ようやくラヴァレード小屋に到着しました。まわりはみんな本格的なトレッカー風のいでたちです。
普段着の私たちは、どことなく場違いな印象です。
パッサポルト山がすぐ目の前に見えます。小さな山のようですが、これでも標高2700m以上あります。
一方、トレ・チーメは、たくさんのチーマ(頂)が乱立しているようにも見え、
何チーメ?といいたくなるような姿です。
さあ、のぼってみましょう。トレ・チーメとパッサポルト山のあいだの尾根(キレット?)まで行けば、
トレ・チーメの裏側や東ドロミティのパノラマを目の当たりにすることができるはずです。
写真ではよくわかりませんが、思ったより斜度がきつく、足元には石がごろごろしています。
ラヴァレード小屋までの平坦な道とは大違いです。
トレ・チーメも、チーマ・ピッコラをのぞいて、ほとんど見えなくなりました。
尾根まではあとわずかです。パッサポルト山がすぐ目の前に見えます。
今私たちが立っているのは標高2500m弱ぐらいのところでしょうか?
革靴はすっかりほこりだらけで、靴ずれもできています。
日の光を受けて、ラヴァレード小屋の屋根がまぶしく輝いています。それにしてもいい天気です。
幸運なことに、私たちがドロミティに滞在中、一度も雨や曇りの日はありませんでした。
ついにトレ・チーメを真横から眺めることのできる場所までやってきました。
ミズーリナ湖からみたときには、山の姿をしていたトレ・チーメも、ここから見ると、地面から突き出た岩の柱です。
正面にはまるで別の惑星にいるかのような風景が広がっています。
いくつかの山の名前はなんとなくわかりますが、このパノラマ全体に圧倒されます。
そして、ついに来ました。ガイドブックの写真でよくつかわれているアングルから見たトレ・チーメです。
実際に見ると、写真ではわからない迫力を感じます。まさに「岩の塊」です。
ほとんどの人は、さらにトレ・チーメの周囲をぐるっと一周していくようです。
時間も充分な装備もないわたしたちは、残念ながらここで引き返さなければなりません…。
見上げると、パラグライダーが気持ちよさそうに真っ青な空をゆっくりと飛んでいます。
ドロミティの青い空に赤や黄色のパラグライダー。もうすっかり見慣れた風景です。
歩き出してから15分ほど、ようやくトレ・チーメの3つの頂がはっきりわかるようになってきました。
歩いてきた方向を振り返ると、駐車場のあるレストハウスからかなり歩いてきたことがわかります。
“のこぎりの歯”もずいぶん小さくなりました。
しばらくすると遊歩道(?)の脇に小さな教会(礼拝堂)が見えてきます。
イタリアに限らず、ヨーロッパアルプスでは、このような登山道の脇に建てられた教会をよく見かけます。
古今東西を問わず、登山の安全を願う気持ちは変わりないのですね。
教会を正面から見たところです。
右手にはすぐそばまでトレ・チーメの断崖絶壁がせまっているのがわかりますね。
教会の背景に見えるのはクリスタッロ山です。
一つ前のの写真のさらに左手の様子です。えぐりとられたような谷が大きく広がっているのがわかります。
駐車場のあるレストハウスは、クリスタッロ山の手前、右手中ほどに小さく写っています。
チーマ・ピッコラが大きく見えるようになってきました。
駐車場からはずいぶん遠くまで歩いてきましたが、
トレ・チーメの裏側に回りこむまでには、まだまだあるかなければならないようです。
今朝のタクシードライバーの忠告が頭をよぎります…。
一時間で一周するなんて、とうていできそうにありません。
ただ幸いなことに、まだ道は平坦で、歩くのに苦労するようなことはありません。
正面に小さくラヴァレード小屋(Rifugio Lavaredo)が見えてきました。
その向こうの大きな岩山は、パッサポルト山(Crode Passaporto)です。
道のところどころにはこんな岩も転がっています。この岩、人が切り出したものではありません。念のため。
あしたはドロミテを歩こう ―イタリア・アルプス・トレッキング 価格:¥ 1,680(税込) この本を読んでから、ドロミティを訪れると、 ドロミティの魅力をさらに深く感じることができます。 |
山麓は徒歩で一周することができます。所要時間は一時間ほどの道のりとのこと。
私たちは、さっそく歩いてみることにしました。
右手を見ると、チーマ・ヴェスト(Cima Ovest)がすぐ目の前に圧倒的な迫力でせまってきます。
ここからは、チーマ・ピッコラ(Cima Piccola)はまだ見えてきません。
道の左手は、すぐ谷になっていて、
その向こうにのこぎりの歯のようなカディーニ山群(Gruppo Cadini di Misurina)の山頂が顔をのぞかせています。
南の方角には、ミズーリナ渓谷とは別の谷がひらけ、ここにもきれいなサファイアブルーの湖が見えています。
