聞社長に対し、疑問の声や質問が続出した。【注1】

 (2)立つ瀬のない読売新聞社は、かっこうの反撃材料を見つけたのか、同調査会から5日後、
   板東久美子・消費者庁長官
   川上正二・消費者委員会委員長
   山口俊一・内閣府特命担当大臣
宛てに「抗議書」を送りつけた。調査会で、山口社長の発言中に「笑った委員がいた」というのだ。
 「複数の委員らが声をあげて笑う場面が複数回にわたって続き(中略)新聞協会の代表として山口を出席させた当社としては、極めて遺憾です」(抗議書一部抜粋)
 その場面は、こうだ。
 山口社長の前に、寺島則夫・新聞協会販売委員会委員長が「一度営業に行きまして、もう来ないでねというところには行かない」と発言し、その後に山口社長はこう述べた。
 「新聞の勧誘の現場ではさまざまな接触のやり方があって、断られたけれども、とっていただくということも現実にはある」
 この時、笑い声があがった。それは再勧誘の禁止について、両者の発言が矛盾していたからだ。
 笑う理由はあったのだ。

 (3)7月2日、自民党本部で内閣部会・消費者問題調査会合同会議が開かれた。議題は特定商取引法の見直しについてだったが、実質、自民党と読売新聞社による消費者庁バッシングだった。
 山口社長、「(規制は)アベノミクスや地方創生に逆行する」。
 水原伸・社長室長、「専門調査会の議事運営について、ヒアリングの際に一部議員が机に突っ伏して笑うということがあった」。
 出席議員、「けしからん!」
 (当日の映像が流される。)
 西田昌司・参議院議員(細田派),「消費者庁の責任だよ。笑っているのは誰なんだ」
 薗浦憲太郎・衆議院議員(麻生派、元「読売新聞」政治部記者)、「笑った専門委員に(消費者庁は)笑った理由を確認したのか。こんな専門調査会の意見では誰も信用しない」
 北村経夫・参議院議員(細田派、元「産経新聞」政治部長)、「消費者庁の方針に賛成する意見がなかったことを重く受け止めるべきだ」
 
 (4)この日は、「笑った」論にとどまらず、消費者委員会のあり方まで踏み込む発言が出た。
 太田房江・参議院議員(細田派、元通産官僚)、「消費者委員会(本委員会)は全員消費者側委員であり、業界側の委員が入っていないのは問題。業界側の委員を入れるべき」
 中川雅治・参議院議員(細田派)、「消費者庁は消費者側に一方的に進むのは危険である」
 森まさこ・参議院議員(細田派)のいわゆる「消費者保護とビジネスのバランスをとる」論である。
 消費者委員会は、消費者庁がそのレーゾンデートルである「消費者目腺の行政」をきちんとやっているかどうかをチェックする機関として発足している。その委員会に事業者が入るのは、お目付役に「泥棒」が就任するようなものだ。

 (5)安倍政権を応援する新聞社【注2】は「健全な事業者」として守り、「沖縄タイムス」「琉球新報」など政権に批判的なマスコミには「圧力」をかける。
 これが安倍晋三の自民党である。

 【注1】「【古賀茂明】読売新聞の大チョンボ ~違法訪問勧誘~
 【注2】「【メディア】「文春」が「読売」を「御用新聞」と批判 ~返す刀で『産経』断罪~

□野中大樹(編集部)「自民・読売のお笑い二人羽織 訪問勧誘気勢の特商法見直し論議で消費者庁叩き」(「週刊金曜日」2015年7月10日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【メディア】「文春」が「読売」を「御用新聞」と批判 ~返す刀で『産経』断罪~

2015年07月16日 | 批評・思想
 (1)最近、不思議にも保守派の中で相互批判の動きが目立つ。
 小林よしのりの「ネトウヨ」批判【注1】でも、「意外!」という声が多い。

 (2)こんどは、「週刊文春」が、手ひどく「読売新聞」を叩いている。毎号掲載のコラム「新聞不信」において。
 6月25日号のコラム見出しには、
   「長老会見を無視した御用新聞」
とある。政界の長老4人による会見(6月12日、於日本記者クラブ)を無視した「読売」批判が主題だ、とすぐわかる。
 あの「産経新聞」でさえ
   「『安保法制反対で会見』との見出しのもと」
   「五段分のスペースで」「中身はきちんと報じている」
のに、「読売」は無視している、として、次のように決めつけた。
 「事実をどんな角度から報じようと各紙の自由だが、あったことを報じないのでは御用新聞の誹りは免れまい」

 (3)「読売」もいよいよ「文春」に御用新聞と蔑まれるところまで落ちたか。
 世界最大部数の全国紙が、安倍政権にすり寄ったことが、安倍側近たちを増長させている。自民党議員勉強会における報道抑圧の暴言についても、誘発させた責任が「読売」にはありそうだ。

 (4)コラム「新聞不信」は、「産経」も叱っている。
 5月21日号では、
   「つまみ食いは“誤報”と同じだ」
として、5月8日付け「産経」朝刊一面の記事を批判した。欧米を中心とする日本研究者ら187人による「70年談話」に向けた声明の件だ。
   他紙は、「彼らの本意を正確に伝えている」が、
   「産経」は「自社の主張に都合の良い枝葉末節をつまみ食いしている」
と言い、
   「産経」は福島原発事故の吉田調書をスクープした朝日の誤報追求に熱心だが、その資格はない
と厳しい。
 同コラムの冒頭には、
   「自説を前提に事実を歪めたり、ボツにしたりするのでは本末転倒だ」
ともある。サギをカラスと言いくるめる歪曲報道が得意技の「産経」には、馬耳東風だろう。それでも、同調報道が少なくない「文春」の、その後も続く「産経」叩きは痛手に違いない。

 (5)「産経」は、北朝鮮バッシングの真偽不明報道の垂れ流しで、他社より群を抜いている。背景に安倍政権との癒着があるからで、金銭的なからみさえ想定される、という指摘もある【注2】。
 まさかそこまでは・・・・と思うだろが、「産経貧乏物語」はよく知られている。
 「読売」の産経化が「御用新聞」レベルまで進んだ昨今、「産経」は独自色の発揮に苦しいところだが、疑惑解消は急務だ。

 (6)一方、6月7日付け「産経」朝刊のコラム「新聞に喝!」に、伊豆村房一が“正論”を展開している。
 <メディアの本分とは、権力の監視機能を果たすことだ。とりわけ新聞ジャーナリズムには、立法・行政・司法の三権をチェックする第4の権力としての重要な役割がある。改めて圧力に屈せぬ新聞本来の気骨を存分に見せてもらいたいものだ。>【注3】
 「産経」には、これがブラックユーモアでないことを証明してもらいたい。

 【注1】「【メディア】安倍首相の「人身売買」発言 ~騙しのテクニック~
 【注2】成田俊一「拉致問題の解決を絶望的したのは安倍首相の「圧力」 総聯議長への家宅捜索と二男逮捕で合意は破綻」((「金曜日」2015年5月22日号)
 【注3】コラム「メディアの本分は権力の監視にある」(産経ニュース 2015年6月7日)

□高嶋伸欣(琉球大学名誉教授)「『文春』が『読売』を「御用新聞」と批判。返す刀で『産経』断罪」(「週刊金曜日」2015年7月10日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【詩歌】三好達治「湖水」

