バーニョ・ヴィニョーニを後にした私たちは、
旧フランチェジーナ街道を歩いてサン・クィリコ・ドルチャへ戻ることにしました。
舗装もされていない、中世の面影を残す道です。
バーニョ・ヴィニョーニから30分ほどは、ずっと上り坂。
遠くにカスティリオーネ・ドルチャが見えます。
一時間弱歩いたところで、大きな見張り台のあるヴィニョーニ・アルトへ到着です。
こちらが本家のヴィニョーニ村です。
小さな村ながらもコントラーダの旗が掲げられています。
小さな教会もありました。今も使われているのでしょうか。
さあ、それではヴィニョーニ村を後にして、再びフランチェジーナ街道を歩きましょう。
今度はゆるやかな下り坂。両脇には木が生い茂っています。
しばらく歩くと、再び視野が開け、糸杉たちが見えてきました。
歩くこと一時間半ほど。サン・クィリコ・ドルチャとの境界のところまでやってきました。
ここまで来ると、旧市街はもうすぐです。
ということは、やっとバスに乗れる…。
バーニョ・ヴィニョーニには、今でも源泉から続く水路があり、訪れた人たちは足湯を楽しむことができます。
もちろん、私たちも。
そして、この水路の先には…。
水路の先にあったのは、湯の滝です。
ここから谷底を流れる川に向かって、お湯が流れています。
お湯の流れているところは、硫黄の成分で岩が黄色く変色しています。
下からながめると、こんな感じです。もちろん、谷底はもっともっと下の方なのですが…。
谷底へ向かう途中のところどころに、こんなふうに温泉の池ができています。
ここまで来ると、もう水温はほとんど水に近いのですが、中には水着で泳いでいる人もいます。
私たちはとてもそこまでする勇気はありませんでしたけど…。
映画「ノスタルジア」のロケ地としても有名なバーニョ・ヴィニョーニへは、
サン・クィリコ・ドルチャからバスで10分ほど。ただし、バスは1日に1便だけです。
サン・クィリコで降りた時と同じバス停から、Piancastagnaio行きのバスに乗ります。
ここがバーニョ・ヴィニョーニのバス停です。
古代ローマ時代から知られた温泉地だったバーニョ・ヴィニョーニ。
今でも保養地として多くの人が訪れます。
村の中心には、大きなプール?があり、バーニョ・ヴィニョーニのシンボルになっています。
実はこのプールの底からも源泉が湧き出ているのです。
今ではこのプールに直接入る人はいませんが、かってはここが浴場として利用されていました。
このプールから南へ続く道を歩いていくと…。
古代ローマの遺跡が現れます。ローマ人たちもこんな眺めのいいところで温泉を楽しんでいたんですね。
Trattoria al Vecchio Forno(トラットリア・アル・ヴェッキオ・フォルノ)
サン・クィリコ・ドルチャの町一番のトラットリアです。
案内されたのは、屋外のテラス席。そよ風がさわやかです。
アンティパストは「ナスのインボルティーニ」。
上に乗せたベーコンとトマトがいいアクセントになっています。
プリモは「チーズとコショウのピチ」。
カルボナーラの原型といわれる料理に地元のパスタ、“ピチ”を使っています。
セコンドは「ラムのすね肉のオーブン焼」。肉の味が楽しめるシンプルな味付けです。
付け合わせは「ズッキーニの花のフリッター」。これもレモンと塩でシンプルにいただきます。
ドルチェは「チョコレートのサラーメ」。チョコレートをまるでサラミのように固めてあります。
すべての料理の味に大満足。雰囲気も申し分なしのお店です。
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サン・クィリコ・ドルチャのメインストリートを一歩外れると、
そこに住む人たちのたたずまいが見えてきます。
玄関先をこんな風に緑で飾り付けて、心豊かに暮らしているのでしょう。
人通りもなく、静かな路地。時間が許すなら、1日中こんなところでボーっとしていたくなります。
青い空に糸杉、そしてレンガ造りの家。サン・クィリコ・ドルチャの午後はこうして過ぎていきます。
中世のフランチェジーナ街道沿いには、
シエナのサンタ・マリア・デッラ・スカーラ病院の分院がいくつかありました。
この建物がサン・クィリコ・ドルチャにあった分院跡です。
この表示板が建物の入り口の目印です。
入り口のアーチをくぐると、小さな中庭があり、外階段から二階へと上るつくりになっています。
病院というよりは、巡礼者たちの救護所を兼ねた宿泊所だったようです。
二階のようすです。がらんとして当時の面影はありませんが、いくつもの部屋があったようです。
