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■中庭展示Vol.17 澁谷俊彦「雪待の庭「薄雪」/Snow Pallet 14」(2021年10月9日~2022年3月13日、苫小牧)

2022年03月15日 08時00分28秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 苫小牧市美術博物館の「中庭展示」は Vol.17 になるそうです。
 会場は、建物に四方を囲まれ、空が見えるほぼ正方形のスペース。見る人は立ち入ることはできず、周囲の廊下から窓越しに鑑賞する(2階の窓から見下ろすことも可能)というスタイルですが、制約の多さを逆手に取って、ユニークな展示が続いています。
 少なくとも、単なるタブロー(油絵など)や、雨で消えてしまう作品は、展示に堪えないわけで、作者が知恵を絞っています。

 澁谷俊彦さん(札幌。1960~)の「Snow Pallet(スノーパレット)」シリーズは、冬の屋外向けの展示といえそうです。
 14作目となる今回は、苫小牧が道内でも雪の少ない地域であることを念頭に置いて「雪待の庭「薄雪」と名付けました。
 ところがこの冬は、苫小牧も異例の雪の多さだったようです。

 筆者はもっと早い時期に訪れる予定でしたが、暴風雪に予定を狂わされ、ようやく会期最終日の2日前に訪れることができました。
 これは悪口ではないのですが、筆者がこれまで見た Snow Pallet シリーズの中で、最も汚れた作品になっていました。
 すでに積雪はわずかで、このシリーズの趣旨である
「円盤の裏側に塗った色鮮やかな塗料が雪の白い表面に淡く反射して見える」
状態は終わっていました。
(円盤が上下に重なるように配置されているところでは、下の円盤に、上側からの光が反射して見えているのですが)

 しかし、3月中旬に雪が汚くなっているのは、むしろ自然なことです。
 Snow Pallet シリーズはこれまでも、雪国に住むわたしたちの暮らしがそうであるように、雪とのせめぎ合いのなかで展開されてきました。
 ホテルの中庭ではなかなか雪が積もらなかったり、小樽では積もった雪の下にすっかり埋没したり…。
 積雪が多く、4月になっても展示していたこともあります。 

 そのたびに作者の澁谷さんは、円盤の高さなどを再設計し、試行錯誤しながら次の冬に臨んでいたのです。
 今回の展示も、円盤は高いものから低いものまで相当な差が付いており、完全な埋没は回避できるようになっています。

 「自然が作者の意のままになる。コントロール可能である」
という、西洋近代的な作品のありかたとは異なる要素こそが、 Snow Pallet シリーズの真骨頂であることを思えば、作品が汚いことはまったく気にならなかったのです。


2021年10月9日(土)~2022年3月13日(日)午前9時半~午後5時(入場30分前)、月曜休み(祝日開館し翌日休み)
苫小牧市美術博物館(苫小牧市末広町3 https://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/hakubutsukan/ )

作者のサイト www.toshihikoshibuya2.com


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