あっという間のジェノヴァ滞在を終えて、私たちが次に向かうのは、フランスとの国境の町、ヴェンティミリア。
ジェノヴァの駅はホテルの目と鼻の先。
朝もそんなに早起きする必要ないかな、と油断していたら、
チェックアウトするころには列車の発車時刻の5分前になっていました。
「家の近い人ほど遅刻する」とはよく言ったものです。
駅構内も、列車の写真も撮ることなく、全速力で列車に乗り込みます。
この時ばかりは定刻通りに発車しないイタリアの鉄道に感謝です。
ヴェンティミリアまではインターシティで2時間とちょっと。
列車が発車してからしばらくは、リグーリアの海岸の風景を楽しんでいた私たちですが、
列車がインペリアの町に近づくころからついウトウト…。
インターシティとはいえ、イタリアの列車の中で居眠りをしてしまうなんて、危ない危ない。
そうこうするうちに、列車はヴェンティミリアに到着です。
ヴェンティミリアの駅は、こじんまりとしていて、街のサイズによくフィットしています。
さあ、とりあえず荷物を預けに、予約してある海辺のホテルへと向かいます。
I Tre Merli Porto Antico
ジェノヴァの夕食は、ジェノヴァでは知らない人のいない有名店が
Porto anticoに出している支店で食べることにしました。
目の前には港の風景が広がり、ロケーションは抜群です。
せっかくなので、ジェノヴァ料理の定番メニューをいただくことにします。
アンティパストは当然カッポン・マーグロ。ジェノヴァに来たらこれを食べないと、というくらいの定番です。
ところが、出てきたのはこれ。ツアーのコースメニューで出てきそうな貧弱さです。
味のほうは、まあこんなものかな、という感じ。感動がありません。
プリモもやっぱ定番、満を持してのトロフィエ・アル・ジェノヴェーゼ。
これもやっぱりまずくはないんですが、別に日本でも食べられるかな?という程度。
セコンドはストッカフィッソ。ジェノヴァではどこに行っても食べることができる名物です。
味のほうは、これもやっぱり不合格じゃないけど、感動はありません。
ガリバルディ通りの本店に行けば、また違ったのかもしれませんが、なんとなくモヤモヤの残る食事でした。
旧港(Porto Antico)は、その名の通り、かってジェノヴァの海の玄関口だった場所です。
ジェノヴァ港が拡張されていくにつれて、旧港は次第にさびれていきましたが、
1992年に海洋博が開かれた際に再開発され、ジェノヴァの新たな観光スポットになっています。
大航海時代の船を再現したような展示物?です。中も見学できるようです。
水族館もあります。ヨーロッパ最大級の水族館だそうですが、
日本の水族館を見慣れた人にとっては「まあ普通」とのこと。時間があったら寄ってみたかったのですが…。
海岸通りのプロムナードは、気持ちの良い散歩道ですが、移民と思われる人たちが路上販売をしている姿が目立ちます。買う人、いるんでしょうか。
こちらは「IL BIGO」と呼ばれる海洋博のメイン会場だった建物です。
デザインしたのは、レンゾ・ピアノ!だそうです。
屋根はすべて「Bigo(クレーン)」で支えられていて、支柱がありません。
また、同じくクレーンでつり上げる展望エレベーター?(Assensore Panoramica)が人気です。
この丸いケージが40mの高さまでつり上げられます。残念ながら私たちが訪れた時間には動いていませんでした。
この中から見るジェノヴァの街は、どんな風に見えるのかなぁ…。
ジェノヴァで一番古いアーケード、ソットリパ通り(Via Sottoripa)を横切り、海岸へ向かう途中に、
ぽつんと取り残されたように大きな建物が立っています。
この建物が、かっての金融都市国家ジェノヴァの象徴、サン・ジョルジョ館です。
ここはいわゆる「ロッリの館」ではなく、銀行として利用されていたそうです。
サン・ジョルジョ銀行は、その財力にものを言わせて、
ジェノヴァを実質的に支配していた時期もあるとのことですから、
この派手な外観にもなんとなく納得してしまいます。
おそらく近年修復されたのでしょうが、
この派手なだまし絵(トロンプ・ルイユ)の装飾は、いやおうなしに目をひきます。
それにしても、ジェノヴァでこれだけだまし絵の文化が花開いたのはどうしてなんでしょうか。
石材が不足していた?優秀な彫刻家が育つ土壌がなかった?
