語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】中野重治「あかるい娘ら」

2015年07月06日 | 詩歌
 わたしの心はかなしいのに
 ひろい運動場には白い線がひかれ
 あかるい娘たちがとびはねている
 わたしの心はかなしいのに
 娘たちはみなふっくらと肥えていて
 手あしの色は
 白くあるいはあわあわしい栗いろをしている
 そのきゃしゃな踵(かかと)なぞは
 ちょうど鹿のようだ

□中野重治「あかるい娘ら」(『中野重治詩集』(岩波文庫、1978))
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【詩歌】中野重治「しらなみ」
【詩歌】中野重治「浦島太郎」
【詩歌】中野重治「豪傑」



【社会】個人情報流出の時代のマイナンバーとビッグデータ

2015年07月06日 | 社会
 (1)「コンピュータは攻撃の対象になる。コンピュータは犯罪に好適な環境を作り出す。コンピュータは犯罪の手段になる」
 ・・・・かつてIBMは、そう報告した。コンピュータこそ、犯罪を作り出している、と。
 その傾向が、ネットワーク社会の広がりによって、拍車がかかっている。
 ましてや、ビッグデータのように巨大化した情報は、さらに犯罪に格好の場を提供する。日本年金機構の情報セキュリティが破られ、個人情報が流出したように、いくらセキュリティを強化しても破られる。

 (2)それを口実に、管理は強化されてきた。安倍首相が提唱する「戦後レジームの転換」は、盗聴法の拡大、共謀罪など、国民の監視と管理強化をさらに強めてきた。
 盗聴法の拡大は、メール、電話、ファックスなどの盗聴の範囲を一般犯罪にまで広げるもの。警察が盗聴する際に必要だった通信事業者の常時立ち会いを廃止しようとしている。
 共謀罪は、「犯罪での情報処理の高度化に対処する」ことを大きな目的にしている。コンピュータを監視しようというのだ。 

 (3)こうした国民の管理・監視強化は、安倍政権が目指す「世界で一番企業が活躍しやすい国づくり」と一体になって推進されている。
 それを象徴するのが、「マイナンバー制度」だ。
  (a)国民全員に12桁の背番号をつけて管理する。
  (b)医療・福祉・年金などのビッグデータ利用も視野に入れる。
 国民一人一人が、がんじがらめに管理されることになる。同時に、個人情報が国や企業にとって利用しやすいものにされてしまう。

 (4)さらに、マイナンバー制度とセットで、個人情報保護法が改正されようとしている。
 個人情報保護法が施行されたのは2005年4月。その際、これでは個人情報は保護できない、と国内外から指摘された。
 経済協力開発機構(OECD)は、1980年にプライバシー保護の8原則を示した。日本政府はこれを守らなかった。EUは域内の個人情報を日本に自由に移転させない措置をとった。日本企業は、欧州の子会社の個人情報さえ自由に移転できないため、そこを改正することが個人情報保護法改正の目的のはずだった。
 しかるに、今回の改正では、ビッグデータなどの利活用のため、規制緩和を図る方向が示され、本人の同意がなくても個人情報利用の目的変更ができることを優先してしまった。つまり、狙いは
  個人情報保護ではなく、
  むしろ個人情報「利用」
になってしまったのだ。

 (5)<例>究極の個人情報といわれる遺伝情報は、今回の改正によってどうなるか。
 いま、遺伝子検査の分野には、DHC、DeNA、ヤフーなど多数の企業が参入している。それらの企業に、口の中の細胞をこすりとり遺伝子検査を依頼したところ、その情報が見知らぬ企業の宣伝に使われ、さらに「あなたはこういう病気になりますので、この健康食品が必要です」という案内がさまざまなところから届く。

 (6)自分の情報は、自分でも守るしかない時代になっている。
 情報は重層化することで価値を生む。企業にとって、インターネットやクレジットカードは個人情報収集の宝庫だ。インターネットにアクセスするだけで、情報は生じ、その情報にアクセスした人の年齢、性別、地域などの情報が重なると、さらに価値が高まる。
 自分を守るには、
   可能な限り情報を提供しない
ことしかなさそうだ。 

□天笠啓介「個人情報ダダ漏れ時代のマイナンバーとビッグデータ」(「週刊金曜日」2015年6月26日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【古賀茂明】「政治とカネ」を監視するシステム ~マイナンバーの使い方~
【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~