2015年07月15日 | 詩歌
 この湖水で人が死んだのだ
 それであんなにたくさん舟が出てゐるのだ

 葦と藻草の どこに死骸はかくれてしまつたのか
 それを見出した合図の笛はまだ鳴らない

 風が吹いて 水を切る艪の音櫂の音
 風が吹いて 草の根や蟹の匂ひがする

 ああ誰かがそれを知つてゐるのか
 この湖水で夜明けに人が死んだのだと

 誰かがほんとに知つてゐるのか
 もうこんなに夜が来てしまつたのに

□三好達治「湖水」(『測量船』、第一書房、1930)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【詩歌】三好達治「雪」
【詩歌】三好達治「春の岬」
【詩歌】何をうしじま千とせ藤 ~牛島古藤歌~
【読書余滴】ミラボー橋の下をセーヌが流れ ~母音~

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(4) ~読売・NHKは?~

2015年07月15日 | 批評・思想
 (承前)

 (14)読売新聞は、6月5日以降、
    3憲法学者の「違憲」見解も
    日本記者クラブの河野・村山対談会見も
    日本記者クラブの元自民党4長老の会見も
ろくに報じてこなかった。
    6日「集団的自衛権 限定容認は憲法違反ではない」
    8日「沖縄知事訪米 普天間の危険除去をどうする」
    11日「集団的自衛権 脅威を直視した議論が大切だ」
    16日「集団的自衛権 最高裁判決とも整合性がある」
などの社説を掲げてきた。「安倍ノー」の世論を抑え、政権を激励し、先導さえしようとする態度が露骨だ。

 (15)NHKの役割も無視できない。
 憲法学者が投じた波紋に慌てた自民党が、急遽、街頭の宣伝活動で反論せよ、と全党に指令を発した。
 東京では、7日、新宿駅前に谷垣禎一・幹事長らが街宣車を繰り出した。ところが、その前に立った聴衆は30人程度。これを取り囲んで、婦人や若者多数を含む100人以上の市民が集まり、「戦争反対」「ダメダメ改憲」などのプラカードを掲げ、シュプレヒコールを繰り返した。自民党勢が20分そこそこで退散した後も、包囲陣は長い間気勢を上げていた。
 しかし、19時のNHKニュースは、街宣車上の谷垣幹事長の演説姿をアップで映し、反対陣営の姿はいっさい映さなかった。NHKは、何がニュースかを見抜くセンスまでなくしてしまったらしい。【注】

 (16)長谷部教授と小林名誉教授は、15日にも外国特派員協会、日本記者クラブと、立てつづけに会見に臨み、内外記者団の取材を捌いた。
 今や、欧米のジャーナリストの安倍政権に対する関心は大きく、問題意識の水準も高い。
    フランスのロブス(L’obs:元ヌーベル・オプセルバトゥールの後継誌)5月21日号が「安倍晋三の隠された顔」
    英エコノミスト誌6月5日号が「右側上へ」
と、仏英の週刊誌がつづけて右翼団体「日本会議」の特集を中心に、これとべったりの安倍政権の行方も占った。
 その対米追随と国家ナショナリズムへの傾斜の奇妙な混淆がもたらす日本の危うさは、当の日本のメディアがあまり深入りしてこなかった問題だ。
 
 (17)日本のメディアはまた、翁長沖縄県知事の訪米を、大方のメディアは成果なし、と黙殺した。
 だが、2014年に沖縄の海兵隊基地建設に反対の声を上げたノーム・チョムスキー、ジョン・ダワー、オリバー・ストーン、ナオミ・クラインなど28名の米知識人との連携は、底辺で強まっている。
 さらに、5月に米国の日本研究者・歴史学者が連名で(最終的には187人に膨れあがった)公表した「日本の歴史家を支持する声明」も注目されてよい。
 日本では、慰安婦問題で日本政府を非難し、反省を求める声明であるかのように報じられた。しかし、全文をよく読めば、安倍政権のもたらす危機に抗し、歴史の正しい道筋を示してほしいと、日本の研究者に連帯の激励を送る文章であることがわかる。
 日本に屈従を強いる米国政治の行き詰まりに対する批判や、その打開を自らの課題ともする問題意識に裏打ちされている。
 確実に大きな歴史の転換期が訪れつつあるのだ。試されるのは学者だけではない。メディアもだ。

 【注】「【NHK】「反対」議会隠し ~安保法案に反対の地方議会が7割強~

□神保太郎「メディア批評第92回」(「世界」2015年8月号)の「(1)広がる安倍政権追撃の戦線とメディア」
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(3) ~新聞はどう報じたか~
【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(2) ~違憲が争点に~
【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(1) ~SNS上の痛烈な批判~
【古賀茂明】「反安倍」の起爆剤 ~若者たちの「反安倍」運動~

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(3) ~新聞はどう報じたか~

2015年07月15日 | 批評・思想
 (承前)【注】

 (10)地方の動きも注目に値する。
 6月15日には、憲法審査会に義務づけられた地方公聴会が高知市で開かれた。意見陳述人6人中、県知事ともう1人を除く4人が、安保関連法案は「違憲」と明確に指摘した【高知新聞】。
 高知新聞は、独自に長谷部恭男・早稲田大学教授にロング・インタビューを行い、10日朝刊に長文の記事を掲載していた。このような地方紙の健闘が、地域の世論を着実に変化させてきたのだ。

 (11)6月5日以降の主要地方紙の社説・論説をみると、
  (a)河北新聞(仙台)・・・・「安保法案説明不足/深まらぬ理解、無理筋を暗示」(5日)
  (b)北海道新聞・・・・「『結論ありき』の議論だったのではないか」(6日)
  (c)信濃毎日新聞・・・・「そもそも今の憲法の下で許される法案なのか」(6日)
  (d)熊本日日新聞・・・・「安保法制 『憲法違反』の揃い踏みだ」(6日)
  (e)南日本新聞(鹿児島)・・・・「やはり法案を撤回すべき」(6日)
  (f)西日本新聞(福岡)・・・・「安全保障法制 『憲法違反』の指摘は重い」(7日)
  (g)琉球新報・・・・「安保法制は廃案しかない」(7日)
  (h)愛媛新聞・・・・「法治国家の原理原則に立ち返れ」(8日)

 (12)政府の法案推進に対して意見表明決議を行う地方議会は、246に達した。「政府に賛成」は3のみ。【6月20日、NHK「ニュース7」】

 (13)在京紙では、
  (a)東京新聞・・・・6月4日の憲法学者「意見」見解表明の直後、同日夕刊トップでこれを大きく報じた。この機敏さが、読者に鮮烈な影響を与えた。
  (b)朝日新聞・・・・初報を翌日朝刊に回した。一面左隅、5分の1程度の紙幅での扱いで、東京新聞の一面トップと比べ、大いに見劣りがした。社説も、「違憲との疑惑に答えよ」と、釈明を促す程度の感じだった。5日以降も数本の安保法制関連社説を掲げ、政府批判を続行したが、ついに16日、ようやく、「『違憲』の安保法制 廃案で出直すしかない」の1本社説を掲げた。
  (c)毎日新聞・・・・社説は、一日遅れたが、「安保転換を問う」のシリーズ・タイトルを立て、6日「『違憲法案』見解 根本的な矛盾あらわに」から12日「日本と米国『対等な同盟』のリスク」と結び、17日は18歳選挙権成立を受け、大きな1本社説で「若者こそ政治に参加を」と呼びかけたのはいいタイミングだった。

