JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

今夜程 淋しい夜はない

2010年01月19日 | y-その他

最近は訃報、訃報で「もう、冥福を祈り過ぎだろ」てな日々ですが、今日ばかりはさらに沈痛な想いでご冥福をお祈りしなければいけません。

「歌手浅川マキ(あさかわ・まき)さんが17日夕、滞在先の名古屋市のホテル自室で倒れているのが見つかり、同日午後8時に死亡が確認された。死因は急性心不全。67歳。」
とのニュース。

 ♪ 今日は あの娘の亡骸に
   逢いに来たのさ セント・ジェームス医院
   ここは貧しい病院の
   白く冷たいテーブルの上
           ・・・・・・・・・♪
 

あの浅川マキが白いテーブルの上に横たわる・・そんな日が来てしまったのですねぇ。

このブログにもときおり彼女には登場していただきました。
それは、アルバイトをしていたジャズ喫茶のママの話しであったり、行方知れずの友、アウトローTの話しであったり、真崎守の漫画に描かれた彼女の世界の話であったり、もちろん彼女を見出した寺山修司に係わる話であったり・・・・・
いや、彼女の歌には私自信のいろんな思い出も凝縮されているのです。

ちょっと前に発掘した(笑)高校時代のノートには、ところどころに彼女の歌が書かれていました。
当時、ジャズを聴きながら飲むお酒もとうぜん好きでしたが、ママの付き合いで浅川マキを聴きながら飲むお酒も、私にとってとても大切なものだったのだと思いますし、その詞から、歌から、少なからず影響を受けていたのだとも思います。(注:高校生がお酒を飲んじゃいけません。)

そうそう、同級生の女の子に『裏窓』を唄って聴かせたら
「なにその暗い歌」
って言われたこともあれましたけど、とあるキャンプで、夜の海を見ながら浅川マキの歌を唄っていたら、Uちゃんという女の子がそっと近づいてきて
「とってもいい歌ね」
って、言ってくれたこともあったんですよ。
えっ?その後?まぁまぁ、それは言わずもがなということで(笑)

上手く言えませんが、彼女の歌には独特の説得力があった?というより思春期の男の子にとってじつに大人の世界といったイメージがあったのでしょうねぇ、そして、なんとも隠微な魅力を放っていて・・・・・・・しかも、普通の同級生のガキには分からない世界だからなおさら良い、みたいな。(それは、ジャズを聴くという事もそうであったかもしれませんが。)
そしてそれが、年上のママの魅力と重なった日にゃア~タ、高校生なんかメロメロですわいな。(笑)

もう一つは、当時の私の志向が、なんとなくアングラチックな方向へ向いていたことが、未だに彼女の歌をソラで歌える原因になっているのだと思います。

いずれにしろ、浅川マキは、我が青春の一ページにしっかりとした足跡を残しているわけで、その彼女の死は大きなショックです。
今晩Mさんのお店から帰ったら、CDではなく、レコードを聴きながら一杯飲んで、ご冥福を心より祈りたいと思っています。

さて、今日の一枚は、あえてタブーを犯します。浅川マキです。
「何を『JAZZを聴きながら』じゃい」
とのご批判もございましょうが、「マキの死」に免じてお許しいただきたい。

私の持っている彼女のアルバムは、LPですとこの『裏窓』と『MAKI Ⅱ』の二枚だけ、どちらにするか迷ったのですが、アウトローTが愛した(もちろんママもお好きでしたよ)このアルバムにしました。

このアルバムには、ジャズのスタンダードから、寺山修司作詩の表題曲「裏窓」、「翔ばないカラス」は真崎守の作詩、我が子にも歌って聴かせた「ケンタウロスの子守歌」は筒井康隆作詩、山下洋輔作曲と、まぁ様々な歌が収められています。(作詞ではなく作詩と書いたのは、レコードにそう記載されているからです。)

 ♪ 町の酒場で 酔い痴れた女に
   声をかけてはいけない
   どんなにあなたが淋しいときでも
     昔あなたが恋したひとに似ていても
   声をかけてはいけない ♪

どの歌もじつに味があるなかで、私はこの「町の酒場で」(浅川マキ作詩・作曲)がなんとも好きなんです。市原宏祐のテナーもなかなかよろしいし、自分で作詩しておきながら「あなた」ではなく「あんた」と唄うあたりも・・・・
私だったら声をかけて泥沼に落ちていきそうですよね。(笑)

ともかく、
 ♪ 今夜程 淋しい夜はない ♪
のでありますよ。

裏窓 / 浅川マキ
1973年
浅川マキ(vo) 荻原信義(g) 富倉安生(b) 小松崎政雄(ds) 白井幹夫(p) 南里文雄(tp) 渋谷森久(org) 市原宏祐(ts)

1.こんな風に過ぎて行くのなら
2.裏窓
3.あの男が死んだら
4.セント・ジェームス医院
5.ロンサム・ロード
6.引越し
7.トラブル・イン・マインド
8.翔ばないカラス
9.町の酒場で
10.ケンタウロスの子守歌