サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂からコロッセオに向かって歩いていくと、
その道のちょうど真ん中あたりに古いレンガ積みの壁で囲まれた建物が見えてきます。
この壁の内側がサン・クレメンテ教会です。
ファサードはマデルノによって改修されたようですが、
全体の雰囲気を見るかぎり、昔の面影を残したデザインになっているようです。
マデルノさん、ここでは「ぶちこわし」はしなかったようですね。
内部も内陣を残してほとんど改修されています。
天井の装飾は豪華で美しいのですが、全体としてみると違和感いっぱいです。
アプシスの部分だけは中世のままの姿です。
モザイク画の羊、聖人はよくある題材ですが、十字架のまわりにはたくさんの丸い模様が…。
この教会には、地下にさらに古い時代(4世紀)の教会が残っています。
壁面には、あちこちにフレスコ画が残っています。
地下の礼拝堂です。祭壇は新しく、長い期間ここが実際に利用されていたことがわかります。
キリスト教が公認される前は、みんなこんなところで集まって祈りをささげていたのかな、
なんてことを想像させる場所です。
ただし、実際に礼拝堂がつくられたのはキリスト教の公認より後のことです。
この教会には、実はさらに地下にある場所があるのです。
地下2階にあたるこの通路はまるで廃墟のように見えますが、つくりはかなりしっかりしています。
ポンペイの街並みを思い起こさせますね。
実はここには、もともとミトラ教の神殿があったのです。
キリスト教がミトラ教にとってかわっていった象徴的な場所というわけですね。
そして、現代のローマではなかなか見ることができない、
キリスト教以前のローマの宗教のようすを伝える貴重な遺跡でもありますね。
サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂のすぐそばに、ファサードらしいファサードもない小さな教会があります。
実はこの教会、ローマでもっとも美しいモザイク画がある教会なんです。
身廊は改修されていて、当時の面影はありませんが、内陣は9世紀に教会が建てられた当時のまま残されています。
この感じ、ラヴェンナとはまた違う、ローマならではのモザイク装飾です。
アプシスのモザイクのアップです。見る人を圧倒してしまうバロックのローマとは違って、
どこかほほえましい温かみのあるキリスト像です。
振り返って身廊を見渡すと、グロッタ風の装飾や列柱のフレスコ画に、どことなくラファエッロの匂いを感じます。
側廊にあるこのモザイクの下の扉が、この教会で一番美しい礼拝堂の入り口です。
聖母マリアと幼子イエスが金色に輝いています。
ふんだんに金が使われているのに、不思議とけばけばしさは感じません。
天井を見上げると、そこにもまた金色に輝くキリストが…。中世の人たちが「天上の園」と呼んだモザイク画です。
Ristrante “Asahi”
サンタ・クローチェ・イン・ジェルサレンメ聖堂のすぐ目の前にある日本食のレストランです。
特に日本食が恋しくなったわけではなくて、
たまたま目に入ったので、話のネタになるかなと思って入ってみました。
お店の外見はどちらかといえば地味な感じで、パッと見ただけではすぐに何のお店なのかわかりません。
もっとも、このあたりにはリストランテなどの飲食店がほとんどないので、これで十分なのかもしれません。
インテリアはどことなく中国風です。
ただ、カウンター席もあり、外国人(日本人じゃないという意味です。イタリアだから日本人こそ外国人ですね)が
見よう見まねでやっているお店でもなさそうです。
働いている人は、アジア系ですが、日本語は話せません。調理する人は日本人なのかもしれませんが…。
お昼でしたが、日本人らしく「とりあえずビール」です。
運ばれてきたのは一番絞りです。お店の名前は「アサヒ」なのに…。
オーダーしたのは「天丼」と「ちらし寿司」です。上が天丼です。説明しなくてもわかりますね。
意外にも「フリット」ではなくて本物の「てんぷら」です。味は機内食よりはおいしいといったところでしょうか。
こちらが「ちらし寿司」です。生ものは危険かなとも思ったのですが、ついオーダーしてしまいました。
こちらも意外とまともな味です。でも、これってイタリア人は食べるんでしょうか。
結論から言うと、特に笑えるところもなく、普通に日本食をいただいてしまいました。
それにしても、ローマでもどちらかといえば人の少ないこんな場所でやっていけるんでしょうか、このお店。
サンタ・クローチェ・イン・ジェルサレンメ聖堂には、2つの重要な礼拝堂があります。
ひとつめが上の写真のエレナ礼拝堂です。
この聖堂に納められている聖遺物は、