 【注】<安全保障関連法案は15日午後、衆院特別委員会で採決が行われ、自民・公明両党の賛成多数で可決された。審議を締めくくる総括質疑の終了後、維新の党が退席し、民主・共産両党が抗議する中、与党が採決を強行した。法案は16日にも衆院本会議で可決される見通しだが、安倍晋三首相は15日午前の質疑で「残念ながら、まだ国民の理解が進んでいる状況ではない」と認めた。><法案については、多くの憲法学者が憲法違反だと指摘。報道各社の世論調査でも法案への反対意見が多い。>【記事「安保法案、衆院委で可決 与党が採決強行」(朝日新聞デジタル 2015年7月15日)】

□神保太郎「メディア批評第92回」(「世界」2015年8月号)の「(1)広がる安倍政権追撃の戦線とメディア」
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(2) ~違憲が争点に~
【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(1) ~SNS上の痛烈な批判~
【古賀茂明】「反安倍」の起爆剤 ~若者たちの「反安倍」運動~

      サルビア・ファリナセア
    


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(2) ~違憲が争点に~

2015年07月15日 | 批評・思想
 (承前)

 (4)大きな変化に向かう転機の到来は、6月14日の
    「戦争させない・9条を壊すな! 総がかり行動実行委員会」
主催による国会包囲の行動も、予感させた。多様な関係団体を網羅した共同戦線的なこの行動への参加者は、主催者発表によると25,000人。与党を除く政党代表、各界有識者、沖縄の青年、神奈川の主婦など、多彩な参加者がそれぞれの立場から、法案の撤回を求める抗議の声を上げ、国会を包囲する大勢がこれに呼応する状況が出現した。

 (5)(4)のような状況を生き生きと伝える点でも、ネットが面白い。
 <例1>14日には、国会前集会とは別に、東京・渋谷で“若者でも”「戦争立法反対! 渋谷デモ」が3,500人を集めた。19日夜には、「SEALDs」に結集する学生たちが2,500人参加して、国会正門前で集会を成功させた。
 <例2>20日には、戦争法案にレッドカードを突きつけようと、赤いファッションで装った女性15,000人が国会を包囲

 (6)安倍政権の法案成立強行作戦をめぐる状況も、ここへきて変わりつつある。
 それは、
   昨年7月の集団的自衛権武力行使容認閣議決定
   今年4月の日米首脳会談における日米防衛協力新ガイドライン合意
   米上下両院合同会議で「夏までに安保関連法を実現する」と約束した首相演説
など、
   国民・国会を無視し、
   ひたすら米国政府に取り入り、
挙げ句には全面改憲に結びつけようと企む政権の強引さが、野党やメディアの反発を掻き立てた結果といえる。

 (7)大きな国民的反対を呼び覚ましたのには、与って学者・研究者の力が大きい。アンデルセン童話「裸の王様」のように、首相の企みの明白な違憲性があっさりと引き剥がされ、インチキなものはインチキだと国民が言い合える闊達な空気が一気に醸し出された。
 6月4日、衆議院憲法審査会に参考人として招かれた3人の憲法学者、
   長谷部恭男・早稲田大学教授(与党推薦)
   小林節・慶應義塾大学名誉教授(民主推薦)
   笹田栄司・早稲田大学教授(維新推薦)
が、揃って「政府提案の安保法制は違憲」とする見解を披瀝したことが、一連の動きの口火を切った。

 (8)6月6日夜、与党はうろたえ、メディアも大きく取り上げ、騒然とする空気が巻き起こるなか、憲法学者・政治学者などによる「立憲デモクラシーの会」(樋口陽一・東大名誉教授&山口二郎・法大教授が共同代表)が東大・本郷構内でシンポジウム「立憲主義の危機」を開いた。1,400人が集まる盛況となった。
 6月15日、研究分野を横断する学者61人が代表の「安保関連法案に反対する学者の会」が、学士会館(東京・神保町)で反対声明を発表、賛同者が学者2,700人、市民1,800人にも達している模様を報告した。
 両者の合計人数は、19日現在、12,000人を超えた。発起人は、佐藤学・学習院大教授(教育学)、間宮陽介・青学大特任教授(経済学)、上野千鶴子・東大名誉教授(社会学)など。

 (9)この間、政界、法律家・文化関係者のあいだでも注目すべき動きが生じた。
 6月9日、日本記者クラブの河野洋平・元自民党総裁&村山富市・元首相の対談と記者会見は、「戦後70年談話」の検討を予定、早くに開催日が決まっていたが、この日が(7)のとおり3憲法学者の「違憲発言」後となったため、会場には300人超の取材陣が押しかけた。
 6月12日、日本記者クラブは次いで、山崎拓、亀井静香、武村正義、藤井裕久の4氏共同記者会見も開催した。いずれもかつては自民党の大幹部だった面々。
 以上6氏の、安倍政権の危うさをそれぞれ自分の言葉で語った話も、メディアを賑わせた。

 (10)法律家の動きとしては、日本弁護士連合会が、早くも5月14日、同日の安保関連法案閣議決定に対し、「日本の在り方、覆す」とする反対声明を明らかにしていた。
 政府が憲法学者の「違憲」論を覆そうと、「砂川事件」の最高裁判決を根拠に集団的自衛権行使の合憲性を強弁するに至るや、
 6月12日、「砂川事件」の元弁護団、司法記者クラブで会見、当該判決は日米安保・在日米軍基地を憲法判断の埒外に置いたものに過ぎず、集団的自衛権行使の合憲判断はしていない、と政府のウソを粉砕した。
 (8)で記したように「学者の会」が反対声明を発した6月15日、国会内で「安保体制打破 新劇人会議」が会見を行い、俳優座、民藝、青年劇場、前進座、東京芸術座、人形劇団プーク、劇団風の子の関係者が出席、「憲法9条を壊す『戦争立法』=平和安全法制整備法案・国際平和支援法案に反対します」の声明を発表。これに32劇団、演劇関係4団体が賛同(第一次集約分)、なお賛同者・団体が増加中と報告した。
 こうした共同での意思表示は「60年安保闘争以来」という。

□神保太郎「メディア批評第92回」(「世界」2015年8月号)の「(1)広がる安倍政権追撃の戦線とメディア」
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(1) ~SNS上の痛烈な批判~
【古賀茂明】「反安倍」の起爆剤 ~若者たちの「反安倍」運動~

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【メディア】と広がる安倍政権追撃の戦線(1) ~SNS上の痛烈な批判~

2015年07月15日 | 批評・思想
 (1)元自衛官(航空ミサイル部隊)の泥憲和(姫路市在住)さんがFacebookに投稿している【注】。彼は、自分の経験に照らして、安倍政権の安保関連法案に批判的だが、「安倍ちゃんにツッコミ入れるJK」と題する3コマのコラージュが傑作だ。このJK(女子高生)は、教室のなか、隣で笑顔をみせる安倍首相に知らんぷり。自席に固まったまま。両人の口から出ている吹き出しに書かれたやりとりは、次のとおり。
  (a)最初のコマ
    安倍「戦争に行ってくれませんか?」
    JK「ポツダム宣言読んでから言えよ。カス」
  (b)つぎ
    安倍「戦争する国にはなりません」
    JK「アメリカに戦争させられる国になるんだろーが」
  (c)終わり
    安倍「集団的自衛権で日本はもっと安全になります」
    JK「お前 原発でも同じことを言ってただろ!」
 ちょっとお行儀の悪いJKだが、彼女の言うことのほうがよほどまともだ。

