毎日のできごとの反省

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航空戦艦伊勢のカタパルト

2013-10-23 14:39:40 | 軍事技術

航空戦艦伊勢のカタパルト

 

 伊勢型戦艦は、空母の不足を補うために、艦上機を運用できるように改装された。しかし見る限り伊勢型のカタパルトは、米空母のカタパルトとは異なり、水上機射出用のカタパルトと変わりはない。どうやって車輪式の艦上機を射出するのか長い間疑問に思っていたが、回答を与えてくれる本を手に入れた。模型店で入手した簡易製本の「航空戦艦伊勢・増補改訂版」という本である。機種ごとに専用の台車(滑走車)に艦上機をセットして、軌条でカタパルトまで運び、射出するのである。この場合艦上機は脚を飛行甲板に着けられないので、軌条の上しか移動できないという不便なようだが飛行甲板自体が狭いから、かえって車輪で走行するよりは都合がよかろう。市販の伊勢型戦艦の記述がある書籍には、この点を記述したものを見たことがなかったから、小生には貴重な本である。滑走車自体は使い捨てではなく、射出されて機体と分離したら回収されるのだそうである。この本の彗星を載せた滑走車の図をまねて書いたものが添付の図である。粗雑で、かの本のように立派な図ではないが、イメージだけはつかめると思う。

 それでもまだ疑問がある。機体が3点静止姿勢に近い角度で機首が前上方を向いて滑走車に傾斜して載せられている点である。滑走車はカタパルト先端で停止し、機体だけが滑走車から離れて空中に飛び出す、と読めるように同書には記載されている。すると滑走車がカタパルト先端に到達する前に、機体が滑走車から充分浮き上がることができなければ、滑走車がカタパルト先端に到達した瞬間に機体は滑走車に押し付けられて、空中に飛び出すことはできない。

 それどころではない。滑走車を射出せずにカタパルト先端で止めるためには、機体を滑走車に固定するロックをカタパルト先端で自動的に解除しなければならない。すると、図に示したように、滑走車前端の最上部より機体の重心位置(図のG.C.)は高いから、転倒モーメントが働き、機体は前転して放り出されて海中に落ちる。いずれにしても、機体を水平にして射出しない限り、滑走車をカタパルト上に残しておく方法は小生には考えられない。確かに水上機ではカタパルト上で機体は水平に保持されている。

結局は、滑走車は機体と共にカタパルトから射出されて、空中で分離して落下するしかない。回収するには滑走車にワイヤロープを取りつけるなり、方法は考えられるが面倒そうである。いずれにしても滑走車に3点姿勢で取り付けられている限り、一旦は滑走車はカタパルトから射出しなければならないと考えられる。水上機の場合、フロートによってカタパルト上面とプロペラのクリアランスが確保されているから、機体を水平に保持しても、プロペラがカタパルト上面に当たることはないから、滑走車はかなり小さくて済む。艦上機の場合には機体を水平にして、カタパルト上面とプロペラのクリアランスを確保するには、滑走車全体の背が高くなり大型化する。それを防ぐため、せめて尾輪高さを下げて3点姿勢にしたのだろうか。本当のところは分からない。