シエナの街並みは中世そのもの。
ペストの流行や、フィレンツェとの抗争に破れたことで、急激に衰退したシエナは、
1500年ごろで時が止まってしまったかのようです。
こちらはサリンベーニ宮殿(Palazzo Salimbeni)です。
美しいゴシック様式の宮殿で、現在ではモンテ・ディ・パスキ銀行の本店が置かれています。
モンテ・ディ・パスキ銀行は、シエナの文化財の保存にも力を入れていますね。
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これは「ルーパ・セネーゼ(Lupa Senese)」のブロンズ像です。
狼の乳を飲んでいるのは、ロムルスとレムルスで、ローマ建国後にローマを追われた
レムルスの子どもたちによってシエナが興されたという伝承に由来するものです。
シエナの町を堪能し、サンジミニャーノに戻ろうとした私たちですが、
ここでとてもイタリアらしい出来事に遭遇してしまいました。
帰りのプルマンが待てど暮らせどやってこないのです。
バスターミナルで待っていた、他の観光客らしき年配の白人夫婦も落ち着かず、
まわりの人を捕まえてはバスについてたずねています。40分くらい待ったでしょうか。
ようやくバスがやってきました。運転手はバスを降りると涼しい顔で仲間たちと談笑しています。
「ここはイタリアだから…」と自分に言いきかせながら、私たちはバスに乗り込んだのでした。
バンキ・ディ・ソプラ通りが、バンキ・ディ・ソット通りと別れ、チッタ通りと名前を変えるあたりに、
カンポ広場の入り口があります。
カンポ広場は「世界で最も美しい広場」とも呼ばれ、ちょうど扇のような形をした広場です。
扇の要にあたる部分に向かってゆるやかに下り坂になっていて、その扇の要にプッブリコ宮殿があります。
広場を取り囲む建物の色調や高さは、全体が一体感を持つように整えられ、調和した空間が生まれています。
現在では建物の1階はほとんどがリストランテやカフェテリアになっていて、多くの観光客でにぎわっています。
広場の一角には、こんなおみやげ物屋さんもあります。
カンポ広場といえば、パリオでも有名ですね。
「コントラーダ」と呼ばれる地区ごとの対抗戦で、年に2度開催される競馬です。
パリオはこの広場に臨時コースを作って行なわれ、開催時には広場は熱狂的な人々で大騒ぎになるそうです。
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シエナはフィレンツェから南へ60キロほどの、トスカーナの美しい町です。
シエナの全盛期、政治の中心だったのが、このプップリコ宮殿です。
この宮殿は、今は市庁舎として、また美術館として利用されています。
美術館には、繊細さが特徴的なシエナ派と呼ばれる画家たちのフレスコ画が数多く残されていました。
宮殿の隣には、高さ100mほどの「マンジャの塔」と呼ばれる鐘楼があって、
ここからの眺めはすばらしいそうなのですが、あいにくの雨のため登ることができませんでした。
「マンジャの塔」という名前は、鐘をつく男の人が食いしん坊だったのでつけられた名前だとか…。
宮殿の裏手からは、シエナの街並みとトスカーナの田園風景をながめることができます。
ほっと一息つける場所ですね。
シエナの見どころといえば、やはりドゥオーモでしょう。
イタリアンゴシックの典型ともいえるファサードを持つこの教会は、
他のイタリアの街の教会にはない、独特の優美さがあります。
イタリア、特に北部から中部にかけての教会は、他の西ヨーロッパの国々の教会と比べると、
一般的にファサードがシンプルなのが特徴といえます(もちろん例外はありますが…)。
ところが、シエナのドゥオーモは、ファサード一面にこれでもかというほど彫刻がほどこされています。
おそらくそれが他のイタリアの教会とはやや異質な印象を与えているのでしょう。
また内部で特に目をひくのは床の装飾です。
イタリアで床の装飾といえばすぐにモザイクを連想しますが、ここは象嵌細工になっています。