コンスタンティヌス帝の母親エレナがエルサレムから持ち帰ったものなんだそうです。
礼拝堂の天井には、見事なモザイクがあります。
こちらはクイノネス枢機卿の墓所です。他ではあまり見られない独特な色合いの装飾です。
もう1つの礼拝堂が、この聖堂でもっとも重要な場所、十字架の礼拝堂です。
この階段を上って、右に折れたところに、礼拝堂の入り口があります。
ここが礼拝堂の入り口です。この中に、エレナが持ち帰ったとされる聖遺物が納められています。
聖遺物は、十字架の木片の他に、十字架に打たれていた釘、そしてキリストの茨の冠のトゲの3つです。
ここを訪れる人は皆ひざまづいて熱心に祈りをささげていきます。
あらためて「ここは巡礼の地なんだ」と気づかされる光景でした。
テルミニ駅の南東、サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂から東へ500mほどのところに、
ローマ7大聖堂のひとつ、サンタ・クローチェ・イン・ジェルサレンメ聖堂があります。
日本語に訳すと「エルサレムの聖十字架聖堂」となるこの聖堂には、
キリストがはりつけになった十字架の一部とされる木片などが納められています。
聖堂のすぐ脇には古代ローマ時代の城壁のあとが残っていて、ここは街はずれだったことがわかります。
ファサードは見事なバロック様式です。ただ、このファサードは18世紀のものらしいので、
もうバロック建築は時代遅れになりつつあったのかもしれませんね。
ファサードをくぐり、中に入ると、そこはまたまたバロック風の柱廊になっています。
他の大聖堂に比べるとやや小ぶりですが、ここにも天蓋が置かれていました。
後陣には青が印象的なフレスコ画が描かれています。
写真ではわかりませんが、床はコズマーティ様式のモザイクで装飾されています。
アップで見た天蓋と後陣です。いろいろな時代のものが微妙なバランスでマッチしています。
(マッチしてないのかも?)
サン・ロレンツォ・フォーリ・レ・ムーラ聖堂にも、静かな中庭があります。
中庭にいたる聖堂の脇の小さな並木も、写真の通り、ローマ市内とは別世界です。
中庭を囲む回廊には、敷地内にあるモザイク画工房(モザイク画教室?)の作品が飾られていました。
こんな感じで、作品といっしょに使われている石や道具も紹介されています。
中庭はといえば、よく手入れされているとはいいがたいのですが、素朴で静かなのがいいですね。
きっと、よく手入れされていたころは、美しい中庭だったんでしょうね。
でも、このくらいのさびれかたをしているほうがかえって落ち着くように思うのは、わたしだけでしょうか。
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サン・ロレンツォ・フォーリ・レ・ムーラ聖堂は、ローマ大学の近く、ヴェラーノ墓地に隣接して立つ教会で、
ローマ7大聖堂(4大聖堂+3つの聖堂)のひとつです。
ファサードは第二次世界大戦で破壊されてしまい、レンガ積みのままになっていますが、
もともとはモザイク画で装飾されていたそうです。
ファサード下部の柱廊部分には、やっぱりコズマーティ装飾が。この部分も再建されたものなんでしょうか?
柱廊の壁面には、古い時代のフレスコ画が残っています。
13世紀くらいのものでしょうか、どことなくジォット風です。
左右正面すべてにフレスコ画が描かれています。
サン・ロレンツォの物語ではなさそうですが、聖書を題材にした物語のようです。
それにしても、戦火に耐えてよく残ったものですね。
内部は、やっぱりここもバシリカ式です。
実はこの聖堂、もともと背中合わせだった2つの教会を、
お互いのアプシスをぶち抜いて1つの教会にしたものなんだそうです。
ずいぶん思い切ったことをしたものですよね。
もともとのサン・ロレンツォ聖堂にあたる部分が、まるまる内陣になっているようです。
こうやって見ると、アーチ部分をさかいにして、建物のつくりがまったく違っていることがはっきりわかります。
アーチ部分のフレスコ画です。ぱっと見たところ、サン・ロレンツォはいないようです。
作風は柱廊のフレスコ画とはまったく違っています。
ファサード上部にもこんな感じの絵が描かれていたのでしょうか。
内陣の入り口です。半円を描いているのは、もしかしてもとの教会のアプシスの名残り?でしょうか。
内陣の全景です。
こうやって見ると、アプシスの部分がもともとはファサードとして作られたことがよくわかりますね。
半地下はクリプタになっていて、サン・ロレンツォのお墓があるそうなのですが、見逃してしまいました。
モザイクもすごくきれいなんだそうです。もう一回行かないと…。
でも、今度ローマに立ち寄るのはいつになるのかな?