それとも金融国家だけあって、倹約家な貴族が多かった?ちょっと気になりますね。
イタリアでは、どこへ行ってもネコを見かけることが多いのですが、
ここジェノヴァでは犬が街の動物たちの主役のようです。しかも大型犬を何匹も連れている人がたくさんいます。
犬の種類はさまざまですが、イタリアの犬はきびしくしつけられていて、どの犬もめったにほえたりしません。
ペットショップでは、シェパードがシャンプーの真っ最中。気持ちよさそうにしています。
大型犬ばかりかと思いきや、デパートの入り口には、こんな小さなテリアも。
くさりでつながれているわけでもないのに、おとなしくご主人様を待っています。
日本では見かけない種類の犬を連れている人もいます。
最後は、ガリバルディ通りで見かけたこのテリアです。
赤の宮殿から出てきたときも、白の宮殿から出てきたときも、ずっと変わらず同じ場所で同じ姿勢のままです。
ご主人様、早く戻ってきてあげればいいのに。
「赤の宮殿」の斜め向かいにあるバラッツォで、建てられた当初は、このバラッツォを所有していた
グリマルディ家の名をとって「グリマルディ宮殿(Palazzo Gurimaldi)」と呼ばれていました。
その後、赤の宮殿の所有者であるブリニョーレ・サーレ家が購入したため、
「赤」と対比するように「白の宮殿」と呼ばれるようになったそうです。
こちらは、すぐ隣にあるメリディアーナ宮殿です。どう考えてもこっちのほうが「白の宮殿」って感じがしますよね。
ちなみに「赤の宮殿」「白の宮殿」「トゥルシ宮殿」は現在は3つとも美術館として利用されていて、
特に白の宮殿にはルーベンスなどの名画が数多く展示されています。
というわけで、当然のことながら館内は原則として写真撮影は禁止されています。
ここはイベントホールとして使われている部屋の天井です。
ここでもだまし絵が多用されていますが、スタッコも併用されていて、ひときわ豪華な印象を受けます。
駆け足でガリバルディ通りのバラッツォを紹介してきましたが、ジェノヴァは、時間に余裕を持って訪れたい街です。だって、こんなバラッツォが42もあるんですから。
ブリニョーレ・サーレ宮殿(Palazzo dei Brignole Sale)とも呼ばれるこの建物は、
外観の切石細工の装飾が赤い漆喰で塗られていることから「赤の宮殿」と呼ばれています。
また、ブリニョーレ・サーレ家は、のちにいくつかのバラッツォをすぐそばに購入したので、
そちらと区別する必要もあったんですね。(ちなみに、そのうちのひとつが「白の宮殿」です。)
入ってすぐに、だまし絵を多用した見事な天井画があります。この宮殿は、部屋も廊下も天井画が本当にきれいです。
それにしても、ほとんどの部屋の装飾にだまし絵が使われています。
こんなに多用すると、効果が薄れるんじゃないかと思うのは、私だけでしょうか。
「赤の宮殿」はエレベーターで屋上のテラスに出ることもできます。
ここからはジェノヴァの街並みを360度のパノラマで見渡すことができます。
でも、実はこの「赤の宮殿」の屋上部分は、第二次世界大戦の爆撃でそのほとんどが破壊されてしまい、
戦争後に復元されたものなんです。
今でこそ、世界遺産にも登録されて、観光客も多く訪れるジェノヴァの街ですが、
そんな時代を乗り越えてここまで来ているんですね。
そういえば、パレルモには当時の爆撃で破壊されたまま放置されている建物をいくつも見ました。
話をジェノヴァにもどすと、赤の宮殿の屋上テラスからは、
白の宮殿(右手前)とメリディアーナ宮殿(中央奥)を間近に見下ろすことができます。
そして、カステロットのエレベーターとテラスもよく見えます。
きっとあそこにいる人たちも、こちらを眺めながら、「あれが赤の宮殿だね」なんて話しているんでしょうね。