 (2)磯崎陽輔・国家安全保障担当・総理補佐官と10代の女性「ほなみ」とのツイッター上での応酬も見もの。どう見ても、磯崎補佐官がヘコまされたかっこうだ。
   磯崎「集団的自衛権とは、隣の家で出火して、・・・・初期消火に努めている中、『うちではまだ延焼していないので、後ろから応援します。』と言って消火活動に加わらないで、我が家を本当に守れるのかという課題なのです」
   ほなみ「バカをさらけ出して恥ずかしくないんですか。分かりやすく解説じゃなくて都合よく解説お疲れさまです。・・・・集団的自衛権と個別自衛権の違いを勉強してください」
   磯崎「・・・・『バカ』とまでおっしゃってくれていますので、是非あなたの高邁な理論を教えてください。・・・・結論だけ『バカ』と言うのは、『××』ですよ」
   ほなみ「まず例えが下手。戦争と火事は別ものだし笑」「火事を戦争と同等にして例えるのがまずおかしい。わかる? 火事には攻撃してくる敵がいない。戦争は殺し合い。・・・・危険なのわかるよね? それが分からないなら本当に脳みそ腐ってんじゃない?」
   磯崎「『例え話』というのが分からないのですか?」「もう少し上品な言葉を使いましょうね」
   ほなみ「やばい。・・・・中学生でも論破できるレベルの政治家」
   磯崎(ほなみをブロック)

 (3)18歳以上の(2)のような若者が選挙権、国民投票権を手にすれば、日本の政治は大きく変わる。来年7月の参院選では、新しい若い有権者が頑張ってくれるだろう。

 【注】「泥憲和(Facebook)

□神保太郎「メディア批評第92回」(「世界」2015年8月号)の「(1)広がる安倍政権追撃の戦線とメディア」
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【古賀茂明】「反安倍」の起爆剤 ~若者たちの「反安倍」運動~

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【古賀茂明】「反安倍」の起爆剤 ~若者たちの「反安倍」運動~

2015年07月15日 | 社会
 (1)衆議院における安保法案の採決が秒読み段階に入った。採決の日程に関して、与野党の対立が激しさを増している。7月13日、与党側は15日に委員会で採決する方針を固めた。これに対し、民主党などは、15日の採決には応じられないと強く反発し、民主党と共産党は14日の委員会には欠席した。(7月14日現在)。【注1】

 (2)日程とともに与党が必死になっているのは、採決への野党の出席確保だ。反対してもよいから席に着いてくれ、というのだ。
 その理由は何か。
 来年選挙を控えた参議院議員は、世論の動向に敏感だ。与党議員でさえ風向きを読んで、来年の選挙のためには反対に回ったほうが得策だ、という誘惑に駆られても不思議ではない。
 そこで、安倍政権としては、「強行」採決の色彩を少しでも弱めるために、採決への野党の「出席」を重視しているのだ。

 (3)最近、安倍政権に不都合な事象が次々に現れている。
  (a)毎日新聞の調査で、内閣発足以来初めて内閣不支持が支持を上回った。支持率低下が顕著なのだ。安保法案の今国会成立に対する反対もどんどん増加し、反対が7~8割に昇っている。
  (b)自民党議員の報道弾圧が、支持率低下に拍車をかけた。
  (c)世論の変化を察知した週刊誌も、記事のトーンを安倍批判へと転換し始めた。
  (d)最大の変化は、若者の間に反自民の風潮が急速に高まっていることだ。安部総理は、ネトウヨ(ネット右翼)に支えられ、若者に人気があると思い込んでいたからこそ、選挙権年齢を18歳に引き下げた。が、これが裏目に出かねない情勢だ。

 (4)(3)-(d)は、とりわけ学生の団体「SEALDs」の運動が注目される。【注2】
 SEALDsは、特定の政治思想を持つ団体ではない。ごく普通のまじめな学生たちだ。特定秘密保護法をきっかけに、日本の将来の危機から、自分たちが最も影響を受けるのだ、という皮膚感覚で若者たちに訴えている。
 ソーシャルネットワーク(ツイッターやフェイスブックなど)を駆使して急速に拡大を続けている。
 その運動のスタイルはおしゃれで、プラカードもキャンペーンに使う言葉も、既成の反政府運動とはまったく異なる。反安倍をファッションにまで昇華させている。今や、「自民感じ悪いよね」という言葉がツイッター上で爆発的に拡大しているほどだ。
 見逃せないのは、純粋な若者の運動に大人たちが自然に合流を始めていることだ。(大人の運動は、各団体の主導権争いもあって、大同団結できない。)
 ハチ公前では、広場を埋め尽くす群衆の前で、何と、共産党と維新の議員が握手するシーンまで出現した。
 毎週金曜日には、土砂降りの雨でも国会前に3,000人が集まる。

 (5)1960年安保では、国会を30万人のデモ隊が包囲し、ついには岸政権が倒れた。
 今回は、おそらく、数万人規模でも、選挙を控えた政党や議員の心は揺れるだろう。
 危機感を強めた安部総理は、テレビに出たい、と言い出した。まずは自民党の番組に出演し、YouTubeでもネット放送されたが、反響は今までと違って芳しくなかった。【注3】
 SEALDsのような若者たちの運動が、日本の危機を回避する最後の切り札になるのではないか。

 【注1】記事「安保関連法案 採決前日に、身内の石破大臣から「待った」」(フジテレビ系(FNN) 2015年7月14日18時23分配信)
 【注2】志葉玲(フリージャーナリスト)「安倍政権を揺るがす!?学生団体SEALDsが今週3日間連続で安保法制強行採決反対の国会前抗議」(YAHOOニュース 2015年7月14日)
 【注3】記事「たとえ話で伝わる? 安保法案、首相がネット番組で説明」(朝日新聞デジタル 2015年7月12日)