道は平坦で、トレッキングというよりハイキングに来ているかのようです。
目の前には屏風のような岩のかたまりが見えています。どんな名前がついているのでしょうか。
道はトレ・チーメに沿ってゆるやかにカーブしながら続いています。
やっとチーマ(頂き)がトレ(3つ)になってきました。
というより、この写真ではクアトロ・チーメ(4つの頂き)ですね。
ここまでで、もう20分ほど歩いているのですが、
テレビなどでよく見るアングルでトレ・チーメを仰ぎ見ることができるのは、もう少し先のようです。
ドロミテ夢紀行―南チロルへのいざない | |
国書刊行会 |
上の写真と同じアングル、旅行代理店のパンフレットなどで一度は見たことがあるのではないでしょうか。
コルティナ・ダンペッツォからミズリーナ湖を経由して
トレ・チーメ(Tre Cime di Lavaredo)へと向かうルートは、ツアーのハイライトにもなっています。
パンフレットなどでは「ドロミテ・アルプスの中に静かにたたずむ」などと書かれているので、
カレッツァ湖のような神秘的な雰囲気を想像していましたが、
実際に着いてみると「アレッ?」という感じです。
よく考えれば、これだけツアー客が来るんだから、観光地化されていないわけがないですよね。
それでも、こうやって見れば、やっぱりきれいな風景です。期待値が高すぎたのがいけなかったんですね。
湖は浅く、鏡のように風景を映し出してくれます。
近づいてみると、水の色はきれいなエメラルドグリーンに見えます。
写真ではうまく伝えられないのが残念ですが…。
湖の西側は遊歩道になっていて、散策を楽しむことができます。
湖の向こうには、ご覧の通りトレ・チーメがきれいに見えます。
ここからだと、グランデの後にピッコラが隠れて、頂は2つだけのように見えています。
このアングルが私の一番のお気に入りです。湖面に映るトレ・チーメがきれいですよね。
湖の北側にもホテルがあって、湖のまわりはそれなりににぎわっています。
散策をしている人たちも多く、中には日本人らしき母娘もいました。親孝行なんですね。
さあ、それではトレ・チーメへと向かいます。
大きな地図で見る
実は、この日の朝、私はタクシードライバー(女性です)と大ゲンカをしてからホテルを出てきていました。
その原因は、トレ・チーメでの滞在時間です。
「1時間くらいだから」という私と、
「そんなわけない。待っているあいだの1時間につき20ユーロ払ってもらうから覚悟して」
という彼女とのあいだで言い争いになってしまったわけですが、
サッソ・ポルドイの時とほぼ同じ服装の私は、このあと自分の認識不足を思い知らされることになるのでした…。
Terrazza Viennese (テラッツァ・ヴィエネーゼ:Hotel Ancora内)
宿泊したホテルの中にあるバール兼リストランテです。
メニューはシーズンオフのため、基本的にはセットメニューです。
ここはコルティナのリストランテの中でも高級なほうなので、やや郷土色は薄れたメニュー構成でした。
ワインも地元のものを飲みたかったのですが、これを薦められました。
プリモは豆のスープ。なかなか上品なお味です。北イタリアではめずらしくオリーブオイルたっぷりです。
セコンドは牛フィレのステーキにズッキーニのソテーを添えたもの。
料理が供されるときに、カメリエーレが「Uno,Due,Tre!」と声を出しながら
2人でタイミングを合わせながらクロッシュを同時に開けたのには苦笑してしまいました。
味は申し分ありませんでしたが、南チロルの料理を食べたかった・・・。
で、ドルチェはマチェドニア。クランベリーやリンゴなど、北のほうの果物が多かったのが救いです。
これでパインやキウイやメロンだったらどうしようかと思いました。
どれも味は申し分ありません。とにかくおいしいものを食べたいならココは申し分ないでしょう。
ただ、素朴な郷土料理を食べたい人向きではないかもしれませんね。
地方の名門ホテルの宿命なのかもしれませんが、地元の人が晴れの日に利用するリストランテなんだろうなぁ…。
と思ってしまいました。
Ristorante Victoria(リストランテ ビクトリア:Parc Hotel Victoria地下)
Corso Italia(イタリア大通り)の一番南(1番地!)にあるホテルに併設されたリストランテです。
シーズンオフでクローズしているリストランテが多い中、オープンしていた数少ないお店です。
ホテルのリストランテなので、あまり期待はしていなかったのですが、いい意味で予想が裏切られて、
満足できるひと時を過ごすことができました。
ホテルのリストランテなので、多彩なメニューがありますが、基本は南チロル風。
前菜はAntipasti Tirolese(チロル風前菜盛り合わせ)です。
ワインもSudtirol Terlaner(スッドチロル・テルラーナー)をカメリエーレ?
