ラ・スペツィアを出発した船は、ポルトヴェーネレに立ち寄った後、チンクエテッレへと向かいます。
次の寄港地は、チンクエテッレの一番南の村、リオマッジョーレです。
ポルトヴェーネレのカラフルな街並みが少しずつ遠ざかっていきます。
これから船はラ・スペツィア湾をはなれ、リグーリア海の海岸線をを進んでいきます。
船が岬に近づくにつれて、サン・ピエトロ教会が間近に見えてきました。
船出する中世の船乗りたちは、この教会をながめながら何を思ったのでしょうか。
やがて船は岬の突端を回り込むようにしてリグーリア海へと出ていきます。
船の右手に、ドーリア城とバイロンの洞窟が見えてきました。これでいよいよポルトヴェーネレともお別れです。
風車小屋をすぎると、今度はサン・ロレンツォ教会の屋根越しにラ・スペツィア湾を眺めることができます。
ドーリア城は、この右手にあります。
ドーリア城は、ポルトヴェーネレの町のスケールとは不釣り合いなほど大きな建物です。
それだけこの場所が中世において重要な位置を占めていたのだということがわかります。
(なんといっても、ジェノヴァとピサのちょうど中間地点ですから。)
近づいてみると、城塞は、自然の岩をうまく利用して作られていることがわかります。
城門は、つくられた当時のままなのでしょうか。
門の上の紋章がけずりとられているのは、それだけここで激しい権力争いがあったことのあらわれでしょう。
今はほとんど廃墟に近い状態ですが、この大きな壁龕には何が置かれていたのでしょうか。
広間は太い柱で天井を支えています。美しさより堅牢さを求めた作りになっているんですね。
サン・ロレンツォ教会の前の道を、教会を背にしてまっすぐ進むと、ジャスミンの小道の向こうに海が見えてきます。
小道は海を左手に見ながらゆるやかに右に曲がり、その先の高台に風車小屋(粉ひき小屋)の跡が残っています。
風車小屋の跡といっても、風車が残っているわけではなく、土台の部分だけです。
円筒形の建物の跡には、小さく「i Mulini」というプレートがつけられています。
中世の人たちは、この見晴らしの良い(つまり風通しの良い)高台までやってきて、
風力を利用して小麦を粉にしていたんですね。
ここからは、サンピエトロ教会の立つ岬を一望することができます。
風車小屋で働いていた人たちには、ここからの眺めを楽しむ余裕はあったんでしょうか。
もしかすると、この眺めに癒されながら重労働をこなしていたのかもしれませんね。
サン・ピエトロ教会から、港のほうに戻らずに、左手のゆるやかな坂道を登っていくと、
やがて教会の鐘楼が見えてきます。
これが、ポルトヴーネレのもう一つの教会、サン・ロレンツォ教会です。
ロマネスク風のファサードの正面扉の上には、サン・ロレンツォのレリーフがあります。
中のようすです。身廊と側廊を分ける壁はアーチの開口部がものすごく広くとられています。
そのためでしょうか、天井は木がそのままむき出しになっています。
そうでなかったら、天井の重さを支えられなそうですよね。
祭壇と後陣はきれいにしっくいで装飾されています。
後陣にわずかに残っているフレスコ画は、昔の名残でしょうか。
教会前の広場は、近所の公園のような親しみやすさがあります。
ポルトヴェーネレに住んでいたら、休日にのんびりと本を読むのにピッタリそうな場所です。
海、そして木々の緑。ポルトヴェーネレ、ほんとにいい所です。
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サン・ピエトロ教会のある岬の北側の小さな入り江に、「バイロンの洞窟」と呼ばれる洞窟があります。
洞窟のある入り江は古い城壁に囲まれていて、いかにも「秘密の場所」といった雰囲気です。
城壁をくぐると、そこにはエメラルドグリーンの海が広がっていました。
朽ちた城壁をくぐり、海へと続くアプローチは、どことなく冒険心をくすぐります。
海岸まで降りてみると、むき出しの岩肌に囲まれた入り江は、まるで子どもが遊ぶ秘密基地のようです。
ところで洞窟はどこに?
ぐるりと大回りして、ようやく洞窟らしきものを見つけました。
でも、小舟がなければそこには行けそうにありません。ちょっとがっかり。
この入り江は、バイロンたちが当時感じた「ワクワクする感じ」を味わう場所なのかもしれませんね。
ポルトヴェーネレの東のはずれ、海に突き出た岩の岬の上に、どちらかといえば武骨な石造りの教会があります。
その名もサン・ピエトロ教会。まさに“石の”教会です。
この教会のある場所には、もともとアフロディーテをまつるギリシャ神殿が建てられていたそうです。
そういえばシチリアのエリチェの町にも、同じようなロケーションにアフロディーテの神殿跡がありました。
内部も外壁と同じ白と黒のストライプで装飾されています。
おそらく今の姿で建てられた当時のままなのでしょう。
聖ピエトロの像もありました。「天国への鍵」をしっかりと握りしめています。
北側(本来ならファサードにあたる部分)には回廊があり、東リヴィエラの海岸線を見渡すことができます。
屋根の一部にも上ることができます。ここからは「詩人たちの湾(Golfo di Poeti)」のパノラマを望むことができます。ラ・スペツィアからポルトヴェーネレまでの一帯は、かってバイロンやシェリーなどが好んで訪れたことから
「詩人たちの湾」と呼ばれています。
サン・ピエトロ教会の屋上から見た景色です。
すぐ下の入り江には「バイロンの洞窟」があり、山の向こうの海岸線にはチンクエテッレの村々が点在しています。
ポルトヴェーネレは、海沿いにカラフルな細長い建物が立ち並ぶ独特の景観をしています。
これらの家々は「パラッツァータ(Palazzata)」と呼ばれ、中世には街を防御する城壁の役割をかねていたそうです。
バラッツァータの家々の向こう側は小高い丘になっていて、一番高いところにドーリア城があります。
左手に見える教会は、町の守護聖人、聖ロレンツォをいただくサン・ロレンツォ教会です。
海沿いの石畳の道は、昼下がりの散歩をするのに絶好の場所です。
海をへだてたすぐ先には、パルマリア島が見えています。
海は波もなくおだやかで、泳いでも島まで渡れてしまいそうです。
近くで見たバラッツァータの家々です。まさに“そびえたつ”という感じです。
もともとは、敵の侵入の足がかりにならないよう、バルコニーもつけず、窓ももっと小さくしていたそうです。
こんなのどかな風景になるまでには、いろいろな苦労があったんですね。