サントロンツォ広場は、
レッチェの“へそ”とでも言うべき場所にあります。
広場に面して市庁舎があり、ショッピング街にも近いこの広場は、
いつも多くの人でにぎわっています。
広場の南側には大きな柱があり、
てっぺんにはレッチェの守護聖人である
聖オロンツォの像がたっています。
確かこの柱は、もともとブリンディシに建てられた、
アッピア街道の終点を示すための柱で、
それをここに移築したものだったと記憶しています。
そして、その上の聖オロンツォの像は、
はじめはカルタペスタ(この地方の伝統的な紙細工)で
作られていたのが、火事で燃えてしまい、
現在の像に変えられたと聞いたような気が…。
そんなエピソードはさておき、
広場の周りにはバールやジェラテリアが立ち並び、一息つくには絶好の場所です。
一息ついたあとは、西に進んで、バロック建築の傑作が迷路状の路地のあちこちに突然現れる
旧市街をさまようか、東へ進んで百貨店もある新市街でショッピングを楽しむか、
この広場は歴史と文化の出会う場所でもあるのです。
広場のさらに南には、古代ローマの円形闘技場跡が、地中から半分だけ顔をのぞかせています。
日が暮れると、レッチェでは主な歴史的建造物がライトアップされ、昼とはまた違った美しさを見せてくれます。
サンタクローチェ教会もやはりまた美しく照らし出され、つい足を止めて見入ってしまいます。
私たちの他にも、多くの人がライトアップされた教会を見るために訪れていました。
また、教会からパトリアパレスホテルにかけての一帯には、
カルタペスタ(この地方の伝統的な紙細工)の工房が
いくつかあります。大きなものになると、
少し予算が必要ですが、旅のよい思い出になると思いますよ。
イタリア アルベロベッロとレッチェ (週刊朝日百科世界の100都市NO039) 雑誌 (世界100都市) |
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朝日新聞社 |
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レッチェ・バロックのシンボル、サンタ・クローチェ教会の魅力は、
なんと言ってもそのファサードを飾る彫刻たちでしょう。
特にバラ窓の周囲にほどこされた繊細な彫刻は、屋内のスタッコ細工であれば、
シチリアなどでも見ることができますが、屋外ではなかなか見ることができません。
また、バルコニーを支える動物たちの彫刻もユーモラスで、南イタリアらしい遊び心が感じられます。
並びには、教会のファサードと見事に調和したデザインのレッチェ県の県庁があります。
この2つの建物が一体化して、空間全体をいっそう迫力あるものにしています。
教会の内部は、これまたバロック風の彫刻で
装飾されています。天井だけが木製の格子模様ですが、
あとはまさに彫刻のオンパレードです。
ここまで徹底されると、
もう「まいりました」と言うしかないですね。
アルベロベッロやマテーラといった世界遺産の街に押されて、
ツアーなどではなかなか訪れることのない
レッチェの街ですが、
この教会は、プーリアを訪れる機会があれば、
ぜひ自分の目で見てほしい場所のひとつです。
南イタリア・プーリアへの旅― 青い空と白い迷宮を訪ねて (SHOTOR TRAVEL) 価格:¥ 1,785(税込) 発売日:2006-03 プーリアへ行く前に、 必ず読んでおきたい本です。 読むだけでワクワクした気分になれます。 |
Patria Palace Hotel(パトリア パレス ホテル)
レッチェのホテルは、南イタリア有数の名門ホテル、
パトリアパレスです。
このホテルは、レッチェ・バロックのシンボル、
サンタ・クローチェ教会のすぐ前にあり、
最上階のテラスからは、
教会のファサードを間近に見ることができます。
わたしたちの部屋も、同じ最上階にありました。
部屋はそれほど広いわけではありませんが、バスルームを含め、
設備の充実ぶりはナポリの高級ホテルにもひけをとりません。
私たちが泊まった部屋は、部屋の窓からそのままテラスに出ることができ、
くつろぎながらレッチェの眺めをたんのうすることができます。
(といっても、サンタ・クローチェ教会とジェズ教会のファサード以外に
「きれいだなぁ」と思えるものは見えませんが…。)
テラスです。お世辞にも美しいテラスとは言えませんが、それでもレッチェの街を見渡すことができます。
朝食は、イタリアでは珍しく豪華です。というより、
アメリカンタイプの朝食と言ったほうがいいかもしれません。
あたたかい料理が出てくる朝食は、
日本人にとってはうれしいでしょうね。
私はイタリア式の甘いパンとヨーグルトにカプチーノだけ、
という朝食が大好きなのですが、
セルフサービスのトースターが置かれていたのは、
ちょっとうれしかったです。
私たちの泊まった翌日は、サッカーの試合日だったらしく、
カリアリのチームの選手たちが同宿していたようです。
朝食ルームを貸切状態にして、大騒ぎしながら遅い朝食(プランツォ?)を食べていたのが印象的でした。