□古賀茂明「「反安倍」の起爆剤 ~官々愕々第163回~」(「週刊現代」2015年7月25日・8月1日合併号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【古賀茂明】維新の党の深謀遠慮 ~風が吹けば橋下市長が儲かる~
【古賀茂明】腐った農政 ~画餅に帰しつつある「日本再興」~
【古賀茂明】読売新聞の大チョンボ ~違法訪問勧誘~
【古賀茂明】「信念」を問われる政治家 ~違憲な安保法制~
【古賀茂明】機能不全の3点セット ~戦争法案を止めるには~
【古賀茂明】維新が復活する日
【古賀茂明】戦争法案審議の傲慢と欺瞞 ~官僚のレトリック~
【古賀茂明】「再エネ」産業が終わる日 ~電源構成の政府案~
【古賀茂明】「増税先送り」「賃金増」のまやかし ~報道をどうチェックするか~
【古賀茂明】週末や平日夜間に開催 ~地方議会の改革~
【古賀茂明】原発再稼働も上からの目線で「粛々と」 ~菅官房長官~
【古賀茂明】テレビコメンテーターの種類 ~テレ朝問題(7)~
【報道】古賀氏ら降板の裏に新事実 ~テレ朝問題(6)~
【古賀茂明】役立たずの「情報監視審査会」 ~国民は知らぬがホトケ~
【報道】ジャーナリズムの役目と現状 ~テレ朝問題(5)~
【古賀茂明】氏を視聴者の7割が支持 ~テレ朝問題(4)~
【古賀茂明】氏、何があったかを全部話す ~テレ朝「報ステ」問題(3)~
【古賀茂明】氏に係る官邸の圧力 ~テレ朝「報道ステーション」(2)~
【古賀茂明】氏に対するバッシング ~テレ朝「報道ステーション」問題~
【古賀茂明】これが「美しい国」なのか ~安倍政権がめざすカジノ大国~
【古賀茂明】原発廃炉と新増設とはセット ~「重要なベースロード電源」論~
【古賀茂明】改革逆行国会 ~安倍政権の官僚優遇~
【古賀茂明】安部総理の「大嘘」の大罪 ~汚染水~
【古賀茂明】「政治とカネ」を監視するシステム ~マイナンバーの使い方~
【古賀茂明】南アとアパルトヘイト ~曽野綾子と産経新聞~
【古賀茂明】報道自粛に抗する声明
【古賀茂明】「戦争実現国会」への動き
【古賀茂明】日本人を見捨てた安倍首相 ~二つのウソ~
【古賀茂明】盗人猛々しい安倍政権とテレビ局
【古賀茂明】安倍政権が露骨な沖縄バッシングを行っている
【古賀茂明】官僚の暴走 ~経産省と防衛省~
【古賀茂明】安倍政権が、官僚主導によって再び動き出す
【古賀茂明】自民党の圧力文書 ~表現の自由を侵害~
【古賀茂明】自民党が犯した最大の罪 ~自民党若手政治家による自己批判~
【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~
【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走
【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案
【古賀茂明】宮沢経産相は「官僚の守護神」 ~原発再稼働~
【古賀茂明】再生エネルギー買い取り停止の裏で
【古賀茂明】女性活用に本気でない安部政権
【古賀茂明】【原発】中間貯蔵施設で官僚焼け太り
【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~
【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~
【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~
【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器
【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ
【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~
【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~
【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~
【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~
【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~
古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ
【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」
【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~
【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任
【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造
【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~
【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~
【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~
【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~
【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~
【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~
【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~
【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働
【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~  
【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~
【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~
【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~
【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと
【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~
【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~
【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【詩歌】三好達治「雪」

2015年07月14日 | 詩歌
 太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
 次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。

□三好達治「雪」(『測量船』、第一書房、1930)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【詩歌】三好達治「春の岬」
【詩歌】何をうしじま千とせ藤 ~牛島古藤歌~
【読書余滴】ミラボー橋の下をセーヌが流れ ~母音~
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【NHK】「反対」議会隠し ~安保法案に反対の地方議会が7割強~

2015年07月14日 | 社会
 (1)衆議院で審議中の「安全保障法案」に対して全国の地方議会が国会に提出した意見書について、NHKが「ニュース7」で報じたが、「反対」の立場にはほとんど触れずに放送していた。

 (2)6月20日19時からの「ニュース7」は、守本奈美・アナウンサーが
   「去年7月の集団的自衛権の行使容認を可能にする閣議決定以降、先週までに(中略)246議会から意見書が国会に提出され」たとし、
   「意見書は賛成の立場が3つの議会、反対の立場が181、慎重な審議を求めるものが53議会」
   「それぞれの現場を取材しました」
と続けた。
 ところが、実際に「現場取材」で放映したのは、
   「慎重」の埼玉県滑川町議会
   「賛成」の金沢市議会
だけで、「反対」議会は一切紹介しなかった。しかも、滑川町議会の意見書は、安保法案反対の共産党も含む全会一致の議決だったのに、放送では自民党系議員が「抑止力はあったほうがいい」と発言するなど、全体として「賛成」派に傾いた内容であった。
 また、金沢市議会の放送では、坂本康広・議員(自民党、自衛隊出身)に密着取材。集会での「日本を取りまく環境は変化、抑止力で守るしかない」という発言まで流した。

 (3)以下、NHKとのやりとり。
  (a)永野厚男・教育ライター → NHK(電話)
    Q:偏った放送では?
    A:全体で慎重・賛成の大きく2つの考え方に分けて報じることにした。反対派は現地取材していない。【男性・「遊軍プロジェクト」責任者】
  (b)「週刊金曜日」編集部 → NHK
    Q1:偏った放送では?
    A2:国論が二分されていることを踏まえ、テレビの放送では、否定的立場の滑川町議会と肯定的立場の金沢市議会を取り上げ、(中略)伝えました。【広報局(文書回答)】
    Q1:追加質問(電話)
    A2:滑川町議会を取り上げたことが否定的立場を紹介したこと(苦しい説明)。【臼井正徳・担当】

 (4)放送法は、第4条で、番組編集について「政治的に公平であること」などを義務づけている。
 「反対」議会数181は、意見書合計246の約73.6%にもなる。
 にもかかわらず、「反対」議会を一切報じないのは、自民党のメディアへの圧力が問題になっているなか、NHKの「政治的中立性」に大きな疑問を抱かせる作為だ。

□永野厚男(教育ライター)「NHK、「反対」議会報道せず 安保法案への地方議会意見書の7割強占めるが」(「週刊金曜日」2015年7月10日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【詩歌】三好達治「春の岬」

2015年07月13日 | 詩歌
 春の岬旅のをはりの鴎どり
 浮きつつ遠くなりにけるかも

□三好達治「春の岬」(『測量船』、第一書房、1930)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【詩歌】何をうしじま千とせ藤 ~牛島古藤歌~
【読書余滴】ミラボー橋の下をセーヌが流れ ~母音~
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【佐藤優】自民党の沖縄差別 ~安倍政権の言論弾圧~

2015年07月13日 | 批評・思想
 (1)6月25日、自民党は深刻な事件を引き起こした。自民党勉強会「文化芸術懇話会」において、自民党国会議員&百田尚樹・作家による沖縄蔑視発言は、自民党に沖縄差別が構造化されていることを可視化させた深刻な事件だ。
 「文化芸術懇話会」は、
 <設立趣意書によると、芸術家との意見交換を通じ「心を打つ『政策芸術』を立案し、実行する知恵と力を習得すること」を目的としている。>【注1】 
ということだが、そもそも「政策芸術」という発想自体、ナチス・ドイツやスターリン・ソ連におけるプロパガンダ戦略(政治目的で芸術や文化を利用する)だ。「政策芸術」が可能だという発想自体に、自民党の反知性主義的体質がもろに現れている。