現在、1階が市庁舎として利用されているこの建物は、ガリバルディ通りに数あるバラッツォの中でも、
ひときわ豪華なもののひとつです。
広い玄関ホールから階段を上って中庭へと至るアプローチは、
ジェノヴァ大学として使われている建物と非常よく似た構造です。
中庭の周囲には、規則正しいアーチとヴォールト天井が印象的な回廊が続いています。
建物中央には、立派な時計台があります。
中庭に向いた時計台が必要になるほど、多くの人が出入りする建物だったということですね、たぶん。
「赤の宮殿」の屋上から見たトゥルシ宮殿の全景です。スケールの大きさが伝わるでしょうか。
また、実はこのトゥルシ宮殿は、隣に立つ「白の宮殿」と空中回廊でつながっていて、
2階の美術館へは、白の宮殿経由で行くことができます。
目玉は、パガニーニが愛用していたというヴァイオリンです。クラシックファンには、たまらないと思いますよ。
ジェノヴァの世界遺産である「Palazzi dei Rolli」の多くが建てられているのが、このガリバルディ通りです。
別名を「Strada Nuova(新しい道)」ということからもわかるように、旧市街の通りの中では新しく、
広くて直線的なのが特徴です。また、通りそのものも世界遺産になっています。
ロッリ(Rolli)というのは、16世紀に来賓用の会合・宿泊施設を一定のレベルに保つためにつくられた制度で、
選ばれた約40の建物(Palazzo)は「ロッリの館」と呼ばれました。
「ロッリの館」が通りの両側にたちならぶさまには、思わず圧倒されます。
この建物はカッタネオ・アドルノ宮殿(Palazzo Cattaneo Adorno)で、
外壁にだまし絵の手法が多用されているのが特徴です。
玄関アーチの上、紋章との間にきりっとした感じの装飾があるのも、個人的に好きですね。
「赤の宮殿」の屋上からから見たガリバルディ通りです。
並んでいる建物が大きいので、道幅の広さは感じませんが、道が一直線に通っているようすがよくわかります。
これだけの大開発ができるなんて、このころのジェノヴァは「世界の銀行」として機能していて、
経済的にはまさに飛ぶ鳥を落とすいきおいだったんですね。
カステロットのテラスでジェノヴァの街を見下ろしていた私たちは、
すぐ下に見覚えのある建物があるのに気がつきました。テレビ番組「世界ふれあい街歩き」に出てきた、
屋上に入り口のあるマンションです。
門の前で建物をながめていると、たまたまここに住んでいる人が犬の散歩から帰ってきました。
私たちが興味しんしんなのを察したのでしょうか、「中を通って下まで行ってみる?」と声をかけてくれます。もちろん答えは「Si,Molto gentie!」です。
屋根裏部屋のテラスでは、ネコがひなたぼっこをしていました。
渡り廊下を通って、いよいよ建物の中へと入ります。
6階建ての建物ですが、エレベーターがないので屋上からの入り口ができたそうです。
確かに6階の人は上から入るほうがラクですよね。
いつごろの建物なのでしょうか。築100年以上であることは間違いなさそうです。
ポルテッロ広場側からのアプローチは、こんな感じです。建物にたどり着くまでもかなりの坂道です。
これなら、カステロット広場までエレベーターで行って屋上から入るほうが簡単そうですね。
![]() |
世界ふれあい街歩き |
坂の多いジェノヴァの街には、いたるところにケーブルカーが走っていますが、
Portello広場の片すみにはこんな看板がありました。
「Ascensore」というのは、エレベーターのことです。
そして看板の上には「PANORAMA della CITTA」の文字が。これは行ってみるしかなさそうです。
エレベーターの終着点は、こんな風に地面から突き出ています。
写真左手にある橋を渡ると、そこはジェノヴァっ子が憩うテラスになっていました。