レッチェは「バロックのフィレンツェ」とも言われる、
南イタリアの宝石箱です。
アクセスにはいくつかのルートがありますが、
プーリアをめぐる旅をするのであれば、
私は断然マルティナフランカ方面から
SUD-EST鉄道でレッチェへ入る方法をおすすめします。
便利さから言えば、
バーリ方面からFSのユーロスター*イタリアを利用するか、
レンタカーでS613をレーサー気分でとばして来るという手もあります。
ユーロスター*イタリア
しかし、南イタリアらしい時間の流れを感じながら
レッチェに入るには、FSEのレトロな車両と
おおらかな運行ダイヤに勝るものはないでしょう。
ただし、駅を降りたあとは、
そんなのんびりした気分もいっぺんに吹き飛びます。
レッチェのタクシーのメーターの上がり方は、
東京人もびっくりです。
駅から街の中心まで約20ユーロ。
ナポリ中央駅からサンタルチアまでだって、こんなにはとられません。
一方通行の環状道路が多い街の構造のせいだとは思いますが、くれぐれもご注意を。
IL POETA CONTADINO (イル・ポエタ・コンタディーノ)
アルベルベッロでの食事に選んだのは、
南イタリア好きの人なら一度は名前を聞いたことがあるミシュランの一つ星、
イル・ポエタ・コンタディーノです。
せっかくのアルベロベッロですから、トゥルッリを改装したお店で食事、
というのが普通だと思うのですが、あえてぜいたくに星ありのリストランテです。
対応してくれたカメリエーラ(お店の娘さん?)は日本語を勉強中だそうで、
お互いに日本語とイタリア語の交じった会話です。娘さんいわく、
「今日は営業してるけど、トイレが壊れて工事中なの。それでもいい?」とのこと。
こちらは、じゃあまた今度来ます、なんてわけにはいかないので、
オッケーするしかありません。
お客は、わたしたちのほかには英語を話す、
若いけどお金持ちそうなカップルだけです。
席に着くと、
とりあえずウェルカムドリンクと
軽い“おつまみ”が登場です。
プリモです。なんて訳したらいいのかわかりません。「うずら豆のピューレ、海の幸風、カヴァテッリ入り」?
セコンドです。こちらは「メバルのグリル、ミント風味のヴィネグレットソース」?
「メバルのマリネ」とも訳せるんですが、マリネじゃなかった。
でも、しっかりドルチェは2品オーダーです。
写真は、「アーモンドとヘーゼルナッツのキャンカレッラ」。
キャンカレッラというのはトゥルッリの屋根の積み方のことで、
何層にも積み重ねていく様子をイメージしたネーミングでしょう。
まあ一種のミルフィーユですね。
シメのエスプレッソを飲んで、そろそろ出ようか、
というときに外はスコールのようなにわか雨に。
もう一組のお客の女の人は大きく肩をすくめると、こちらを見ながらため息を…。
微妙な連帯感が生まれた一瞬でした。
肝心の料理の味は?もちろんおいしくいただけました。
人によって評価が分かれているようですが、オーダーしたメニューによるのでしょうか?
個人的な感想としては、さすがに星ありのリストランテです。
でも、エレガントなので、プーリアならではの郷土料理を、
という人は別のお店を選んだほうがいいかもしれないですね。
お店のホームページはこちら
http://www.ilpoetacontadino.it/
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モンティ地区と道をはさんだ反対側(つまり東側)は、アイア・ピッコラ地区と呼ばれています。
にぎやかなモンティ地区とは対照的に、
昔ながらの静けさを残しているといわれるアイア・ピッコラ地区ですが、
少しずつ再開発の波が押し寄せてきているようです。
わたしたちが訪れたときには、
いくつかのトゥルッリはアパルトメントスタイルのホテルに改装されていましたし、
空き家になっていたトゥルッリも改装中のところが何戸かありました。
世界遺産のため、増改築には厳しい規制があり、外観はそのままで内部だけを改装しています。
それでも、まだまだ素朴さと生活感が残るこの地域は、
モンティ地区とは少し違った楽しみ方ができる場所です。
トゥルッリにはチンクエチェントがよく似合います。
スケール限定シリーズ 1/24 フィアット 500F 89655 | |
イタリアの街にしっくりフィットするチンクエチェント。 本物はちょっと、という人にこれならどうでしょう。 |
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タミヤ |
モンティ地区のメインストリートの坂道をずっと上った西のはずれに、
トゥルッリ風の教会が建っています。これがサンタントニオ教会です。
建てられたのは意外に新しく、まだ100年たっていないそうです。
内装も少し前衛的?な雰囲気で、外観も含めて、伝統的なイタリアの教会とは一線を画しています。
それにしても、アルベルベッロでパドヴァの聖アントニオ?
