La Casa di Lucio
サッソ・カヴェオーゾ地区のほぼ中心、サンタ・マリア・ディドリス教会のすぐそばにある、
サッシを改装して作られたアパルトメントスタイルのホテルです。
サッシを改装して作られたホテルといえば、バリサーノ地区にある「サッシ・ホテル」が有名ですが、
こちらはより洗練された印象を受けます。2001年にオープンしたばかり(だと思う)なのですが、
2006年には増築&改装が行 われたようで、以前よりさらにシックな雰囲気になっています。 私たちが泊まった部屋とスイートからは、
真正面にサンタ・マリア・ディドリス教会を
眺めることができます。
真夜中から日の出にかけての教会の姿は、
言葉では言い表せないほどに厳かな雰囲気を漂わせています。
その姿を見るだけでも、
このホテルに泊まる価値があるといえるでしょう。
皆さんもマテーラを訪れる機会があったら、日帰りせずにぜひこのホテルに泊まってみてください。
ホテルのホームページはこちら
http://www.lacasadilucio.it/index.asp
Ristorante Rivelli (リストランテ リヴェッリ)
マテーラでの夕食は、ちょっとぜいたくに、街一番のリストランテを予約してみました。
場所は、新市街のリドーラ通りから、サッソ・カヴェオーゾに下る道の入り口近く右手にあります。
内装はサッシ風ではありますが、おそらくもともとのサッシを利用した建物ではないように思われました。 ハウスワインをオーダーすると、
やってきたのはお店のロゴ入りワインです。
これにはちょっとびっくり。
おまかせのアンティパスト
(小皿が5種類くらい)との
相性もぴったりです。
プリモは2品です。
トロフィエはものすごく塩味が強いのですが、
なぜかクセになるおいしさです。
「きのことサルシッチャのカヴァテッリ」
「小エビとズッキーニのトロフィエ」
セコンドは「ロースト肉の盛り合わせ」です。
写真を撮るのも忘れて、あっという間にいただいてしまいました。
最後はドルチェとパッシートでfinitです。
食事の選択肢の少ないマテーラでは、貴重なリストランテです。
お店のホームページはこちら
http://www.ristoranterivelli.com/
L`Osteria di Dileo Giovanni
ドゥオーモからサッソ・バリサーノ地区へくねくねとした細い道を下っていくと、
バリサーノのメインストリート、フィオレンティーナ通りへと抜けることができます。
このオステリアは、ちょうど道を下り切ったフィオレンティーナ通りぞいにある、小さな店です。
屋内にはわずか8席ほど、
あとはすべてオープンテラス(要するにサッシの屋根の上)の席になっていて、
私たちもオープンテラスの席に着くことにしました。
オーダー後、パンとワインが運ばれてくると、さっそく猫たちがおすそ分けをねらってやって来ます。
慣れた様子でテーブルの下、私たちのすぐ足元に白いおなかを見せて寝ころぶと、
「早く何かよこせ」と言わんばかりです。
しかし、私たちがオーダーしたのは、
ムール貝とファーべのカヴァテッリとラムのグリルとサルシッチャ。
私たちにとっては満足のいく味でしたが、
残念ながら彼らにとっては大満足というわけにはいかなかったようです。
マテーラでは、サッシのエリア内には食事ができる場所が少ないので、
値段も手ごろで味もなかなかの、このオステリアは重宝すると思いますよ。
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岩山をくりぬいて作られている、洞窟住居の町マテーラのシンボルとも言うべき教会です。
この独特のシルエットは、カヴェオーゾ地区のどこからでも見ることができます。
サン・ピエトロ教会とサンタ・マリア・ディドリス教会です。パノラマ通りから見ています。
岩山をくりぬいて作っているだけでなく、建物部分があることがわかります。
カヴェオーゾ地区の南側から見たようすです。ちょうど裏から見ていることになりますね。
あまり画質がよくありませんが、真夜中の教会です。
ライトアップされているのではなく、街の明かりでぼんやりとシルエットが浮かび上がっています。
残念ながら、内部は修復中のため、用具や資材が置かれて殺風景なようすでしたが、
機会があればもう一度訪れたい教会です。
新市街からサッシ地区に入る入り口付近にあるサン・フランチェスコ・ダッシジ教会。
バロック様式のファサードが印象的な教会です。
内部は、サッシの貧しい生活からは想像できないほど、美しく装飾されています。
これだけの教会を建てるのには、おそらくかなりの費用が必要だったはずです。
また、清貧を重んじるフランチェスコの教えとかけ離れて華美過ぎるのでは、
という考えもちらっと頭の片すみをよぎりました。
それにしても、南イタリアには、アッシジの聖フランチェスコの名前をつけた教会が多いような気がします。