おしゃべりを楽しむ人、ペットを連れて散歩する人、サッカーをして遊ぶ小さな子どもたち。
みんな、それぞれの時間を楽しんでいます。
そして、ここからはジェノヴァの街を一望することができます。
真下には世界遺産のバラッツォが立ち並び、旧市街の向こうにはリグーリアの海が広がっていました。
La Cremeria delle Erbe(クレメリーア・エルベ)
当然ですが、ジェノヴァにもたくさんのジェラテリアがあります。
その中でもここは変わったジェラートを食べることができるお店としてちょっと知られています。
私たちが食べたかったのは、ペペロンチーノ。
唐辛子の入ったチョコといえば、イタリアではシチリアのモディカチョコが有名ですが、
ジェラートになるとどんな味がするのか、ちょっとわくわくだったのですが、
残念ながらこの日はメニューにないとのこと。気を取り直して「ジェノヴェーゼ」をオーダーしました。
味は、あたりまえですがバジル風味です。で、全部食べ終わったあとに写真を撮り忘れたことに気づきました。
まあ、見た目はピスタチオと大差ないんですけど。
Trattoria rosmarino(トラットリア・ローズマリーノ)
(この写真はお店のホームページからお借りしました)
http://www.trattoriarosmarino.it/
フェッラーリ広場からわき道を少し入ったところにあるトラットリアです。
トラットリアと名乗っていますが、トラットリアの気取らない雰囲気は残しつつ、ちょっとおしゃれな店構えです。
メニューは店内の黒板にチョークで書かれているだけです。この中から好きなものを選んでオーダーします。
逆にいうと、その日に黒板に書かれていない料理はオーダーできません。
アンティパストはアスパラガスのスフォルマート。盛り付けも美しいですが、
一口食べたらそのおいしさにまたびっくりです。口に入れた時のふわっと感がたまりません。
プリモはイカ墨のカネロニなんですが、パリパリにあげてあります。
中にはイカのラグーみたいなものが入っています。これも衝撃的においしくてびっくり。
セコンドはマグロのグリルのヴァリエーション。
今までいろんな場所でマグロを食べて、日本よりマグロをおいしく調理する国はないと思っていましたが、
この一皿で考えを改めさせられました。
というわけで、エスプレッソでしめて大満足の食事でした。値段も良心的です。
最後に、大混雑しているお店で、てきぱきかつていねいに対応してくれた
カメリエーレのお2人の写真を撮らせていただいて、気持ちよくお店をあとにすることができました。
もし家の近くにあったら(ないですけど…)毎日でも行きたいお店です。
現在のジェノヴァの街の中心といってもいいのが、ここフェッラーリ広場です。
19世紀に整備されたこの広場は、旧市街と新市街のあいだにあって、
まわりはいかにもジェノヴァらしい堂々とした建物が立ち並んでいます。
この建物はバラッツォ・デッラ・ボルサ・ヴァローリ(Palazzo della Borsa Varori)と呼ばれ、
19世紀の典型的なイタリア風アールヌーヴォー様式だそうです。
長いあいだ証券取引所が置かれていたイタリアの金融の中心ともいえる建物です。
そういわれると、いかにもそんな感じの外観ですよね。
こちらはカルロ・フェリーチェ劇場。
オペラがメインですが、さまざまなコンサートなどにも利用されているホールです。
今の建物は、最初の建物が第二次世界大戦で破壊された後、1991年(!)に再建されたものです。
広場中央の大きな噴水は1936年にできたもの。ミラノ中央駅やローマのEURなどと同時代のものなんですね。
そんなわけで、パンフレットのジェノヴァの写真にもよく使われているこの広場、意外に新しいんですね。