当時の各都市のシンボルになっていた動物などがモチーフになっています。
内装はどちらかといえばロマネスク様式の影響が残っています。
イギリスやフランスのゴシック建築のように、高さを強調するのではなく、
白と黒の大理石が水平に重ねられた列柱が並ぶようすは、ピサのドゥオーモとよく似ています。
ドゥオーモの全景です。この大きさを見ても、当時のシエナがいかに繁栄していたかがよくわかりますね。
フィレンツェから一時間ほどバスに乗り、
ポッジボンシでバスを乗り換えてトスカーナの丘陵地帯をしばらく行くと、
ひまわり畑の向こうの丘の上に、「塔の街」として有名なサン・ジミニャーノが見えてきます。
サン・ジミニャーノは数多いトスカーナの田舎町の中でも、特に好きな町です。
なにか見所があるというわけではありません。
あえて言えば町の代名詞ともなっている14の塔くらいでしょうか。
それでもこの小さな町が魅力的なのは、町全体が中世の面影を非常に色濃く残しているからです。
町をはしからはしまで歩いても、15世紀以降のものと思われる建物にはほとんど出会いません。
まるで12世紀~13世紀の空間が、現代にそのまま取り残されてしまったかのような町なのです。
私たちは、とりあえずホテルに荷物を預けると、すぐに町の散策に向かいました。
しとしと降る小雨もあがり、少しずつ雲の切れ間から日が差し込んできます。
サン・ジミニャーノを取り巻くトスカーナの丘の風景もこの町を魅力的にしている理由のひとつです。
特に雨上がりには、雲の切れ間から日が差し込んで緑色に輝く丘を照らし、
ため息がでるほど美しい風景を見ることができます。
メインストリートから一歩裏通りに入ると、そこでは道路の舗装工事が行われていました。
道路といっても、車が一台通れるかどうかの細い道です。
よく見ると、もともとアスファルトで舗装されていた道をレンガの畳に舗装し直しているのです。
そういえば、少し前のサン・ジミニャーノの写真を見ると、
町の中心チステルナ広場にも、たくさんの車が止められていました。
今は、旧市街は許可車両以外進入禁止です。
したがって道路も、車のためのアスファルトから、
街並みにマッチし、人が歩くためのレンガ畳に張り替えているというわけです。
こうやって、サン・ジミニャーノの美しさは守られているのですね。
Hotel Belsoggiorno(ホテル ベルソッジョルノ )
サンジミニャーノの表玄関であるサン・ジョバンニ門を入って少し歩くと、通りの右手にあるホテルです。
全21室で、こじんまりとした家庭的な雰囲気のホテルで、1階にはリストランテを併設しています。
いくつかのタイプの部屋があるようですが、
おすすめはなんと言ってもバルコニーのついた
ジュニアスイートです。このバルコニーからは、
トスカーナの田園風景のすばらしいパノラマが一望でき、
この眺めを見るだけでもこのホテルにとまる価値があります。
部屋の設備は、必要最低限のものがそろっているという
レベルですが、清潔で明るい感じがします。
なんといっても窓が広いことが魅力的でした。
リストランテも、このホテルのおすすめポイントの一つです。
ここでは2晩食事をしましたが、間違いなくイタリアでの食事のベスト3に入るおいしさでした。
(個人的には、例えばヴェネツィアのダニエリや、
ナポリのグランド・ヴェスビィオのような高級ホテルのリストランテよりより好きです)
特に印象に残っているのは「生ハムイチヂク」です。
今まで食べたことのある生ハムとはまるで別物のようで、またイチヂクとのマッチングも最高でした。
セコンドの「イノシシの赤ワイン煮」やドルチェも印象に残る味でした。
リストランテは田園に面して窓が大きく開かれており、朝食は風景を楽しみながら食事をすることができます。
(ちなみに夜は真っ暗で何も見えません)
またいつか、サンジミニャーノを訪れることがあったら、ぜひもう一度泊まりたいと思わせるホテルでした。
ホテルベルソッジョルノのホームページはこちら
http://www.pescille.it/belsoggiorno/index.php