美術館の新しい入り口から、長いエスカレーターを上っていくと、まずたどり着くのがテラスです。
テラスの見晴台からは、ミケランジェロのクーポラが間近に見えます。
ファサードの方向からは、このような姿でじっくり眺めることができないので、つい見入ってしまいます。
ミケランジェロはこのクーポラの設計にあたって、
「フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレより美しいものは作れない」といったそうです。
ミケランジェロには申し訳ないのですが、その通りかもしれませんね。
あくまで個人の感想ですが、
サンタ・マリア・デル・フィオーレはイタリアで一番美しいクーポラを持っている教会でしょう。
でも、サン・ピエトロのクーポラも間違いなくベスト3に入ります。
(ちなみにもうひとつは、トーディのサンタ・マリア・デッラ・コンソラツィオーネ教会だと思っています。)
さて、話をヴァチカン美術館に戻すと、順路に沿って進むとすぐに右手に広い中庭が現れます。
これが「ピーニャの中庭(Cortile della Pigna)」です。ピーニャとは「松ぼっくり」のことですね。
ブロンズの大きな彫刻が置かれていることから、「ピーニャの中庭」と呼ばれています。
ちなみにこの写真で見えているのは、「球の中にある球体(Sfera con Sfera)」というオブジェで、
今から20年くらい前に展示されはじめたものだそうです。
入場口といい、このオブジェといい、どんどん変わってますね、ヴァチカンも。
中庭の一角です。何でこんなに人が集まっているかというと、
コンスタンティヌス帝らしき人物の頭像があるからじゃなくって、
美術館を見学する上でのガイドが書かれているからだそうです。読みませんでしたけど…。
さあ、これが“Pigna”です。作られた当初は噴水だったみたいですね。
なんでこんなものをモチーフにしたのかはよくわかりませんが、
トスカーナといえば糸杉と決まっているように、ローマ近郊といえば松、
というのは日本ではあまり知られていないですよね。
そして、もうひとつ気になったのがこのライオンです。
台座部分に書かれているのは、エジプト文字だと思うので、どこかから運んできたのでしょうが、
ピーニャの両脇をしっかりと守っていました。
ヴァチカン美術館に入場すると、一番先にあるのがここ。
古代エジプト文明の考古学的美術品が数多く展示されています。
古代エジプトとキリスト教と何の関係があるんだろう、とも思ってしまいますが、
要はめずらしいものなら何でもよかったわけですね。
ミイラを収めていた木棺も数多く展示されています。
エジプトの人はどんな気持ちでこれを見るんだろう、とふと思ってしまいます。
手を伸ばせば届きそうな場所に数多くの彫像が並んでいます。
これはナイル川を擬人化してあらわした彫刻だそうです。
エジプトのものなのかな?と思いますが、脇に置かれている肘置きは、どう見てもエジプト風です。
最後におまけです。
たぶんキアラモンティ美術館の入り口に置かれていたものだと思いますが、
シチリアのバゲーリアの彫刻や、ボマルツォの庭園を連想させます。
どこでいつごろ作られたものかよくわかりませんが、
違和感ありまくりだったので、ちょっと紹介しておきます。
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古代エジプトうんちく図鑑 |
古代エジプト文明について、 楽しみながら学べる一冊です。 |
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バジリコ |
サン・ピエトロ広場からリソルジメント広場のほうへ向かって、
いったんヴァチカンの外へ出て、城壁に沿って進むとヴァチカン美術館の入り口があります。
といっても、歩いて5分以上はかかるでしょうか。
城壁にこんな風に案内が出ているのが目印になりますが、
たいていはこの目印のあるあたりまで長い行列ができているので、まず迷うことはないでしょう。
行列はこんな感じで続いています。ここからでは、いったいどこが入り口なのかはわかりませんね。
歩道は真ん中で仕切られていて、左側通行になっています。それにしても長い行列です。
カメラをにらんでいる女の子、がまんできるかな?