聖フランチェスコといい、聖アントニオといい、
フランチェスコ会の聖人をいただく教会が
南イタリアのあちこちに建てられているのに出会うと、
つつましいながらも懸命に暮らしていた人々が、
清貧を守り通したフランチェスコに共感していたのだろうな…
と勝手に想像してしまうのでした。
アルベロベッロの中心は、2つの地区から成り立っています。
旧市街の一番低い場所がマルテッロッタ広場、そして広場の西がリオーネ・モンティ地区、
東側がアイア・ピッコラ地区と呼ばれています。
モンティ地区は、表通りに面した多くのトゥルッリが土産物屋などに転用されており、
土産物屋の看板などには、日本語の表記も見られ、カタコトの日本語で声をかけてくる人もいます。
これについては、「南イタリアの素朴さが感じられない」とか「ちょっと興ざめした」
という意見もあるようですが、ここには日本人の方が住んでいらっしゃるそうなので、
おそらくその方に習った日本語を使ってみたいのでしょう。
イタリアの人たちは、おおむね日本人に好意的で、
中には「ナカータ」「ナカム~ラ」(古いですが今でもこんな感じです)などと
ひやかし半分に声をかけてくることもありますが、
ホテルやリストランテでも、「これは日本語でなんと言うの?」とたずねられることがよくあります。
話がアルベロベッロから少しそれてしまいましたが、
日本語で声をかけられたら、ぜひ積極的に話をしてみましょう。
いろんな情報を得られたり、トゥルッリの中を案内してもらえるかもしれません。
何か買わなくてはならない雰囲気になってきたら?
まず、見せられた商品は思いっきりほめてあげましょう。
「Che carino!!」とか、何でもいいです。
値段らしき数字を(思いっきり日本語で!)言われても、それに対してはSiもNoも言わずに、
できるだけ明るく、ていねいにお礼を言って帰ってきましょう。
「Molto gentile」みたいな、親切に対するお礼を言えば、お互いに気持ちよく別れられますね。
450スモールピース パズルの達人 アルベロベッロのトゥルッリ | |
ジグソーパズルで旅気分…。 | |
エポック社 |
トゥルッロ・ソヴラーノから少し南に戻ると、アルベルベッロの人々の心のよりどころ、
サンティ・メディチ教会があります。
ここには、アルベルベッロの守護聖人である聖コジモと聖ダミアーノが祀られています。
マテーラのドゥオーモがそうであるように、
この教会もアルベロベッロの他の建物とは全く別世界の豪華な建物です。
外観はバロック?なんかそんな感じです。
(少なくとも他のプーリアのようにロマネスクじゃありません。
なぜなら建てられたのが1800年代の終わりだから。
アルベロベッロは意外と歴史の浅い町なんです。)
内部もシンプルで美しく、正面には聖コジモと聖ダミアーノの像が置かれています。
5月末の守護聖人のお祭りの日には、これらの像が街を練り歩くそうです。
トゥルッリが密集する地区から北へ500mほどのところに、アルベルベッロで最も大きく、
保存状態のよいトゥルッロのひとつ、“トゥルッロ・ソヴラーノ”があります。
珍しい2階建てのトゥルッロでもあるここは、
日本語も含め、6ヶ国語のガイドつきで内部を見学することができます。
入り口にある案内板の日本語部分です。“Tanti Giapponese” がやって来るんでしょうね。
当時の主は、かなり裕福だったと思われるため、
いわゆる庶民の暮らしぶりとは少し様子が違うかもしれませんが、
充分にその暮らしぶりを想像することができます。
…と書いたところまではよかったんですが、内部の写真がこれ一枚しか見つかりませんでした。
天井の構造とか、興味深い部分がたくさんあったのに。
というわけで、皆さん実際に現地で見学してみてください。「百聞は一見にしかず」です。
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