 (2)東京の政治エリート(国会議員・官僚)、全国紙の記者は気づいていないようだが、6月27日「琉球新報」と「沖縄タイムス」は編集局長名で共同抗議声明を掲載した。前代未聞の、異例なことだ。
 共同抗議声明は、
 <百田尚樹氏の「沖縄の2つの新聞はつぶさないといけない」という発言は、政権の意に沿わない報道は許さないという”言論弾圧”の発想そのものであり、民主主義の根幹である表現の自由、報道の自由を否定する暴論にほかならない。
 百田氏の発言は自由だが、政権与党である自民党の国会議員が党本部で開いた会合の席上であり、むしろ出席した議員側が沖縄の地元紙への批判を展開し、百田氏の発言を引き出している。その経緯も含め、看過できるものではない。
 さらに「(米軍普天間飛行場は)もともと田んぼの中にあった。基地の周りに行けば商売になるということで人が住みだした」とも述べた。戦前の宜野湾村役場は現在の滑走路近くにあり、琉球王国以来、地域の中心地だった。沖縄の基地問題をめぐる最たる誤解が自民党内で振りまかれたことは重大だ。その訂正も求めたい。>【注2】

 (3)百田・作家から「本当に沖縄の2つの新聞社は絶対つぶさなあかん」という発言を引き出すきっかけを作った長尾敬・衆議院議員(近畿比例ブロック)の発言を再確認しておかねばならぬ。
 長尾議員は、次のように百田・作家に助言を仰いでいる。
 <沖縄の特殊なメディア構造をつくったのは戦後保守の堕落だ。先生なら沖縄のゆがんだ世論を正しい方向に持っていくために、どのようなアクションを起こすか。>【注3】
 それに対して、百田・作家は、
 「本当に沖縄の2つの新聞社は絶対つぶさなあかん」
と答えたのだ。
 百田・作家は、「軽口、冗談のつもりだった」というコメントで逃げようとしているが、長尾議員とのやりとりの前後関係からして、軽口や冗談で片付けるわけにはいかない。

 (4)懇話会における百田発言において、沖縄と沖縄人に対する蔑視が露骨に現れている。
 <沖縄の米兵が犯したレイプ犯罪よりも、沖縄県全体で沖縄人自身が起こしたレイプ犯罪の方が、はるかに率が高い>【注4】
という発言だ。
 ここで百田・作家は「沖縄人」という呼称を用いている。そもそも日本の統計区分に「沖縄人」というカテゴリーは存在しない。にもかかわらず、レイプ犯罪を犯したのが、日本人ではなくて沖縄人である、という前提で話している。
 <公務員であり日米地位協定で守られている米兵と、一般県民を同列に比較することを疑問視する声がある。米兵による性犯罪に詳しい宮城晴美氏は「性的暴行の起訴率も十数%という米兵と日本人とは罰せられ方が違う」と話す。
 (中略)宮城氏は在沖米兵の性的暴行の発生率は不明としながら「そもそも単純に比較するものではなく、戦後70年間、米兵が女性に好き放題してきた歴史を考えなければいけない」と強調した。>【注5】
 というような反論は、百田・作家や勉強会に参加していた自民党国会議員の胸には響かない。なぜなら、この人たちは客観性や実証性を軽視ないし無視し、自らが欲するように物事を理解する反知性主義者だからだ。

 (5)自民党報道圧力問題については、二つの側面がある。
  (a)自民党の保守派を自認する人びとが、安倍政権に批判的なマスメディアを封じ込めることを意図している、という側面だ。言論の自由と民主主義全般に危機をもたらす問題だ。【注6】
  (b)政権に近い日本の政治エリートと有権者が、沖縄の新聞を標的にして、沖縄2紙の読者の「知る権利」を剥奪しようとしている側面だ。県民や県外の沖縄人からすると笑止千万の妄想だが、
    「琉球新報」と「沖縄タイムス」が左翼によって支配されているので、沖縄の世論が誘導されている
という妄言を信じている国会議員、全国紙記者、有識者は意外と多い。この前提には、県民に判断力がなく、新聞の誘導によって容易に扇動されるという沖縄人蔑視がある。
 同様に、
    沖縄独立論は中国によって操られている
という妄想を真面目に信じ、危機感を抱いている国会議員、全国紙記者、有識者が少なからずいる。沖縄人は内発的に政治意思を表明することができず、外部によって操縦される存在だ、という妄想的理解がなければ、かかる見解は生まれない。

 (6)自民党報道圧力問題に潜んでいる沖縄差別については、沖縄人が声を上げないかぎり、日本人は認識しない。事態を放置しておくと、差別が深刻化するばかりだ。
 7月2日、沖縄県議会で、懇話会に参加した自民党国会議員、百田・作家らを非難する決議が採択された。
 <宛先は安倍晋三自民党総裁。野党自民党は勉強会での発言が不穏当だとして発言者に反省を求める決議を提出したが、賛成少数で否決された。
 与党側は決議の質疑で報道圧力の発言が自民党の勉強会の場で出されたことを挙げ、議員個人の問題ではなく党の責任者である安倍総裁に抗議が必要だと強調した。自民党は勉強会が議員有志による私的な場であったことなどから安倍総裁への抗議には当たらないと主張した。
 与党の決議は自民党を除く与党、中立、無所属の31人の賛成し、自民党の13人は反対した。採決時に席にいない「離席」が2人いた。自民党の決議は自民党13人が賛成し、そのほか31人が反対した。>【注7】
 自民党沖縄県連会長は、島尻安伊子・参議院議員だ。島尻議員は、仙台出身で、沖縄にルーツを持たず、中央政府の利益代表と化している。その事実を踏まえれば、県連としては想定外の激しい対応で事態に臨んでいる。
 しかし、懇話会が自民党の行事であるにもかかわらず、安倍晋三・自民党総裁に抗議できないような組織は、植民地総督府の出先にすぎない。沖縄人多数派の支持は集まらない。

 【注1】記事「安倍首相支持の勉強会「文化芸術懇話会」が発足」(産経ニュース 2015年6月25日)
 【注2】記事「百田氏発言をめぐる琉球新報・沖縄タイムス共同抗議声明」(琉球新報 2015年6月26日)
 【注3】記事「「マスコミ懲らしめるには…」文化芸術懇話会の主な意見」(朝日新聞デジタル 2015年6月26日)
 【注4】前掲朝日新聞デジタル記事。
 【注5】記事「性的暴行件数:単純比較できずに疑問」(琉球新報 2015年6月27日)
 【注6】安倍首相の反応はきわめて遅かった。当初、責任回避しようとしたが、世論の反発が予想以上に大きく、7月3日、陳謝した。 実は、谷垣禎一・自民党幹事長、棚橋泰文・幹事長代理ら党執行部は、懇話会での発言がマスコミに報道されるや否や、関係者の処分の検討に入った、という。谷垣・棚橋の両名は、木原稔・議員(当時・党青年局長)に辞任を促したが、木原議員は拒否した。木原議員の背後には、自称・首相最側近の萩生田光一・総裁特別補佐が控えていて、木原議員に「辞めるな」と言い続けてきたからだ。萩生田は、衆院解散前の11月には在京テレビキー局に、報道は「公平中立」「公正」にするよう“お願い文”を出した人物だ。安倍政権に批判的なメディアを抑えようとする発想は、以前から一貫しているのだ。【本誌取材班「自民党「言論弾圧」事件」(「週刊金曜日」2015年7月10日号)】
 【注7】記事「県議会、自民報道圧力問題で抗議決議を可決 与党、中立など賛成多数 自民党の決議は否決」(琉球新報 2015年7月2日)

