さあ、いよいよヴァチカン美術館のハイライト、ラファエッロの間です。
第1室は「コンスタンティヌスの間」。この部屋の壁画は、
ラファエッロの弟子たちによって描かれたといわれています。
写真の下半分に見えるのは「ミルヴィオ橋の戦い」です。ジュリオ・ロマーノの作品とも言われています。
部屋はこのようにいたるところフレスコ画で埋めつくされています。
アーチ部分のアップです。ラファエッロとはタッチが異なることが見てとれますね。
床面はモザイク装飾で、他の部屋とは少し雰囲気が違って見えます。
天井画です。かなりシュールな感じがしますね。
実際に見ると、遠近法の効果で、天井がかなり高いところにあるように見えます。
さあ、次の部屋に行ってみましょう。
地図のギャラリーからラファエッロの間までのあいだには、いくつかの部屋を通っていきますが、
私が特に強い印象を受けたのは、「無原罪のマリアの間」です。
鮮やかな天井画。作者が誰なのか知りたかったのですが、よくわかりませんでした。
ただ、この部屋が現在のようになったのは19世紀らしいということだけが理解できました。
天井の紋章はピオ9世のもの。聖母マリアは“Immacolata”だと定義した教皇ですね。
また、長崎の26聖人を列聖した教皇でもあります。
イタリア軍に教皇領を制圧され「ヴァチカンの囚人」と自分のことを表現したと、
世界史で習ったことがある人もいるかもしれませんね。
紋章のまわりに1858年とあるのは、この部屋を整備した年でしょうか。
壁画も、政治色がミエミエでげんなりする部分もありますが、
ラファエッロの作品と比べても、決して見劣りしません。
その手前には、聖母マリアの像が立っています。
ツアーなどでヴァチカンを回った人は、たぶん素通りしてしまっている部屋でしょうが、
もう一度訪れる機会があったら、ぜひ足を止めてみてください。
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今回は「地図のギャラリー」に展示されている地図を紹介していきましょう。
まずはイタリア全土の地図です。
イタリアが統一されたのは19世紀のことですから、まだ国家としての概念はなかったはずですが、
ローマ教皇の権威がおよぶ地域としてのイタリアが存在していたのでしょう。
これは地図の一部に描かれたウルビーノ市街のイラストです。
その下にバルベリーニ家の紋章が描かれているのがわかるでしょうか。
この当時、ウルビーノはヴァチカンにとっても重要な都市だったようです。
これはどこの地図かわかりますか?
南が上になって描かれているのでわかりにくいかと思いますが、現在のカンパーニャ州です。
ガエータ湾からナポリ湾、ソレント半島にカプリ島までが描かれています。
こちらはフェッラーラ公国です。上のほうにポー川が流れていますね。
このころ、この地域を支配していたエステ家が教皇によって追放され、この一帯は教皇領になっていたはずです。
地図の左下には、フェッラーラ市街のイラストと、星型要塞(どこかの小都市?)が描かれています。
スポレートのイラストです。
文字が書かれていなくても、すぐにスポレートとわかるくらい、現在までこの当時の街並みが保存されています。
こちらは湖水地方です。中央に描かれているのがガルダ湖ですね。
これも南が上に描かれています。
現在のリグーリア州です。
海の中に描かれたイラストが楽しいですね。
一番上に描かれている陸地はコルシカ島です。
これはサレルノ公国です。
「キリストはエボリにとどまりぬ」という有名な小説がありますが、
エボリ周辺まではローマ教皇の影響力がおよんでいたことがわかります。
左上の海はターラント湾で、アドリア海方面のバシリカータやプーリアは描かれていません。
レッチェではこのころバロック建築が花開いていたころだと思うのですが・・・。
最後に紹介するのは、教皇領です。
今のラツィオ州の一部で、ヴィテルボやモンテフィアスコーネを含む地域です。
まだまだ紹介したい地図はたくさんあるのですが、みなさんもぜひヴァチカンへ行って、自分の目で見てください。
大燭台のギャラリーから、タペストリーのギャラリーを抜けると、とてつもなく派手な天井のある廊下にでます。
ここが「地図のギャラリー」です。
展示されている地図については、この次に紹介するとして、今日はこの「天井」に注目してみましょう。
詳しく見ると、全体としてはバロック風ですが、グロッタ様式の装飾で構成されているようすがわかります。
ベースが緑色なのも、他とは違った印象を与える理由でしょう。
それにしても、よくもまあこれだけの装飾をしたものだなぁ、と感心するばかりです。
通路の扉上の装飾も派手なつくりです。
ボンコンパーニ家出身のグレゴリオ13世の紋章が、これ見よがしに飾られていますね。
グレゴリオ13世は、グレゴリオ暦を採用した人ですね。自然科学に興味があったんでしょうか。