中庭には小さな井戸の跡がありました。
誰が置いたのでしょうか、真っ赤なゼラニウムの鉢植えが置かれていました。
旧市街の南のはずれ近く、ダンテ・アリギエーリ通り沿いに、11世紀の素朴な教会があります。
この教会がサンタ・マリア・アッスンタ教会です。
いかにもロマネスクな入り口のアーチは、細かい装飾がほどこされています。
そして、木製の扉の上に注目してみると…。
こんな彫刻が。太陽をモチーフにしているのだと思いますが、何ともいえずいい味を出してます。
内部はシンプルな単廊式です。石の壁をくりぬいて作られた後陣がこれまたいかにもロマネスクです。
こういうプリミティブな作りの教会を訪れると、
「心が洗われる」という言葉の意味がよくわかるような気がします。
リベルタ広場に面した、ゴシック様式の教会です。
レンガと大理石を組み合わせて作られた、時計台をかねた鐘楼が印象的です。
内部はあまりゴシックらしさはなく、どちらかといえばロマネスク風です。
説教壇です。特に特徴があるわけではないのですが、
全体的に白っぽい内装の中で色大理石の柱が印象に残ります。
主祭壇の両脇には「キリストの復活」と「聖母被昇天」のフレスコ画が飾られていました。
参事会教会を後にして、ダンテ・アリギエーリ通り(かってのフランチェジーナ街道)を南へと進みます。
ふり返ると、参事会教会の鐘楼が見えています。なかなか絵になる風景です。
しばらく歩くと、通りに面して広場があります。
リベルタ広場と呼ばれるこの広場、ガランとして町の雰囲気にちょっとそぐわない感じもします。
リベルタ広場にあるヌォーヴァ門。
「新しい門」というくらいですから、リベルタ広場とこの門は後世になってつくられたものなのでしょう。
ヌォーヴァ門の脇には、こんな小さな門もあります。
この門の中に入ってみると…。
こんな立派な庭園が広がっていました。もともとはキージ家の庭園だったものだそうです。
庭園といい、キージ宮殿といい、この町の中世の中世の繁栄ぶりをうかがうことができますね。
ポリツィアーノ通りとフランチェジーナ街道が出会う三差路に、
サン・クィリコ・ドルチャの参事会教会があります。
町のスケールにぴったりのこの教会は、ずっと来てみたいと思っていた場所のひとつです。
全体のフォルムだけ見ると素朴な感じのするこの教会、実はすみずみまで細かい装飾がほどこされています。
アーチとそれを支える柱の部分の装飾に注目してください。
そしてこれがファサードです。雑草が顔をのぞかせているのはご愛嬌として、
ロマネスク様式らしく、シンプルだけど繊細なデザインですよね。
中はといえば、シンプルなのになぜか主祭壇だけがバロックしています。
側廊にはサーノ・ディ・ピエトロの手による聖母子像の祭壇画がありました。
もしかすると、もともとの主祭壇にはこれが飾られていたのかもしれませんね。
カプッチーニ門をくぐると、道は旧市街の中心に向かって続いています。
この通りがポリツィアーノ通りです。
ここから街の中央を南北に走るフランチェジーナ街道まで、中世そのままの雰囲気を残した通りが続きます。
やがて通りはフランチェジーナ街道へとつきあたります。
右手に見えるピンク色の建物はキージ宮殿(Palazzo chigi)です。
この宮殿は、当時のローマ教皇のおい、フラヴィオ・キージのために建てられたもので、
設計したのは、なんとカルロ・フォンターナだそうです。
こんな田舎まで、わざわざローマから呼び寄せたんですね。
キージ宮の脇には、フランチェジーナ街道の大きな案内板が。
ポントレーモリ、ルッカ、サン・ジミニャーノ、シエナなどを経由してローマへ向かう巡礼の道です。
オルチャ渓谷のほぼ中央にある小さな町、サン・クィリコ・ドルチャへは、
ピエンツァからプルマンで15分ほど。チケットを買うのはこのバールです。
ちなみにピエンツァのバス停はいくつかありますが、サン・クィリコ方面ならここです。
プルマンの車中からは、オルチャ渓谷ならではの美しい風景を眺めることができます。
オルチャ渓谷のシンボル「ボスケッティ・ディ・チプレッシ」です。
カレンダーに使われる写真のようにきれいに撮ることはできませんでしたが、
風景の美しさの雰囲気は伝わるでしょうか。
やがてプルマンはサン・クィリコの停留所に到着します。
ここが、旧市街の入り口、カプッチーニ門です。
この独特の形状は、門が見張り塔の役目も兼ねているからです。
さあ、それではサン・クィリコ・ドルチャの旧市街を散策してみましょう。