プーリア州の町の中で、日本人に一番知られている町といえば、おそらくアルベロベッロでしょう。
まるでおとぎの国に迷い込んだようなトンガリ屋根の家々が立ち並ぶ様子は、
南イタリアツアーのパンフレットなどで一度は目にしたことのある人が多いのではないでしょうか。
これらの家々は“トゥルッリ”と呼ばれ、イトリアの谷一帯で広く目にすることができますが、
これだけ一ヶ所に密集して建てられているのは、ここアルベロベッロだけです。
いまは多くのトゥルッリが土産物屋などに転用されていて、
あまりに観光地化されすぎている…という意見もあるようですが、
朝早くの静かな時間に朝もやのかかった街並みを歩くと、
本当におとぎの国に来たような不思議な気分を味わうことができますよ。
SUD-EST鉄道(FSE)は、プーリア南部をほぼカバーするように走っている鉄道です。
メイン路線はバーリ~ターラント間で、沿線には、カステッラーナ=グロッテ、プティニャーノ、
アルベルベッロ、ロコロトンド、マルティナフランカなどの見どころが数多くあります。
アルベルベッロ駅
また、マルティナフランカ~レッチェ間の路線もあり、こちらは、チステルニーノ、チェリエ=メッサーピカ、
マンドゥリアなどを通り、車窓からの風景もなかなか楽しめます。
チステルニーノ駅
マルティナフランカを起点にすれば、
プーリア南部の見どころにアクセスしやすい便利な路線です。
プーリアの移動は、車を利用するのが圧倒的に便利なのですが、
ゆったりと時間を気にしない旅が好きな方は、
ぜひ利用してみてください。レトロな車両も、
ローカルっぽくていいですよ。
ただし、列車がいつ到着するかは
“運を天にまかせて”いるしかなさそうです。
(どうせ遅れると思って、たかをくくってのんびりしていると、
定刻通りに来ることもあるので困りものです)
SUD-EST鉄道(FSE)のホームページはこちら
http://www.fseonline.it/default.aspx
迷路のような小道をさまよいながら歩いていくと、突然視界が開ける場所があります。
そこがチステルニーノ旧市街で唯一の広場といってもよいヴィットリオ・エマヌエレ2世広場です。
ここには日本のTVでも紹介されたバールがあり、街の人々の憩いの場になっています。
チステルニーノは、
日本では陣内秀信さんの本などで
紹介されていますが、
本に書かれている通り、
狭い道に多くの外階段が張り出しているのが、
とても印象的です。
そしてもう一つ印象的なのが
トンネル状のアーチです。
この2つがチステルニーノの街並みに
他の街とは違うアクセントを
与えているように思われました。
チステルニーノは、
アルベルベッロとはまた違った意味での
“おとぎの国”です。
ぜひ一度、訪れてほしい街です。
訪れる際には、ぜひマルティナ・フランカから
ドメニコのタクシーで。
日本人を案内した時の自慢話に
付き合いながら…。
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チステルニーノは本当に小さな街で、「市街」という言葉を使っていいのか迷うほどです。
私たちが旧市街への入り口に選んだ(というか、ドメニコに連れてこられた)のは街の北側にある
「ポルタ・ピッコラ」、つまり“小さい門”です。
大きな地図で見る
ほぼ正方形をしたチステルニーノの旧市街は、地図で見る限りでは非常にシンプルな構造で、
ポルタ・ピッコラと対称に当たる位置に「ポルタ・グランデ」があり、
街のほぼ真ん中に長方形をした広場があるだけです。
ところが、門をくぐってからものの1分も立たないうちに、私たちはもう方向感覚がなくなってしまいました。
実際の旧市街は、人が歩くためだけに作られたような小道が網の目のようにはりめぐらされ、
しかも、いたるところ袋小路になっています。まさに「白い迷路」といってよいでしょう。
街を散策しながら、私たちは何度も同じところをぐるぐるとまわり続けているような
不思議な気分を味わっていました。
チステルニーノはオストゥーニやロコロトンド以上に迷宮感がいっぱいの場所でした。
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ロコロトンドを後にして、チステルニーノへ向かったわたしたちですが、
車中でつたないながらもドメニコとの会話がはずみます。
千葉から来たビジネスマンを一日案内したこと、その方からお礼の手紙と家族の写真を送ってもらったこと。
そして、妹はチステルニーノに住んでいて、修道女であること。
話は半分くらいしかわからないので、適当にあいづちを打ちながら聞いていたのですが、
そのうちになんとなく「妹のいる修道院に寄っていかないか」というような話になってきました。