聖フランチェスコの教えがこんなところまで広まっているんだなぁ、
と思うと、何か感慨深いものを感じてしまいました。
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聖フランチェスコの小さな花 |
聖フランチェスコのことを初めて知るのにぴったりの本です。 | |
教文館 |
マテーラ旧市街の一番高いところに、すべてのサッシを見守るかのように、ドゥオーモが立っています。
ファサードは、ロケットのような形で中央に大きなバラ窓のあるシンプルなロマネスク様式で、
質素な印象を受けます。
しかし、一歩中に足を踏み入れると、そこは絢爛豪華な別世界です。
サッシに住んでいた人たちはおそらく、このドゥオーモを訪れるたびに天国の姿を重ね合わせていたのでしょう。
けっして裕福ではなかったであろうこの地域に住む人々が、
どのようにしてこれだけのドゥオーモを作り上げるだけの費用を用意したのか、
その苦労を思うと、当時の人々の信仰心がどれだけ厚いものだったのかが想像できます。
ドゥオーモの前の小さな広場からは、バリサーノ地区を一望することができます。
イタリアの街はどこも犬やネコが多いのですが、ここマテーラは中でもたくさんの猫を見かけました。
空き家が多く、歩いている人は観光客が多いので、猫たちにとっては住みやすい場所なのかもしれません。
こんな子猫も見かけました。 たいていの猫は物おじせず、人が近寄っても平気です。
それどころか、リストランテのテラス席には、
おすそわけにあずかろうと、何匹もの猫たちがやって来る始末です。
でも、どの猫もどこか楽観的で、自由にたくましく生きているように、私たちには思えました。
まるでイタリアの人々のようですね。
よく「ペットは飼い主に似る」といいますが、
動物の気質も生まれた国によって変わってくるのかもしれませんね。
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猫のように自由 ~Libero come un gatto イタリア猫物語 (角川文庫) 価格:¥ 740(税込) 発売日:2009-07-25 マテーラだけでなく、イタリアの町は、どこに行ってもたくさんの猫たちと出会うことができます。イタリアでは、古代ローマのころから猫を大切にしてきたんですね。 |
サッソ・カヴェオーゾには、サッシでの生活のようすを再現して展示している場所がいくつかあります。
その中でもっともていねいに再現されているのが、この「カーサ・グロッタ」でしょう。
入り口で入場料を払うと、何語のパンフレットが欲しい聞かれます。
6カ国語のパンフレットが用意されており、日本語もあります。
また、住居内では日本語のアナウンスをテープで流してくれます。
住居に入ってすぐの場所はリビング兼ベッドルームになっています。
今は電気が通じているので明るく見えますが、当時は電気もガスも水道もなかったため、
実際の部屋はもっと薄暗かったのでしょう。
住居の一番奥には、馬などの家畜を住まわせるためのスペースがあります。
キッチンは、排煙しやすいように、入り口近くにあります。水は、雨水などをためて利用していたようです。
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スローシティ 世界の均質化と闘うイタリアの小さな町 (光文社新書) |
島村 菜津 | |
光文社 |
マテーラの教会といえば、まずドゥオーモ、
さらに岩山をくりぬいて作ったサンタ・マリア・ディドリス教会が有名ですが、
そのほかにも個性的な教会が多くあります。まずは、洞窟教会。
代表格はカヴェオーゾ地区にある
サンタ・ルチア・アッレ・マルヴェ教会です。
薄暗い洞窟の中には、
壁面にフレスコ画が描かれています。
マテーラの教会の
プリミティブな形態がよく残されていて、
華美なドゥオーモとは
まったく違った意味で
心ひかれるものがありました。
湿気の強い洞窟の中は、カビの繁殖がものすごく、壁画を保存するのは並々ならない努力があるのでしょう。
そして、サン・ピエトロ教会。
実はマテーラには、2つの地区にそれぞれひとつずつのサン・ピエトロ教会があって、
それぞれの地区の名前をつけて呼ばれています。
こちらはサッソ・カヴェオーゾ地区の一番低い場所にあるサン・ピエトロ・カヴェオーゾ教会です。
バリサーノ地区にはまた別のサン・ピエトロ教会があります。
中世以前の古くからの教会と、バロックの教会。
よく見ていくと、マテーラにはこの2つの時期の教会が多く残されていることがわかります。
異教徒からの迫害を逃れて隠れ住んだ人々と、近代になっても洞窟住居に住み続けた人々。
時代は違っても、心の支えになっていたのは教会だったのですね。
マテーラは「サッシ」の街として世界遺産に登録されています。
「サッシ」とは、「洞窟住居」を意味しています。
起源は古く、最初にここに居を構えたのは、キリスト教の修道士たちだったそうです。
グラヴィーナ渓谷の険しさは、厳しい環境での修行の場として、
また異教徒からの攻撃から身を守る場所として最適だったのでしょう。
その形態は、断崖の洞窟をほぼそのまま利用しただけの簡素なものだったようです。
今でも、最も南の谷底に近いエリアや渓谷の向かい側に、その面影が残っています。
その後、人口の増加に伴って部屋数を増やすために、
自然の洞窟の開口部に建物を一部加えた形態の住居が建てられるようになり、
その住居の屋根にあたる部分を通路や公共の広場として利用することで、
さらにその上に新しい住居が作られていったそうです。
その結果として、今見られるような不思議な街ができあがったのですね。
1900年代に入ってからは、ライフラインの近代化が遅れ、
一時は南イタリアの貧しさの象徴として小説の題材になったこともあるマテーラのサッシですが、
世界遺産への登録後、少しずつ保存・整備が進んでいます。
また、内部を改装してホテルやレストランとして利用されているサッシもあり、
“遺産”としての街から少しずつ“生きている”街へと生まれ変わりつつあるような印象を受けました。
しかし、まだ廃墟同然の地域もあるので、
夜の散歩を楽しもう、なんてことはあまり考えないほうがよさそうです…。
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南イタリアへ! (講談社現代新書) |
陣内秀信さんが南イタリアのさまざまな街について、 独自の視点から紹介しています。 |
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講談社 |
マテーラの旧市街とグラヴィーナ渓谷をはさんだ向かい側に、マテーラの街を一望できる場所があります。
それが、ムルジア・ティモーネの展望台です。
ここからは、マテーラの洞窟住居のパノラマを見ることができます。
ここから眺めるマテーラは、まるで私たちに何かを訴えかけてくるようで、
その強いオーラに思わず圧倒されそうになります。
私たちはしばらくの間、ただじっとその風景を見つめていました。
しばらくして気持ちに余裕が出てきた私たちは、面白いことに気がつきました。
洞窟住居は、崖の下のほうにあるものほどプリミティブで、
上に行くにしたがって人為的に手が加えられている度合いが高くなっています。
さらにその上の台地上には新市街が広がり、
まるでマテーラの歴史がそのまま地層のように積み重なっているのです。
※展望台へ向かう公共の交通機関はありません。したがって、タクシーを利用することになります。
私たちの場合には、マテーラの駅から展望台を経由して
旧市街(サンタ・マリア・ディドリス教会近く)のホテルまでで約20ユーロでした。
ちなみに、運がよければ、放牧されているヤギの群れにも出会えるかもしれません。
それでは、いよいよ旧市街へと向かいましょう…。
バーリからマテーラへは私鉄FAL(Ferrovie Appuro Lucane)を利用するのが一般的です。
FALのバーリ中央駅は、FSのバーリ中央駅とは別に、目立たないビルの2階にあります。
すぐとなりには、同じ私鉄のFNB(Ferrovie Nord Barese)の駅がありますからまちがえないように。
FALの時刻表はこちら
http://www.fal-srl.it/quadriorari2003/treni.htm
また、列車に乗るときも注意が必要です。
アルタムーラでポテンツァまたはグラヴィーナ行きとマテーラ行きを切り離す車両があったりするからです。
自分の乗った車両が必ずマテーラに行くのか確認しましょう。
ただし、たいていの場合にはアルタムーラで接続列車があったり、待ち時間がけっこうあるので、
まわりの人に前もって聞いておけば問題ないと思いますが…。
バーリからマテーラへと向かう列車の中から見える風景は、はじめは市街地、次にオリーブ畑、
そしてマテーラに近づくにつれ少しずつ荒涼とした眺めへと変化していきます。
この地方で暮らしてきた人たちの苦労が想像できるような風景です。
最後に、旧市街の最寄り駅は終着駅ではないことにも注意しましょう。
旧市街に行くには、終着駅のひとつ前のマテーラ中央駅で降りる必要があります。
ちなみにマテーラ駅のホームは地下にあり、
地上には日本の交番くらいのサイズの駅舎と待合室がぽつんとあるだけで、
まわりにはバールの一軒もありませんから、この点も覚悟しておきましょう。
マテーラの駅から旧市街へは、歩いてもそれほどかかりませんが、私はタクシーで行くことをおすすめします。
それも、まっすぐ旧市街へ向かうのではなく、
まず渓谷の向かい側にあるムルジア・ティモーネの展望台に立ち寄るようにしてみてください。
きっと、マテーラのすごさを実感できると思いますよ。