□佐藤優「構造化している自民党の沖縄差別が可視化された ~佐藤優の飛耳長目 第109回~」(「週刊金曜日」2015年7月10日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【書評】佐藤優『超したたか勉強術』
【佐藤優】脳の記憶容量を大きく変える技術 ~超したたか勉強術(2)~
【佐藤優】表現力と読解力を向上させる技術 ~超したたか勉強術~
【佐藤優】恐ろしい本 ~元少年Aの手記『絶歌』~
【佐藤優】集団的自衛権にオーストラリアが出てくる理由 ~日本経済の軍事化~
【佐藤優】ロシアが警戒する日本とウクライナの「接近」 ~あれかこれか~
【佐藤優】【沖縄】知事訪米を機に変わった米国の「安保マフィア」
【佐藤優】ハワイ州知事の「消極的対応」は本当か? ~沖縄~
【佐藤優】米国をとるかロシアをとるか ~日本の「曖昧戦術」~
【佐藤優】エジプトで「死刑の嵐」が吹き荒れている
【佐藤優】エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~
【佐藤優】バチカンの果たす「役割」 ~米国・キューバ関係~
【佐藤優】日米安保(2) ~改訂のない適用範囲拡大は無理筋~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】外相の認識を問う ~プーチンからの「シグナル」~
【佐藤優】ヒラリーとオバマの「大きな違い」
【佐藤優】「自殺願望」で片付けるには重すぎる ~ドイツ機墜落~
【佐藤優】【沖縄】キャラウェイ高等弁務官と菅官房長官 ~「自治は神話」~
【佐藤優】戦勝70周年で甦ったソ連の「独裁者」 ~帝国主義の復活~
【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 ~ミハイル・ワニン~
【佐藤優】北方領土返還の布石となるか ~鳩山元首相のクリミア訪問~
【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 ~山城議長への私人逮捕~
【佐藤優】米大使襲撃の背景 ~韓国の空気~
【佐藤優】暗殺された「反プーチン」政治家の過去 ~ボリス・ネムツォフ~
【佐藤優】ウクライナ問題に新たな枠組み ~独・仏・露と怒れる米国~
【佐藤優】守られなかった「停戦合意」 ~ウクライナ~
【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点
【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) ~佐藤優によるインタビュー~
【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか ~ドイツの判断~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 ~戦後70年~
【佐藤優】国際情勢の見方や分析 ~モサドとロシア対外諜報庁(SVR)~
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【佐藤優】表と裏を行き来する「コウモリ男 ~エフゲニー・プリマコフ~

2015年07月12日 | ●佐藤優
 (1)6月26日、エリツィン政権で対外情報局(SVR)長官、外相、首相をつとめたエフゲニー・プリマコフが、モスクワで死去した。享年85。
 <1929年、ソ連時代のウクライナ・キエフ生まれ。ソ連でも有数の中東問題の専門家として知られる。60年代はソ連共産党機関紙「プラウダ」の中東特派員を務めた。その後、世界経済国際問題研究所長などを歴任。ゴルバチョフ書記長時代にソ連最高会議連邦会議議長を務めた。
 ソ連末期に国家保安委員会(KGB)の第1副議長として、KGBの解体、再編に取り組んだ。ソ連崩壊後はKGBの後継組織の一つ、対外情報局(SVR)の初代長官に就任した。
 98年9月、当時のエリツィン大統領によって首相に任命されたが、大統領側近グループの汚職疑惑解明に取り組んだため、8カ月後に解任された。>【注】

 (2)プリマコフは、表の世界(政界、アカデミズム)と裏の世界(対外インテリジェンス)を往来するコウモリのような存在だった。
 1929年9月、エリツィン大統領の訪日がドタキャンされた。このとき暗躍したのがプリマコフだった。予定どおり訪日すると北方領土問題でエリツィンが大幅に譲歩する可能性があったので、プリマコフが大統領府(クレムリン)での訪日準備会議で、「日本では反ロシア感情が高まっている。日本の警察の警備能力には不安があるので、訪日は延期したほうがよい」と主張し、ドタキャンのシナリオを書いた。
 この会議に出席した要人から話を聞いた佐藤優は仰天した。なぜなら、日本では首相経験者や陸軍中野学校出身者のロビイストらが、プリマコフこそ北方領土問題の突破口を拓いてくれる知日派のキーパーソンだ、と勘違いしていたからだ。
 その後、佐藤優らは、プリマコフを日露交渉から遠ざけるようにロビー活動を展開した。その結果、北方領土交渉が動き始めた。

 (3)プリマコフが裏の世界の大物であることを佐藤優に教えたのは、エフライム・ハレヴィ・モサド(イスラエル諜報特務庁)長官(1999年当時)だった。
 1967年、第三次中東戦争(6日戦争)で、ソ連はイスラエルと国交を断絶した。1970年代初め、KGBがモサドに「裏ルートを作りたい」とアプローチしてきた。接触場所はニューヨーク、イスラエル代表はハレヴィ氏、ソ連代表はプリマコフ氏。
 ハレヴィ氏は言った。「初めてプリマコフに会ったときの印象が強烈だった。白と茶色の縞模様の、趣味のよくない靴をあいつは履いていた。プリマコフの改姓前の姓はキルシブラッドという。本人は公言しないが、ユダヤ人なのだ。だからイスラエルとの窓口に選ばれた」
 佐藤優は訊いた。「信用できる男か」
 ハレヴィ氏、答えて笑った。「プリマコフは約束したことは守る。しかし、約束してないことについては、何をするかわからない。面白い奴だよ」

 【注】記事「プリマコフ氏死去 エリツィン政権で首相」(朝日新聞デジタル 2015年6月27日)

□佐藤優「表と裏を行き来する「コウモリ男」 ~佐藤優の人間観察 第120回~」(「週刊現代」2015年7月18日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【書評】佐藤優『超したたか勉強術』
【佐藤優】脳の記憶容量を大きく変える技術 ~超したたか勉強術(2)~
【佐藤優】表現力と読解力を向上させる技術 ~超したたか勉強術~
【佐藤優】恐ろしい本 ~元少年Aの手記『絶歌』~
【佐藤優】集団的自衛権にオーストラリアが出てくる理由 ~日本経済の軍事化~
【佐藤優】ロシアが警戒する日本とウクライナの「接近」 ~あれかこれか~
【佐藤優】【沖縄】知事訪米を機に変わった米国の「安保マフィア」
【佐藤優】ハワイ州知事の「消極的対応」は本当か? ~沖縄~
【佐藤優】米国をとるかロシアをとるか ~日本の「曖昧戦術」~
【佐藤優】エジプトで「死刑の嵐」が吹き荒れている
【佐藤優】エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~
【佐藤優】バチカンの果たす「役割」 ~米国・キューバ関係~
【佐藤優】日米安保(2) ~改訂のない適用範囲拡大は無理筋~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】外相の認識を問う ~プーチンからの「シグナル」~
【佐藤優】ヒラリーとオバマの「大きな違い」
【佐藤優】「自殺願望」で片付けるには重すぎる ~ドイツ機墜落~
【佐藤優】【沖縄】キャラウェイ高等弁務官と菅官房長官 ~「自治は神話」~
【佐藤優】戦勝70周年で甦ったソ連の「独裁者」 ~帝国主義の復活~
【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 ~ミハイル・ワニン~
【佐藤優】北方領土返還の布石となるか ~鳩山元首相のクリミア訪問~
【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 ~山城議長への私人逮捕~
【佐藤優】米大使襲撃の背景 ~韓国の空気~
【佐藤優】暗殺された「反プーチン」政治家の過去 ~ボリス・ネムツォフ~
【佐藤優】ウクライナ問題に新たな枠組み ~独・仏・露と怒れる米国~
【佐藤優】守られなかった「停戦合意」 ~ウクライナ~
【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点
【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) ~佐藤優によるインタビュー~
【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか ~ドイツの判断~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 ~戦後70年~
【佐藤優】国際情勢の見方や分析 ~モサドとロシア対外諜報庁(SVR)~
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【詩歌】まもなくかなたの流れのそばで