場所は旧市街のすぐそばだというので、特にお断りする理由もありません。
やがてタクシーはチステルニーノの修道院の前に到着しました。
インターフォン越しにドメニコが話しかけると、シスター(院長)自ら出迎えてくれました。
修道院(寄宿学校)です。だいぶイメージとは違いますね。
シスターはていねいに院内を案内してくれます。
修道院といっても、シスターは院長とドメニコの妹さんを含めて3人で、
子どもたちの寄宿学校を兼ねています。
子どもたちの部屋、礼拝堂などを見学して、
最後に食堂でコーヒーと自家製のクッキーをいただきました。
ただ、あまりゆっくりしているわけにもいきません。
そろそろチステルニーノの旧市街へ行かなくては…。
お別れ前には、全員で記念撮影をして、
おみやげにクッキーまでいただいてしまいました。
ドメニコはデジカメの使い方が下手で、
彼が撮った写真はすべてブレまくっていました。
で、ドメニコはといえば…。
「Fanno il giro.」「Io? aspetto qui」
(一回りしておいで。 ここで待ってるから。)
だそうです。やっぱり…。
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それでは、いよいよ“円形の街”の中をめぐってみましょう。
どの家の壁も白く塗られて、外階段を持ち、通りは狭く迷路のようになっている点では、
オストゥーニとよく似ています。
しかし、オストゥーニの小道が同心円を描くようにぐるぐると回っているのに比べ、
ロコロトンドは、街の外観が円形なのに通りは直線的で、歩いていても「迷った」気分はあまり感じません。
戸口や窓の色も茶系が多く、あざやかな青や緑にはあまり出会いません。
ただ、どこの家にも鉢植えの緑がいっぱいなのは、オストゥーニと同じです。
旧市街の入り口には、こんなに立派な門もあります。
タクシードライバーのドメニコは、わたしたちが市街をめぐっているあいだ中、
バールでおしゃべり三昧だったようです。
戻ってきたわたしたちを見るなり、エスプレッソを2つ注文して、おごってくれるのかと思いきや、
支払いは自分の分もわたしたちにつけて、さっさと車を取りに行ってしまいました。
まあ、イタリア人らしいといえばらしいのですが…。
悪気があるわけではないので、わたしたちもただ笑うしかないのでした…。
マルティナフランカからまずわたしたちが向かったのは、ロコロトンドです。
ロコロトンドへ向かう道は、途中からFSEの線路に沿ってまっすぐにロコロトンドへと伸びています。
“LOCOROTONDO” とは、
日本語に訳すと“丸い土地”と
いったところでしょうか。
その名の通り、旧市街はきれいな円を
描くように街が作られています。
左のぼんやりした写真は、
ロコロトンドのバールでもらった
ポスターです。
マルティナフランカ方面から
ロコロトンドへと向かうと、
車からでも列車からでも、
その様子がよくわかるビューポイントが
あります。
プーリアを旅する人たちは、皆さんここでカメラを「パシャリ」とされているようですね。
もちろんわたしたちもご覧の通りです。
この日はあいにくの小雨まじり。よく晴れた日なら、青い空に街の白さがいっそう際立ったことでしょう。
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プーリアには、オストゥーニの他にも
白い迷宮都市が数多くあります。
私たちはマルティナフランカを起点にして、
ロコロトンドとチステルニーノを訪れることにしました。
ロコロトンドとチステルニーノは
どちらもマルティナフランカからFSEで一駅ですが、
路線が違うため、2つの町を一日で訪れるためには、
一度マルティナフランカまで戻って、
列車を乗り換える必要があります。
また、イタリアの町によくあるパターンで、
いずれも鉄道の駅から旧市街までが遠いという
問題もあります。
(もちろんマルティナフランカも…)
ちなみにFSEの時刻表はこちらです。
http://www.fseonline.it/default.aspx
そこで、わたしたちが考えたのが、マルティナフランカからタクシーで2つの町を回るプランです。
これなら、ホテルの前から2つの旧市街を効率よく回ることができます。
問題は費用です。ホテルのフロントで訪ねてみると
「交渉次第じゃないかなぁ、ロコロトンドだけの往復なら、
相場は30ユーロくらいでしょう。」とのこと。
それなら、50ユーロくらいでいけそうです。
やってきたタクシーのドライバーは、
ドメニコという名の恰幅のよい初老の男性で、
日本人を何人も案内したことがあるそうです。
(たくさんの写真を見せられました。)
人のよさそうなドメニコに一安心した
わたしたちですが、この小旅行は、
予想もしなかった展開になったのでした…。