サン・パオロ・フォーリ・レ・ムーラ大聖堂には、4世紀に建てられた頃の姿をとどめている美しい中庭があります。
私たちが訪れた時期には、ちょうどバラの花が咲いていました。
中庭は4つに区切られ、それぞれの中央にヤシの木が植えられています。
回廊の柱は一本一本が異なったデザインで、そのほとんどはモザイクで細かく装飾されています。
いわゆるコズマーティ様式ですね。
一本の柱でも、一列一列が少しずつちがった模様です。
回廊すべての柱を飾り付けるのに、どのくらいの時間がかかったのでしょうか。
昔の人たちはここの美しさに天国のイメージを重ね合わせていたのでしょうか。
リズミカルなアーチの上にもコズマーティ様式のモザイクがあります。アップの写真を撮ってくればよかった…。
19世紀に再建されたサン・パオロ・フォーリ・レ・ムーラ大聖堂ですが、ファサード前の回廊を除けば、
おそらく4大聖堂の中でもっとも建てられた当初の雰囲気を残している教会かもしれません。
ここには巨大な舞台装置のようなファサードはなく、
身廊上部にあたるところには、モザイク画?が描かれています。
オリジナルはきっとクリーム色の背景部分に金箔が貼られていたのでしょう。
キリストの両隣はサン・ピエトロとサン・パオロですね。さらにその下に描かれているのは4福音者のようです。
それにしても、画風は思いっきり現代風です。
この扉は、火災で焼け残ったオリジナルです。下から3段目のレリーフを見てください。
アマルフィのドゥオーモの扉、ヴェローナのジュリエッタ像の左胸、フィレンツェのブロンズのイノシシの鼻。
みんな考えることは同じなんですね。
内部も当然再建されたものですが、典型的なバシリカ様式です。
身廊と内陣を分けるアーチのモザイク画は5世紀のものだそうです。
アプシスにも当時のモザイクが残っています。
ここのモザイクは、シチリアなどで見られるような力強さはなく、優しいビザンチン風です。
それにしても、ライトアップ、強烈すぎませんか?アーチのモザイクがまったく写っていません。
モザイク部分のアップです。淡い色使いや衣服のひだが細かく表現されているのが印象的です。
天井は全体の雰囲気に不釣合いに豪華です。列柱の上の円の中に描かれているのは、歴代の教皇の肖像画だそうです。
ファサードの裏側です。控えめな色合いのステンドグラスが全体の雰囲気に調和していていいですね。
ローマ4大聖堂の最後はサン・パオロ・フォーリ・レ・ムーラ大聖堂です。
聖パオロの墓所の上に建てられたこの教会は、
フォーリ・レ・ムーラ(城壁の外)という名前の通り、ローマの郊外にあります。
ツアーでなければ、地下鉄を利用していくのが一般的でしょう。
最寄り駅は、その名も「サン・パオロ」です。
駅を出てすぐの歩道には、巡礼者や観光客目当ての露店が出ています。
そこを抜けて、オスティエンセ通りの交差点に出ると、
写真のように鐘楼が見えますから、迷うことはまずありません。
駅側に面しているのは教会の裏手なので、正面にまわるには、教会にそって一回りしなければなりません。
鐘楼のところで左に折れると、目の前には大きな広場が。ここもやっぱり「サン・パオロ広場」です。
教会はといえば、やっと翼廊にあたる部分が見えてきたところです。
ここからは19世紀に再建された回廊がぐるりと教会を囲んでいます。まだまだ入り口は見えてきません。
教会のまわりを300mくらい歩いたでしょうか。2回左に折れたところでようやく教会の正面が見えてきました。
正面の回廊はどこかミラノ中央駅を思わせるがっちりしたデザインです。
やっとたどりつきました…。まわりの殺風景な雰囲気とはうって変わって、この世の楽園のような美しさです。
火事にあい、19世紀に再建されているからでしょうか、他のローマのどの教会にもない開放感があります。
ここでお弁当を食べたいなんて言ったら、不謹慎でしょうか。
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