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その2■イコロの森 ミーツ・アート2019 ー森の野外美術展ー(9月21~29日、苫小牧) 2019年秋の旅(4)

2019年09月28日 21時17分07秒 | 展覧会の紹介-現代美術
(承前)

 だいぶ間があいてしまったが、澁谷俊彦さんと中村修一さんの作品について。

 冒頭の画像は、2人の作品展開エリアが近接しているあたりで撮った。


 澁谷さんの作品系列は、冬は「SNOW PALLET」シリーズなどいくつかあり、今回は、おびただしい数のカラフルなプッシュピンをさしていく「Generation」シリーズ。
 札幌都心部の地下にある「500m美術館」の壁面に展開したこともあったが、自然環境の中にしのばせることも多い。その場合は、倒木にさすなど、生命を傷つけないような配慮をしている。

 そのため、どこに作品があるのか気づかない人もいる。
 自然にはえているキノコや粘菌のように見えるのだ。

 プッシュピンがある家は多いと思う。
 冷蔵庫の前にコルクボードをさげ、そこにメモなどを固定するときに使う。画鋲のカラフルなやつだ。
 それを「さしていくだけ」で作品ということに、抵抗感を抱く人もいるらしい。
 しかし、絵の具だって、文具・画材店で買ってくる工業製品なんだから、同じことだ。

 たしかにピンを二つ三つさすだけではオリジナルの作品とはいえないかもしれないが、澁谷さんの場合は数千個に及ぶこともある。それを、配置を考えながらさしていくのは、けっこうな作業量である。

 今回のトークで澁谷さんは、プッシュピンを使うことの意味について
「家に帰ればこんなピンがあるかもしれない。日常生活とアートが近づくパイプのような役目も持ち得るのでは」
と話す。

 そして
「ふだん自分たちは意外と足下を見ていない。一歩立ち止まってかがんでみると、そこには本物のキノコが生えていたりする。作品はいわば『気づき』のための装置だと考えてもらえれば」
ともいう。
 

 澁谷さんによればこの森は、苫小牧市のシンボル的な山である樽前山の噴火による火砕流と火山灰でできた土地のため、木は根を張りづらく、すこし成長すると倒れてしまうという。
「木の寿命が他よりも短いらしく、植物にとっては過酷な環境なんです」

 少し歩くと、たしかに、下草があまり多くなく、倒木はあちこちにある。
 倒木更新から新たな命へと代替わりしていく現場が、よく観察できる森なのだ。

 木はミズナラなどオーク類が多いようで、針葉樹は見かけない。
 落ちたドングリから小さなオークが芽を出しているのを見るのは、いいものだ。


 かつて版画を制作していた澁谷さんだが、その後インスタレーションに移行し、最近は、森で拾ってきた種子などをそのままアクリルのケースにおさめた「WHITE COLLECTION」シリーズなど、自然のほうに寄った立ち位置の作品が多くなってきた。
「自然は裏切りませんから」
 




 さて、中村修一さんである。

 中村さんは陶芸を始めるとき、父親(画家で新道展会員の中村哲泰さん)に相談したところ、紹介されて師事したのが、北広島の松原成樹さんだったという。
 松原さんは食器も作るが、オブジェを多く手がけており、その影響で中村さんは食器づくりはやめてしまった。
「陶の粘土は、自由自在にできる良い素材です。とにかく、土をこねるのも焼くのも楽しい」



 茶廊法邑 さ ろうほうむらや、恵庭のカフェの庭などの個展で使ったものに、新作を加えて、数もだいぶ増えてきた。
 今回は280個ぐらい、並べているという。

 粘土に鉄の棒をさして、地面に突き刺しているので、おそらく強い風が吹けばゆれるのだろう。


 あとは、くどくどと説明する必要はないような気がする。

 水滴のような、あるいは種子のような独特の形状は、見る人が自由に見ればいいのである。

 そこには、森が持っている生命の発露があると、筆者には感じられる。




 2019年9月14日(土)~20日(金)公開制作 / 9月21日(土)~29日(日)午前10時~午後4時半
 イコロの森「森の学校」周辺 雑木林エリア(苫小牧市植苗565-1 www.ikor-no-mori.com )

 9月22日(日)午後1時半からアーティストトーク


 □公式Facebook ページ https://www.facebook.com › ikor.meetsart


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