列に並んでから30分ほどで、やっと美術館の入り口が見えてきました。
と思ったら、ここは今は出口専用に使われているそうです。
こちらが実際の入り口です。
ここからまたセキュリティチェックやチケット購入、手荷物預けなどもろもろあるのですが、
写真を撮りそこねてしまいました。そこが知りたい人、いっぱいいますよね。
それはともかく、中に入ってみましょうか。
サン・ピエトロ大聖堂の内部には、数多くの教皇のモニュメントも据えられています。
中には太陽暦を採用したグレゴリオ13世のように、歴史に名を残した教皇のモニュメントがあったり、
ベルニーニやカノーヴァのような偉大な彫刻家の作品があったりしたのですが、
なにしろあちらにもこちらにも教皇たちが競うようにモニュメントを作らせたものですから、
何がなにやらさっぱりわかりません。
とりあえず目についたものの中から、きれいに写真が撮れたものをいくつか紹介しましょう。
まずはじめはピオ8世のモニュメントです。
何をした人なのかはよく知りません。教皇様ごめんなさい。
ただ、背景にイエス様がひかえるという大胆な構成に惹かれてカメラに収めてみました。
そしてこちらがベルニーニの手による教皇アレッサンドロ7世のモニュメント。
この写真では、ベルニーニらしさをはっきりと確認することはできませんが、
動きのある構成や衣服のひだなどの細部の仕上がりは「ベルニーニだよ」と言われれば確かにそんな気もします。
最後はグレゴリオ16世のモニュメントです。てっきりグレゴリオ13世だと思い込んでいたのですが、
よく見ると台座に彫られている数字がXVIとなっています。
このお方についても私はよく存じないのですが、はじめに紹介したピオ8世の次の教皇だそうです。
というわけで、広いサン・ピエトロ大聖堂には、いたるところに教皇のモニュメントが置かれています。
どれが誰なのか、そしてどんなことをしたのかが詳しくわかると、もっと楽しめるかもしれません。
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ローマ教皇歴代誌 |
創元社 |
前回に引き続き、大聖堂の彫刻・彫像を見てみましょう。
ただし、このあたりからは、誰が誰やらよくわかりません。間違ってたらごめんなさい。
まずトップバッターは、聖母マリアだと思うのですが、もしかしたら別人かもしれません。
ただ、衣服の表現がとても印象的です。
こちらはたぶん聖ヴィンセンシオ・ア・パウロ?これまたぜんぜんちがうかも。
でも、イエスの十字架を手にしていますから、中世以降の人ですよね。
こちらも衣装の表現が気になってついカメラに収めてしまいました。
こちらは聖人でも何でもありません。聖水盤を装飾する天使の彫刻です。
たぶん「ああ、あれか」と思う人も多いのでは。
そして最後はあの「ピエタ」です。
わたしがはじめてサン・ピエトロを訪れたとき、
この作品は、手を伸ばせば届きそうなところで見ることができました。
3度目に訪れたときは、あの鼻かけ事件のあとで、マリア様はガラス張りの向こうに行ってしまいました。
そして、今回。こんなピンボケの写真しか撮れない、はるかかなたから見ることしかできませんでした…。
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ミケランジェロ作「ピエタ」彫像 |
Exceed |
サン・ピエトロ大聖堂には、いたるところに彫刻・彫像が置かれています。
いずれも巨大なもので、著名な彫刻家たちの手によるものばかりです。
主祭壇を囲むようにして、4つの聖人像が置かれています。
左斜め後ろにあるのがサンタンドレア像です。ピエトロの弟で、アマルフィの守護聖人にもなっていますね。
X型の十字架を背負っているので、それとすぐわかります。
左斜め前は、サンタ・ヴェロニカ像です。
手にしているのは聖顔布(スダリウム:磔直前のキリストの顔を拭いた布)だそうです。
そして、右斜め後ろが、サン・ロンジーノ像…だったのですが、なぜか写真が見つかりません。
ベルニーニ作なのに…。どういう人物かというと、磔になっていたイエスのわき腹を槍でついた人です。
なんで聖人になっているのかは、よく知りません。
とにもかくにも、以上の4人の像が、主祭壇とバルダッキーノを取り囲むように据えられているというわけです。
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名画でたどる聖人たち もう一つのキリスト教世界 |
青土社 |
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サン・ピエトロ大聖堂の後陣に、まばゆいばかりの装飾とともに置かれているのが「サン・ピエトロの椅子」です。
9世紀に神聖ローマ帝国のカール大帝から送られたこの椅子は、
バロック期になってベルニーニによって装飾がなされて、現在のような姿になりました。
全体的なデザインは、バルダッキーノ(大天蓋)と調和するようになされており、
躍動感と神秘性が強調されています。
椅子の真上に輝いている聖霊のシンボルとしてのハトは、
この椅子に座るものこそ、キリストの後継者である、といわんばかりです。
「サン・ピエトロの椅子」とは少し離れた場所に、ブロンズ製のサン・ピエトロ像が置かれています。
どうせなら、この像を「サン・ピエトロの椅子」に座らせておけばよいのに、と思ったりもしてしまいますが、
訪れる人々の手に届く場所に据えられているこの像は、
右足に触れると幸せになれると伝えられており、右足に手を置いて記念撮影をする人が絶えません。
そのわずかな合間をぬって撮影したこの写真、
右足のつま先部分だけがすりへってつるつるになっているのがわかるでしょうか。
わたしたちも、もちろん右足に手を置いて記念撮影をしてきましたよ。
バルダッキーノは、法王の説教壇の上にかかる天蓋です。
ベルニーニの作になるこの大天蓋は、他の教会に見られるそれとはまったく趣を異にする斬新なデザインです。
大きくうねりながら、らせん状に上に向かって伸びるブロンズ製の4本の柱は、生命が宿っているかのようです。
幾何学的なデザインで構成されている聖堂内部で、ここだけが不思議な躍動感に満ちています。
ベルニーニは、あえて予定調和でない空間を、ここに創り出そうとしたのでしょうか。
「伝統的」という言葉からはほど遠いデザインのこの大天蓋には、賛否両論あったようですが、
この作品からは、他のどこにもない劇的空間をつくりだそうとする
ベルニーニの強い意志や意図が感じられると思いませんか。やっぱりただ者ではないですね、ベルニーニさん。
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ベルニーニ―バロック美術の巨星 (歴史文化セレクション) |
石鍋 真澄 | |
吉川弘文館 |