2015年07月12日 | 詩歌
 まもなくかなたの 流れのそばで
 楽しく会いましょう また友だちと
 神様のそばの きれいなきれいな川で
 みんなで集まる日の ああなつかしや

 すいしょうよりすきとおる ながれのそばで
 主をさんびしましょう つかいたちと
 神さまのそばの きれいなきれいなかわで
 みんなであつまる日の ああなつかしや

 ぎんのようにひかる ながれのそばで
 おめにかかりましょう すくいのきみに
 神さまのそばの きれいなきれいなかわで
 みんなであつまる日の ああなつかしや

 よいことをはげみ ながれのそばで
 おうけいたしましょう たまのかむりを
 神さまのそばの きれいなきれいなかわで
 みんなであつまる日の ああなつかしや

 Shall we gather at the river,
 Where bright angel feet have trod,
 With its crystal tide forever
 Flowing by the throne of God?

 Yes, we’ll gather at the river,
 The beautiful, the beautiful river;
 Gather with the saints at the river
 That flows by the throne of God.

 On the margin of the river,
 Washing up its silver spray,
 We will talk and worship ever,
 All the happy golden day.

 Ere we reach the shining river,
 Lay we every burden down;
 Grace our spirits will deliver,
 And provide a robe and crown.

 At the smiling of the river,
 Mirror of the Savior’s face,
 Saints, whom death will never sever,
 Lift their songs of saving grace.

 Soon we’ll reach the silver river,
 Soon our pilgrimage will cease;
 Soon our happy hearts will quiver
 With the melody of peace.

新聖歌475番(聖歌687番)
□"Shall we gather at the river"(Robert Lowry 1826-1899)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【詩歌】ロバート・フロスト「雪の夕べに森のそばに立つ」 ~隠喩の力~

2015年07月11日 | 詩歌
 この森の所有者はだれか、わたしにはわかっている。
 だが、彼の家は村の方にある。
 雪の降り積もった森を眺めようと、
 ここに立ち止まっているのは彼に見えないだろう。

 わたしの小さな馬は不審に思っているに相違ない。
 森と凍った湖のあいだ
 近くに農家もないところに立ち止まるのを、
 それも一年じゅうで一番暗い夕べに。

 馬は何か間違ったことはないかと
 馬具についた鈴を一ふり鳴らす。
 あたりでほかに聞こえるものは
 雪ひらを伴って吹きすぎる風の音ばかり。

 森は美しく、暗くて深い。
 だが、わたしには約束の仕事がある。
 眠るまでにまだ幾マイルか行かねばならぬ。
 眠るまでにまだ幾マイルか行かねばならぬ。

 Whose woods these are I think I know.
 His house is in the village though;
 He will not see me stopping here
 To watch his woods fill up with snow.

 My little horse must think it queer
 To stop without a farmhouse near
 Between the woods and frozen lake
 The darkest evening of the year.

 He gives his harness bells a shake
 To ask if there is some mistake.
 The only other sound's the sweep
 Of easy wind and downy flake.

 The woods are lovely, dark and deep.
 But I have promises to keep,
 And miles to go before I sleep,
 And miles to go before I sleep.

 *

●訳注(安藤一郎)
 フロストの詩のうちで、もっとも親しまれている詩の一つ。ニューイングランドの山地は冬季に深い雪で蔽われるので、フロストには雪の詩で優れたものが少なくない。あとに出てくる「冬のエデン」や「荒寥の地」もそうである。
 ここの雪景色は、墨絵のように美しくて寂しい。しかし、単なる自然詩ではない--自然は人間のいる場面になっていて、焦点に馬がおかれている。この詩は「死」を象徴的に暗示しているとか、最後に「眠るまでは・・・・」を二度繰り返しているところにモラルがあるとか言う批評家もあるが、これを教訓的に解釈する必要はない。雪の降る森の美しさに接していても、そこに生活にたいする意識が自然と平行して浮かび上がってくる。そういう人間の営みの間に入ってくる自然こそ、ほんとうに美しく感じられるのである。

 *

●J・L・ボルヘス(鼓直・訳)「2 隠喩」(『詩という仕事について』(岩波文庫、2011)から引用
 そして、われわれは今ボストンの北にいるのですから、ロバート・フロストによる、恐らく知られ過ぎた詩を思い出すべきだと、私は思います。

 The woods are lovely, dark and deep.
 But I have promises to keep,
 And miles to go before I sleep,
 And miles to go before I sleep.

 「森は美しく、暗く、深い、
  しかし、私には果たすべき約束がある、
  眠りに就く前に歩くべき暗い道のりが、
  眠りに就く前に歩くべき暗い道のりが」

 これらの詩行は完璧そのもので、トリックなどは考えられない。しかしながら、不幸なことに、文学はすべてトリックで成り立っていて、それらのトリックは--いずれは--暴かれる。そしえ読み手たちも飽きるわけです。しかしこの場合は、いかにも慎ましいものなので、それをトリックと呼ぶのが恥ずかしいほどです(ただし、他に適当な言葉がないので、そう呼ばせてもらいます)。何しろここでフロストが試みているのは、誠に大胆なものですから。同じ詩行が一字一句の違いもなく二度、繰り返されていますが、しかし意味は異なります。最初の “And miles to go before I sleep.” これは単に、物理的な意味です。道のりはニューイングランドにおける空間としてのそれで、 sleep は go to sleep 「眠りに就く」を意味します。二度目の “And miles to go before I sleep.” では、道のりは空間的なものだけでなく、時間的なそれでもあって、その sleep は die 「死ぬ」もしくは rest 「休息する」の意であることを、われわれは教えられるのです。詩人が多くの語を費やしてそう言ったとすれば、得られた効果は遙かに劣るものとなったでしょう。私の理解によれば、はっきりした物言いより、暗示の方が遙かにその効果が大きいのです。人間の心理にはどうやら、断定に対してはそれを否定しようとする傾きがある。エマソンの言葉を思い出してください。 “Arguments convince nobody” 「論証は何ぴとをも納得させない」と言うのです。それが誰も納得させられないのは、まさに論証として提示されるからです。われわれはそれをとくと眺め、計量し、裏返しにし、逆の結論を出してしまうのです。

□ロバート・フロスト(安藤一郎・訳)「雪の夕べに森のそばに立つ」(安藤一郎・新倉俊一・訳編『ディキンソン・フロスト・サンドバーグ詩集 ~世界詩人全集12~』(新潮社、1968))
□Robert Frost “STOPPING BY WOODS ON A SNOWY EVENING”(“NEW HAMPSHIRE”,1923/“SELECTED POEMS”,PENGUIN BOOKS)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする