トンネルを抜けると、ティローロ城の見える角度が変わってきます。
ちょうど午後の日差しのもっともまぶしい時間帯。真夏でもないのに、歩いているうちに汗ばんできます。
ほら、ぐーんと近づいてきました。
早く礼拝堂の扉口のレリーフを見てみたいと思うと、歩くスピードも自然と速くなります。
ついに入り口に到着。でも様子がちょっと変です。
門の扉は閉じたまま。近くにいたチロル風の民族衣装を着ていた人に事情を聞いてみると、
ティローロ城は内装の改修のため今日(!)の午後からしばらく閉館するとのこと。
せっかくがんばってここまで来たのに…。しかも、あと2時間ほど早ければ、中も見学できたなんて…。
でも、いくら後悔してもしかたありません。
お城のすぐ下にある展望台からメラーノのパノラマを眺めながらしばしぼんやり。
まわりには、同じような人たちがそれぞれの想いで景色を眺めていました。
ティローロの村の中心地から少し離れた断崖の上に、ティローロ城があります。
やっとティローロに到着したと思いきや、さらにあと15分ほどの道のりを歩かなければなりません。
途中の道からはヴェノスタ渓谷(Val di Venosta)が一望できます。
眺めもいいし、歩いている人もたくさんいるので、それが励みになります。
ティローロの中心からかなり歩いてきました。歩いている人の多さは、この写真からもわかります。
だんだん近づくにつれ、思っていたよりずっと大きな建物だということがわかってきました。
道は舗装されていますが、けっこうアップダウンがあり、
城は目の高さに見えたり、下から見下ろす形になったりします。
途中には短いトンネルもあります。いつの時代につくられたものなのでしょうか。
このトンネルをくぐると、ティローロ城まではあとわずかです。
リフトを降りると、私たちはティローロ城を目指して歩き始めました。
正確な地図を持っていなかった私たちは、ティローロ城まで歩いてどのくらいかかるのか、
見当もついていなかったのです。
それに、道には数多くのトレッカーが歩いています。
(今考えると、歩いていたのはトレッカーばかりだったのですが…)
道路わきにあったチロル高原全体の案内図です。
ざっと見る限り、リフト乗り場からティローロ城までは歩くと1時間はかかりそうです。
うーん…。でも歩き始めてしまったものは仕方がありません。
幸いなことに、道を走る車はほとんどなく、景色もあきることがありません。
道の両側は、ブドウ畑かリンゴ園です。
メラーノはその名の通りイタリアでも有数のリンゴの産地なのです。(イタリア語でリンゴはMelaと言います。)
その向こうに見えているのはサレンティーニ山地の山々でしょうか。
歩き続けてどのくらいたったでしょうか。ティローロの村の中心までやってきました。
バスの停留所(!)やツーリストインフォメーションもあります。
写真はサン・ジョヴァンニ教会(chiesa di S.Giovanni)です。
この教会の脇の道を進んでいくと、ティローロ城(Castello Tirolo)があります。
この写真をとった場所のそばには、おいしそうなジェラテリアも。
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旧市街の北のはずれに、15世紀に建てられたプリンチペスコ城(Castello Principesco)があります。
中世当時のままに保存されたこの城の向かい側に、
ティローロへと登るためのリフト(seggiovia)乗り場があります。
セッジョヴィア(seggiovia)とは、
昔は日本のどこのスキー場でもごく普通に見ることができた一人乗りのリフトのことです。
トレッキングにいく人が多いのでしょうか、それなりの装備で乗り込んでいく人が多いようです。
こんな風に緑の木々のあいだをリフトは登っていきます。
後ろを振り返ると、メラーノの街が見えます。中央にあるのがクールザール、その向こうが湯治センターです。
いわゆるゴンドラとはまた違ったパノラマを眺めながら、リフトはゆっくりと進みます。
街は少しずつ小さくなって、やがてリフトの下にはブドウ畑が広がってきます。
右手にはTessa山地の山々を見ることができます。
トレッキングに向かう人々の中には、あそこに行くのを目的にしている人もいることでしょう。
足元には、斜面いっぱいのブドウ畑。
ここで収穫されるブドウからおいしい白ワインがつくられているのでしょう。
それにしても、リフトは畑のすぐ上を進んでいきます。
冬になったら、足先が積もった雪に届いてしまうのでは?と思うくらいの高さです。
10分ほどでリフトは終点のサン・ベネデット山に到着です。
しかし、ここからティローロの中心までは、まだまだ長い道のりが待っていたのでした。
パッシリオ川の対岸、ポスタ橋を渡ってすぐのところにサント・スピリト教会があります。
シンプルな外観のゴシック様式の教会です。
ファサードの扉上部が、外観の中で唯一装飾らしい装飾がほどこされている部分です。
中からみたバラ窓です。ドゥオーモよりシンプルですが、美しさでは負けていません。
よく見ると外枠にかなりの厚みがあることがわかります。
後陣(祭壇)です。ドゥオーモのものと非常によく似ています。
このようなレリーフが数多く飾られています。
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メラーノのドゥオーモは、ポルティチ通りの東のはずれ、
メラーノの街の中でも比較的中世の面影を残す場所にあります。
ドゥオーモの脇は小さな広場になっていて、写真にもある大きな木が訪れる人の気持ちをなごませてくれます。
ファサードはヴェネツィアン・ゴシックと言っていいのでしょうか。
上部にあるヴェネツィアでよく見る煙突のような装飾が印象的です。
ファサードの下部の壁面にはフレスコ画が描かれています。
バラ窓のデザインも、いかにもゴシック風です。
教会の中から見たバラ窓のステンドグラスです。建てられた当時のものなのでしょうか。
やわらかな色合いがとてもいい感じです。
内部の様子です。大きくとられた窓からたくさんの光が差し込んできます。
天井はリブヴォールトだと思いますが、ちょっと複雑な形状をしています。
床面も落ち着いた色合いの装飾がほどこされています。
ステンドグラスはいつの時代のものなのでしょうか。色がとてもあざやかで、画風も現代風です。
第2次世界大戦後に復興されたのかもしれませんね。
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通り沿いには色とりどりの花が植えられています。
後ろの建物はクールザール(クアハウス)と呼ばれる建物で、現在はイベント会場などとして使われています。
色あざやかな花々に思わず目を奪われます。それにしてもヨーロッパの人は本当に花が好きなんですね。
イタリア人のコーディネートは、フランスのそれとは違って、自然の姿をできるだけ生かしているように感じます。
考え方が料理といっしょなのかな?
クールザール全景です。
イタリア人にとって、かっては温泉で湯治をするのは上流階級にだけ許されたぜいたくだったのかな、
と思わせるような建物です。湯治客の社交場としてカジノが開かれていたこともあるそうですよ。
クールザール前の広場です。現代美術のオブジェが置かれていますね。
その向かいにあるジェラテリアも大はやりのようです。
花壇の中に、こんなオブジェを見つけました。モチーフはいったい誰なんでしょうか。
そして、その隣に生えている椰子の木にもびっくりです。
だって、冬はスキー客であふれかえる町なんですから。やっぱり温泉のおかげなんでしょうか。
ポスタ橋までやってきました。クールザールのドームの背景に、Monte Muttaなどの山々が見えています。
ポスタ橋のたもとに立つりっぱな建物なのですが、残念ながら何なのかわかりません。
何かの庁舎のようにも見えるのですが…。
ポスタ橋の上からテアトロ橋方面を見たところです。緑豊かというべきなのか、自然のままですね。
メラーノの街の中心には、パッシリオ川が流れ、川に沿っていくつもの遊歩道が設けられています。
まずはテアトロ橋からポスタ橋までを歩いてみましょう。
要するに、川沿いに街の中心をぶらぶらするということですね。
川に面して、たくさんのベンチが置かれています。みな思い思いに自分の時間を楽しんでいるようです。
温泉地だけあって(川の向こう岸が、大きな湯治センターになっています)、心なしか年配の方が多い気がします。
スーツを着た人など、どこにも見あたりません。「Passeggiata(散歩)」の人ばかりですね。
道も広々として、ちょっとした広場のようです。
道の右手には、ホテルやバールが並び、昼からビールやワインのグラスを傾けている人もいます。
おなかもいっぱいになって、ちょっといい気分の私たちは、メラーノの街を散歩することにしました。
まずは旧市街の中心、ポルティチ通り(Via dei Portici)から。
アルト・アディジェでは、どこの街にもこのようなポルティコ(柱廊)が続く通りがありますが、
ボローニャやパドヴァなどのそれとは異なり、冬の積雪対策としての役割があったようです。
ご覧のように、どこまでもポルティコが続いています。
ただ、ボローニャとはちがって街並みそのものは、それほど古くはありません。
でも、建物をあちらこちらまでよく見ると、こんなさりげない装飾がされていたりします。
そして、こんなところにもさりげなく水道が…とおもったら、受け皿の下には「1994」の文字が。
やっぱり、保養地として脚光を浴びるようになってから、あちこち整備したんだろうなぁ、
と思いながらも、第2次世界大戦で被害をこうむっていなかったらどんな街だったんだろう、
とも考えてしまいました。
当時の面影は、こんな風に街の中にさりげなく残っていました。
ボルツァーノからのプルマンは、メラーノの街でいくつかの停留所に止まりますが、
もっとも便利なのがジャコモ・プッチーニ劇場前の停留所でしょう。
私たちもここでバスを降りて街歩きを始めることにしました。
劇場のある交差点から北へ向かう道は、歩行者天国のようになっていて、たくさんの露店が出ています。
写真右の建物がホテルヨーロッパ、この右手前に劇場があります。
北へ向かう道へ入ると、ご覧のような混雑ぶりです。さすが保養地メラーノですね。
日曜日とはいえ、街中にこんなに人が歩いています。
しばらく歩くと広場に出ます。
名前は「グランデ広場(Piazza del Grande)ですが、ちっともグランデじゃありません。
ここに何台かのBratwurst(ドイツ風焼ソーセージ)の屋台が出ていたので、お昼はそこで食べることにしました。
この屋台の「カリーブルスト」という文字に惹かれてふらふらと…。イタリアでカレーソーセージって?
結局オーダーしたのはこの3つ。右がチューリンガー、左がチョリソーで、真ん中奥がカリーブルストです。
正体はフランクフルターにカレーソースをかけたものでした。そしてソーセージにはやっぱりビール。
イタリアでは、せっかくだからその地方の一番「らしい」ものを、と考えて、
ファーストフードなどはできるだけ利用しないようにしてきた私たちですが、
なんだかこういう食事もたまにはいいものですね。