(どう見てもソムリエじゃなかったんです)に薦めてもらいました。
プリモはカスンツィエイ(Casunziei Rossi)。
コルティーナの郷土料理で、ビーツ(赤カブと書かれているガイドブックなどが多いのですが、
甘みがすごく強いので絶対にビーツです)をつめた半月状のラヴィオリに、
ケシの実たっぷりのソースがかかっています。
ちなみにほうれん草とリコッタをつめたものは、Casunziei Verdiと呼ぶそうです。
セコンドはカネーデリ(Canederli)です。バターベースのソースがかかっています。
真ん中のかき揚げのようなものはカネーデリの薄切りを揚げたものです。
内装はこんな感じです。見事なまでにお客がいないのがわかります。
シーズンオフというのはこういうものなんでしょうか。
このあと、ホテルの支配人と思しき人が、給仕長と思われる人を相手に、
テーブルに腰かけてえんえんと接客の心得?を説いていました。
(内容すべてが理解できたわけではないので、あくまで想像です。)
で、メニューに戻ると、ドルチェはまたまたアップルストゥルーデル。何回目でしょうか。
でも、この地方の名物なわけですから、食べておかないと。
こんなところでティラミスを食べても、しかたないですよね。
(どうしてもティラミスが食べたいときは別ですが…)
こうして、静かなコルティナの夜は更けていくのでした・・・。
大きな地図で見る
日が西に傾きだすと、東側にそびえる山々の岩肌は、少しずつオレンジ色に染まっていきます。
Pomagagnon山も西日を受けて輝いています。
空の色はまだ青いのですが、街には、少しずつ灯りがともっていきます。
さらに日が落ちると、夕日は山全体を照らし始め、
コルティナの長い昼の終わりがまもなくであることを知らせています。
右に目を移すと、Cristallo山もすっかりオレンジ色に染まっています。
Faloria山や、その背後のSorapis山も、見事に赤くそまって、日没はもうすぐです。
日が暮れて、ホテルに戻ると、鐘楼前の広場がライトアップされていました。
鐘楼の最上階がライトアップされると、コルティナの静かな夜が始まります。
この少し聞きなれない名前の教会は、コルティナの街はずれに目立たないよう静かに、
しかしたたずむのではなく、シャンと胸を張って堂々と立っています。
コルティナの日本語ガイドブックには「聖防御マリア教会」と訳されていますが、
「S.Maria」ではないので「擁護の聖母教会」のほうが意味的にはいいのかな、
と思ったりもしましたが、どうなんでしょう。
内部の装飾は、赤大理石が印象的なバロック風で、外観とはかなりのギャップがあります。
これだけ大がかりに修復(改装)されているということは、
きっとこの教会はこの地域にとって重要な教会だったのでしょう。
主祭壇です。金色に輝いているのは、どうやら聖母マリアと幼子イエスのようです。
やっぱり「Madonna」は聖母マリアのようですね。それにしても「防御」って…。
アップです。それにしても豪華な装飾ですね。
地域的には、宗教改革でプロテスタントの影響を受けていても不思議ではないのですが、
どことなくメキシコやブラジルの教会装飾に通じるものがあるようにも感じられます。
身廊の脇にある彫像です(もしかすると彫像ではなくて彩色テラコッタかもしれません)。
服装や持ち物からすると、S.Antonioのようにも見えます。
もしそうだとしたら、ここはフランチェスコ修道会の教会?こんなに派手なのに?
とすると、こっちはS.Francesco?たしかに両手のひらに「聖痕」がありますよね。
すぐ近くで質素で清貧な造りのS.Francesco教会を見てきた後だけに、
この2つの教会の違いはどこから来るんでしょうか???という気持ちです。
コルティナの秋は、シーズンオフと言われていますが、よく晴れた日が多く空気もすんでいるので、
散策するには実は絶好のシーズンなんです。
町自体がそれほど大きくないので、ぶらぶらするにはうってつけかもしれません。
これといって驚くような見どころがあるわけではありませんが、
のんびり歩いていると、小さな発見がたくさんあります。
上の写真は、Corso Italiaの南のはずれからCristallo山の方角を見たところです。
左側中ほどの鉄橋のように見えるものは遊歩道で、東西のパノラマを楽しみながら歩くことができます。
たぶんここは誰かの別荘なのでしょう。
庭やバルコニーが美しく手入れされていたので、ついおじゃまして、写真だけ撮らせてもらいました。
でも、同じように他の家々もみなきれいに草花で飾られています。
一方でこんな風に歴史を感じさせる家もいくつか残っています。
こういう家は、壁面にフレスコ画や文字・紋章などが描かれているのが特徴です。
こちらはバスターミナル通りにある第一次世界大戦の英雄、Antonio Cantoreの記念碑です。
その死については諸説あるそうですが、コルティナにとっては大切な人なんですね。