これは別の通路の扉上の装飾です。
グレゴリオ13世の紋章の下には、もうひとつ紋章があります。
蜂が3匹。バルベリーニ家の紋章ですね。ウルバヌス8世も何かしらこのギャラリーにかかわっていたんですね。
それにしても、みんな自己主張が強いですね。
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ピオ・クレメンティーノ美術館を過ぎ、階段を上がると「大燭台のギャラリー」があります。
ギャラリーとはいっても、いわゆる廊下なのですが。上の写真が入り口の様子です。
名前の由来にもなっている大きな燭台が左右にあるのがわかるでしょうか。
天井では、教皇レオ13世が「このギャラリーは、私が依頼して現在の姿になったんだからね」と主張しています。
まあ、主張したくなるのがわかるくらい、天井の装飾は見ごたえがあります。
一方、展示されているものといえば、玉石混交で雑多なものが展示されています。
上の写真はたくさんの胸を持つ豊穣の女神ディアナ(アルテミス)ですが、
どこから見ても後世に作られたレプリカとわかります。
これは何かの柱頭部でしょうか。古代ローマの生活が再現されています。
ブタ(イノシシ?)を調理しようとしている家族がいるかと思えば、彫刻を彫っている?人もいて面白いですね。
こちらは大きな彫刻の「足」です。
軍足(エスパドリーユ)を履いているので、兵士の姿をした彫刻だったのでしょう。
再び天井を見上げると、すみからすみまで、ていねいに装飾がなされています。
ミケランジェロの天井画にも感服しますが、これだけのものを仕上げる労力を考えると頭が下がります。
ギャラリーの出口の扉には、これまたごていねいにレオ13世の胸像が飾られています。
日本の歴史で言うと、日清戦争の頃の人ですから、ローマ教皇の権力もそれほどは強くないはずですよね。
良くこれだけの財力があったなあ、と感心してしまいます。
まるでパンテオンそっくりの天井。ここが18世紀につくられた「円形の間(Sala Lotonda)」です。
ごらんのように、ぐるりとニッチが設けられ、そこに彫像が置かれています。
床のモザイクも古代ローマ時代を模して作られたのでしょう。
ピアッツァ・アルメリーナやポンペイをほうふつとさせるデザインです。
でも、パンテオンのできた頃って、まだキリスト教が公認される前では?
ここまでは、古代エジプト文明、ギリシャ時代、古代ローマ時代と、
キリスト教以前の歴史を追いかけてきてるってことでしょうか。
こちらのモザイクは、現代的なデザインです。
これは、「円形の間」のとなりにある「ギリシャ十字の間」の床だったと思います。
「ギリシャ十字の間」には、サンタ・コスタンツィアの棺が置かれていました。
コスタンツィアはコンスタンティヌス帝の娘で、お墓はサンタ・コスタンツィア教会にあります。
結婚式が行なわれていたあの円形(集中式)の教会です。レプリカの棺は前に紹介していますよね。
本物の棺をサンタ・コスタンツィア教会から、ここに運んできてしまったんですね。ローマ教皇って・・・。
「八角形の中庭」から室内に戻ると、そこは「動物の間(Sala degli Animali)」です。
動物をモチーフにした彫刻が数多く置かれています。
この彫刻は、動物の間にあったものかどうかよく覚えていませんが、
この馬の表情、どこか人間的に見えませんか?
特に秀作だとは思いませんが、この表情がなぜか印象に残っています。
こちらも馬が受難にあっています。ヘビは何かの象徴でしょうか?
床面にも、動物などをモチーフにした美しいモザイクがぎっしりです。
天井を見上げると、凝った天井画が・・・。
こちらは「彫像のギャラリー」です。天井の青がとてもきれいです。
その名の通り、ずらりと彫像が並んでいます。でも、圧倒されるのはまだまだこれからです。
さて、今度はピオ・クレメンティーノ美術館に進みましょう。入り口では番犬?がお出迎えです。
ヘルメスでしょうか。それにしても目が大きい…。
まずはじめは「八角形の中庭(Cortile Ottagono)」からです。
ここにはラオコーンなどの彫刻が並び 、いつも人でごった返しています。
静かな教会の回廊のイメージとはかけ離れた場所になってしまっているのが残念です。
これが「ラオコーン(Laocoonte)」です。マニエリズムのお手本になった彫刻ですね。
それにしても、ずいぶんきれいになっています。レプリカ?
これはどこかで見たような気がしませんか?そう、エジプト美術館の黒大理石のあれです。
ただし、こちらはナイル川ではなく、チグリス川を擬人化したものだそうです。
こちらは「ベルヴェデーレのアポロ(Apollo del Belvedere)」です。
これもレプリカなんでしょうか、少し保存状態が良すぎるような気がします…。
それと握り締めた左手。前からこんな感じでしたっけ?